近年では、日本だけでなく世界規模でさまざまな環境問題が問題視されています。
そして、日本は国を上げて省エネ社会を目指しています。
代表的な事業として、蓄電池システム、HEMS(家庭用エネルギー管理システム)の導入支援、太陽光を中心とした再生可能エネルギーなど、様々な対策が進められています。
そして、省エネを進めていくうえで要になるのが、数々の補助金制度です。
事業者向け補助金制度の中でも規模の大きなものに「エネルギー使用合理化補助金」がありますが、規模が大きい分、申請書類が膨大であり、また複雑な手続きが必要です。
一方、補助金額の規模は下回るものの、より申請しやすい事業者向けのものがあります。
それが、「地域工場・中小企業の省エネルギー設備導入補助金」です。
今回は、工場なので利用できる補助金を紹介します。
地域工場・中小企業の省エネルギー設備導入補助金の目的
「地域工場・中小企業の省エネルギー設備導入補助金」とは、地域の工場、店舗、中小企業オフィスに対して省エネ設備の導入を支援するための補助金制度で、経済産業省によって制定されたものです。
予算額は929.5億円で、大きめといえます。
この補助金制度の目的は省エネ社会を推進することと経済活動を活性化させることにあり、その成果目標として次のように定められています。
補助金交付の対象は事業を運営する法人と個人事業主であり、補助対象経費下限額が100万円となっています。
他の大型補助金と比較して申請しやすいものとなっているようです。
なお、補助金申請の処理や補助金交付を実際に行う主体は、SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)になります。
したがって、同補助金を希望する場合は、SIIに対して申請を行うことになります。
また、同補助金制度は、A類型とB類型に別れており、それぞれの型に応じて補助金額や条件が異なっています。
次に、A類型とB類型のそれぞれの特徴をご紹介します。
A類型(最新モデルの省エネ機器等の導入支援)とは
A類型は「最新モデルの省エネ機器等の導入支援」として位置づけられ、資源エネルギー庁の公開資料によれば、次のように説明されています。
「①最新モデルかつ②旧モデルと比較して年平均1%以上の省エネ性能の向上が確認できる機器等の導入を支援します。」
A類型の補助率は、補助対象経費の1/3以内が基本となり、中小企業やエネルギー多消費企業であれば1/2以内と定められています。
なお、対象経費下限は、補助率1/3以内の場合は150万円、補助率1/2以内の場合は100万円と定められています。
1事業所あたりの補助金額上限は1.5億円で、下限は50万円となっています。
申請が採択されるには、導入機器が最新モデルであることや、年平均1%以上の省エネ性能が向上できること、さらにSIIが指定するカテゴリの機器であることや、SII指定の証明書発行団体から「性能証明書」を発行してもらう必要もあります。
A類型の注意事項としては、補助対象が設備費のみとなっていることです。
したがって、設計費、工事費等に対しては補助金が交付されないため注意が必要です。
B類型(地域の工場・オフィス・店舗等の省エネ促進)とは
B類型は、「地域の工場・オフィス・店舗等の省エネ促進」と位置づけられ、資源エネルギー庁では次のように説明されています。
「工場・オフィス・店舗等の省エネや電力ピーク対策、エネルギーマネジメントに役立つ既存設備等の改修・更新を支援します。」
B類型の補助率については、エネマネ事業者の活用や事業者区分により異なっています。
B類型とエネマネ事業者の関係性
エネマネ事業者とは、EMS(エネルギー管理システム)を導入した工場や事業所に対して省エネルギー支援を行う事業者であり、SIIに事業者登録されています。
■1.エネマネ事業者を活用する場合
・個人事業主を含む中小企業者、またはエネルギー多消費企業
補助率=補助対象経費の1/2以内
・その他事業者
補助率=補助対象経費の1/3以内
■2.エネマネ事業者を活用しない場合
・個人事業主を含む中小企業者、またはエネルギー多消費企業
補助率=補助対象経費の2/3以内
・その他事業者
補助率=補助対象経費の1/2以内
なお、1事業あたりの補助金額上限および下限は次のように定められています。
・上限:50億円
・下限:100万円(補助金100万円未満は対象外)
(補助率1/3の場合は補助対象経費300万円以上、1/2の場合は200万円以上、2/3の場合は150万円以上)
B類型の申請が採択されるには、既存の設備を省エネ設備に置き換えること、あるいは製造プロセスの改善によって省エネ効果が見込めることが求められます。
また、事業開始後は、省エネ効果の測定を行い、SIIに対して実施報告を提出することも義務付けられます。
なお、A類型とは異なり、設備の費用はもちろん、その他に工事費や設計費も補助金交付の対象となります。
「地域工場・中小企業に対する省エネ補助金」は2019年の受付は終了
今回ご紹介した補助金制度は、2019年10月現在ではすでに申込受付が終了しています。
しかし、近年の日本では、国を中心に省エネ社会と経済活動の活性化を推し進めており、さらに、他の省エネ関連の補助金制度は毎年のように公募が行われています。
したがって、今年度以降も今回ご紹介した「地域工場・中小企業の省エネルギー設備導入補助金」や、あるいはそれに準じた公募が行われる可能性が十分に考えられます。
