ベンチャー企業やスタートアップ企業への投資を行っているベンチャーキャピタル(VC)。日本にも数多くのベンチャーキャピタルがありますが、その中でも最大手として知られるのがジャフコ(JAFCO)です。
顧客のニーズが複雑化、高度化している現在の日本は第四次ベンチャーブームだと言われており、様々なベンチャー企業が設立されています。新しい技術や斬新なアイディアを持っているものの、実績がなく銀行などから融資を受けることが出来ないベンチャー企業にとっては、ベンチャーキャピタルによる出資が重要な資金調達手段の一つになります。
とはいえ、出資を受けることができればどこでも良いという訳ではありません。自分の会社の成長ステージや事業内容と合ったベンチャーキャピタルを選び、出資してもらう必要があります。
そこで今回は、ジャフコはどういう会社なのか、どんな投資方針なのか、サポート体勢はどのようになっているのか、今までの投資実績や評判などについて詳しく解説していきます。
ベンチャーキャピタルから出資を受けたいと考えている起業家、経営者の方はもちろん、ベンチャーキャピタルに就職したい・転職したいと考えている方、ジャフコの株式の購入を考えている方はぜひチェックしてみてください。
ジャフコの会社概要
日本で初めてベンチャーブームが起きたのは1970年です。このブームでハイテクベンチャーが次々立ち上がりましたが、その中には今や有名企業となった日本電産やキーエンスなども存在しています。
そして、このようなハイテクベンチャーに対して投資を行うベンチャーとして1972年に日本で初めて誕生したのが京都エンタープライズディベロップメントです。ジャフコはやや遅れ、1973年に日本で4番目のベンチャーキャピタルとして「日本合同ファイナンス株式会社」という名前で誕生しました。しかしながら、ジャフコよりも早く設立された3社は今は存在しておらず、ジャフコは国内で現存する民間最古のベンチャーキャピタルです。
また、ジャフコはベンチャーキャピタルとしては珍しく東京証券取引所第一部上場しており、ジャフコへ投資することも可能です。
創業から現在までに約4000社へのグローバルな投資を行っており、2019年9月の時点での累計IPO数は1005社(アジア124社、日本801社、アメリカ62社)にもなります。
高い専門知識、そして豊富かつ安定した資金力で日本のみならずシリコンバレー、中国、台湾、香港、シンガポールに拠点を持ち、世界各国で積極的な投資を行っています。
ジャフコの事業構成
ジャフコの事業は主に以下の4つで構成されています。
- ファンド
- 投資
- 事業開発
- イグジット
以下でこの4つの項目について詳しく解説していきます。
ジャフコの事業構成その1「ファンド」
ジャフコは日本で初めてベンチャー企業など未上場企業に投資する投資事業組合を設立しました。
ジャフコは投資だけでなく、ファンドを作り都市銀行や他の事業法人などから預かっている資金の出資も行っています。ファンドの運用で発生するファンドの管理収入もジャフコの利益となります。
ジャフコの事業構成その2「投資」
今までに数多くのベンチャー企業・中小企業に向けて投資を行っています。
斬新なアイディアや技術はあるものの、知名度が低く資金を集められないベンチャー企業などに対して出資を行なうことで株価が低い段階で株式を取得し、企業が成長し株価が上昇したタイミングで株式の売却を行うことで、大きなキャピタルゲインを得ています。
シードやシリーズAなど、ジャフコの場合は企業の成長ステージが早い段階からの投資を行うことが多いため、その分低い株価で株式を購入することが出来るのです。
ジャフコの事業構成その3「事業開発」
パートナーとのマッチングなどを通じ、収益を向上させるための計画や支援を行っています。投資先企業とも積極的に関わり、イノベーションを生み出します。
ジャフコの事業構成その4「イグジット」
投資先の状況を踏まえ、より成長できると考えられる最適なイグジットの実現を行ないます。イグジットにはIPOやM&Aなどの方法がありますが、ジャフコの累計IPO数は1005社(アジア124社、日本801社、アメリカ62社)にもなっています。
ジャフコの投資方法
ジャフコの投資方法についてこれより詳しく解説していきます。ジャフコは以下のような3つの方法で投資を行っています。
- ベンチャー、中堅企業への投資
- インキュベーション投資
- バイアウト投資
ベンチャー、中堅企業への投資
日本には数多くの会社が存在していますが、その99.7%が中小企業となっており、大企業と呼ばれるのはほんのごくわずかなのです。このようなベンチャー、中堅企業への投資は日本経済の土台を支える企業のための投資とも言えます。
ベンチャー、中堅企業投資やインキュベーション投資は結果が出るまでに時間がかかるため、投資を行ってからするに利益が発生する訳ではありません。IPOなどイグジットで大きな利益を得るまでには3、4年かかることもあります。
