
国内の畜産や酪農経営の生産基盤を安定させていくためには、飼料コストの低減と高品質な国産牛乳乳製品等の生産が大切です。
しかし、TMRの原料となってサイレージを生産するバンカーサイロ床面の腐食等による品質低下や異物混入などの課題により、TMRセンターを利用している経営者達は不安を抱えているのではないでしょうか?
このような事を踏まえて、農林水産省では「令和2年度高品質TMR供給支援対策事業」を設けて、高品質なTMRの安定供給を図る取組や良質粗飼料の増産・供給、飼料自給率をあげるために支援を行っています。
こちらの記事では、「令和2年度高品質TMR供給支援対策事業」について、詳しく解説していきますので、どうぞご覧ください。
令和2年度高品質TMR供給支援対策事業
令和2年度高品質TMR供給支援対策事業は、高品質なTMRの安定供給を図る取組を緊急に推進し、良質粗飼料の増産・供給、飼料自給率の向上等を目的とした事業です。
TMRの原料となるサイレージを生産するバンカーサイロ床面の腐食等による品質低下や異物混入などが課題となっていることから、設けられました。
TMR原料品質改善計画を策定し、同計画に基づき行うバンカーサイロ補改修やTMR原料品質向上等に必要な以下の取組に係る経費に対して、補助を行っています。
事業内容
令和2年度高品質TMR供給支援対策事業の事業の内容は、調査分析、TMR原料となるサイレージの品質改善対策、事業推進等の3つの取組によって行われています。
① 調査分析
・TMRセンターが高品質なTMR原料となるサイレージを生産するために行う調査、飼料分析等の取組に対する助成
②TMR原料となるサイレージの品質改善対策
・TMRセンターが品質改善計画に基づき行う次の取組に対する助成
ア:バンカーサイロ補改修
イ:TMR原料となるサイレージの品質向上のための技術実証
③事業推進等
事業実施主体が行う②のイの実証技術の普及の取組並びにTMRセンターが行う①及び②の取組の円滑な推進に必要な取組に対する助成
「TMR原料品質改善計画」とは?
・高品質なTMRの安定供給に向けて、バンカーサイロの補改修やTMR原料となるサイレージの品質向上等の取組内容についてTMRセンターが策定する計画をいいます。
事業参加者
令和2年度高品質TMR供給支援対策事業の事業参加者として取組を行うの者は、下記の通りとなります。
◆生産局長が別に定める公募要領により、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人又は農業協同組合連合会から選定された団体
ア:農業者団体又は当該団体を構成する個々の肉用牛若しくは酪農経営を行う農業者等
イ:TMRセンターの構成員である個々の農業者等
「農業者団体」とは?
下記のいずれかの団体をいいます。
ア:農業協同組合
イ:農業協同組合連合会
ウ:公社(地方公共団体が出資しているものに限る。)
エ:農事組合法人(農業協同組合法(昭和22年法律第132号)第72条の10第1項に規定する農事組合法人をいう。)
オ:農事組合法人以外の農地所有適格法人(農地法(昭和27年法律第229号)第2条第3項に規定する法人をいう。)
カ:特定農業団体(農業経営基盤強化促進法(昭和55年法律第65号)第23条第4項に規定する特定農業団体をいう。)
キ:農業者の組織する団体(代表者の定めがあり、かつ、組織及び運営についての定めがある団体をいう。)
ク:事業実施主体が特に必要と認める団体であって、生産局長が別に定める要件を満たすもの
「TMRセンター」とは?
TMRの生産・供給を行う次のいずれかの団体をいいます。
ア:農業協同組合
イ:農業協同組合連合会
ウ:農事組合法人
エ:農事組合法人以外の農地所有適格法人
オ:農業協同組合又は農業協同組合連合会が株主となっている株式会社であって、農業協同組合、農業協同組合連合会、地方公共団体又は独立行政法人農畜産業振興機構がその発行済株式のうち議決権のある株式の総数の過半数を保有しているもの
カ:農業を営む個人が株主又は社員となっている株式会社又は会社法(平成17年法律第86号)第575条第1項に規定する持分会社であって、次の①から③までの全ての要件に適合するもの
① 農業を主たる事業として営んでいること。
令和2年度第3次補正予算案に基づいて行うため、今後事業内容等の変更があり場合もあります。
② 株式会社にあっては、株主の総数が50人以下であり公開会社(会社法第2条第5号に規定する公開会社をいう。)でないこと、かつ、農業を営む個人及び法人がその総株主の議決権の過半数を有していること。
③ 持分会社にあっては、農業を営む個人が業務を執行する社員の数の過半を占めること。
キ:事業実施主体が特に必要と認める団体
手続きの流れ
令和2年度高品質TMR供給支援対策事業の手続きの流れは、下記のように進められていきますので、ご参考になさってください。
①TMRセンターは、生産局長が別に定めるところにより品質改善計画を作成し、事業実施主体に提出して、その承認を受けることが必要です。
②事業実施主体は、①により提出された品質改善計画を踏まえ、生産局長が別に定めるところにより事業実施計画を作成し、生産局長に提出して、その承認を受けます。
③品質改善計画及び事業実施計画に関して生産局長が別に定める重要な変更を行う場合の手続は、①及び②に準じて行われます。
補助額
令和2年度高品質TMR供給支援対策事業のそれぞれの取組ごとの補助率は、下記の通りとなります。
