企業間の取引の中で、売掛金や売掛債権はビジネスを成り立たせていく上で欠かせない存在です。
売掛金や売掛債権は大切な資産として分類されますが、扱い方によっては資金調達として役立てることができるのをご存知でしょうか?
こちらの記事では、売掛金を活用した資金調達法となるファクタリングと売掛債権担保融資に加えて、ファクタリングの5つのメリットと4つのリスクを紹介いたします。
銀行融資やビジネスローンを資金調達として利用したという方は多いと思いますが、売掛債権を保有している企業の方は、売掛金の資金調達法となるファクタリングの存在を知っておいてください。
資金繰りを圧迫する売掛金
商品やサービスの売上があったとしても、売掛金が回収できなければ現金が得られません。
その後も発生し続ける商品の仕入れや製造のコスト、さらには人件費などに、運転資金が足りなくなってしまう可能性があります。
このように、せっかく商品やサービスを売り上げているのに、運転資金が払えなくなり資金繰りが厳しくなってしまう理由には、「売掛金の支払いまでの期間(支払いサイト)が長い」「売掛金の管理について」の2つの問題が考えられます。
売掛金の支払いまでの期間(支払いサイト)
売掛金が実際に入金されるまでの期間のことを支払いサイトと呼んでいますが、この支払いサイトの期間が長ければ長いほど、企業が現金を手にするタイミングは先延ばしとなります。
売掛金が現金として手元にないにもかかわらず、事業の運転資金は捻出しなければなりません。
企業の保有している未回収の売掛金が多いほど、資金繰りは厳しくなるでしょう。
未回収の売掛金を減らすためには、売掛金の支払いサイトを短くしてもらうために交渉が必要となります。
売掛金の管理について
売掛金の中には、支払期日が過ぎているのに支払先に連絡もせず放置している場合や、売掛先の未回収の事実自体を把握しない会社があります。
もしも、未回収の売掛金をそのままにしていたのなら、売掛先が倒産した時には貸し倒れという大きなリスクを追うこととなってしまうでしょう。
このような貸し倒れのリスクを回避するには、売掛先の身長調査、売掛金の管理台帳を作成してしっかりと管理することが大切です。
要するに、売掛金と売掛先を把握し、支払いの遅れが出てきている売掛金があれば早めに支払ってもらうように交渉するのです。
売掛金を活用したファクタリングと売掛債権担保融資(ABL)
売掛金が未回収ならば、上記のように運営資金が滞り資金繰りが厳しくなってしまいますが、未回収の売掛金を利用した資金調達法があるのをご存知でしょうか?
それは、ファクタリングと売掛債権担保融資(ABL)の2つの方法です。
次に、ファクタリングと売掛債権担保融資(ABL)について解説していきます。
売掛債権担保融資(ABL)
売掛債権担保融資とは、企業が保有している商品在庫、原材料などの流動資産を金融機関の担保にして融資を受ける資金調達法です。
売掛金を活用するファクタリングとの違いは、融資取引となることです。
融資取引である売掛債権担保融資(ABL)の審査では、担保として提供される資産の価格と利用者の返済能力が問われます。
もしも、企業に債務超過や赤字決済などがあれば審査に通ることができず、融資が受けられなくなるでしょう。
ファクタリング
ファクタリングとは、企業が保有している売掛債権をファクタリング会社に譲渡して、現金化する資金調達法です。
ファクタリングは、借入金や融資などと異なり、売掛債権を現金化する売買取引となります。
そのため、融資と比べると審査は柔軟で、返済や金利の負担はありません。
ファクタリングの審査では、利用者ではなく売掛先の信用力が重視されるために、利用者側に債務超過や赤字決済などが会社にあってもファクタリングが利用できます。
また、ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングが存在しますが、2社間ファクタリングの場合ならば、売掛先の通知や承諾が不要なり、最短即日の資金調達が可能となるでしょう。
売掛金を活用した資金調達には、売掛債権を担保にした「売掛債権担保融資(ABL)」と、売掛債権を売買取引する「ファクタリング」があることを覚えておきましょう。
次に、売掛債権を売買取引するファクタリングの5つのメリットと4つのリスクについて解説していきます。
ファクタリングの5つのメリット
売掛金を活用した資金調達法となるファクタリングですが、売掛債権担保融資などと比べてどのようなメリットが得られるのでしょうか?
