
近年では、求人を出してもなかなか採用に繋がるのが難しいですよね。
さらに言えば、せっかく採用した社員が1,2ヶ月で辞めてしまったのであれば企業側としては損しかありません。
採用後に業務のミスマッチによる短期退職を防いでコストを減らしていくのは企業にとっては永遠の課題でしょう。
実は、そのような課題のリスクを減らすために活用できる助成金制度があります。
それは「トライアル雇用」という制度です。
この制度を活用すれば、採用後のリスクも減らすことができるかもしれません。
どこで、当記事では「トライアル雇用」の制度にスポットを当てて、概要・メリット・デメリットなどを解説していきます。
トライアル雇用とは?
まず、トライアル雇用とは何のことかご存知でしょうか?
トライアルは「試み」という意味を持ちます。
つまり、トライアル雇用とは文字の通り、「雇用を試す」というものです。
しかし、「雇用を試す」と聞くと、試用期間と変わらないのでは?と思うかもしれません。
そこで、こちらではトライアル雇用の目的や対象者、試用期間との違いを解説します。
目的
トライアル経験の目的は就業経験の不足や復職が難しい方に向けて修業救済処置としてはじまった制度です。
まずは、3ヶ月の就業によって、企業と従業員の双方に適性や能力を見極める期間をつくり、正規雇用のきっかけ作りを目的としています。
しかし、トライアル雇用は全ての事業者や求職者に適用されるものではなく、一定の要件が定められています。
トライアル雇用の対象者(求職者)は、以下のいずれかの要件にあてはまる人です。。
■「一般トライアルコース」
・就労経験のない職業に就くことを希望する
・学校卒業後3年以内で、卒業後、安定した職業に就いていない
・過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
・離職している期間が1年を超えている
・妊娠、出産・育児を理由に離職し、安定した職業に就かない期間が1年を超えている
・就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する※
※生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者などが該当。
■「障害者トライアルコース」
・就労経験のない職業に就くことを希望している
・過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
・離職している期間が6ヶ月を超えている
・重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
トライアル雇用と試用期間との違い
トライアル雇用と試用期間は同じという認識を持っている方がいますが、実は企業側にとって大きな違いがあります。
それは、トライアル雇用の期間終了後に企業側に採用の義務がない点です。
試用期間であれば、採用にならければ解雇扱いになってしまいます。
そのため、トライアル雇用は試用期間を設けるのとは違い、企業側には大きなメリットがあるのです
トライアル雇用のメリット・デメリット
トライアル雇用を利用することには、メリットとデメリットがあります。
雇用者と求職者それぞれの視点で確認していきましょう。
雇用者のメリット
トライアル雇用を利用することで、雇用者側が求職者の適性や能力を踏まえた上で、採用するかどうかを判断することができます。
そのため、本採用後のミスマッチなどを未然に防げます。
また、トライアル後に常用雇用は義務付けられていないので、契約解除も比較的簡単な制度になっています。
雇用者のデメリット
雇用者側はメリットばかりではなくデメリットも存在します。
トライアル雇用を申請するには、トライアル雇用から終了後までにさまざまな書類を提出しなければなりません。
また、トライアル雇用を利用して求人した場合は、未経験の人材が多く、教育や研修に時間やお金がかかってしまうことも考えられます。
求職者のメリット
求職者は基本的に、実際に業務について働き始めなければ具体的な業務内容や職場の雰囲気を知ることができません。
それがあるために、採用されたあとに「ここは合わない!」となって退職に追い込まれるケースもあるでしょう。
トライアル雇用で、実際の職場で働くことができれば職場の雰囲気や業務内容を体感することができるので、求職者にとっても非常に大きなメリットです。
また、トライアル雇用から常用雇用へは8割程度と高い傾向があるので、正規雇用を考えている方は良いかもしれません。
求職者のデメリット
トライアル雇用されたからと言って、必ず正規雇用されるわけではありません。
トライアル雇用後に不採用となっていしまえば3ヶ月で解雇という職歴が残り、今後の就職活動にも影響がでてくるでしょう。
また、トライアル雇用を使う複数の企業に同時応募ができないため、応募する企業を慎重に選ぶ必要があります。
トライアル雇用に関する助成金と支給額
トライアル雇用には、「一般トライアルコース」と「障害者トライアルコース」が設けられています。
種類別の受給条件や、助成金と支給額に関わるルールを確認しましょう。
