国は障がいを持っている方でも能力と適性に応じた雇用につき、地域で自立した生活を送る社会の実現を目指しています。
それに伴い一定の規模以上の企業は法定雇用率以上の障がい者雇用が義務づけられました。
しかし、初めて障がい者を持った方を雇ったり、雇い続けていくことに企業は不安を感じているのではないでしょうか?
そこで、こちらでは障がい者雇用の制度に加えて、就労移行や雇い入れる時に利用できるトライアル補助金等を紹介していきます。
障がい者の雇用を検討している方や不安を感じている方は、ぜひご覧ください。
INDEX
障がい者を雇う前に知っておきたい障害者雇用制度
日本国憲法では、障害のある人の就労支援に関して「すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」とされており、障害の有無に関わらず働く権利と義務を持っている記されています。
しかし、障害のある人は障害のない人と比べると不利になってしまい、働く機会を得ることは難しいと言えるでしょう。
そこで、「障害者雇用促進法」により障がいのある人に雇用機会が得られるような様々な促進策として、雇用率制度、納付金制度、職業リハビリステーションが講じられるようになりました。
次に、障害者雇用率制度と障害者雇用納付金制度を詳しくみてみましょう。
障害者雇用率制度
障害者雇用率制度では、身体障害者や知的障害者に対して、障害のない人と同水準の雇用の保障をするために設けられた制度です。
一般労働者事業の常用労働者数と失業者数の状態に対応した設定がされ、事業主は法定雇用
障害者数以上の身体障害者または知的障害者の雇用をしなければなりません。
ただし、精神障害者については現在のところ対象には含まれていませんが、身体障害者と知的障害者と見なされて、雇用障害者数に加えられる「みなし雇用」として位置づけられています。
◆現在の法定雇用率 1.8%
◆常用労働者数が56人以上となれば、1人の障害者の雇用義務が生じることになる
障害者雇用納付金制度
障害者雇用納付金制度は、障がい者を雇用する企業の差を調整するとともに、障害者の雇用促進を図るために設けられています。
納付金額は法定雇用率に対して1人不足すると月額50,000円となり、法定雇用障害者数に満たない人数分を支払うことになります。
◆1人不足すると月額50,000円の支払い
◆法定雇用障害者に満たない人数分を支払う
◆納付金を支払っても雇用義務は免除にならない
就労移行で利用できる補助金
障がい者の方を雇うことは、生活リズムとしての作業や一般就労に向けた準備訓練などを混在し、福祉から就労へ移行へが難しくなっています。
このような傾向をなくすために、福祉から一般就労への移行を促進する就労移行事業が設けられ、中間ステップアップの環境や職業適性、適した職場などを見つけるマッチング機能など、様々な支援が用意されています。
次に、就労移行事業で実施しているトライアル雇用、特定求職者用開発助成金をご紹介していきます。
障害者トライアルコース
トライアル雇用とは、雇用契約のある短期間(原則3ヶ月)の試行雇用(トライアル雇用)を通じて、障害のある方の職場や業務適性を見極めるための制度です。
短期間となるトライアル雇用期間後に適性判断をしてから正規雇用への移行となり、移行しなかった場合にも解雇にはなりませんので、企業は安心してトライアル雇用を行っていけるでしょう。
また、障害のある方にとっても、企業との相性を確認してから正式な雇用へ移行する事ができるメリットもあります。
主な受給要件
障害者トライアルコースの主な受給するには下記の対象労働者を、雇入れ条件により雇い入れた場合に受給することができます。
◆対象労働者
下記の①②両方に該当する者である方が対象となります。
①継続雇用する労働者としての雇入れを希望している者であって、障害者トライアル雇用制度を理解した上で、障害者トライアル雇用による雇入れについても希望している者
②障害者雇用促進法に規定する障害者のうち、次のア~エのいずれかに該当する者
ア紹介日において就労の経験のない職業に就くことを希望する者
イ紹介日前2年以内に、離職が2回以上または転職が2回以上ある者
ウ紹介日前において離職している期間が6カ月を超えている者
エ重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
◆雇入れの条件
①ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
②障害者トライアル雇用等の期間について、雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと
支給額
障害者トライアルコースの支給額は下記の通りとなります。
◆支給対象者1人につき
①対象労働者が精神障害者の場合、月額最大8万円を3ヶ月、月額最大4万円を3か月(最長6ヶ月間)
② ①以外の場合、月額最大4万円(最長3か月間)
障害者短時間トライアルコース
障害者短時間トライアルコースは、継続雇用する労働者として雇用することを目的に、障害者を一定の期間を定めて試行的に雇用するコースです。
雇入れ時の週の所定労働時間を10時間以上20時間未満とし、障害者の職場適応状況や体調等に応じて、同期間中にこれを20時間以上とすることを目指すものとしています。
主な受給要件
障害者短時間トライアルコースの主な受給要件は、下記の対象労働者を、雇入れ条件で雇用した場合に受給することができます。
◆.対象労働者
本助成金における「対象労働者」は、継続雇用する労働者としての雇入れを希望している者であって、障害者短時間トライアル雇用制度を理解した上で、障害者短時間トライアル雇用による雇入れについても希望している精神障害者または発達障害者が対象となります。
◆雇入れの条件
対象労働者を次の①と②の条件によって雇い入れること
①ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
②3か月から12か月間の短時間トライアル雇用をすること