ファクタリングのメリットには、貸し倒れのリスクの軽減、即日の現金化、柔軟な審査、決算に響かない、売掛先に知られないなど、5つのメリットが考えられます。
融資とファクタリングのどちらにしようかと、迷っている方は次に上げるメリットをご確認ください。
1.貸し倒れリスクを移転
ファクタリングは売掛債権を売却した時点で、利用者の取引は完結となります。
そのため、もしも売掛先が貸し倒れたとしても、リスクを被るのはファクタリング業者となり、貸し倒れリスクを減らすことができます。
万が一、売掛先が倒産となったり、未払いが発生してもファクタリングを利用していれば返金義務が生じません。
つまり、ファクタリング業者には償還請求権がないということになります。
ただし、ファクタリング業者はリスクを回避するために、信用調査のプロとして売掛先の経営状況をあらかじめ調査してから契約します。
2.即日の現金化が可能
ファクタリングでの資金調達の特徴として上げられるは、即日も可能となる素早い現金化です。
ファクタリング会社によっては、最短で現金化してくれる業者もあり、銀行融資などの2週間から2ヶ月と比べると、かなり早い時期での資金調達が可能です。
取引先の銀行でも、即日融資を行っているところはほとんどありません。
ファクタリングなら、初めての方でも当日の現金化ができると言うメリットがあります。
3.融資よりも柔軟な審査
ファクタリングの審査は、売掛先の信用度を基準としているために、銀行融資よりも審査のハードルが低くなります。
銀行融資の場合には、利用者する会社の状態に重点を置きますが、売掛先から債権の回収ができれば問題なく審査を通ることができます。
税金の滞納、赤字や債務超過等で融資が利用できない会社でも、ファクタリングなら利用する事ができるでしょう。
4.決算書に響かない
銀行融資やビジネスローンを利用すれば、会計上では借入金となり負債が増えることになりますが、ファクタリングにおいては、売掛金が回収されることになるので負債の影響なく行えます。
貸借対照表の負債が増えないと同時に、支払いサイクルが短期化されて財務状況も改善されていきます。
損益計算書においては、売掛金を早く回収しただけなので、融資のように財務諸表に載せる必要がありません。
◆貸借対照表
・支払いサイクルの短縮化、貸借対照表の負債が徐々に資産になる
◆損益計算書
・売掛金回収となるので、融資と違い財務諸表に載らない
さらに、他の融資の審査に影響しないということに加えて、信用情報にも記載されないので会社の信用力も落ちません。
5.売掛先に知られない
ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがありますが、2社間ファクタリングを利用すれば、債権譲渡登記を行わないので売掛先にファクタリングの利用を知られることなく現金化することができます。
売掛先との関係に信用度が下がることを避けたいのであれば、ファクタリングは魅力的な資金調達法となるでしょう。
ファクタリングの4つのリスク
ファクタリングでの資金調達する際に、きちんとした知識を持っていないと思わぬ損失やリスクをおってしまうことがあります。
次に、ファクタリングを利用する際に生じてくる4つのリスクについて解説していきます。
1.悪質なファクタリング業者に注意
ファクタリングのリスクとして悪質業者に騙される可能性があることがあげられます。
最近では、ファクタリング業者を名乗る無許可貸金業者も増え始めてきました。
このような多くは、いわゆるヤミ金となるもので、債権を担保にして法外な金利でお金を貸し付けられる可能性があります。
悪質なファクタリング業者に騙されないように、注意を怠らないようにしましょう。
2.手数料がかかる
ファクタリングを行うと、当然のことながら手数料が発生します。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングでは、手数料の差があるので注意してください。
売掛先に知られずにできる2社間のファクタリングの手数料は高く、3社間ファクタリングの方が手数料を低く抑えることができます。
最近では、売掛先の信用問題も考えるために、2社間ファクタリングを利用する会社が増えてきています。
◆2社間ファクタリングの相場 売掛金の15~30%
◆3社間ファクタリングの相場 売掛金の1~9%
3.掛け目の発生
売掛債権の売買取引をするファクタリングですが、ファクタリング業者はそのままの金額で買い入れる訳ではありません。
掛け目によって減額した金額が現金化され、通常であれば売掛債権が回収できた時に返還されます。
掛け目はファクタリング業者によって異なっていますが、掛け目の相場は70~95%と言われており、リスクが多くなるほど掛け目小さくなり、回収リスクが小さければ掛け目は大きくなっていきます。
4.債権譲渡登記される場合あり
ファクタリングを行うことは、売掛債権を売却するという、債権譲渡が実施されることになります。
行われた債務譲渡を法務局に申請して、債権譲渡登記されれば、売掛債権を譲渡したことが誰もが知ることになるでしょう。
登記するためには費用もかかることはもちろんですが、債権譲渡の事実を誰もが知ることになり、会社の信用にも関わってきます。
まとめ
売掛金を活用した資金調達になるファクタリングと売掛債権担保融資の紹介と同時に、ファクタリングの5つのメリットと4つのリスクについて解説してきました。
企業間での取引の際に売掛金の発生は仕方のないことですが、支払いサイクルが長期化したり、売掛先が支払いを怠ったのなら、運転資金が間に合わなくなり、資金繰りが圧迫される可能性が出てきてしまいます。
企業が売掛債権を保有しているのなら、ファクタリングを利用することで資金繰りが改善され、財務状況にもゆとりが出てくるでしょう。
ファクタリングは新しい形の資金調達でもありますので、メリットや生じるリスクをよく確認した上で、ご利用ください。