土地改良区においては、農業水利施設の管理や農業生産基盤の整備を通じて機能や役割が十分に発揮されることが期待されています。
しかし、最近では農業や農村構造が変わってきたことに加えて、組合員のコスト意識の高まり、さらには組織運営、管理等の複雑化や高度化も重なり、土地改良区の機能や役割を果たすことは難しくなっているのではないでしょうか?
農林水産省では、このような土地改良区の課題をクリアするために、「令和3年度土地改良区体制強化事業」を設けています。
財産管理制度の活用推進対策、研修・人材育成等を実施し、土地改良区の体制強化に向けての支援となっていますので、ぜひご利用ください。
こちらの記事では、「令和3年度土地改良区体制強化事業」をわかりやすくご紹介していきます。
INDEX
令和3年度土地改良区体制強化事業
令和3年度土地改良区体制強化事業は、財産管理制度の活用推進対策、研修・人材育成等を実施し、土地改良区の体制強化に資することを目的とした事業です。
土地改良区の統合再編、事業運営の透明化等の推進による組織運営基盤の強化、農業水利施設の計画的かつ効率的な保全管理、所有者の所在が不明なものを含む農地の利用集積への対応等の技術向上等による事業実施体制の強化を図ることが必要であることから、設けられました。
補助対象となる事業に必要な経費の一部を補助しています。
◆公募期間 令和3年2月10日(水曜日)から令和3年3月1日(月曜日)
事業内容
令和3年度土地改良区体制強化事業の補助対象となる取組として、「受益農地管理強化対策」と「研修・人材育成」の2つの事業が行われます。
◆平成25年度から令和7年度までの実施を予定しており、令和3年度土地改良区体制強化事業の「受益農地管理強化対策」と「研修・人材育成」のそれぞれの事業内容は、下記の通りとなります。
受益農地管理強化対策
令和3年度土地改良区体制強化事業の受益農地管理強化対策は、下記の①~③の通りとなります。
◆農用地の所有者の所在不明等により換地業務の実施に支障を来している地区において、円滑かつ適正な換地処分を図るため、財産管理制度(民法(明治29年法律第89号)第25条に基づく不在者財産管理制度及び民法第952条に基づく相続財産管理制度をいう。)の活用推進を目的として、下記の業務を行うものとする。
① 財産管理制度活用推進委員会の設置
公募対象団体となる、国及び地方公共団体の職員、公募団体、都道府県土地改良事業団体連合会(以下「地方連合会」という。)及び土地改良区の役職員並びに学識経験者その他必要な者をもって構成する財産管理制度活用推進委員会を設置するものとする。
当該委員会においては、②により実施する活用実態調査及び③により実施する普及・啓発の検討を行うものとする。
②財産管理制度の活用実態調査
民法(明治29年法律第89号)及び不動産登記法(平成16年法律第123号)の改正に伴う財産管理制度(民法(明治29年法律第89号)第25条に基づく不在者財産管理制度及び民法第952条に基づく相続財産管理制度をいう。)の活用推進を図るための課題及びその対応方針について検討を行うものとする。
③財産管理制度の普及・啓発
・ア:財産管理制度活用マニュアルを活用し、財産管理制度の普及・啓発を行うとともに、必要に応じて、土地改良区等を対象に財産管理制度の説明会を行うものとする(Web会議など集合形式以外の形式で開催することができることとする。)。
・イ:土地改良区等に対して財産管理制度活用に関して具体的な指導を実施する地方連合会からの要請に応じて、財産管理制度の活用に関する助言等を行うものとする。
研修・人材育成
令和3年度土地改良区体制強化事業の研修・人材育成の事業内容は下記の①~⑤の通りとなります。
① 統合整備推進研修
・ア:土地改良区の合併を推進する人材育成のため、土地改良区の役職員等を対象に研修を行うものとする。
・イ:研修は、より多くの希望者の参加を可能とするため、同一の内容をもって全国を対象に2回以上開催するものとする(Web会議など集合形式以外の形式で開催することができることとする。)。
・ウ: 研修内容
(ア) 合併協議の体制構築・進め方について
(イ) 合併推進に係る諸課題・懸案事項への対応について
a 組織運営に係る課題等
b 施設管理に係る課題等
(ウ) 合併事例の検証・検討
