
新規に導入されるソフトウェア製品などを導入すると、補助金が受けられる、ということをご存じでしょうか?
IT導入補助金とは、業務の効率化や売り上げアップにつながるITツールを導入する際に使える補助金制度のことです。
今回は、IT導入補助金を使ってITツールを取り入れるための以下3つについての要点を紹介していきます。
①IT導入補助金を申請するための条件
②IT導入補助金の交付申請の流れ
③導入にあたっての注意点
IT導入補助金とは
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化や売上の上昇をサポートするといったものです。
自社の置かれた環境を認識、分析して経営課題や需要に沿ったITツールを導入することで、業務の効率化といった経営力などの強化を図って行くことを目的としています。
パッケージソフトウェア製品
ソフトウェアはオンプレミス版・クラウド版のパッケージソフトウェアを対象としています。
パッケージソフトとは、包装された状態で販売されるソフトウェアのことを指します。広義には、市販されるソフトウェア全体を指します。
CD-ROM・DVD-ROMなどに記録されているソフトウェアを、量販店で販売するような例が挙げられます。
その後、CD-ROM・DVD-ROMなどをパソコンに読み込んでインストールして使います。
オプション
「オプション」は、ソフトウェアのパッケージに追加していく機能などのことを指します。
項目としては、
⑴機能拡張
ソフトウェアで説明したパッケージの機能を拡張するもののこと。
⑵データ連携ツール
パッケージ同士のデータ連携を行うソフトのこと。
⑶セキュリティ
PC・ソフトウェアの保護やデータを暗号化により保護するソフトウェア製品などのこと。
⑷ホームページ関連費
顧客と双方向にやり取りをするためのホームページ制作費用のこと。
の4つからなります。
役務
役務には、
⑴導入コンサルティング
ソフトウェア導入の計画と、社員教育の計画にかかるアドバイスを行うこと。
⑵導入設定・マニュアル作成・導入研修
補助金導入に当たって、マニュアルを作成したり、教育・研修を行うこと。
⑶保守サポート
トラブル発生時の対応やソフトのバージョンアップへの対応などを行うこと。
の3つからなります。
A類型とB類型
IT導入補助金は、交付申請する補助金額などによって、A類型とB類型の2つに分かれます。
A類型とB類型は、導入するITツールが担うプロセス数と導入費によって分けられています。
A類型
A類型は、3分野のパッケージソフトから2種類以上を組み合わせて導入する必要があります。
必須条件として、業務パッケージソフトの個別プロセスは最低1つは業務パッケージソフトを導入することが必要です。
B類型
B類型は、3種類のパッケージソフトの中から5つ以上を導入する企業や事業者に適用されます。
こちらでも、業務パッケージソフトは最低3つ以上を導入する必要があります。
A類型とB類型の違い
項目/類型 | A類型 | B類型 |
補助金の上限額・下限額 | 40万~150万円未満 | 150万~450万円 |
補助率 | 1/2以下 | 1/2以下 |
補助対象経費区分 | ソフトウェア費、導入関連費 | ソフトウェア費、導入関連費 |
ソフトウェアの必要なプロセス数 | 業務プロセスを必ず1つ以上含み、合計2プロセス以上必要 | 業務プロセスを必ず3つ以上含み、合計5プロセス以上必要 |
導入後の報告回数 | 年1回3年間、合計3回 | 年1回5年間、合計5回 |
中でも特に、必要なプロセス数という導入ITツールの概念が複雑で、多くの機能を求められます。
①IT導入補助金を申請するための条件
IT導入補助金を申請するためには、いくつかの条件を満たしている必要がありますので、自社がその条件をクリアしているか確認してみてください。
補助を受けられる条件
〇日本国内で事業を行う法人または個人の中小企業・小規模事業者等
対象業種は、
・飲食
・宿泊
・卸、小売
・運輸
・医療
・介護
・保育等のサービス業
・製造業
・建設業
などです。
〇法人の場合、「みなし大企業」でないこと
みなし大企業とは、企業規模の観点からは中小企業の定義に当てはまるものの、実際は大企業である親会社の傘下にある会社のことを指します。
〇IT導入補助金の実施によって、生産性の伸び率が3年後に1%以上、4年後に1.5%、5年後に2%以上となる計画を立てられること
〇独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」において、「1つ星)」または「2つ星」の宣言を行うこと
SECURITY ACTIONとは、中小企業、小規模事業者等みずからが情報セキュリティに取り組むことを自己宣言する精度のことです。
〇風俗営業、性風俗関連、接客業務受託営業を営むものでないもの
〇事業者または法人の役員が反社会的勢力でないこと、また反社会的勢力との関係を有しないこと
〇IT導入支援事業者は、補助事業者にはなれません
②IT導入補助金の交付申請の流れ
大まかな流れとしては、IT導入支援事業者がツールを申請し、ツールを導入する申請者が、事務局に交付を申請します。
