
2011年の東日本大震災によって、日本では広範囲に渡り甚大な被害を受けました。
その後、震災後の復興整備を速やかに実現するために、様々な支援や取り組みが行われていますが、今の時点で「まだ補助金などを利用できるのか?」などは、気になるところではないでしょうか?
そこでこちらの記事では、現在でも募集している津波・原子力災害の復興整備や製造業立地の資金調達に活用できる補助金の情報をご紹介していきます。
震災から9年余り経ちましたが、公募の最新情報状況を確認しながら、見逃すことないように震災復興の足がかりとしてご利用ください。
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金とは?
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金は、東日本大震災で特に大きな被害を受けた津波震災区域、および原子力災害よって甚大な被害を受けた避難指示区域などを支援している補助金です。
解除された地域を中心として、福島県内の産業復興を加速させると共に雇用を促し、地域経済の活性化を図ることを目的とした国が実施している制度です。
なお、津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金の基金管理は「一般法人地域デザインオフィス」が行っています。
2つの事業
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金には、「製造業等立地支援事業」や「商業施設等復興整備補助事業」などの事業が設けられています。
◆「製造業等立地支援事業」は、企業立地補助を行うことにより、雇用の創出を通じて地域経済の活性化を図る目的で行われています。
・平成25年5月に一次公募が始まり、令和2年4月公募で十次公募になります。
◆「商業施設等復興整備補助事業」は、住民生活を支えている商業機能の回復を促進させ、住民の帰還や産業立地の促進を促すことを目的としています。
・「商業施設等復興整備補助事業」の民設商業施設整備型公募は、平成26年に一次公募が始まり、令和2年4月で十二次公募となります。
次に、公募が実施されている「製造業等立地支援事業」と「商業施設等復興整備補助事業」が実施している補助金を詳しくみていきます。
製造業等立地支援事業
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金の製造業等立地支援事業は、東日本大震災で特に大きな被害を受けた津波浸水地域(青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県)及び原子力災害により甚大な被害を受けた警戒区域等を支援している事業です。
避難指定が解除された地域や福島県の産業復興を加速させ、雇用の創出を生み出すとともに地域経済の活性化を図ることを目的して設けられています。
◆公募期間(令和2年4月公募)
・2020年4月20日(月)~2020年7月20日(月) 正午必着(郵送)
・審査結果の通知および公表は10月上旬頃の予定
補助対象事業者
製造業等立地支援事業の補助対象となる事業者は、補助要件を満たし、事業終了後の用地、建屋、建設等の管理、運営に責任を持って実施することができる法人となります。
なお、震災復旧事業は補助対象者外となりますので、お気を付けください。
補助対象地域
製造業等立地支援事業の補助対象となる地域は下記の通りとなります。
県名 | 地域区分番号 | 地域区分番号に対応する地域 |
岩手県 | ② | 洋野町、久慈市、宮古市、山田町、大槌町、釜石市、大船渡 市、陸前高田市 |
宮城県 | ② | 気仙沼市、南三陸町、石巻市、女川町、東松島市、七ヶ浜町、 多賀城市、仙台市(宮城野区に限る)、名取市、岩沼市、亘 理町、山元町 |
福島県 | ② | 新地町、相馬市、いわき市 |
③ | 福島市、郡山市、白河市、喜多方市、二本松市、田村市、川 俣町、会津美里町、西郷村、泉崎村、矢吹町 |
補助対象経費
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金の補助対象となる経費は下記の通りとなります。
・土地取得費
・土地造成費
・建物取得費
・設備費
補助額
