
キャリアアップ助成金は取り組み内容によりコースが分かれていることをご存じですか?
キャリアアップ助成金で用意されているコースには大きく分けて正社員化コース・人材育成コース・処遇改善コースがあります。
今回はそのうちの処遇改善コースの3つについて紹介していきます。
①賃金規定等改定コース
②賃金規定等共通化コース
③短時間労働者の労働時間延長コース
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金とは、いわゆる非正規雇用労働者(有期契約労働者等)のキャリアアップを促進する取り組みを実施した事業主に対して助成金が支払われるという制度です。
助成金なので、返済不要の国からの資金調達制度です。
中小企業事業主の範囲
キャリアアップ助成金での中小企業事業主の範囲は以下の通りです。
〇小売業(飲食店含む)
・資本金の額:5,000万円以下 又は
・常時雇用する従業員の数:50人以下
〇サービス業
・資本金の額:5,000万円以下 又は
・常時雇用する従業員の数:100人以下
〇卸売業
・資本金の額:1億円以下 又は
・常時雇用する従業員の数:100人以下
〇その他の業種
・資本金の額:3億円以下 又は
・常時雇用する従業員の数:300人以下
①賃金規定等改定コース
賃金規定等改定コースは、すべてまたは雇用形態別や職種別など一部の有期契約労働者を対象に、基本給の賃金規定などを2%以上増額し、昇給させた場合に助成されます。
対象労働者
次の⑴~⑸のすべてに該当する労働者です。
⑴ 就業規則などにより、雇用するすべてまたは一部の有期契約労働者等に適用される賃金規定を、増額改定した日の前日から起算して3カ月以上前の日から増額改定後6カ月以上の期間、継続雇用されている有期契約労働者等であること。
⑵ 増額改定した賃金規定等を適用され、かつ、増額改定前の基本給に比べて2%以上昇給(中小企業は3%以上)していること。
⑶ 賃金規定等を増額改定した日以降の6カ月間、雇用保険被保険者であること。
⑷賃金規定等の増額改定を行った事業所の事業主または取締役の3親等内の親族以外の者であること。
⑸ 支給申請日において、離職していないこと。
助成額
○増額既定の対象となる有期契約者等の人数に応じ、以下の表の助成額となります。
○ その他、
・中小企業において「3%以上」の増額改定を行った場合は、以下の金額を加算
すべての有期契約労働者等を対象とした増額改定: 1人あたり14,250円<18,000円>
一部の有期契約労働者等を対象とした増額改定 : 1人あたり7,600円<9,600円>
・職務評価を実施し、賃金規定等を増額改定した場合は、以下の金額が加算されます。
1事業所当たり190,000円<240,000円>(142,500円<180,000円>)
※()内の数字は大企業の場合
■すべての有期契約労働者等を対象とした 賃金規定等改定
対象労働者数 | 中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 |
1人~3人 | 95,000円<120,000円> | 71,250円<90,000円> | 47,500円<60,000円> | 33,250円<42,000円> |
4人~6人 | 190,000円<240,000円> | 142,500円<180,000円> | 95,000円<120,000円> | 71,250円<90,000円> |
7人~10人 | 285,000円<360,000円> | 190,000円<240,000円> | 142,500円<180,000円> | 71,250円<90,000円> |
11人~100人 | 313,500円~2,850,000円 | 209,000円~1,900,000円 | 156,750円~1,425,000円 | 104,500円~950,000円 |
■雇用形態・職種別など一部の有期契約労働者等を対象とした 賃金規定
対象労働者数 | 中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 |
1人~3人 | 95,000円<120,000円> | 71,250円<90,000円> | 47,500円<60,000円> | 33,250円<42,000円> |
4人~6人 | 190,000円<240,000円> | 142,500円<180,000円> | 95,000円<120,000円> | 71,250円<90,000円> |
7人~10人 | 285,000円<360,000円> | 190,000円<240,000円> | 142,500円<180,000円> | 71,250円<90,000円> |
11人~100人 | 313,500円~2,850,000円 | 209,000円~1,900,000円 | 156,750円~1,425,000円 | 104,500円~950,000円 |
※<>内の数字は生産性要件を満たした場合
○ その上で対象労働者の賃金規定等を改定した後6か月分の賃金を支給した 日の翌日から起算して2か月以内に申請してください。
必要書類
⑴キャリアアップ計画書
⑵労働協約又は就業規則
⑶賃金規定等
⑷対象労働者の賃金台帳
⑸対象労働者の出勤簿又はタイムカード
⑹対象労働者の雇用契約書又は労働条件通知書等
⑺中小企業事業主であることを確認できる書類
支給決定までの流れ
⑴キャリアアップ計画の作成・提出
雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置するとともに、労働組合等の意見を聴いて「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局長の認定を受けます。
⑵賃金規定等の増額改定の実施
増額改定後の雇用契約書や労働条件通知書を対象労働者に交付し、当該賃金規定等に属する有期契約労働者等が昇給している必要があります。
⑶増額改定後の賃金に基づき6か月分の賃金を支給・支給申請