ITツールを導入した後、実績報告書を作成・提出する、という流れです。
以下、具体的な流れを紹介していきます。
ITツールの検討
まずは生産性向上につながるIT導入支援事業者とITツールを選びます。
ITツールを導入することによって、どの程度の業務効率化が図れるのか、目標を設定して実現までの事業計画を作成します。
交付申請において、「導入したいITツール」と「ITツール導入後の事業計画」の2点が必要になります。
必要書類
IT導入補助金の申し込み時に必要となる書類は、事前に用意しておくと申し込み手続きがスムーズに進みます。
⑴インターネットが使えるパソコン
IT導入補助金の手続きは、ITサービス事業者と共同で進めていくことになりますが、申請登録は基本的に企業や事業主のパソコンを利用して進めていくことが多いためです。
⑵メールアドレス
IT導入補助金の交付申請では、最初にITサービス事業者とやり取りを行うためにメールアドレスが必要です。
連絡先としてメールアドレスを用意しているサービス事業者がほとんどなので、事前に用意しておくべきです。
⑶3期分の決算書
IT導入補助金の経営診断ツールを入力する際、3期分の決算情報の記載が必要です。
起業したばかりで3期分が用意できないは、「2期以上の決算期が無い」という項目がありますので、そちらにチェックを入れます。
⑷履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
法人が実在していることの証明として必要になります。
⑸当該の年かその前年に納税された法人税の納税証明書
事業が続いていることを証明するのに必要となります。
⑹運転免許証・住民票
個人の場合は必要です。現住所の証明をするものとなります。
⑺前年分の確定申告における所得税の納税証明書・所得税確定申告書
個人事業が続いていることを証明するのに必要となります。
交付申請
公式サイトより、IT導入補助金の交付申請手続きを行います。
「申請マイページ」を開設し、必要情報を入力、その後IT導入支援事業者によって詳細な情報のヒアリングが行われ、事業者が代理で情報を取りまとめて申請画面に入力します。
問題なければ承認され、IT導入支援事業者が補助金交付の代理申請を行います。
ITツールの発注・契約・支払い
交付申請が完了し、審査に通過して補助金の交付が決定したら、ITツールを発注、契約して料金を支払います。
事業実績報告
ITツールの発注、契約、納品、支払いを行ったことが分かる証しを準備して提出します。
提出はIT導入支援事業者が行うので、作成された事業実績報告の内容を確認してから承認します。
補助金交付手続き
補助金額が確定すると、「申請マイページ」で補助額を確認できます。内容確認後に補助金の交付が実施されます。
事業実施効果報告
事業終了後5年間は、毎年4月1日から翌年3月末日までの1年間における生産性向上に関する情報・実績を報告することになります。報告は「申請マイページ」から行います。
③導入にあたっての注意点
IT導入補助金を利用する際は、以下の3つに注意してしっかりと準備を進めるようにしましょう。
IT導入支援事業者の選び方
IT導入補助金は、どんなITツールであっても適応される訳ではなく、IT導入支援事業者として登録された企業が提供するITツールから選択する必要があります。
IT導入支援事業者とは発注から導入だけの付き合いではなく、代理申請や5年間の実績報告と長期間にわたり関わっていくことになります。
そのため、サポートの丁寧さや担当者の相性など「仕事が進めやすい協力会社であるか」という観点からも選び方のポイントとなるので、注意が必要です。
交付前に導入したITツールは補助金の対象外
IT導入補助金は、交付が決定した後に「契約・発注・支払」を行ったITツールが対象になります。
したがって、過去に導入したITツールや、交付が決定する前に発注したツールに関しては、補助金の支援してもらうことができないので、ご注意ください。
書類の不備
初歩的なことですが、書類の不備は避けましょう。
〇入力されている情報が添付書類が内容と相違している
・設立年月日、住所、代表者氏名等の入力が誤っている、など。
〇導入実績として入力された内容が不明確
・製品概要、導入事例、件数、URL等
〇履歴事項全部証明書の誤り
・添付されている書類が履歴事項全部証明書ではない
・登録申請時点で、発行されてから3ヶ月以上経過している
・見切れ、ページ不足など内容が不鮮明な状態で添付されている
〇納税証明書の誤り
・申請内容として入力された決算月に対して、直近の納税証明書が添付されていない
など、細かい点ですが、注意しましょう。
まとめ
今回は、IT導入補助金の概要や、補助金の申請方法・注意点などを紹介してきました。
つまり、ITツールを新規に導入することで労働生産性の向上が期待できる場合、申請が受理され、補助金が下りるというわけです。
手順や用語が難しく感じる方もいるかもしれませんが、効率化を図って事業をさらに発展させていく際にITの導入がとても役立ちます。
便利なツールを充分に活かすためには、ITツールやソフトウェアに精通した専門事業者のサポートが大きな役割を果たすでしょう。