
新興企業のベンチャー企業に投資を行う事でハイリターンを狙った投資を行うベンチャーキャピタル。IPOによって得られるキャピタルゲインや他社への転売益を収益源としている為、投資先に資金を投資するだけでなく、経営コンサルティングを行ったり取締役会に参加したりして投資先企業のバリューアップを計り事業の成功を目指す事があります。
このように投資先企業の経営に深く関与するベンチャーキャピタルを『ハンズオン型ベンチャーキャピタル』と呼びます。投資するものがお金だけでなく、【ヒト・カネ・チエ】を投資して共に企業を成長させていくというものです。この記事ではハンズオン型ベンチャーキャピタル利用前に理解しておきたい事を紹介していきます。
ハンズオン型VCとは?
ベンチャー企業が資金調達する為に得策なベンチャーキャピタル(VC)ですが、一口にVCと言っても銀行系や政府系など様々な種類があり、各VCにより得意分野や投資してからの方針も違います。この記事で紹介したいのは、ハンズオン型とハンズオフ型の違いです。
- ハンズオン(出資企業に経営面で積極的な支援を行う)
- ハンズオフ(出資のみを行い経営面に関与しない)
ハンズオンは直訳すると「手を触れる」という意味から、ファンドやコンサルティングファームなどが投資先やコンサルティングを行う企業の経営に対して深く関与します。育成型とも呼ばれていて、経営の経験が全くないけどアイディアは良いという経営者に対して、資金を投資すると共に今後の経営方針に関しても深く関与し関わっていき、共に企業を成長させようと考えるものです。
投資先企業に経営陣を送り込んでマネジメントを行ったり、M&Aをした気業がされた企業に取締役を派遣して実際に経営に関わったり、週次定例ミーティングをこまめに開催して参加したり、営業先を一緒に開拓したり、投資先の事業成長の為に同じ会社で働いている者同士のように汗をかいてくれるのがハンズオン型VCの特徴です。
ベンチャー企業の起業家の中には良いアイディアはあるものの経営面は全く不得意で何をしたらいいのか分からないという方は多くいます。誰にでも得意不得意がありますので、不得意な経営面と営業に関するサポートをハンズオン型VCにやってもらい、開発と事業計画に集中するという考え方が一般的です。
なぜハンズオンするのか?
ハンズオン型ベンチャーキャピタルが積極的に経営に参加してくるのには理由があります。それはVCのビジネスモデルを見てもらえれば一目瞭然。まずVCファンドの資金は投資をしている投資家のものであるという点が大きく、投資先候補の模索、実行、支援はVCで行う訳ですが、ビジネスモデルとして投資したベンチャー企業が成功しなければ投資家の人達に多大な損害を与えてしまう訳ですから、ハンズオンで積極的に経営に参加する事で、事業成功の可能性を上げなければいけないという訳です。
投資の見返りで手に入れた株式を企業を上場させて高値で売り抜ける
これが一般的なベンチャーキャピタルのビジネスモデルです。投資企業が上場して株式が高値にならなければ投資は失敗な訳で、ベンチャー企業が上場するかどうかは経営の素人であれば危険な道です。
ハンズオン型は経営のプロが徹底的に経営に参加し、良いビジネスモデルを持っている企業に対して積極的に経営参加していきますので上場の可能性が高まります。上場前に手にした株式を上場した時に高値で売り払う事で高い収益を得て、ベンチャーキャピタルは投資家の人に分配して利益を分け与えるという訳です。つまり上場しなければ投資は失敗してしまうという訳です。
上場の可能性を少しでも高める為に、ハンズオン型ベンチャーキャピタルは資金面の提供だけでなく、経営ノウハウや人材の派遣などを行い、当市リスクを下げつつ平均よりも高いリターンを上げる事ができるようになっているという訳です。
日本初のハンズオン型VCグロービス・キャピタル・パートナーズとは
海外と比較するとまだ日本のベンチャーキャピタル市場は拡大途中にあります。経営に積極的に参加して投資を行う事をウリにしているVCは数少ないのですが、その中でも特に注目を集めている老舗ハンズオン型ベンチャーキャピタルとして有名なのが『グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)』です。設立されたのは1996年とVC界隈の中でも老舗で、支援企業の成長性と投資リターンの圧倒的な高さで知られています。
