ベンチャーキャピタル(VC)から起業資金を調達!必要な心得と3つの問題点

ベンチャーキャピタル

起業してベンチャー企業としてやっていこうと思うなら資金調達はどうしても避けることが出来ない重要なものです。どんなに優れた技術、他社にない強み、具体的な事業計画、将来性があっても資金が無ければ事業を拡大し会社を育成していくことは出来ません。

起業の際の資金調達方法には銀行などからの「融資」と、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家からの「出資」がありますが、実績の無いベンチャー企業の場合、融資を受けることは難しく、資金調達の方法としてあまり現実的とは言えません。

そこで、多くの起業家が行っているのがベンチャーキャピタルからの資金調達です。

この記事ではベンチャーキャピタルから資金調達を受ける前に知っておくべき基礎知識、必要な心得、問題点、実際にベンチャーキャピタルから資金調達する際の注意点などを解説していきます。

ベンチャーキャピタルの基礎知識

まずはベンチャーキャピタルから資金調達するにあたり知っておきたいいくつかの基礎知識を簡単に説明していきます。既にベンチャーキャピタルについての基礎知識があるという人も改めて復習するような気持ちでチェックしていってみてください。

ベンチャーキャピタルとは?

ベンチャーキャピタルとは、複数の投資家から集めた資金を将来性のある未上場のベンチャー起業に出資し、起業の価値が上がってからIPO(新規公開株)やM&A(合併や買収)を行なうことで利益を得ている投資ファンド(投資会社)のことです。

出資だけでなく、経営ノウハウを教えたり、ネットワークを活かした経営支援なども行ない、最終的にはハイリターンを狙っています。

資金調達は企業の成長段階によっても必要な額が異なるため、ベンチャーキャピタルの中にも創業時に特化しているところもあれば、ある程度成長した企業に対して大きな額での出資を行うベンチャーキャピタルもあります。

なぜ出資してくれるのか

ベンチャーキャピタルがベンチャー企業に出資するのは、最終的により大きな利益を得るためです。将来有望なベンチャー企業に投資すれば、例えば買った時は100万円の価値しかなかった株が、1億円にも2億円にもなることがあるのです。利益を得る方法は大きく分けると2つあり、それがIPO(新規公開株)やM&A(合併や買収)です。

  • IPO(新規公開株)…未公開株を上場し自由に取引出来るようにすること。この時に株の売却益を得る
  • M&A(合併・買収)…他の企業に自社を売却したり、合併することで利益を得る

上で、「ベンチャーキャピタルの資金は複数の投資家から集めたもの」であるとご説明しました。つまり、ベンチャーキャピタルには投資家から預かった資金を運用し、最終的には出資額以上のリターンを返すという重要な使命があります

当然、無期限という訳にはいきません。ファンド期限という期限が設けられているため、ベンチャーキャピタルはその期限が来る前にIPOやM&Aによってエグジットを達成しなければならないのです。

事業が失敗したらどうなる?

銀行融資と大きく違うのは、ベンチャーキャピタルからの出資は借り入れではないため返済義務がないということです。

とはいえ、事業を成功させるためにベンチャーキャピタルもコンサルティングや様々なサポートをしてくれるため、手探りな状態で経営を行っていく場合と比べれば失敗の確率は低くなるでしょう。

ベンチャーキャピタルから資金調達する時に必要な心得

ベンチャーキャピタルから資金調達をする時には覚えておきたい、必要な心得があります。起業を考えている人なら当たり前に持ち合わせていることだとは思いますが、ここで今一度しっかり確認しておきましょう。

事業を成功させるという決意

ベンチャー企業は競争の激しい世界です。ニッチな分野を切り開いて行くとは言え、周囲には多くのライバルが存在し、その中で結果を残し成功を手にすることが出来るのはたった1割にも満たないと言われています。

ベンチャーキャピタルから出資を受けることはある意味、そんな厳しい世界で絶対に生き残るという決意表明でもあります。なぜなら、ベンチャーキャピタルから出資を受けてしまえばもう自分たちだけの問題ではなくなるからです。毎日、事業を成功させることや会社を大きくすることだけに集中し、必ず成功させるという決意は欠かせません。

