ベンチャー 上場

ベンチャー企業が上場する事で生じる5つのメリットと3つのデメリット

ベンチャーキャピタル

多くのベンチャー企業が将来的な目標として上場を掲げている事でしょう。上場後には証券市場を通して資金調達がしやすくなるというメリットがあり、企業価値を高めて新たな新規事業を進めて行く上でも上場するという事はとても重要なアドバンテージになります。

しかし上場と一口に言っても証券市場は様々あり、それぞれに必要な基準が全く違います。この記事ではベンチャー企業が最も上場しやすいと言われている東証マザーズに上場する為に必要な基準と、上場する事によるメリットデメリットを分かりやすく解説していきたいと思います。

そもそも上場とは何か

ベンチャー 上場

上場とは自社の株式を証券取引所に上場させる事を指します。企業を上場させるには厳しい基準があり、業績推移、財務体質、将来の見通し、株主構成と言った取引所が定める上場基準を満たし、上場審査に合格しなければなりません。

証券取引所で株式を発行する事で株式と引き換えに企業はお金を集める事が出来ます。企業を成長せる為最も必要な資金収集を上場し株式を売る事で簡単に集める事ができるようになるという訳です。

主な3つの市場

企業が事業を行う為に必要な資金調達方法は大きく分けて「金融機関からの融資」と「株式の発行」の2種類に分けられます。株式を発行する為には上場する必要がありますが、上場すると言っても上場には段階的な3つの市場があります。

  1. 東証一部(大企業が上場する市場)
  2. 東証二部(中堅企業が最初に上場する市場)
  3. 東証マザーズ(ベンチャー企業が上場する市場)

全国に5箇所ある証券取引所にはベンチャー企業などの新興企業のサポートを目的に開設されたマザーズのような新興市場を持っています。上記3つの市場に上場を果たす為にはそれぞれ異なった基準が設けられており、東証一部が最も厳しく上場できれば大企業として証明されたという事になります。

ちなみに東証マザーズには市場選択制度というものが儲けられており、ベンチャー企業はまず東証マザーズに上場を果たし、企業利益を上げてから凍傷二部へ変更するかどうか選択する機会が設けられるのです。一定の事業規模と実績、未来のある成長期業であれば東証二部へ上がり、更にそこから東証一部へ上場を果たすことも可能であるという訳です。

全国の証券取引所

日本国内には現在5箇所の証券取引所があります。上場企業の約9割が上場しているのは東京証券取引所と一極集中となっていますが、以下で全国の証券取引所と取り扱い市場をまとめて紹介していきます。

東京証券取引所
  • 東証一部
  • 東証二部
  • 東証マザーズ
大阪証券取引所
  • 一部
  • 二部
  • ジャスダック
札幌証券取引所
  • 既存市場
  • アンビシャス
名古屋証券取引所
  • 一部
  • 二部
  • セントレックス
福岡証券取引所
  • 既存市場
  • Q-Board

東京のマザーズや大阪のジャスダックのように、各証券取引所の中にはベンチャー企業などの新興企業のサポートを目的とした新興市場を持っています。上場してから始めて公開する株式の事をIPOと呼びます。日本語で直訳すると「新規公開株」の事。証券会社に買い付け予約を行い抽選で当たれば購入する事が出来ます。

IPO株投資という言葉があるように投資家の間では人気の高い株で、新規公開株は上場日に付く初値で株を売る事で簡単に利益を出す事ができる為、大変盛り上がります。投資の初心者でも簡単に利益が出せる状態になっている事が多く、特に上場前に人気コンテンツを持っている企業はこの傾向にあります。

東証マザーズ上場に必要な基準とスケジュール

ベンチャー 上場

日本全国約9割の上場企業が上場している東京証券取引所。ここで取り扱っている市場が東証一部、東証二部、東証マザーズの3種類です。それぞれに必要な審査基準が異なりますがベンチャー企業の登竜門と言われているのが東証マザーズです。マザーズと他の市場の審査基準の違いと上場までのスケジュールを確認してみましょう。

