YJキャピタル(CVC)の特徴や投資実績など5項目を解説

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YJキャピタル vc

企業がまだ小さいうちに出資を行い、成長した時に大きなリターンとしてキャピタルゲインを得ることを目的としてベンチャー企業への出資を行っているのがベンチャーキャピタル(VC)ですが、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の場合、目的は異なってきます。

コーポレートベンチャーキャピタルとは、元々投資を本業としていない事業会社が自社とのシナジー効果を期待して、ベンチャー企業やスタートアップ企業への投資を行うことや、それを目的にして設立された投資会社のことです。

ベンチャーキャピタルは多くの場合、LP投資家や外部の事業会社から出資を募り、集めた資金を使ってベンチャー企業へ投資します。しかしながら、コーポレートベンチャーキャピタルの場合は事業会社の自己資金で組成され、運営するのも自社の子会社や社内の投資部門です。そのため、他の投資家からの影響を受けることがありません。

この記事ではYahoo!JAPANが設立したコーポレートベンチャーキャピタルであるYJキャピタルの会社概要、特徴、投資先、投資実績、投資基準、アクセラレータープログラムなどについて詳しく解説していきたいと思います。

YJキャピタルについて

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YJキャピタルはYahoo!JAPANの100%子会社として2012年8月に設立されたコーポレートベンチャーキャピタルです。出資対象としているのは主にインターネットやモバイル領域で、このような分野で成長性のあるベンチャー企業やスタートアップ企業、起業家の支援を行うことでインターネット産業を成長させることに貢献するということを目標に掲げています。

現社長は堀新一郎氏ですが、YJキャピタルの立ち上げを行ったのは大和企業投資、あおぞら銀行のベンチャー投資部門などの経験を積んだ後にYahoo!に転職した戸祭陽介氏です。当時のYahoo!はM&Aは積極的に行ってきていたものの、ベンチャー企業への投資ではあまり積極的ではありませんでした。しかし、その時は丁度Yahoo!経営陣の交代のタイミングで、新しいことに積極的に取り組んでいこうということでベンチャーキャピタルで挑戦するということとなり、YJキャピタルが誕生しました。

会社名 YJキャピタル株式会社( YJ Capital Inc. )
設立 2012年8月7日
資本金 2億円(資本準備金2億円)
役員 堀新一郎(代表取締役社長)
株主 ヤフー株式会社100%
所在地 〒102-8282
東京都千代田区紀尾井町1-3
東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井タワー
Webサイト http://yj-capital.co.jp/

YJキャピタルの投資先・投資実績

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YJキャピタルは主にインターネット関連のベンチャー企業、スタートアップ企業へ幅広い投資を行っており、成長ステージについても様々なステージの企業に投資を行っています。

YJキャピタルは現在複数のファンドを運営していますが、ファンドによっても目的が異なり、1号ファンドと2号ファンドは投資を行ってキャピタルゲインを得ること、そしてYahoo!とのシナジー効果の両方を狙った位置づけのファンドとなっています。

その一方、YJテックファンドは技術分野でYahoo!とのシナジー効果を生むということを重視したファンドファンドとなっています。

コーポレートベンチャーキャピタルがこのような目的の異なったファンドを運用するのは珍しいことですが、時代の流れでデータ関係のテクノロジーやセキュリティの分野に力を注ぐ必要性を感じたということが背景になっているようです。業務系の運用はYJキャピタルが行い、投資判断やファインディングにはYahoo!も関わっていくという内容となっています。2号ファンド立ち上げの際には投資対象を海外にも広げることとなり、現在でも積極的に海外にも投資を行っています。

名称 設立 ファンド規模
YJ1号投資事業組合 2012年9月 30億円
YJ2号投資事業組合 2015年1月 200億円
YJテック投資事業組合 2016年5月 35億円
YJ3号投資事業組合 2018年9月 200億円
EVG Fund, L.P., 2018年3月 $200 million

YJキャピタルはその圧倒的な投資成功確率でも知られています。1号ファンドでは主にシリーズA以降の19社に投資を行い、IPOを果たしたのが9社、グループ会社への譲渡という形でのイグジットが1社という実績を残しています。