(エ) 合併後における諸課題・懸案事項解消への取組について
(オ) 合併の推進に資する滞納処分の実施について
(カ) その他合併を推進する人材の育成に関する事項
②施設管理研修
・ア:管理専門指導員研修
(ア) 土地改良施設管理の強化を図るため、土地改良施設の診断・管理指導等を行う管理専門指導員等を対象とした研修を行うものとする。
(イ) 研修は、全国を対象に基礎的な知識を習得する研修、実務的な知識を習得する研修等に分け、計2回以上開催するものとする(Web会議など集合形式以外の形式で開催することができることとする。)。
(ウ) 研修内容
a 土地改良施設管理概論
b 農業水利施設のストックマネジメント概論
c 農業水利施設の機能診断概論
d 農業水利施設の安全管理関係
e その他管理専門指導員等の資質向上に関する事項
・イ:土地改良施設の整備補修事例検討会
(ア) 土地改良区等が管理する土地改良施設の整備補修(地方連合会が実施する診断・管理指導に基づき実施されるものをいう。)について、先進技術の導入事例等の共有化を図るため、土地改良施設の診断・管理指導等を行う管理専門指導員等を対象とした検討会を行うものとする。
(イ) 検討会は、全国を地方農政局ごとのブロックに分け、ブロック単位で1回以上開催するものとする(Web会議など集合形式以外の形式で開催することができることとする。)。
ただし、北海道は東北農政局ブロックに、沖縄県は九州農政局ブロックに含めるものとする。
③財務管理強化研修
・ア:複式簿記導入促進特別研修
(ア)土地改良区において複式簿記の円滑な導入を図るため、土地改良区の役職員を対象に、複式簿記に関する実務的な知識の習得を図る研修を行うものとする。
(イ)研修は、全都道府県の土地改良区の役職員を対象に実施することから、全ての都道府県で1回以上開催するものとする(Web会議など集合形式以外の形式で開催することができることとする。)。
(ウ)研修内容については、次のとおりとする。
なお、研修内容については、特に、単式簿記会計から複式簿記会計に移行する土地改良区が多いことを踏まえて、移行に係る実務の内容について、重点的に研修を行うものとする。
a 土地改良施設の資産評価と土地改良施設台帳の作成に関する実務(維持管理計画書の改正に関する実務も含む。)
b 勘定科目の設定に関する実務(特別会計の見直しに関する実務も含む。)
c 会計細則の改正に関する実務
d 固定資産台帳の整備に関する実務
e 仕訳及び記帳等に関する実務
f 決算処理に関する実務(財務諸表等の作成に関する実務、財務諸表等の分析方法に関する事項も含む。)
g 複式簿記会計ソフトの利用に関する一般的な事項
h その他必要な事項
・イ:会計指導員育成研修
(ア)土地改良区等に対する複式簿記会計に関する巡回指導、財務管理強化相談業務、土地改良区等の指導監査等を行う会計指導員を育成するための専門的な研修及び認定試験を行うものとする。
なお、育成研修として平成30年度に認定された者に対する認定更新のための研修も併せて行うものとする。
(イ)育成研修(eラーニング等を含む。)は、全国で1回以上開催するものとする。
なお、育成研修を新規に受講した者を対象に認定試験を行うものとする。
(ウ)研修内容
a 複式簿記会計に関する巡回指導に必要な土地改良区会計に関する事項
b 財務管理強化相談業務に必要な土地改良区会計及び業務運営に関する事項
c 土地改良区等の指導監査に関する事項
d 土地改良区の事業運営の透明化やガバナンスの強化に関する事項
e 認定試験(新規認定者に限る。)
(エ)会計指導員育成研修運営委員会の設置
(オ)認定証の印刷及び発送
(カ)個人情報の管理及び情報共有・提供
④換地関係異議紛争処理実務研修
・ア:土地改良換地に関する異議紛争の未然防止及び早期解決を図るため、都道府県の職員、地方連合会の役職員及び土地改良区等の役職員等を対象に研修を行うとともに、研修において活用する土地改良換地(農地中間管理機構関連農地整備事業を含む。)に関する異議紛争の未然防止及び早期解決のための資料作成を行うものとする。
・イ:研修は、全国を地方農政局ごとのブロックに分け、ブロック単位で1回以上開催するものとする(Web会議など集合形式以外の形式で開催することができることとする。)。