投資を受けた場合、投資先企業にはジャフコの担当者1人がつき、経営のサポートを行っていきます。ジャフコからの出資を受けるメリットは資金面だけでなく、日本最大手のベンチャーキャピタルであるジャフコのネットワークにアクセス出来るようになるということも大きなメリットと言えます、
インキュベーション投資
インキュベーション投資とはベンチャー企業が起業するための支援目的で行われる支援のことです。大学や研究機関では最先端の研究が行われ、その過程で新しい技術が発見されることもありますが、それを事業化する術を持っていません。
せっかく素晴らしい技術が発見があってもそれを活用出来なければ勿体無いですよね。そこで、経営やマーケティングによって新たな技術や発見を事業化するのがジャフコです。事業化について豊富な経験やノウハウのあるジャフコは投資を行ないつつ、経営サポートをします。
バイアウト投資
バイアウト(企業買収、もしくは親会社から独立すること)投資では企業の価値を高めてから売却することで利益を得ます。
バイアウトはM&Aとも言われ、ベンチャーキャピタルからの出資を受けた企業は基本的にはこのM&AやIPO(株式上場)によるイグジットを目指すことになります。
バイアウト投資の対象になるのはベンチャー企業など若い企業ではなく、ある程度事業を行っている企業です。これは、今まで事業を行ない、経験や知識やノウハウを積んだ会社を買収することで企業の成長スピードを早めることが可能となるためです。
ただし、バイアウト後に会社の方針が変わったことから社員が次々と会社を辞めてしまうなど、注意しなければいけない点もあります。
ジャフコの投資方針
ジャフコが設立した投資事業ファンドは100組合以上になり、出資額は8900億円を突破。ジャフコは都市銀行や地方銀行、証券会社など幅広く出資を募っており、非常に安定した経営を行っています。
投資の中心はITサービスですがその他にもソフトウェア、医療やバイオなど、投資対象は様々です。ベンチャー企業やスタートアップ企業に対して早い段階で出資を行うことで知られているジャフコですが、経営が軌道に乗ってからも投資を積極的に行っているため、時期を逃さず良いタイミングで投資を受けることが出来るでしょう。
以下ではジャフコの投資方針について詳しく解説していきます。
1:ベンチャー、中堅企業への投資方針
今までジャフコが投資を行った業種を見てみると、やはりシェアが多いのはITサービスで、全体の45%にもなります。それに次ぐサービス業が15%という割合であることからもジャフコが以下にITサービスに力を入れているかということがわかると思います。
ジャフコはアーリーステージの企業や、これから新しく事業を始めたり新しく事業を始めたばかりの企業に対して投資を行うことが多いため、逆に企業としてはある程度成長仕切ってしまった企業に対しては投資期間を逃したと判断されてしまう可能性もあります。
2:インキュベーション投資の投資方針
ジャフコのインキュベーション投資では、医療関連の分野に積極的な投資を行っています。まだ事業にはなっていない段階でも投資を行う方針のようです。
- 再生医療…自分の細胞を使い損傷した体の一部を治す最先端の医療技術
- 新薬開発…今までに存在しなかった病気に対する薬の開発
- 創薬基盤技術…新薬の開発環境の開発
- 医療機器…医療をサポートする機器の製作や販売
- 特定保健用食品…美容や健康に効果のある製品を作る
3:バイアウト投資の投資方針
ジャフコは企業を成長させるだけでなく、沢山の株式を取得して経営権を握るというバイアウト投資を行っています。上でご紹介のITサービスや医療の分野だけに関わらず、様々な業種への投資を行ってきています。
- 事業継承…株式を買い占めることで経営権を握る
- グロース投資…高い成長性を見越し、既に割高の株式でも投資を行う
- グループ再編…グループ会社において子会社の独立などに繋げる
- カーブアウト・事業立ち上げ…社内で発足した部門や新規事業を独立させ投資を行う
- 事業再生・再成長支援…破産寸前の企業や会社更生法が適用された企業に対し資金や経営のサポートを行う
ジャフコの投資額
今まで日本だけに留まらず海外も含め数多くの会社に出資を行ってきているジャフコの投資額は「数億円単位」という場合が多いですが、会社規模によっては十数億円とかなり大規模な投資になったり、数千万円ほどの投資になるということもあります。逆に、数百万円単位という比較的小規模な投資は少なくなっています。
- マネーフォワード(クラウド上での家計簿管理サービス)…2013年10月に5億円の投資
- インタラクティブソリューションズ(タブレットを使った営業活動支援ツール)…2014年11月に1億5千万円の投資