増額改定後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請してください。
⑷ 支給決定
②賃金規定等共通化コース
賃金規定等改定コースは、すべてまたは一部の有期契約労働者等を対象に、基本給の賃金を2%以上増額改定し、昇給させた場合に助成されます。
助成額
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の支給額
■すべての有期契約労働者等の賃金規定等を2%以上増額改定した場合
対象労働者数 | 中小企業 | 大企業 |
1人~3人 | 95,000円<12万円> | 71,250円<90,000円> |
4人~6人 | 19万円<24万円> | 14万2,500円<18万円> |
7人~10人 | 28万5,000円<36万円> | 19万円<24万円> |
11人~100人 | 1人当たり28,500円<36,000円> | 1人当たり19,000円<24,000円> |
■一部の有期契約労働者等の賃金規定等を2%以上増額改定した場合
対象労働者数 | 中小企業 | 大企業 |
1人~3人 | 47,500円<60,000円> | 33,250円<42,000円> |
4人~6人 | 95,000円<12万円> | 71,250円<90,000円> |
7人~10人 | 14万2,500円<18万円> | 95,000円<12万円> |
11人~100人 | 1人当たり14,250円<18,000円> | 1人当たり7,600円<9,600円> |
職務評価加算
賃金規定等改定に当たって「職務評価」を活用した場合は、職務評価加算を受けることができます。
パートやアルバイト等の責任の程度など、待遇のバランスが取れるよう、職務評価の活用をお勧めします。
職務評価とは
職務評価とは、業務内容や責任の程度などの職務の大きさを比較し、その職務に従事する労働者の待遇が、職務の大きさに応じたものとなっているかどうか、現状を把握することをいいます。
職務評価加算を受ける際の職務評価の手法は、
・序列法
(最もシンプルな方法は序列法です。これは順序をつけることで格付けを実施する方法です。)
・分類法
(職階をまずは設定します。そしてそれぞれの職階に各職務を振り分けていきます。)
・要素比較法
(要素条件を設定して、それを基準にして評価するアプローチです。要素条件には知力や熟練度などが候補に挙がります。)
・要素別点数法
(いくつかの項目を設定して、それぞれの採点をして最終的な評価を決める手法です。)
がありますが、どの手法を選択しても構いません。
職務評価の実施
〇職務評価を実施するパートタイム労働者や正社員を決定します。
職務評価加算の申請については、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の申請対象となる労働者全員を対象に職務評価を実施することが最低限必要です。
正社員については、加算の申請の要件ではありませんが、均等・均衡待遇のチェックのためにも、同じ基準で職務評価を行ってみることをお勧めします。
〇対象とする労働者の従事している仕事を、職務(役割)評価表で定めた評価項目毎に、スケールを採点し、ウェイトにスケールをかけて、評価項目毎のポイントを算出します。
ポイントを合計したものが、対象の労働者の職務評価ポイントになります。
③短時間労働者の労働時間延長コース
雇用する有期契約労働者等について、週所定労働時間を5時間以上延長を1時間以上5時間未満延長するとともに賃金規定等改定コースの実施により処遇の改善を図り、有期契約労働者等を社会保険の被保険者とした場合に助成されます。
対象労働者
短時間労働者の労働時間延長コースにおける「対象労働者」は、申請事業主が雇用する次の(1)~(5)のすべてに該当する労働者です。
(1)申請事業主に雇用されている有期契約労働者等であること
(2)週所定労働時間を5時間以上延長した日の前日から起算して6か月以上の期間継続して、有期契約労働者等として雇用された者であること 等
(3)週所定労働時間が延長された日の前日から起算して過去6か月間、社会保険の適用を受けていなかった者であること
(4)週所定労働時間の延長を行った事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること
(5)支給申請日において離職していない者であること
支給額
(1)短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し新たに社会保険に適用した場合 1人当たり:20万円(15万円)
(2)処遇改善コース(賃金規定等改定)と併せて労働者の手取り収入が減少しないように週所定労働時間を延長し、新たに社会保険に適用した場合、
1人当たり
1時間以上2時間未満:4万円(3万円)
2時間以上3時間未満:8万円(6万円)
3時間以上4時間未満:12万円(9万円)
4時間以上5時間未満:16万円(12万円)
※ ( )内は中小企業以外の額
となります。
受給手続
短時間労働者の労働時間延長コースを受給しようとする事業主は、次の1~2の順に手続きをしてください。
⑴キャリアアップ計画の提出
ガイドラインに沿ってキャリアアップ計画を作成し、労働時間延長を実施する日までに、必要な書類を添えて、管轄の労働局に提出し、管轄の労働局長の認定を受けてください。
⑵支給申請
基準日(労働時間を延長した後、6か月分の賃金(時間外手当等を含む)を支払った日)の翌日から起算して2か月以内に、「支給申請書」に必要な書類を添えて、管轄の労働局へ支給申請してください。
まとめ
いかがでしたか?今回はキャリアアップ助成金の中の処遇改善コースの3つを紹介してきました。
従業員のスキルアップは会社にとって有意義であり、売り上げ向上につながります。
それを実現するのに一役買う助成金は是非とも受けたいものです。
しかし、助成金は受給までに時間がかかったり、必要書類の準備など結構手間のかかるものです。
そんな時は社労士などの手を借りるという選択肢もありますので、まずは具体的に取り組んでみてはいかがでしょうか。