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金の補助金交付の上限は、原則として30億円となります。
ただし、上記の②の地域においては、第三者委員会の評価が高い案件に付き50億円とされています。
補助率は、下記の表の通りとなりますが、審査によって上限補助率と下限補助率の範囲内で決定されます。
補助対象地域 | 地域区分番号 | 区分 | 補助率(上限) | 補助率(下限) | |
津波浸水地域 | ② | 岩手県、宮城県、福島県(新 地町、相馬市、いわき市) | 大企業 | 1/3 | 1/8 |
中小企業 | 1/2 | 1/6 | |||
原子力災害被災地域 | ③ | 福島県のうち②を除く地域 | 大企業 | 1/4 | 1/8 |
中小企業 | 1/3 | 1/8 |
商業施設等復興整備補助事業
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金の商業施設等復興整備補助事業は、東日本大震災で特に大きな被害を受けた津波浸水地域(岩手県、宮城県、福島県)を支援するために設けられた事業です。
住民生活を支える商業機能の回復を促し、住民の帰還や産業立地を推し進めることを目的として設けられています。
◆公募期間(令和2年4月公募)
・2020年4月20日(月)~2021年3月31日(水) 17時必着(郵送)
補助対象事業者
商業施設等復興整備補助事業の補助対象事業者は、補助要件を満たし、事業終了後の施設、設備等の管理や運営等に責任を持って実施することができるものとなります。
◆まちづくり会社、協同組合、商工会・商工会議所等
・まちづくり会社
出資の過半数を地元企業(中小企業、地銀・信金等)、協同組合、市町村、商工会・商工会議所が保有していること。なお、地元企業は県内に登記されている企業。
・ 協同組合、商工会・商工会議所等
被災自治体内を主な事業実施場所とする商店街振興組合、商店会・商工会議所、事業協同組合等の中小企業関係団体。
◆上記の「まちづくり会社、協同組合、商工会・商工会議所等」が整備する商業施設への入居事業者(被災中小企業者に限る)
補助対象地域
商業施設等復興整備補助事業の補助対象となる地域は、岩手県、宮城県及び福島県内における「津波で甚大な被害を受けた市町村」となります。
なお、「津波で甚大な被害を受けた市町村」とは、復興交付金の次に掲げる「面的整備5事業の交付決定可能通知」を受けた地域です。
(面的整備5事業の交付決定可能通知)
・漁業集落防災機能強化事業
・津波復興拠点整備事業
・市街地再開発事業
・土地区画整理事業
・防災集団移転促進事業
(県別補助対象地域)
県名 | 補助対象地域 |
岩手県 | 洋野町、久慈市、野田村、普代村、田野畑村、 岩泉町、宮古市、山田町、大槌町、釜石市、 大船渡市、陸前高田市 |
宮城県 | 気仙沼市、南三陸町、石巻市、女川町、東松島市、松島町、利 府町、塩竃市、七ヶ浜町、多賀城市、 仙台市(宮城野区、若林区、太白区に限る。)、 名取市、岩沼市、亘理町、山元町 |
福島県 | 新地町、相馬市、南相馬市(2避難指示解除区域、避難指示解除準備区域、居住制限区域は除く)、いわき市 |
補助対象経費
商業施設等復興整備補助事業の補助対象となる経費は下記の通りとなります。
◆施設整備費
・商業施設等、付帯施設及び設備の整備に要する経費(施設等の取得に要する経費とし、
土地の取得に要する経費は除く)
◆調査設計・企画費
・商業施設等、付帯施設及び設備等の整備に要する調査設計、企画等に要する経費
◆設備費
・商業施設等において事業の用に供する設備の購入、据付け等に必要な経費
・建物と切り離すことのできない付帯設備は原則として施設整備費に含める
・資産計上し、財産管理を行うものが対象
補助額
商業施設等復興整備補助事業の補助金上限額と補助率は下記の通りとなります。
◆補助上限額
・全区分合計 5億円
◆補助率
・被災中小企業分 3/4以内
・中小企業分 2/3位内
・その他分 1/2以内
商業機能回復支援補助金
商業機能回復支援補助金は、宮城県が実施している東日本大震災によって甚大な被害を受けた商業者の方々を支援している補助金です。
店舗の復旧となる補修や建替え、借上店舗の内装などにかかる費用の一部を補助しています。
原則として、令和3年3月31日までの復旧を完了するものが対象となります。