ここからは日本初の本格的なハンズオン型ベンチャーキャピタルであるGCPの会社概要や投資方針、これまでの投資実績などについて詳しく説明していきたいと思います。
少数精鋭のチーム運営
1996年に設立されたGCPは日本初の本格的はハンズオン型VCです。パートナーズが保有しているお金ではなく複数の投資家から預かった資金を元に投資を行うファンド投資を中心に事業を行っています。第1号ファンドは約5億円でしたが、その後は規模がどんどん大きくなっていき、現在ではコンスタントに約200億円規模のファンドを組成し運営しています。
投資形態はハンズオン型ベンチャーキャピタル。投資を行った企業への積極的なサポートで知られていて、資金の提供だけではない「人・金・知恵」という企業経営において不可欠な総合的な情報の提供を会社のモットーとしています。
GCPで最も特筆すべき点は少数精鋭チームであるという点。運営するファンドが数百億円規模という大きなものでありながら、会社には社長を含めて約10人しか在籍していません。在籍しているベンチャーキャピタリストによってスターとアップ企業の経営に関連する情報がツイッターなどで定期的に配信されていますので、それを見るだけでも大変大きな力になり勉強になるかと思います。
少数精鋭チームでありながら実力者が揃っているGCP。それはフォーブスジャパンが発表した日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキングBEST10にランクインした数でも物語っています。
- 1位:仮屋薗聡一
- 5位:今野穣
- 7位:東明宏
GCPの投資家は上記3名がトップ10にランクイン。更に1位に輝いた仮屋薗聡一氏は日本ベンチャーキャピタル協会の会長を務めるほどの重要人物です。同ランキングでは1年間のキャピタルゲインが最も多かった人物の順位を表すものであり、GCPから3名もランクインしている所から見ても、いかにGCPが持つファンドの投資リターンが高いかが分かるかと思います。
投資方針
少数精鋭チームで投資先を厳選し投資リターンが非常に高いGCP。GCPの投資方針は大きく分けて2つの特徴があると言われています。
- ITを使って非効率的な業界構造を改革できる企業
- 自社が提供するサービスが海外にも通用するような企業
基本的にGCPが投資を行う企業はITを使ったサービスを提供している所だけです。ビジネスモデルが日本国内のみである場合は、非効率的な業界構造をITで改革できるような企業へ積極的に投資を行っています。昔からの伝統的な仕組みを壊すことは難しく、非効率的なやり方を受け継ぎ現在まで至っている業界は少なくありません。そんな業界全体をITの力によって効率化していく企業に対しては積極的に投資を行っています。
そしてもう一つ積極的に投資を行っている企業は、国内だけにとどまらず自社が提供するサービスが海外にも通用するような企業への投資です。多くのITサービスは言語を必要とせず、インターフェイスや画面だけで操作方法や意味を理解できるようになっていますので、言語の壁がなくなってきています。経営陣の方針が世界へ向いているかどうかというのがGCPが投資を行う上でのチェック項目の一つになっています。
投資実績
毎年コンスタントに投資先企業がIPOを果たしているGCP。ここからは過去のGCPの投資実績の一例を紹介させて頂きます。
- スマートニュース(2014年に世界進出も果たす)
- アカツキ(スマホサービスの企画開発)
- イード(ニュースサイトや情報セキュリティ、自動車、ダイエットなど様々なに業界おけるサイト運営)
- ピクスタ(写真の販売と購入をする為のプラットフォームを提供している会社)
ちなみにGCPの平均的な投資額は3億円~10億円程度の幅となっています。投資先が将来有望で期待が持てると判断された場合は10億円以上の投資が実行されるケースもあります。
まとめ
ベンチャーキャピタルと一口に言っても企業により方針は異なります。その中でも特に異なるのがハンズオンかハンズオフか。投資先企業の経営に深く関わってくるハンズオンは、経営面で非常に大きな手助けをしてくれる一方、起業家の経営自由度が狭まるといったデメリットがある事も事実です。
ハンズオンかハンズオフかどちらを選択するかは企業の選択により異なります。冷静な判断でどちらが経営方針とマッチしているのかを考えて選ぶようにしましょう。