◆補助率
① 調査分析 2分の1以内
②TMR原料となるサイレージの品質改善対策 2分の1以内
③事業推進等 定額
令和2年度高品質TMR供給支援対策事業の補助対象経費
令和2年度高品質TMR供給支援対策事業の補助対象となる経費は次の通りとなり、費目ごとの内容は下記の表の通りとなります。
◆備品費、事業費、旅費、賃金、謝金、委託費、役務費、雑役務費、事業通信費
(備品費)
費目 | 内容 |
備品費 | 事業を実施するために直接必要な試験・調査備品の経費 ただし、リース・レンタルを行うことが困難な場合に限る。 |
(事業費)
費目 | 内容 |
会場借料 | 事業を実施するために直接必要な会議等を開催する場合の会場費 として支払われる経費 |
通信運搬費 | 事業を実施するために直接必要 な郵便代、運送代として支払われる経費 |
借上費 | 事業を実施するために直接必要 な実験機器、事務機器等の借上費 |
印刷製本費 | 事業を実施するために直接必要 な資料等の印刷費として支払われる経費 |
資料購入費 | 事業を実施するために直接必要 な図書、参考文献にかかる経費 |
原材料費 | 事業を実施するために直接必要な試作品の開発や試験等に必要な材料にかかる経費 |
消耗品費 | 事業を実施するために直接必要 な以下の物品にかかる経費 ・短期間(補助事業実施期間内) 又は一度の使用によって消費 されその効用を失う少額な物品 ・CD-ROM 等の少額な記録媒体 ・試験等に用いる少額な器具等 |
光熱水費 | 事業を実施するために直接必要な電気、ガス、水道料金として支払われる経費(ただし、基本料金 は除く。) |
データ収集・処理 ・分析費 | 事業を実施するために直接必要なデータの収集・処理・分析に 必要な人件費及び指導費 |
(旅費)
費目 | 内容 |
委員旅費 | 事業を実施するために直接必要な会議への出席又は技術指導等を行うための旅費として、依頼 した専門家に支払う経費 |
調査旅費 | 事業を実施するために直接必要な資料収集、各種調査等にかかる経費 |
講師旅費 | 事業を実施するために直接必要な研修会等で講演を行うための旅費として、依頼した専門家に支払う経費 |
(賃金)
費目 | 内容 |
賃金 | 事業を実施するために直接必要な 業務を目的として雇用した者に対 して支払う実働に応じた対価(日 給又は時間給)にかかる経費 |
(謝金)
費目 | 内容 |
謝金 | 事業を実施するために直接必要 な資料整理、補助、専門的知識の提供、資料の収集等について協力を得た者に対する謝礼に必 要な経費 |
原稿料 | マニュアルの作成、研修会での講 演等に必要な原稿執筆に対する謝礼に必要な経費 |
(委託費)
費目 | 内容 |
委託費 | 本事業の交付目的である事業の 一部分(例えば、事業の成果の一部を構成する調査の実施、取りまとめ等)を他の者に委託す るために必要な経費 |
(役務費)
費目 | 内容 |
試験・分析費 | 事業を実施するために直接必要であり、かつ、それだけでは本事業の成果としては成り立たな い分析・試験等を行う経費 |
(雑役務費)
費目 | 内容 |
手数料 | 事業を実施するために直接必要な謝金等の振込手数料 |
印刷代 | 事業を実施するために直接必要な委託の契約書に貼付けする印 紙の経費 |
社会保険料 | 事業を実施するために直接新たに雇用した者に支払う社会保険料の事業主負担分の経費 |
通勤費 | 事業を実施するために直接新たに雇用した者に支払う通勤の経費 |
(事務通信費)
費目 | 内容 |
事業推進事務費 | 事業を実施するために直接必要な事業実施主体が行う取組に対する事務にかかる人件費 |
申請できない経費
令和2年度高品質TMR供給支援対策事業では、事業の実施に必要な経費であっても、下記の経費は申請できませんので、お気をつけください。
①本事業の業務を実施するために雇用した者に支払う経費のうち、労働の対価として労働時間に応じて支払う経費以外の経費(雇用関係が生じるような月極の給与、退職金、賞与その他の各種手当)
②事業実施期間中に発生した事故・災害の処理のための経費
③事業終了後も利用可能な汎用性の高い備品の購入経費
④補助対象経費に係る消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額(補助対象経費に含まれる消費税及び地方消費税相当額のうち、消費税法(昭和 63 年法律第108号)の規定により仕入れに係る消費税額として控除できる部分の金額及び当該金額に地方税法(昭和25年法律第 226号)の規定による地方消費税の税率を乗じて得た金額の合計額に補助率を乗じて得た金額をいう。)
⑤国及び独立行政法人の事業による補助金を受けた経費
⑥その他当該事業の実施に関連のない経費
まとめ
令和2年度高品質TMR供給支援対策事業の事業内容を始めとして、事業参加者、手続きの流れ、補助額、補助対象経費について詳しく解説してきました。
令和2年度高品質TMR供給支援対策事業では、TMRセンターが行う調査分析、TMR原料となるサイレージの品質改善等の対策に対して、支援を行っています。
高品質なTMRの安定供給を図る取組や良質粗飼料の増産・供給、飼料自給率を目指しているのなら、これらの補助金を資金調達に繋げて、国内の畜産や酪農経営の生産基盤の強化を築いていきましょう。