一般トライアルコース
一般トライアルコースは、安定的な就職が困難な人(上記)が対象となります。
対象者一人あたり月額最大4万円、最長3ヶ月間受給できます。
対象者が35歳以下の場合は、月額最大5万円、最長3ヶ月間です。
支給額は、就業予定日数に対する実働日数の割合で算出されます。このコースを利用する際の企業の受給条件を説明します。
受給条件
トライアル雇用が適用できる事業主は、以下をはじめとして26項目ほどの要件を満たしている必要があります。
主なものをご紹介します。
・ハローワークや職業紹介業者の紹介を通して雇用を行なう
・原則3ヶ月間のトライアル雇用を実施する
・1週間の所定労働時間が社内労働者と同程度で、30時間以上である
・過去6ヶ月以内での事業主都合の解雇がない
・労働者名簿や賃金台帳などを労働基準法の規定に沿って管理している
・過去に労働保険料の滞納がない
障害者トライアルコース
障害者トライアルコースは、「障害者の雇用の促進等に関する法律 第2条第1号」に定められた障害者が対象となります。
対象者1人当たり月額最大4万円、最長3ヶ月間受給できます。
精神障害者を初めて雇用する場合は、月額最大8万円、助成金受給最長期間は最長3ヶ月間です。
週20時間以下のトライアル雇用は、月額最大2万円、受給最長期間は最長12ヶ月間となっています。
支給額は、就業予定日数に対する実働日数の割合で算出されます。
受給条件
トライアル雇用が適用できる事業主は、以下をはじめとして15項目の要件と助成金共通の11項目をクリアしている必要があります。主なものをご紹介します。
・障害者総合支援法に基づく、就労継続支援事業を行っている
・求職者が雇用トライアルを理解し、それによる雇い入れを望んでいる
・ハローワークや職業紹介業者の紹介を通して雇用を行なう
・障害者トライアル雇用期間は、雇用保険被保険者資格取得の届出を行なう
・【短期】3ヶ月から12ヶ月間の短時間トライアル雇用を実施する
トライアル雇用期間中に従業員が退職した場合の支給額
トライアル雇用期間中に従業員が退職した場合は、離職日までに実際に働いた日数で支給額が算出されます。
トライアル雇用助成金と併給できる助成金
トライアル雇用助成金は「特定求職者雇用開発助成金」と併給することができます。
同時に助成金を受給できるわけではありませんが、トライアル雇用助成金の受給が終わり、正規雇用に移行した場合に「特定求職者雇用開発助成金」の第2期の受給が使えるようになります。
例えば、フルタイム勤務の従業員の場合、第2期分の支給額は、中小企業で1人あたり30万円、中小企業外では25万円となります。
また、併給の要件には次のようなものがあります。
・トライアル雇用助成金と特定求職者雇用開発助成金のそれぞれの要件を、企業と労働者が満たしていること
・母子家庭の母等、父子家庭の父、中国残留邦人等永住帰国者、60歳以上65歳未満のシニア労働者、重度障害者等を除く身体・知的障害者などが対象
キャリアアップ助成金
トライアル雇用助成金は、「キャリアアップ助成金」とも同時に活用することができます。
キャリアアップ助成金は契約社員などを正社員に移行した際に支給されます。
併給は、トライアル雇用奨励金とキャリアアップ助成金のそれぞれの要件を、企業も対象労働者も満たしていることが条件となります。
トライアル雇用助成金の手続きの流れ
では、トライアル雇用を利用し、助成金を受給するにはどうすれば良いのでしょうか?
具体的な手続きの流れを解説していきます。
ハローワークに求人を出す
トライアル雇用を受けるにはハローワークへ求人を出す必要があります。
その際にハローワークには「トライアル雇用求人」だということを伝えておきましゅお。
また、一般的な求人誌でも求人を行うのであれば、トライアル雇用併用求人になります。
求職者に対して面接を行い採用する
ハローワークへ出した求人から応募のあった求職者と必ず面接を行ってください。
書類だけではなく、面接することでトライアル雇用として採用の対象となります。
また、求職者の雇用保険加入の手続きが必要なので忘れないようにしてください。
紹介を受けたハローワークに必要書類を提出する
無事にトライアル雇用対象者を採用したら「トライアル雇用実施計画書」をハローワークへ提出しなければなりません。
「トライアル雇用実施計画書」は企業と対象者で内容に合意しておきましょう。
また、トライアル雇用期間の開始から2週間以内に提出する必要があるので忘れずにしてください。
助成金が支給される
トライアル雇用助成金は、雇用期間が満了後に支給されます。
必要書類が揃っているのか、不備がないのかなどを審査された上で3ヶ月分の金額が一括で振り込まれます。
まとめ
以上、企業の永遠の悩みでもある採用のリスクを回避できる「トライアル雇用助成金」の種類や特徴について紹介しました。
受給する条件は、コースによっても異なりますが、他の助成金と同様に「労働保険料を滞納している事業主」や「暴力団関係の事業主」は受給対象外となります。
トライアル雇用は企業側、求職者側の双方どちらにもメリットが多い制度となっているのでぜひ活用するようにしてください。