ただし、北海道は東北農政局ブロックに、沖縄県は九州農政局ブロックに含めるものとする。
・ウ:研修内容について、概ね次のとおりとする。
(ア) 土地改良換地に関する既往の異議紛争及び農地中間管理機構活用の具体的事例
(イ)その他必要事項
・エ:地方連合会が行う換地処分未了地区等の解消に関する指導に対する助言等を行うものとする。
⑤関係機関との連携
上記①から④の研修については、公募団体は、都道府県土地改良事業団体連合会等の関係機関と連携の上、実施するものとする。
公募対象団体
令和3年度土地改良区体制強化事業の公募対象となる団体は、下記の①の対象団体に掲げる団体であって、②の応募資格・条件等の全てを満たすものとなります。
①対象団体
民間団体(民間企業、一般財団法人、一般社団法人、公益財団法人、公益社団法人、協同組合、企業組合、特定非営利活動法人、国立大学法人、公立大学法人、学校法人、特殊法人、認可法人、独立行政法人等)
②応募資格・条件等
・意思能力及び行為能力を有する団体であること。
・補助事業等を遂行する資力を有する団体であること。
・法人格を有さない任意団体の場合は、会計処理や意思決定等の方法について規約等が整備されていること。
補助対象経費
令和3年度土地改良区体制強化事業の補助対象となる経費の範囲は、下記の表の通りとなります。
項目 | 内容 |
1.賃金 | 本事業の実施に直接必要な業務を目的として、事業実施主体が雇用した者に対して支払う実働に応じた対価 |
2.報償費 | 本事業の実施に直接必要な委員等謝金、講師等謝金、原稿執筆謝 金及び資料収集等に協力を得た人に対する謝礼に必要な経費(社内規定等に基づく単価の設定根拠によること) |
3.旅費 | 本事業の実施に直接必要な会議の出席、各種調査、打合せ及び資 料収集等に必要な旅費、又は、技術指導を行うための旅費として依頼した専門家に支払う旅費 |
4.需用費 | 本事業の実施に直接必要な消耗品、自動車等燃料、印刷製本等の 調達に必要な経費 |
5.役務費 | 本事業の実施に直接必要、かつ、それだけでは本事業の成果とは なり得ない器具機械等の各種保守・改良、翻訳、分析及び試験等を専ら行うために必要な経費 |
6.委託料 | 本事業の成果の一部を構成する調査の実施、取りまとめ等を他の 団体に委託するために必要な経費。 ただし、事業の根幹を成す業務の委託は認めない。 |
7.使用料及び賃借料 | 本事業の実施に直接必要な車両等の借り上げ、駐車場、会議の会場及び物品等の使用料、有料道路使用料に必要な経費 |
8.備品購入費 | 本事業の実施に直接必要な備品の購入に係る経費 |
9.給料、職員手当等又は技術員手当 | 「補助事業等の実施に要する人件費の算定等の適正化等について(平成22年9月27日付け22経第960号大臣官房経理課長通知)」に基づき算出される経費 |
10.共済費 | 1及び9に該当する者に対する共済組合負担金及び社会保険料等 |
11.補償費 | 本事業の実施に直接必要な業務の遂行上、一時的に必要となる仮 設的用地の借料 |
12.資源購入費 | 本事業の実施に直接必要な資材の購入費 |
13.機械賃料 | 本事業の実施に直接必要な機械・器具等の借料及び損料 |
補助額
令和3年度土地改良区体制強化事業の補助額と補助率は、下記の通りとなります。
◆補助率 定額
◆補助対象となる事業費は、108,523,000円以内とし、予算の範囲内にお いて、事業の実施に必要となる経費を定額により補助する。
・補助金の額は、補助対象経費の金額の算定に誤りがないかどうか審査をした 上で決定するため、提案のあった額より減額されることがあります。
まとめ
農林水産省が実施している令和3年度土地改良区体制強化事業について、受益農地管理強化対策と研修・人材育成の2つの取組に加えて、公募対象団体、補助対象経費、補助額を詳しく解説してきました。
令和3年度土地改良区体制強化事業は、土地改良区においての機能や役割を発揮させる取組に対して支援を行っています。
補助対象となる事業は、受益農地管理強化対策と研修・人材育成の2つの取組が大きな柱となっていますので、よく内容を確認してから応募するようにしてください。
土地改良区の課題をクリアするために、これらの補助金を資金調達として役立てて、体制強化へ向けて推し進めていきましょう。