戸祭陽介氏が社長の時代には、社長個人の事業の見方として「ユーザー獲得、サービス提供、売上という小さなビジネスサイクルの積み重ねで会社が大きくなっていく」という考えがあったため、ビジネスサイクルの完成度も投資判断に影響していました。

親会社がYahoo!であるYJキャピタルはITやインターネットに知見が深く、投資の際には社内にリファレンスを行ったり、Yahoo!で類似サービスがあれば比較やヒアリングを行ったりと社内リソースをフルに活用しています。

  • Retty
  • KURASHIRU
  • ビズリーチ
  • フリークアウト・ホールディングス
  • ジーニー
  • レアジョブ
  • dely
  • ラクスル
  • ジョイズ
  • Gamewith
  • Aiming
  • マーケットエンタープライズ
  • 八面六臂
  • ユーザベース

など、数多くのベンチャー企業・スタートアップ企業に投資を行ってきたYJキャピタルですが、投資先企業とYahoo!が連携したケースも数多くあります。

Kaizen Platformのサービスを活用しWebサイトのUIやUXの改善を行ったり、インティメート・マージャーやジーニーなどとは広告分野で連携を行ったり、この他にもサービス関連ではコンテンツの立ち上げを行ったこともあります。

また、投資対象については変化もあるため、会社というよりも担当者個人がテーマを持って動いていますが、コーポレートベンチャーキャピタルとしてはやはりYahoo!とのシナジー効果が期待できるようなIT関連企業への投資が大きな方向性となっています。

また、Yahoo!で取り組むことが難しい破壊的イノベーションに対するリスクヘッジのためにYahoo!本体ではとても手が届かない、現時点ではシナジーを見出すことが出来ないところに投資するというのもYJキャピタルの存在意義の一つでしょう。

YJキャピタルの特徴

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コーポレートベンチャーキャピタルであるYJキャピタルですが、上記でも解説した通りキャピタルゲインを得ることを目的とした投資を行っているということも特徴の一つと言えるでしょう。他の多くのコーポレートベンチャーキャピタルとは違い、本体との短期的なシナジーは必須ではないというのがYJキャピタルの考え方です。

ベンチャーキャピタルでは意思決定のスピードも重要な項目となりますが、社内リソースやメンバーのスキル、繁忙度にもよるもののYJキャピタルは早くて3週間程度で意思決定を行います。

キャピタルゲインを得ることを目的にしているベンチャーキャピタルでは、投資先企業が上場を果たした場合、持ち株を売却することで大きなリターンを得ますが、YJキャピタルの場合はIPOを行ってもすぐに株を売却することはせず、しばらく株を保持しています。

これは、YJキャピタルは将来的なシナジーの可能性も視野に入れた投資を行っているため、基本的にファンドが満期になるまで売却しないという方針であるからです。これは投資先企業としては強烈なメリットだと言えるでしょう。

また、YJキャピタルは投資先との関わり方について、基本的に投資先の要望に合わせるというスタイルを取っています。投資先によってフォロワーを担ったり、リードインベスターとなったりなどの柔軟さもYJキャピタルの特徴の一つであり、ベンチャーキャピタルから出資を受けることで経営権を握られてしまうのではないかと考えている起業家、経営者からすれば安心して出資を受けることが出来るでしょう。

YJキャピタルから出資を受けることは資金力だけでなくインターネットサービスに関するノウハウ、ソリューション、圧倒的集客力など、Yahoo!グループの豊富なリソースを活用出来るということでもあり、事業拡大、企業の成長のために非常に大きな効果をもたらすことになります。

YJキャピタルの投資基準

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YJキャピタルは一体どのようなベンチャー企業に対して出資を行っているのでしょうか?

