
緊急時に燃料などを運搬する時に必要になるタンクローリーに、補助金が出ることをご存じでしょうか?
大地震や津波、大型の台風などの災害に見舞われることが多い日本では、災害後にあらゆる手段を尽くしてその復旧にあたります。
災害直後に関しては、被災者に対して食事や毛布、寝床の確保または寒い地域では暖房などもとても重要になってきます。
また、電気が断絶してしまうような災害では、夜間には照明などの設備も必要になります。
そのため、発電機も必要になり、当然動かすためには燃料も必要となってきます。
そういったときに活用できる補助金が、一般社団法人全国石油協会の「災害時に備えた地域におけるエネルギー供給拠点の整備事業」(機動的燃料供給体制等構築支援事業)【緊急配送用タンクローリー用】です。
今回は、災害時に備えた緊急配送用タンクローリー補助金の要点の以下3つを紹介していきます。
①緊急配送用タンクローリー補助金の概要
②補助金受給後に生じる義務
③申請から補助金交付までの流れ
タンクローリーとは
筒形のタンクを背負ったトラックが走っているのをよく見かけると思いますが、それがタンクローリーです。
中にはまるで鏡のように反射して自分自身が見える、といったタイプのものもありますが、塗装されているものとその構造や使途は同じものと考えていいと思います。
緊急配送用タンクローリーと一般のタンクローリーは構造や能力的に変わるところはありませんので、まずタンクローリーとはどんなものかということを紹介させていただきます。
タンクローリーの特徴
タンクローリーは、液体や気体などを運搬するのに特化した特殊用途のトラックのことです。
タンクローリーは、車種などによってその容量などが変わってきますが、大型のものであれば、車両総重量は20,000kg前後となるのが一般的です。
また、タンクの容量は平均14,000L前後で、一般家庭の湯舟に置き換えると、実に約100杯分を運ぶことができます。
タンクローリーの構造
タンクローリーのタンクの中は仕切りが縦に何枚か並べられて、それぞれ独立した部屋になっているので、ガソリンや灯油など種類の違うものを同時に運ぶことができます。
また、タンクローリーは、タンクの形が楕円形、真円、角型の3つに分けられ、楕円タンクは、重心が下がるために危険物を運ぶのによく使われ、真丸タンクは強度が高いので、LPガスなどに使われます。
中には角型タンクというものもあり、これはタンクの上部を広く使うことができるため、主に飼料用として実用的です。
次項から緊急配送用タンクローリー補助金の要点の詳細を3つ紹介していきます。
タンクローリーを所持する業者にとって、必要となりえる補助金となっていますので、いざというときのために素早い体制がとれるようにしておきましょう。
①緊急配送用タンクローリー補助金の概要
緊急配送用タンクローリー補助金は、「災害時に備えた地域におけるエネルギー供給拠点の整備事業」として、災害時にいち早く燃料などを届けるために、「緊急配送用タンクローリー」を配置した時に生じた経費に対して、その経費に掛かった一部を補助するというものです。
申請者資格
緊急配送用タンクローリー補助金の申請者資格は、品確法登録給油所を運営する揮発油販売業者と消防法に規定する石油製品(ガソリンや軽油等)を貯蔵する貯蔵所及び取扱所を運営する揮発油販売業者および石油販売業者の3者となっています。
また、申請時にメールアドレスを登録できない場合は受付してくれないので、メールアドレスは事前にしっかりと石油組合に登録しておきましょう。
災害対応要件
緊急配送用タンクローリー補助金の災害対応要件は厳密に決められていて、以下6つの要素から成り立っています。
⑴石油などの配送が難しくなった場合を除き、被害地などへの供給を継続すること。
⑵病院などの施設や電源車など重要なところへの供給または国などの要請に協力すること。
⑶運営する給油所等で大地震や津波、洪水などの大きな災害が発生したとき、並びに資源エネルギー庁からの要請があったときは、「災害時情報収集システム」によって、いち早く被害状況の報告をすること。
⑷対象となるタンクローリーの情報について登録して、その情報を災害に対応しているもの同士で共有すること。
⑸資源エネルギー庁の実施する「災害時情報収集システム」の報告訓練に協力すること。
⑹緊急配送用タンクローリーは、各石油組合の管理下に置き、災害が生じたときに石油組合と連携して燃料の供給をすること。
と、なっています。
流れとして災害が生じたときは、まず国や自治体、石油協会が地域の石油組合に要請し、それから各事業者に要請が入る、というよう形になります。
また、情報提供、または情報共有はとても大事で、石油組合に対して適切に行うことが必要です。
補助の対象となる経費
緊急配送用タンクローリー補助金の補助の対象となる経費は、大まかに分けて3つあり、車両本体・タンク本体などの「本体購入費」と書類作成費などの「代行手続費」と「消防納付金」となっています。
また、緊急配送用タンクローリーは中古でも対象となりますが、分割払いによる購入またはリースなどでの導入は出来ないと定められています。
補助率・補助金上限額
緊急配送用タンクローリー補助金の補助率・補助限度額は以下の表の通りとなります。
タンクの容量 | 補助限度額 | 補助率 |