ジャフコの投資実績
前述の通り、4000社近くに投資を行ってきたジャフコの累計IPO数は1005社(アジア124社、日本801社、アメリカ62社)にも上ります。
ここで近年、株式上場を果たした企業を見てみましょう。
企業名 | 上場日 | 事業内容 |
---|---|---|
Chatwork (兵庫県) |
2019年09月24日 | ビジネスチャットツール「Chatwork」の開発や提供。 |
ギフティ (東京都) |
2019年09月20日 | 個人、法人、自治体が対象の各種eギフトサービスの企画や開発、運営などを行う。 |
ブランディングテクノロジー (東京都) |
2019年06月21日 | 広告業や広告代理店業、インターネットを使った各種情報提供サービス、ホームページの企画立案や開発管理など。 |
テノ.ホールディングス (福岡県) |
2018年12月21日 | 保育所の運営、保育所や幼稚園への保育士派遣、ベビーシッターサービスなどの提供。 |
MTG (愛知県) |
2018年07月10日 | 美容機器、健康機器、化粧品の企画・開発や製造・販売。 |
GLOBAL TEK FABRICATION CO., Ltd. (台湾) |
2018年02月05日 | 自動車、航空機、産業用機器に向けた精密金属部品の製造・販売。 |
この他にも上記でご紹介した2013年に5億円の投資を行ったマネーフォワードも2017年09月29日にマザーズに株式上場を果たしています。
ジャフコのサポート体制
日本最大手のベンチャーキャピタルとして知られ、今まで数多くの企業にグローバルな投資を行ない、IPOを実現したジャフコから出資を受けるメリットは資金面だけに留まりません。
ジャフコは投資先企業が健全に成長し、IPOやM&Aというイグジットを目指すことが出来るように様々なサポートを行ないます。その方法には大きく分けて2つあります。
ビジネスディベロップメント
ジャフコの行うサポートのまず1つめがビジネスディベロップメントです。これは投資先の企業価値を向上させるためのもので、経営戦略の提案・実行などを支援するほか、人材や業務提携先を紹介したりなど、幅広い支援を行って企業の成長をサポートします。
IPOコンサルティング
2つめがIPOコンサルティングです。これは将来的に企業が株式上場するために必要な体制を構築するためのものす。株式上場というのは、ただ業績がいいだけでは出来ません。透明性が確保された経営体制のためには専門的な知識が欠かせないのです。
ジャフコには今まで1000社以上のもの企業IPOに導いてきた経験、知識、ノウハウがあります。このようなノウハウを活かし、体制の構築や上場のために必要な資料の作成支援などを行ないます。
ジャフコから投資を受けるために
1973年創業のジャフコは日本最大手のベンチャーキャピタルであり、更に上場企業でもあります。ベンチャーキャピタルにも個性があり、中には理想を追求した投資を行うところもありますが、ジャフコは安定して利益を出すことが出来る投資を行っています。
つまり、ジャフコから投資を受けるためには優れたビジネスモデルを考え出しただけでなく、その事業である程度集客が出来ているということが求められます。
また、歴史ある企業のジャフコの経験や人脈、ノウハウを活かすことでより事業を拡大・発展させて行くことが出来るということをしっかりアピールすることも大切だといえます。
まとめ
以上、日本最大手のベンチャーキャピタル「ジャフコ」について解説しました。ポイントをまとめるとこのようになります。
- アーリーステージのベンチャー企業・スタートアップ企業に早い段階で積極的な投資
- 数百万円単位ではなく数千万円以上~数億円(場合によっては十数億円)の出資を行っている
- 豊富な投資実績(約4000社)と累計IPO数(1005社…アジア124社、日本801社、アメリカ62社)
- 3つの投資方法…ベンチャー、中堅企業への投資、インキュベーション投資、バイアウト投資
- 充実のサポート体制
また、ジャフコのような大手ベンチャーキャピタルから出資を受けているということは、それだけでベンチャー企業の実績とみなされ社会的信用度が上がることになり、その後の資金調達にもプラスに作用します。
歴史あるベンチャーキャピタルだからこそ出資を受けるためのハードルは高くなっていますが、記事でも詳しくご紹介した通り、ジャフコから出資を受けることはただ資金を得ること以上に魅力的な部分が沢山あります。
ただし、ジャフコと自分の会社が合うのかということを考えることも大切です。株式上場しているジャフコは、毎年確実に利益を得なければいけません。そのため過去に株式上場した企業が少なかった際には株主から利益についての質問をされたこともあったようです。
1つの面だけでなく、様々な面から考えて出資を受けるのかどうかを検討しましょう。