YJキャピタルの熊田氏がブログで語った「YJキャピタルの6つの投資基準」について、詳しくみていきましょう。

投資基準1:プロダクト

どんな課題があり、それをどう解決するのか、競合に勝つことが出来るのか、ターゲットをイメージ出来ているのか、課題解決出来るプロダクトになっているのか、どのようにして競合に勝つことが出来るのかなどの点が見られます。

中でも、ターゲットから競合ではなく自社が選ばれる理由を明確にするということは非常に重要で、競合を徹底的に調べて研究する必要があります。

投資基準2:経営チーム

実績、志、やる気、採用力、巻き込み力など見る点は様々ですが、YJキャピタルで重視されているのは「信用に足る人物なのか」ということです。志の高さも重視しており、高い目標を掲げているということも選考基準の一つとなるでしょう。

逆に、「嘘をつく人」と「質問に答えられない人」など、コミュニケーションコストが掛かる場合は投資対象から外れる可能性が高くなります。キャピタリストとの付き合いは何年も続くため、コミュニケーションは非常に重要となってきます。また、キャピタリストだけでなく、他の社員やお客様、業務提携先とも上手くコミュニケーションが取れなければ問題になります。

キャピタリストの前ではどうしても強くアピールしたいがために大きい数字を応えてしまいがちですが、いきすぎると嘘になってしまうため注意が必要です。

投資基準3:事業計画

事業計画を見る際には「実現性」が重要となります。本当に事業計画の数字を達成することが出来るのかということをキャピタリストは見ており、なぜ他社を上回る売り上げを出すことが出来るのか、優位性はあるのかなどが見られます。

経営者や起業家は事業をより多くのユーザーに届けたいと考えていますが、キャピタリストが考えているのは結果的に以下に大きなリターンを見込むことが出来るのかということす。事業計画ではしっかりと成長規模について示すようにしましょう。

投資基準4:市場

市場はどれほどの規模なのか、また、これからまだまだ成長していく見込みのある市場なのかということも重要です。YJキャピタルとしてはBtoBビジネスならば市場規模2000億円以上、BtoCビジネスなら1兆円以上あれば魅力的な投資対象だとみなされます。

投資基準5:トラクション

より売り上げのある企業に投資したいと思うのは当然ですが、更にYJキャピタルはKPIの成長率についても重視しています。この中でも特に大切なのが「リピート率」で、売り上げが急激に伸びていたとしてもリピート率が低いという場合、本当にお客から愛されている事業だとは言えません。

投資対象となるのはリピート率が高く、お客にも愛されているプロダクトです。顧客をただ増やすだけでなく、同じお客さんに何度もリピートしてもらうことは事業を展開し会社を大きくしていく上でも非常に重要なことでしょう。

投資基準6:投資収益性

ベンチャーキャピタルというのは元々、出資を行って大きなリターンを得ることを目的にしています。そんなベンチャーキャピタルでは、期待する回収倍率は企業の成長ステージごとに異なり、ある程度額は決まっています。

  • シードステージ…投資額の10倍以上
  • アーリーステージ、ミドルステージ…投資額の5~10倍
  • レイターステージ…投資額の2.3倍

YJキャピタルは基本的に時価総額100億円規模で上場する企業に投資したいと感がているため、これを逆算したりして投資収益性を考えています。

YJキャピタルのアクセラレータープログラム

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YJキャピタルはEast Venturesとの共同運営で「CodeRepublic」というアクセラレータープログラムを行っています。CodeRepublicは90日間のシード期の起業家育成を行うというプログラムで、常時募集を行っています。

資本政策に関する支援のほか、創業時につまずくことが多い事業、先輩起業家からアドバイスやメンタリングを受けることもでき、更にプログラムが終わった後には数多くの有名ベンチャーキャピタルを相手に、資金調達のためのピッチを行うデモデイのも開催されます。

YJキャピタルと接点を持ちたいという人はこのようなプログラムに参加してみるのもいいかもしれません。

まとめ

Yahoo!を親会社にYJキャピタルは主にITやインターネット関連事業を行っているベンチャー企業やスタートアップ企業への投資を行っているコーポレートベンチャーキャピタルです。しかしながら、キャピタルゲインを目的とした投資を行うファンドを運用しているなど、様々な特徴的な部分もあります。

投資のスタイルとしては投資先によって合わせるという方針なので、YJキャピタルのベンチャーキャピタリストに経営権を握られてしまうという可能性は低いと言えるでしょう。しかしながら、ベンチャーキャピタリストというのは企業を成長させ、イグジットを果たすまで長年付き合っていくこととなる重要なパートナーです。コミュニケーションはYJキャピタルも重視している点なので、しっかりとお互いに信頼関係を築いていけるようなコミュニケーションを図りつつ、自社の魅力や強みをアピールしていくといいでしょう。

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