市場で異なる基準の違い

それでは早速異なる3種類の市場の審査基準を見ていきましょう。以下で紹介する基準の1つでも満たしていないと上場を果たす事はできません。

東証一部 東証二部 マザーズ
株主数 2200人以上 800人以上 200人以上
流通株式 2万単位以上 4000単位以上 4000単位以上
流通株式比率 35%以上 30%以上 25%以上
時価総額 250億円以上 20億円以上 5億円以上
純資産額 10億円以上 10億円以上

東証一部は日本最高の株式マーケットになりますので、日本人なら誰もが知っているレベルの大企業でなければ審査基準を満たす事は出来ません。東証一部の半分以下の条件で上場する事ができる東証二部には数多くの日本企業が上場を果たしています。

ベンチャー企業が東証マザーズを第一目標にする最も大きな理由は、上の票を見てもらえれば分かるかと思いますが、審査基準が非常に簡単であるという点です。ちなみに最近ではメルカリが東証マザーズに上場した事で高い注目を集めました。2019年6月19日時点では東証マザーズで最も時価総額が高い企業です。その時価総額は脅威の7000億円越えで、2位ミクシィ2300億円を大きく離しています。

マザーズ上場までのスケジュール

上記で説明した厳しい基準の他にも、企業が上場するには「虚偽記載又は不適正意見等」を犯していないことや、「株式事務代行機関の設置」をしていることなどの要件を満たしている事を厳守しなければなりません。経営者の方は通常の企業経営をしつつ、上場までのスケジュールを経てておく必要があるという訳です。

あくまで参考例となりますが、以下で上場までの簡単なスケジュールを説明していきたいと思います。最低でも1年前から上場の準備を始める事をオススメしたいので、3期前からのスケジュールで考えていきます。

  • 3期⇒専門の対策部署設置と情報整理
  • 2期⇒外部監査と上場後の対策
  • 前期⇒上場市場を確定する
  • 申請期⇒上場審査の最終対応

専門部署設置と事前準備

1年前に上場を目標に据えた場合は必ず上場の為の専門部署を準備して情報を整理する事をオススメします。過去の財務表を整理したり関係会社との取引内容を整理する必要があり、現組織体制や役員の見直しが必要になる場合もあります。内部統制の整理と管理部門の強化が必須で、外部監査人を選定する必要があるのも3期前です。

専門部署を設置して外部監査人を選定できたら上場を見据えた経営活動を行っていきましょう。資産の実査、取締役会や株式総会の開催、上場後に必要になる手続きはこの頃から行っていくのがオススメです。上場後の資金計画を立てて事業計画を査定しておく必要もあります。

証券市場確定と直前対応

前期では本格的にどの証券市場に上場するかを決めていきます。東証マザーズが適任なのか否か、それともジャスダックがいいのかなどを選定する必要があります。上場時に証券取引所と取引を行ってくれる主幹事証券会社を選定する必要もあり、自社が上場を希望する市場に強い証券会社を選ぶことがポイントとなります。上場申請期に入ったら上場審査の対応が主な業務になります。最も忙しい時期が申請期になりますので、慌てずトラブルが起きないように事前にあらゆる事態に対応できるように、出来るだけ長い期間を想定して準備を進めておく事を推奨します。

どうして上場するの?メリットとデメリットを解説

ベンチャー 上場

上場とは何か。ベンチャー企業が第一目標にする登竜門である東証マザーズの上場基準について上記で説明してきましたが、ここからはベンチャー企業が上場する目的は何か、どのようなメリットとデメリットがあるのかという点について解説していきたいと思います。

