日本政策金融公庫 借金 時効

日本政策金融公庫の借金や融資の時効期限や法律に要点5選

日本政策金融公庫

起業する際に、日本政策金融公庫から融資をしたが、商売がうまくいかず借金を背負ってしまう方も少なくは無いでしょう。

しかし、そんな借金でも時効が存在する事を知っていますか?

借金というのは、絶対に返さなくてはいけないものです。

しかし、生活が困難になりどうしようも無い状態もあるでしょう。そこで今回は、日本政策金融公庫の借金や融資の時効期限や法律に要点を紹介します。

借金の消滅時効期間の概要

日本政策金融公庫 借金 時効
借金は、弁済期又は最後の返済から一定の期間が経過すると消滅時効が成立します。

その期間は、貸主か借主のいずれかが商法上の商人であれば、商事債権(商法522条)として5年となり、いずれも商人でない場合には一般的な債権として10年(民法167条)となります。

したがって、消滅時効期間を判断する際には、貸主が商人であるか、借主が商人であるかどうかがポイントとなります。

※民法改正(2020年4月1日に施行)後は、商事債権の時効期間を5年間と定めている商法522条の規定が削除され、商事債権であるかどうかにかかわらず、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、権利を行使することができる時から10年間」で時効となります。

日本政策金融公庫は時効がない?

日本政策金融公庫 借金 時効
世間一般では、日本政策金融公庫は国の出先機関や公的機関であるため、時効や債権カットには絶対に応じないと言われています。

しかし、公表はされていないのですが、時効や債権の減額がされているケースが現実に行なわれていることもあるようです。

通常の時効期間は5年ですが、裁判で債務名義を取られると10年に延長されることになります。

そのため、何もせずに5年で時効にしてもらえるなどということはありませんが、長い年月の中にはそのような事例も出ています。

時効の年数が経過した後に、消滅時効の援用を行なうことにより、時効の効力が認められて返済義務が消滅することになります。

借金の返済ができなくなった企業や経営者は、どのような方法で借金の処理をしたら良いのでしょうか。

借金の処理する方法の4つ

日本政策金融公庫 借金 時効
本当にやむを得ない状態で、借金の返済に困った場合で多い手段は下記の通りになります。

① 自己破産
② 相続時に相続放棄して消滅
③ 夜逃げ
④ 債務消滅時効

たまたま、事業につまずいただけのことなのです。

経営者の方もこれで人生が終わる訳ではないし、これからも生活をしていかなければなりません。

そのようなことから考えれば、①、②、③はあまり良い方法とは言えないのではないでしょうか。

やはり、第二、第三のチャレンジを行い、再生再起して復活するのであれば、④の消滅時効を目指されるのも悪いことではありません。

ですが、債権者にとっては簡単に時効を援用させる訳には行きませんので、目指すことと援用になるということは必ずしもイコールにならない可能性もある旨は理解しておく必要があります。

債権の種類による消滅時効期間の違い

具体的な債権の種類による時効期間の違いは、以下のとおりです。
各項目ごとにしっかり確認していきましょう。

サラ金・貸金業者が貸主である貸金

日本政策金融公庫 借金 時効
貸主が消費者金融などの貸金業者である場合、貸金業者が会社なのか個人なのかで時効期間は異なります。

貸金業者が会社である場合の時効期間は5年、個人である場合の時効期間は、10年になります。

ただし、個人である貸金業者が貸主の場合であっても、商人(たとえば、個人事業者など)の営業のための貸金については、商事債権となりますので、時効期間は5年となります。

信用金庫が貸主である貸金

日本政策金融公庫 借金 時効
最高裁昭和63年10月18日判決において、「信用金庫の行う業務は営利を目的とするものではないというべきであるから、信用金庫は商法上の商人には当たらないと解するのが相当である」と判示されており、信用金庫は、会社ではないとされています。

したがって、会社ではない信用金庫が貸主である貸金の時効期間は、10年になります。

ただし、信用金庫が貸主の場合であっても、商人(たとえば、個人事業者など)である会員の営業のための貸金については、商事債権となりますので、時効期間は5年となります。

銀行が貸主である貸金

日本政策金融公庫 借金 時効
銀行は会社ですから、銀行が貸主である貸金の時効期間は5年になります。

住宅金融支援機構(住宅金融公庫)の住宅ローン

住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)は、会社ではありませんので、住宅金融支援機構の住宅ローンの時効期間は、10年年になります。

保証協会の求償権

保証協会が主債務者に代わって債務の弁済をした場合、主債務者に対して求償権を取得することになります。そして、求償債権の消滅時効は、保証協会が代位弁済をした時点から進行します。
保証協会は会社ではありません(最高裁昭和60年2月12日判決)ので、信用保証協会の求償権の時効期間は、通常の債権の時間と同様に10年となります。ただし、保証協会が、商人である主債務者(たとえば、個人事業者など)の委託に基づいて保証したときは、求償権は商事債権となり(最高裁昭42年10月6日判決)、時効期間は5年となります。

判決が確定した場合の時効期間の伸長について

日本政策金融公庫 借金 時効
債権者が債務の弁済を求める訴訟を提起したときは、その時点で消滅時効が中断します。

そして、判決が確定して訴訟が終了したときから、再度時効が進行を始めますが、民法174条の2に「確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とします。

裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。」と規定されていますので、時効期間は5年である債務についても、判決が確定してから10年が経過しないと、消滅時効は成立しないということになります。

判決が確定して時効期間が10年に延びて、そのあとにまた少額の弁済をした(債務承認となり、この時点で時効中断となります)場合、時効が成立するのは、弁済から5年後か10年後かという問題があります。

いったん10年に延びた時効期間が、中断後はまた元の時効期間である5年に戻るのでしょうか。

この点については、実は最高裁の判例はなく、争いがあるのですが、大阪地裁平成10年9月24日判決では、いったん10年に延びた時効期間は、中断後は元の時効期間には戻らず10年のままであると判示しました。

ほかにもいくつか、元の時効期間には戻らず10年のままであるとした判例があります。

債務者が自己破産や個人再生をした場合の時効期間の伸長について

日本政策金融公庫 借金 時効
債務者が自己破産した場合、時効期間が10年に伸長される場合とされない場合があります。

債務者が自己破産の申立をした場合に、時効期間が10年に伸長されるのは、破産管財人が債権調査を行い、裁判所書記官の作成する破産債権者表が作成された場合です。

破産法124条3項に、破産債権者表の記載は確定債権と同一の効力があり、時効期間が10年に延長されると規定されているためです。

これに対して、破産管財人の選任されない同時廃止事件となった場合には、時効期間が10年に伸長されることはありません。

同時廃止事件においては、破産管財人による債権調査は行われず、破産債権者表も作成されないためです。

そして、債務者が民事再生をした場合も、その手続きが通常の民事再生なのか、個人の民事再生(個人再生)なのかによって、時効期間が10年に伸長される場合とされない場合にわかれます。

通常の民事再生の場合、確定した再生債権については、再生債権者表の記載は確定債権と同一の効力があり、時効期間が10年に延長されるという規定(民事再生法180条2項)がありますので、時効期間は10年に伸長されます。

しかし、個人再生手続の場合には、この民事再生法180条2項の規定が「適用除外」となっており(民事再生法238条)、元々5年の時効期間の債権については、時効期間が10年に延長されることはなく、5年のままとなります。

借金の消滅時効に際して係る司法書士費用

日本政策金融公庫 借金 時効
借金の消滅時効の援用を司法書士にご依頼いただいた場合の費用については、任意整理の費用と同一です。

1社のみであれば30,000円、2社以上の場合には1社20,000円ですので、たとえば2社に対して時効援用を行った場合には、費用は40,000円となります(消費税別)。

こちらは全国の平均になります。

また、もし消滅時効が成立していなかった場合に、任意整理手続きや自己破産手続きを行った場合、既にお支払い頂いた費用を、新たに行う任意整理手続きや自己破産手続きの費用の一部に充当します。

消滅時効の「援用」とは

時効期間が経過したとしても、消滅時効の「援用」をしなければ、借金を消滅させることは出来ません。「援用」とは、時効の利益を受けるということを相手に伝えることを言います。

具体的には、消滅時効を援用するという通知を、配達証明付きの内容証明郵便で郵送するという方法によります。

内容証明郵便による時効援用通知

債権者に対して時効の援用をする具体的な方法は、時効援用通知書を、配達証明付きの内容証明郵便で郵送するという方法によります。

内容証明郵便というのは、「いつ、どんな内容の郵便が郵送されたか」を、郵便局(日本郵便株式会社)が証明してくれるという郵便サービスです。

普通郵便で送ったのでは、配達証明付きで郵送することで書類が到達したことは証明できても、到達した文書の内容が証明できないため、証拠になりません。

これに対して、配達証明付き内容証明郵便であれば、文書の到達と、到達した文書の内容が時効援用通知であるということも両方証明できるため、裁判上の証拠とすることができます。

援用通知には、債務を特定できる情報(たとえば、契約番号や契約年月日など)を記載して、その債務に関して消滅時効の援用をするというような内容を記載します。

借金の消滅時効の援用権者

消滅時効の援用ができるのは、「時効により利益を受ける者」であり、借金の消滅時効を援用するのは、通常は借主です。

しかし判例で、借主以外にも、時効の援用が認められているケースがあります。

たとえば、連帯保証人は、主債務の消滅時効の援用ができます。

連帯保証人に対してだけ訴訟提起があったような場合には、保証債務の時効期間だけが10年に延長(民法174条の2)されて、主債務は5年のままとなりますが、このような場合に、連帯保証人は、自分の保証債務の時効期間はまだ経過していなくても、主債務の消滅時効の援用ができます。

連帯保証人が主債務の消滅時効を援用することにより、保証債務も消滅します(保証債務の主債務に対する附従性から)。

まとめ

日本政策金融公庫 借金 時効
今回は、日本政策金融公庫の借金や融資の時効期限や法律に要点5選を紹介しました。

ビジネスを始める際に、借金(融資)というには、付き物です。

事業計画をしっかり考え、資金の運用を綿密に考えなくてはありません。

その中で、失敗をしてしまい借金で悩んでしまう方もいると思います。しかし、借金には時効が存在します。

借金は返せるように借りるのが、絶対条件です。これは万が一のときの選択なので、頭の隅に入れて置くことをおすすめします。

長期の事業計画を考え、しっかりした返済計画を練りましょう。

この記事をシェアする