受給額
障害者短時間トライアルコースの受給額は下記の通りとなります。
◆支給対象者1人につき月額最大4万円 (最長12か月間)
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、ハローワークなどより身体障害者や知的障害者、または精神障害者を雇い入れる事業主に対して行われる助成金です。
障害者に支払った賃金の一部を助成してもらえます。
特定求職者雇用開発助成金には、「特定就職困難者コース」「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」「障害初回雇用コース」の3つのコースが設けられています。
補助対象要件
特定求職者雇用開発助成金「特定就職困難者コース」の主な要件は下記のいずれも満たすことが条件となります。
◆対象労働者を常用雇用者として雇い入れ、助成金の支給終了後も引き続き相当期間雇用することが確実であること
◆対象労働者の雇い入れ日の前日から起算して、6ヶ月前の日から1年を経過した日までの間に事業所で雇用する労働者を事業主都合により離職させたことがないこと
◆対象労働者の雇い入れ日の前日から起算して、6ヶ月前の日から1年を経過した日までの間に離職したもののうち、特定受給資格者(解雇等により再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされたもの)を一定数以上出していないこと
◆過去3年間において、当該事業所で就労した者を雇い入れる場合でないこと
◆対象者はハローワーク、または都道府県労働局長が認める有料・無料職業紹介を経ていること
「特定就職困難者コース」の支給額
特定求職者雇用開発助成金「特定就職困難者コース」の支給額は、下記の表の通りとなります。
対象労働者 | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期間ごとの支給額 | |
短時間労働者以外の者 | 高齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等 | 60万円(50万円) | 1年(1年) | 30万円×2期 (25万×2期) |
重度障害者等を除く身体・知的障害者 | 120万円(50万円) | 2年(1年) | 30万円×2期 (25万×2期) |
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重度障害者等 | 240万円(100万円) | 3年(1年6ヶ月) | 40万円×6期 (33万×3期) |
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短期労働者 | 高齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等 | 40万円(30万円) | 1年(1年) | 20万円×2期 (15万×2期) |
重度障害者を含む身体、知的、精神障害者 | 80万円(30万円) | 2年(1年) | 20万円×4期 (15万×2期) |
()内は、中小企業事業主以外に対する、支給額と助成対象期間となります。
なお、重度障害者等とは、重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者及び精神障害者をいいます。
短時間労働者とは、一週間の所定労働時間が、20時間以上30時間未満である者をさしています。
特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)
特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)は、障害者雇用の経験のない中小企業(障害者の雇用義務制度の対象となる労働者数45.5~300人の中小企業)が利用できる助成金です。
対象となる企業が障害者を初めて雇用し、当該雇入れによって法定雇用率を達成する場合に助成しています。
中小企業における障害者雇用の促進を図ることを目的とした助成事業です。
主な受給要件
特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)を受給するためには、下記の要件を満たす必要があります。
◆支給申請時点で、雇用する常用労働者数が45.5人~300人の事業主であること。
◆初めて身体障害者、知的障害者及び精神障害者(以下「対象労働者」といいます。)を雇い入れ、1人目の対象労働者を雇い入れた日の翌日から起算して3か月後の日までの間に、雇い入れた対象労働者の数が障害者雇用促進法第43条第1項に規 定する法定雇用障害者数以上となって、法定雇用率を達成すること。
◆1人目の支給対象者の雇入れの日の前日までの過去3年間に、対象労働者について雇用実績がない事業主であること。
なお、短時間労働者として雇い入れる場合は2人(重度身体障害者又は重度知的障害者を短時間労働者として雇い入れる場合は1人)で1人分としてカウントされますので、ご注意ください。
受給額
特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)の受給額は下記の通りとなります。
◆受給額 120万円
まとめ
障がい者を雇用することは難しいですが、国では企業の規模に応じて障害のある方を雇い入れる制度を設けています。
初めて障がい者を雇い入れる企業や不安だという場合には、就労移行支援として行われている「障害者トライアルコース」「障害者短時間トライアルコース」を活用して、トライアルができる有利な雇用をお試しください。
また、特定求職者雇用開発助成金の「特定就職困難者コース」や「障害者初回雇用コース」でも障がい者を雇い入れる企業への補助を行っていますので、障がい者を受け入れる際には積極的に活用するとよいでしょう。
申請し忘れることなく、これらの補助を事業の発展や継続に役立てていきましょう。