上場すると得られる5つのメリット

新興企業がマザーズ上場する事で得られるメリットは大きく分けると5つあります。

  1. 資金調達が容易になる
  2. 知名度が上がる
  3. 優秀な人材を確保しやすくなる
  4. 社会の信用度が上がる
  5. 創業者が利益を確保できる

それぞれのメリットを以下で一つずつ詳しく解説していきます。

資金調達が簡単になる

新たな事業への着手や新たな人材の確保などで絶対に必要なのがお金ですよね。いかにして資金を調達するかは企業において常に考えないといけない問題の一つです。その資金調達が簡単にできるようになるのが上場です。まず、上場する事で社会的信用が上がりますので銀行や信用金庫などの金融機関からの融資を受けやすくなります。

更に市場に株式を公開する事で投資家の方に株を購入してもらい、その代金を受け取る事が出来ます。当然ですが株価が値上がりすればするだけ会社が受け取る金額は増えていきますので、投資家が株式を購入した事で得た資金を経営者は新たな設備投資で使ったり人材確保などにまわせる様になるという訳です。

知名度の向上

日本経済を動かしている東京証券取引所に上場を果たすと、数多くの媒体で紹介されますので格段に知名度が向上します。主なメディアで言うと、株式市況欄、新聞、雑誌、ウェブコンテンツによる報道などで一気に名が知れ渡りますので、企業の知名度が爆発的に向上します。広告をうって宣伝すれば莫大な費用が必要な位の宣伝を上場する事でしてくれるという訳です。知名度が上がる事で社会的信用度が上がり、相乗効果で更に企業価値が高まっていくという訳ですね。

優秀な従業員を確保できる

企業の知名度や社会的信用度が上がる事で融資を得る事ができ、多額の資金を確保できるようになると優秀な人材を確保しやすくなります。特に新卒では上場会社は人気ですから、将来性のある有望な人材が数多く面接に訪れます。優秀な人材にあげる給料は株式で資金を調達する事もできますので、企業の成長に必要不可欠な優秀な従業員を確保できるという点で上場するというのは大きなメリットであるとも言えます。

更に上場前から働いている従業員のモチベーションが格段に向上するというメリットもあります。働いている従業員の士気は企業運営において最も大切なもの。自分達が頑張って会社が上場を果たしたという自信はモチベーションを向上させて生産性を上げる効果があるでしょう。従業員がクレジットカードを作る時や住宅ローンなどを組む時も上場企業に勤務しているという事はプラスに作用する傾向にあります。

経営の透明性で社会的信用度が上がる

定められた企業情報を開示する必要があるので、上場すると経営の透明性が格段に高まります。投資家をはじめとする第三者からのチェックを受けるからであり、会社自体の内部管理体制が今まで以上にしっかりしたものになっていくでしょう。経理部、財務部、総務部などの自社管理部門の業務不可が大きくなっていきますが、経営が透明化して行く事で社会的信用度は格段に上がります。その結果、優秀な人材を確保する事ができるようになり、莫大な資金であっても容易に調達できるようになっていきます。

創業者の財産確保

上場とは会社が創業者の手を離れて社会一般の公のものになる事を意味します。上場後株式の新規公開時に創業者が保有していてる自社株式を売り出す事で莫大な利益を得る事ができ創業者は莫大な財産を確保する事が出来ます。ちなみにフェイスブック創業者のマークザッカーバーグは2012年の同社IPOで1兆円以上の資産を得たと言われています。

しかしこれは持ち株数×株価ではじき出された資産価値ですのでキャッシュではなく、実際創業オーナーが持ち株を多く売る事は証券会社や投資家から圧をかけられて断念するケースが多いと言われています。創業者は大きな利益を得る事が出来ますが、手元にあるキャッシュではなく資産価値ですから、バーチャルな資産です。

しかし上場時に持ち株の10%程度であれば売却が可能なので、上場時の時価総額が20億円位であれば1億円~2億円程度は現金化できます。なぜ大量に売却できないのかと言うと、経営者が大量の持ち株を売却しようとすると「この経営者は自社の経営から手を引こうとしているのか」と投資家から見られてしまい、自社の株価に悪影響を与えてしまうからです。創業オーナーの一挙手一投足は市場から厳しくチェックされますので、創業者の持ち株売却に対してはシビアな反応がある事が多いんですね。

