手形貸付

手形貸付とは?メリット・デメリットと審査に通るコツ3つを解説

金融機関

企業が実際に行う手形貸付とはどのようなものなのでしょうか?

お金を借りるとき、借用証書の代わりに約束手形を渡したりする事があります。

この場合の貸したお金、借りたお金を、手形貸付金といいます。

今回は、手形貸付の概要とメリット・デメリット、審査に通るための以下3つのコツを紹介していきます。

・銀行との取引実績を高める
・財務内容を健全化する
・保証を受ける

手形貸付の概要

手形貸付

手形貸付とは、お金を借りる方法の一つです。

事業者が資金を調達する際に、”手形”を差し出してお金を借ります。

もし利用するなら仕組みを把握することが大切です。

ここでは銀行融資の種類のひとつ、手形貸付について解説していきます。

手形貸付とは

手形貸付とは、借入用の手形を銀行に差し入れることで融資を受けて資金調達する方法のことです。

手形とは、手形の振出人(支払人)が、所定の期日に決められた金額を支払うことを約束する証書のことです。

手形貸付は1年以内の短期借入で資金調達する際に利用されることが多く、銀行などに自社で手形を振り出し、その手形を担保として融資を受けます。

融資を受けるときには金銭消費貸借契約証書が必要になりますが、手形貸付では担保として差し入れた手形が証書の代わりになります。

手形貸付を利用する前に銀行と契約を結び、その内容に従って手形を振り出す形となるので、利用する都度契約書を交わす必要もありません。

この手形貸付を利用できる場所としては、以下が挙げられるでしょう。

①都市銀行
②地方銀行
③信用金庫
④手形貸付業者

手形貸付もローンや手形割引などと同じように、利用する金融機関によって商品の特徴が異なります。

そのため、各金融機関の情報をきちんと比較した上で、自社にぴったりな手形貸付を選ぶことが重要です。

手形貸付の利息

借入利息については、下記の3つが分かりさえすれば、簡単に算出することが可能です。

借入残高
適用金利(年率)
返済期間
この3つを下記の計算式に当てはめてやれば、簡単に借入利息を算出できます。

利息=(借入残高×金利)÷365日×利用日数

実際に10万円を年18.0%で1か月間借入した場合の利息を求めてみることにします。

その結果は下記の通りです。

10万円×18.0%÷365日×30日=1,479円

この利息計算方法は、借入手段を問わず利用することができるので、覚えておくといいでしょう。

手形貸付の返済方法

利用する金融機関によっても異なりますが、手形貸付では一般的に以下の返済方法が用意されています。

・一括返済
融資の実行時に、全ての利息が差し引かれる返済方法。

・分割返済
毎月の返済日が決められており、その返済日に1ヶ月分の利息を支払う方法。

どちらの返済方法を選ぶのが適切かは、資金計画や資金の用途によって異なります。

手元にある資金に余裕がある場合には一括で返済したほうがいいですし、事業のために手元に現金を残しておきたい場合は分割返済で少しずつ返済するのが適しているでしょう。

手形貸付の返済期間は、基本的には1年間なので、金利も低くなっています。しかし、分割返済による返済負担が増えることには注意が必要です。

つなぎ資金

・商品を仕入れて販売するまで
・商品を販売して売掛金が入金されるまで
・商品を販売して手形が現金化できるまで

の一定期間、資金が不足してしまうケースで「手形貸付」による資金調達が利用されるのです。

手形貸付の審査基準

手形貸付の審査基準として重要なのは、企業の財務状況です。

手形貸付の返済期間は基本的に1年間という短い時間なので、金融機関はその短い期間での返済能力があるかどうかを調べます。

反面、長期融資の審査のように、将来の事業計画についてはそれほど重視されていません。

そのため、手形貸付の審査に受かりやすくするためには、業績が安定している時期に審査を申し込むといいでしょう。

また、資金の用途は明確に伝えること、用途は審査担当者が納得しやすいものにすることも大切です。

また、手形貸付の審査に受かるためには、信用性が重要となります。

そのため、審査を申し込んだ金融機関が初めて利用するところだった場合は審査に受かりにくいです。

申し込みたい金融機関が見つかったら、そことは良好な関係を築いておくことも重要となります。

メリット・デメリット

手形貸付

手形貸付を資金調達の方法として利用する上で、やはり気になるのはメリットのある方法なのか、デメリットはどんなことがあるか、という部分でしょう。

そこで、手形貸付で資金調達することのメリットとデメリットをご説明します。

メリット

〇融資が実行されるまでがはやい
手形貸付は融資が実行されるまでがはやく、多くの金融機関や専門業者で即日融資に対応しています。

すぐに資金調達しなければならないという場面でも対応できる資金調達の方法であることが大きなメリットです。

〇期日前返済が可能
手形貸付は手形期日に一括返済することが前提の貸出形態ですが、期日前に資金余裕ができたときには、前倒して返済することが可能です。

利息については借入時に一括前払いしているため、期日前返済を行うと前払した利息が返還されます。

証書貸付においても期日前返済は可能ですが、違約金を課されるケースが一般的です。

〇金利は低めに設定されることが多い
即日融資が可能な資金調達の方法にビジネスローンなどがありますが、金利が高いので利用しにくいという場合もあるでしょう。

しかし手形貸付は、手形割引やビジネスローンなどよりも金利が低く、どの金融機関を利用するのか、利用する企業の信用力によって3%未満の金利で融資を受けることができる場合もあります。