◆申請受付期間
・令和2年6月8日(月)~7月10日(金)
補助対象者
商業機能回復支援補助金の補助対象となるものは、下記のすべてに当てはまる中小企業者となります。
◆卸売業,小売業,飲食業,サービス業 等に従事
◆施設[店舗,事務所等]の被害が全壊又は大規模半壊
◆被災した施設及び復旧する施設の所在地が県内
◆国・県が実施する施設設備関連支援事業を利用していない
・中小企業基盤整備機構による仮設施設整備事業のみを活用している方が、仮設を退去し本設復旧する場合は対象となる。
◆補助対象経費が 200 万円(税抜)以上
補助対象経費
商業機能回復支援補助金の補助対象となる経費は、下記の通りとなります。
なお、借上経費は対象外となりますのでお気を付けください。
◆施設や設備の復旧に要する経費
補助額
商業機能回復支援補助金の補助限度額と補助率は下記の通りとなります。
◆補助率
(施設の被災程度が『全壊』の場合)
・上限 270万円 下限 90万円
(施設の被災程度が『大規模半壊』の場合)
・上限 210万円 下限 70万円
◆補助限度額
(施設の被災程度が『全壊』の場合)
・補助対象経費の45%以内
(施設の被災程度が『大規模半壊』の場合)
・補助対象経費の35%以内
ふくしま産業復興企業立地補助金(第13次募集)
ふくしま産業復興企業立地補助金は、福島県内における製造業などの民間企業の生産拡大や雇用創出を図るために設けられた補助金でです。
補助金によって、地域経済の復興再生に寄与することを目的としています。
◆受付期間 令和2年3月13日(金)~令和2年7月13日(月)正午
なお、原則として令和4年9月末までに事業を完了し操業することとしています。
対象地域
ふくしま産業復興企業立地補助金の対象地域は下記の通りとなります。
・避難解除区域(旧緊急時避難準備区域を含む)
・避難指示解除準備区域
・居住制限区域
・帰還困難区域以外の福島県全域
補助対象業種
ふくしま産業復興企業立地補助金の補助対象業種は下記の通りとなります。
◆製造業のうち輸送用機械、半導体、医療福祉機器、エネルギー、農商工連携の 各関連産業業種
◆旧企業立地促進法集積業種のうち製造業及び研究所を設置する業種
◆自ら使用するための物流施設を設置する業種
◆コールセンター、データセンター又はそれに類似する業種
◆知事が特に認める企業
対象施設
ふくしま産業復興企業立地補助金の対象となる施設は、下記の通りとなります。
◆工場
◆物流施設
◆試験研究施設
◆コールセンター、データセンター又はそれに類似する施設での対事業者サービス業の施設、情報サービス業又はインターネット付随サービス業の用に供される施設
交付要件
ふくしま産業復興企業立地補助金の交付要件と雇用要件は、下記の通りとなります。
◆投下固定資産額に応じた新規地元雇用
◆投下固定資産額の1%以上、再生可能エネルギー関連施設に対する投資
(雇用要件)
投下固定資産額 | 新規地元雇用者数 |
5千万円以上 | 3人以上 |
1億円以上 | 5人以上 |
10億円以上 | 10人以上 |
50億円以上 | 50人以上 |
100億円以上 | 100人以上 |
補助対象経費
ふくしま産業復興企業立地補助金の補助対象となる経費は、下記の通りとなります。
ただし、更新や入れ替えは対象となりませんので、お気をつけください。
◆対象施設で行う機械設備の設置にかかる費用
補助額
ふくしま産業復興企業立地補助金の補助率と上限額は下記の通りとなります。
◆補助率
①津波浸水区域
中小企業:1/2以内 大企業:1/3以内
② その他地域
中小企業:1/3以内 大企業:1/4以内
◆上限額 10億円
・ただし知事が特に認める案件については30億円
まとめ
東日本大震災で津波や原子力災害を受けた方が利用できる「製造業等立地支援事業」と「商業施設等復興整備補助事業」に加えて、宮城県が実施している「商業機能回復支援補助金」と、福島県が実施している「ふくしま産業復興企業立地補助金」の情報をご紹介してきました。
津波や原子力被害を受けた方が利用できる補助金は、現在でも公募しておりますので、復興整備や製造業立地の資金調達の際には、忘れることなく積極的に活用してください。
特に、津波や原子力災害関連の公募は今の時期に集中していますので、上記の情報を参考にしながら、もう一度「補助金の確認」をしておくことをおすすめします。