上場で生じる3つのデメリット

上記で紹介した5つのメリットを見てみると良い事ばかりのように感じてしまうかもしれませんが、メリットもあればデメリットもあります。上場する事で生じるデメリットは大きく分けると以下の3点です。

  1. 手続きや継続に莫大なコストが必要
  2. 自由度が狭まる
  3. 乗っ取りや買収のリスク

以下で詳しく上場する事で生じるデメリットを解説していきます。

上場前後でかかる莫大なコスト

上場する為に必要なコストは莫大です。上場前の準備段階は勿論の事、上場してからも継続する為に莫大なコストを支払う必要があります。マザーズ上場で見ていくと、新規上場料として100万円が必要であり、上場審査料として200万円が必要です。更に登録免許税が必要で、税率0.7%で資本組入額に掛け合わせる事で税額を算出していきます。

上場後に必要なのは年間上場料、株式発行料金、新株の上場にかかる料金が必要になっていきます。こちらもマザーズを例に紹介していきます。

50億円以下 48万円
250億円以下 120万円
500億円以下 192万円
2500億円以下 264万円
5000億円以下 336万円
5000億円以上 408万円

上場後の継続費用は年間上場料と呼ばれていて、市場により異なりますがマザーズでは時価総額で年間料が上記の表のように変化していきます。ちなみにマザーズの場合3年間は上記の金額の半分になります。

さらに新株発行の料金が…

料金=(発行された新株の価格×発行された株式数×9/10,000)+(自己株式が処分された価格×処分された株式数×1/10,000)+(株式が売り出された価格×売り出された株式数×1/10,000)

料金の支払い期日は新株発行の翌日末日となっています。上場前後で莫大なコストが必要になりますので、常にある程度の企業資産を保有していなければ上場を維持する事もできないという事になります。手続きに時間がかかり、更に上場前後で莫大なコストが必要になるという点はデメリットの一つと言えるでしょう。

経営が自由ではなくなる

未上場企業では社長が100%の株を持っているか他に持っていても身内が保有している場合がほとんどですよね。つまり株主総会の議決権を自分が保有しているという事になりますから何でも自分で自由に決めて実行する事ができるという訳です。しかし、上場して不特定多数の方が株を保有しているとそうはいきません。場合によっては自分の思い通りの経営が出来なくなる可能性があるという事は認識しておきましょう。

自分と考えの異なる株主が多数を占めた場合は事業方針を変更しなければいけない可能性もありますし、経営者である自分がしたくない事でも、株主を安心させる目的でしたくない事業を手がけなければいけない事もあるかもしれません。経営の自由度が狭まるというのはデメリットの一つであると言えるでしょう。

株の買い占めリスク

株式を一般公開するという事は、常に買い占めや買収のリスクがあるという事です。特定の個人や会社が一定数の株を握る事で役員を送り込み、経営に対して直接口を出してくる事があるかもしれません。株の買い占めや買収リスクが常にあると言う事を頭にいれながら経営を続けていく必要があります。

まとめ

ベンチャー企業の登竜門と言われている東証マザーズ上場。それで得られる5つのメリットと生じる3つのデメリットを紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。簡単に莫大な資金を調達する事ができ、社会的信用度や知名度も爆発的に上がる上場ですが、その反対に自由な経営ができなくなったり、買い占めリスクや莫大な継続コストが必要になるというデメリットがあります。上場するのが良いのか悪いのかは一概には言えませんが、更に自社を大企業にする為には資金調達は必須ですから上場する事が最適です。

東証マザーズ上場を第一目標にしているベンチャー企業はとても多く、投資家からしてもIPOで利益を出す為には投資先のベンチャー企業を上場させるしかありません。先見の明と経営者の手腕や覚悟が試されるのが上場です。メリットとデメリットをしっかりと理解し、どの市場が良いのかという調査も忘れずに、適切な上場タイミングを見極めましょう。

Leave a Reply

Your email address will not be published.

この記事をシェアする