〇繰り返し利用可能
繰り返し利用できることも大きなメリットです。継続して利用できる資金調達手段を確保しておくことで、万一資金繰りが悪化したり急な資金調達が必要になったときでも対応しやすくなるでしょう。

デメリット

〇不渡りに注意!
小切手や約束手形が期日に決済できないことを「不渡り」といいます。

この「不渡り」はペナルティが非常に大きく、企業にとって絶対に避けるべき行為です。

1回目の不渡りを起こした段階で、その会社が不渡りを出したことがすべての銀行に通知されます。

この時点で、会社の信用は大きく毀損し、ほとんどの銀行は取引を控えるようになります。当然、経営にも多大なる影響を与えることになります。

そうした不利な状態で、半年以内に2回の不渡りを出すと「銀行取引停止処分」が下されます。

企業にとって銀行取引ができなくなることは、呼吸ができないようなものです。こうした理由から、半年に2回の不渡りを出した時点で「事実上の倒産」と認識されます。

〇信用力が高くなければ利用できない
手形貸付を利用する上で必要なのは、金融機関から信用力が高いと認められることです。

一般的な証書貸付とは異なり、手形だけで融資を受けることが可能となるので、信用力が高くなければ利用は断られてしまうでしょう。

〇返済期間が短期
返済期間が1年程度という短期である点もデメリットになることがあります。

余裕を持って返済することができず、短い期間で借りて返すという流れを繰り返すことになってしまうことで、資金繰りがさらに悪化する可能性も考えられます。

手形貸付による融資の審査を突破するコツ

手形貸付

手形貸付の概要が分かったところで、いざ融資の審査を突破しよう、というときにはコツがあります。

以下で説明しますので、ぜひ参考にしてください。

銀行との取引実績を高める

何度も手形貸付を利用する、ということが大事になってきます。

それほど資金難になっていない時でも手形貸付を利用するようにしておくといいと思います。

金融機関と取引実績を重ねることで、金融機関側から信頼されることになります。

さらに自社をよく利用する顧客、といった印象も持たれて率先して対応してくれるようになることも考えられるわけです。

まったく取引実績がない会社に対して貸付を行う、ということは銀行としても二の足を踏むところです。なので利用実績は前もって高めておきましょう。

財務内容を健全化する

手形貸付による融資を受けるためには「リスクが低い企業」と認めてもらわなければなりません。

逆に「リスクが高い企業」と判断されてしまえば借り入れができなくなってしまう可能性が高いわけです。

ではリスクが低い企業と判断してもらうためにはどうしたら良いのでしょうか。

注目するべき点は財務内容です。例えば損失が上回っている場合には、会社から出ていっているお金の方が多い、ということになります。

リスクが高いので、損失が出ているよりは利益が出ている会社の方が評価は受けやすい、ということになります。

一方で債務状況にも気をつけなければなりません。仮に債務が高額になっている場合には、会社から将来的に出ていくキャッシュが大きくなってしまうわけです。

一方で債務が小さい場合には、会社から出ていくキャッシュが少ないということになり、返済がされやすく銀行から評価を得られやすくなります。

ただし財務内容に関しては急にどうこうできるものではありません。

手を付けられるとしたら現金の保有額を大きくする、というものでしょう。売掛金や約束手形などを利用して現金を増やすことで財務内容を健全化するのです。

特に売掛金の売却であるファクタリングであれば、最短即日現金化対応も可能です。

保証を受ける

手形貸付を利用する場合には、保証を受けることも可能です。

保証を受けた上で利用すれば、金融機関側としては極めてリスクが低いことになります。

仮に融資を受けた会社が返済不能に陥ってしまったとしても、補償をしているところから回収をすればよいのです。

手形貸付で保証してくれるところとしては「信用保証協会」があります。

信用保証協会に関しては、中小企業などを中心に借り入れの保証など行っている公的機関となっています。

信用度が高いので、保証された場合にはほぼ100%手形貸付が利用できるようになるのです。

まとめ

手形貸付

いかがでしたか?
今回は手形貸付の概要とメリット・デメリット、審査に通るコツを紹介してきました。

「手形貸付」は、「証書貸付」よりも審査が通りやすいので、中小企業でも利用できる融資方法として普及しています。

しかし、手形は「不渡り」を出すと銀行取引が停止されるという、取り返しのつかない大きなリスクもあるので返済に関しいては、第一優先で考えなければならない資金調達方法でもあるのです。

ただ、簡単に繰り返し手形を振り出すだけで資金調達が可能になり、即日融資も可能であるなど急な資金需要にも対応することができます。

多くのメリットがある資金調達の手法でもあり、その反面、デメリットも抱える資金調達の方法ですので、資金を調達する目的や資金用途などを踏まえた上で利用するか決断するようにしましょう。

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