随時、工場などの産業の補助金は、注目していきましょう。
2019年にも使える省エネ関連の補助金
「エネルギー使用合理化補助金」は、毎年おこなわれている補助金ではありませんが、省エネの補助金は他にもたくさんあります。
うまく使い設備投資を抑えながら、最新のエコシステムを導入しましょう。
ここからは、2019年に使える補助金を紹介させていただきます。
電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金の概要
2019年度に公開された「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」はエネ合補助金に似たものになっていますが、いくつかの相違点によって活用状況が分かれていく模様です。
(1)区分
■工場・事業場単位
既設設備やシステムの改善、プロセスの改善、エネルギーマネジメントシステムの導入等によって工場や事業場等における省エネルギー化を行う事業
(a)省電力設備導入事業:省電力設備への更新等により電力使用量を10%削減
(b)エネマネ事業:エネマネ事業者と契約+EMS制御、運用改善等で省エネ率2%以上
■設備単位
以下の既存設備を一定以上の省エネ性能を有するものに更新する事業
①高効率照明、②高効率空調、③産業ヒートポンプ、④業務用給湯器、⑤高性能ボイラ
⑥低炭素工業炉、⑦変圧器、⑧冷凍冷蔵庫、⑨産業用モータ
(2)補助対象経費
■工場・事業場単位
こちらの区分では、「設計費」、「設備費」、「工事費」が補助対象経費となります
■設備単位
設備単位の場合、補助対象経費となるのは「設備費」のみです
(3)補助金交付額
■工場・事業場単位
区分Ⅰ・区分Ⅱともに、補助対象経費と認められた金額×[1/3]が一般的なものです
エネマネ事業者を活用する場合、補助対象経費と認められた金額×[1/2]にアップします
■設備単位
[1/3]です(大企業も対象になります)
LED照明は電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金になる
近年では、省エネの代表格になったLED照明です。
今や蛍光灯や電球に置き換わる勢いで普及が進んでいます。
用途も幅広く、テレビやモニターのバックライトや信号機の中にも使われ始めています。
消費電力が少なく、長寿命が特徴です。
従来の蛍光灯や白熱電球よりも、省エネでなおかつ、長期間使うことができる優れものです。
工場や倉庫などで、長時間電気を使うということであれば、ハロゲンなどを使っていると思いますが、電気代は驚くほど異なります。
住宅用照明を用いてランニングコスト(年間2000時間、10年間、27円/kwh)で比較すると、例えば白熱のダウンライトを10年間使用した場合は29,160円です。
一方、LED照明を10年間使用した場合は2,920円です。白熱電球と比較すれば、電気代が約1/10に縮小されることになります。
また、10年間で白熱電球は9回の交換が必要で、3,300円が交換の費用としてかかりますが、LEDは10年間交換する必要がありません。つまり、その間の交換費用は0円となります。
白熱電球から変えるだけでこれだけのメリットがあるということは、ワット数が大きいオフィス用の蛍光灯や工場用のライトと比較すれば、よりコストメリットが出るでしょう。
電球や蛍光灯を多く使っていれば使っているほど効果がでるのですが、実際のところはまだ導入が進んでいません。
その原因となっているのが、初期投資の負担です。LEDは、消費電力が少なく長寿命というメリットがありランニングコストを抑えることができますが、一本あたりのコストは蛍光灯や白熱電球の何倍以上もします。
一本や二本なら試しに導入を検討できますが、オフィスや工場には何千本という蛍光灯や電球が使われています。
つまり、ランニングコストでメリットが出ることは徐々に浸透してきているにもかかわらず、初期投資の大きさが導入の妨げになっているということです。
このような状況を踏まえ、小規模地方公共団体や商店街の街路灯等のLED照明導入の支援を行い、地域一体となった低炭素社会の実現を後押しする制度がLED照明導入補助金です。
まとめ
今回は、地域工場・中小企業の省エネルギー設備導入補助金をご紹介しました。
今後も同制度または類似の制度が制定される可能性がありますが、A類型については早期に予算額を超過したため早々に申し込み終了となり、したがって、今後は申請方法や条件に何らかの変更が加えられるかもしれません。
それでも、補助金交付の基本的な枠組みは大きくは変わらないでしょう。
また、今年分のLED導入補助金の電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金です。
このような補助金があるということだけでも、頭の片隅に置いておき次回の公募が開始される時期になる頃から、環境省のホームページを逐一確認するようにしましょう。
補助金の申請には手間がかかりますが、それに見合うだけのお金が補助金として返ってきます。
LEDの場合は、ランニングコストで電気代が大幅に下がることもあり、初期投資を補助してくれる補助金はありがたいこと間違いなしです。
ぜひ、リアルタイムの情報を確認して検討してみてください。