10KL未満 | 400万円 | 1/2以下 |
10KL以上 | 1,000万円 |
予算を上回る申請の数があった場合、補助率を1/2以下に按分することになるため、補助限度額が400万円または1,000万円とならない場合も出てきます。
注意事項
緊急配送用タンクローリー補助金の注意点としてまず挙げられるのが、1事業者に対して1台限りの申請となることです。
次に、発注先との契約は、全国石油協会から送られてくる交付決定通知書の日付以降で行う必要があります。
その前に交わした契約に関しては補助の対象から外れてしまいます。
また、緊急配送用タンクローリー補助事業に係る経理は、補助金以外の経理と区別して揃えて、その収支を会計帳簿などによって明確にしていなければなりません。
更に、会計帳簿及や収支に関する証拠書類においては、緊急配送用タンクローリー補助事業が完了した日からの会計年度の終了後5年間は保存しておかなければならなく、国や石油協会、石油組合から要求されたときは、いかなる時でも提出や閲覧ができるようにしておくことが必要です。
②補助金受給後に生じる義務
緊急配送用タンクローリーの補助金受給後に生じる義務は、「財産管理」と「法令順守義務」の二つのカテゴリーから成り立っています。
財産管理の義務
補助金を受給した申請者は、購入した緊急配送用タンクローリーについて、処分期間中に財産を管理管理する義務があります。
内容としては、「取得財産等管理台帳」「取得財産等管理明細表」を作成して保管しておくことが必要で、「取得財産等管理明細表」においては毎年度の更新をしなくてはならない、ということです。
また、緊急配送用タンクローリーは、許可なく処分することはできません。
処分制限期間は、排気量が2リットル以下の場合3年で、それ以外は4年となっています。
万一処分してしまったときは、緊急配送用タンクローリーにかかった経費を全国石油協会を通じて国に返納しなくてはならない義務が発生してしまします。
法令順守義務
交付申請書などに添付する誓約書の内容は、補助金の交付を受けた年度末まで、要件を満たす必要があります。
補助金の交付前後に関わらず会社の名称変更や代表者変更などがあった場合、全国石油協会や所属の石油組合に報告しなくてはいけません。
当然のことですが、虚偽の事業内容の申請や補助金の重複受給などを不正受給を行ってしまったときは、補助金の返還や加算金の納付を負わされることになります。
③申請から補助金交付までの流れ
緊急配送用タンクローリー補助金の流れとしては、まず申請者が交付申請を石油組合に行い、石油組合から石油協会に渡ります。
その後、交付決定通知書が石油協会から石油組合にわたり、申請者に届き、そこで契約、発注が行われます。
被災地などに燃料を運ぶなど補助金の対象になる活動をした後に、実績報告書を申請者が、石油組合に渡し、石油組合から石油協会に渡ります。
補助金の額が決まると、補助金額確定通知書が石油協会→石油組合→申請者の順番で渡ってきます。
その後、支払い請求書を申請者から石油組合に渡して、石油組合から石油協会に届けられます。
最後に、補助金の交付が、石油協会から申請者に渡る、といった形になります。
交付申請に必要な書類
緊急配送用タンクローリー補助金の交付申請に必要な書類の各様式は全国石油協会ホームページからダウンロードすることができます。
申請書は、補助金交付申請書、申請資格要件に係る誓約書、取得財産等の管理・処分に関する誓約書、申請者の役員等名簿、緊急配送用タンクローリーの適正利用に係る誓約書、暴力団排除に関する誓約書、災害発生時の対応に関する誓約書、災害時の配送状況報告にかかる誓約書、緊急通行車両等、届出に関する同意書、を所属の石油組合へ提出しなければなりません。
また、実際に被害地などへ赴き、燃料補給などを行った後は、実績報告書、取得財産等管理台帳、取得財産等管理明細表、取得財産等管理明細表、補助金支払請求書の提出が必要となります。
他にも、工事内容の変更などが必要なときは、計画変更等承認申請書の提出、住所や社名、代表者などが変更したときは、変更届出書を提出しなければなりません。
緊急配送用タンクローリー補助金は大きな金額を補助するというものですから、石油協会側も慎重に審査します。なので、提出書類や、義務の行使など、不備が無いように努めなければいけません。
まとめ
今回は、災害時に備えた緊急配送用タンクローリー補助金の要点3つからなる、緊急配送用タンクローリー補助金の概要、補助金受給後に生じる義務、申請から補助金交付までの流れを紹介してきました。
タンクローリーは災害時に燃料を運ぶ、といったことだけではなく、断水時の飲料水の補給や、食品などの運搬でも活躍できます。
補助金受給後に生じる義務の項でも触れましたが、補助支給に関する義務を怠った場合や要件を満たすことができなかった場合は、補助金の対象から外れてしまいますので特に注意が必要になります。しっかりと要件を満たしていきましょう。
災害時の円滑な物資の補給はとても大事なことです。タンクローリーを所有している業者に支援の要請が入ることもあるので、ぜひとも力になって頂きたいと思います。
また、そのような災害の状況に陥った時はトラック業者だけでなく、様々な業種の力が必要になってきます。
災害時、皆が手を組んで被害からの復興を目指せる社会がこの先増々要望されるでしょう。