没頭してやり続ける情熱

ベンチャー企業は革新的な技術や新しいアイディアでイノベーションを起こし、社会に貢献することを目的とした企業です。つまり、お金儲けが目的の企業ではないということです。もちろん、事業を展開し会社を大きくするためにはお金が必要ですが、お金は手段でしかなく最終目標ではありませんよね。ベンチャーキャピタルは「お金儲け」だけを目的にした企業が長続きしないことを知っています。

ベンチャーキャピタルから出資を受ける際に決意と共に重要になるのが、その事業に情熱を注ぎ続けられるのかということです。自分は一体どんな事業を考えていて、それはどんなイノベーションを起こし、どのように社会に貢献していくことが出来るのか。

中には燃えたぎる情熱はあるものの、語るのは苦手だという人もいるでしょう。しかし、ベンチャーキャピタルから出資を受けたいなら熱い想いを伝えることも大切です。

様々な角度からの視点

新しいことを生み出すというのは大変なことです。今では当たり前となっているサービスや商品や考え方も、出てきた当初は無関心・拒否・バッシングなど散々な目に遭ってきたという事が少なくないでしょう。

ここで大切になるのが様々な角度からの視点でものを見ることが出来るのかということです。つまり、実際にその商品やサービスを使うことになるであろう「ユーザー目線になる」のです。

提供側からするとどうしても「これはすごいものが出来た」と、自信によって客観視することが出来なくなってしまう事があります。自信があるのは素晴らしいことですが、どんなに優れたものでもユーザー目線に立って環境を整えないことには「お金を払いたいと思う」「使い続けたいと思う」というところまでは繋がっていきません。

例えば、どんなにデザインに優れ、質も良い財布だったとしても「使いにくい」という致命的な欠点があれば使い続けるのは難しいですし、美しいビジュアルや魅力的なキャラクターが登場するゲームでも「操作性が悪い」という欠点があればストレスが溜まるばかりで、お金を払いたいとまでは思ってもらえないかもしれません。

商品やサービスを向上させるだけでなく、ユーザー視点で物事を見ることはどんな時も忘れないようにしましょう。

ずっと付き合っていける人かどうか

ベンチャーキャピタルはベンチャー企業に出資してそこで終わりではありません。最終的なリターンを得る必要があるため、経営にも深く関わってきます。コンサルティング、ネットワークを駆使した経営など、多くのノウハウをベンチャーキャピタルから学ぶことが出来るでしょう。

しかし、ベンチャーキャピタルは組織ですが実際に関わることになるのは「人」です。それだけに、相性は大変重要になります。

どんなにいい条件で出資してくれるという場合でも、価値観や考え方が合わなかったり、相性が合わないと感じたらその後が大変です。経営方針について全く噛み合わず衝突し合うことばかりになれば中長期的な成長も上手くいくように思えませんよね。ベンチャーキャピタルに選んで貰うと同時に、ベンチャーキャピタルを選ぶということも企業の成長のためには必要なことです。

市場が良好な時は多めの資金調達を

景気が悪くなれば株価は一気に下落し、景気が良くなれば株価は上がります。株価の上がりやすい好景気の時には景気が悪くなってしまう時に備え、可能な限り多めに資金調達を行うようにしましょう。

一番伝えたいことは何か

自分がずっと情熱を注ぎ、やり遂げると決意した事業には沢山の思いや考え、ビジョンが詰まっているでしょう。しかし、その熱い想いの全てを時間をかけて聞いてくれるベンチャーキャピタルや投資家がどれだけいるでしょうか?彼らの周りには出資を求める数多くのベンチャー企業が集まってきます。

そんな中だからこそ、なるべく簡潔に、それでいて自分の伝えたいことや会社の特徴などをしっかりと伝えることが求められます。10秒前後で一番伝えたいことを伝えられるようにしておくといいですよ。

企業の成長段階に合わせた資金調達を行う 

資金調達というのはとにかく多ければいいという訳ではありません。企業の成長段階に合わせた資金調達を行うことが大切です。

企業が成長し「シードラウンド」「シリーズA」「シリーズB」「シリーズC」と段階が上がっていくに連れて、必要な資金調達額は上がってきます。

投資段階 企業の状況 資金調達額相場
シードラウンド 起業前や事業をスタートさせる直前。始めて出資を受ける段階で、シリーズAに繋げていくための出資。 500万円前後
シリーズA 顧客が増え始める時期。資金を使ってビジネスモデルを固めていく。ベンチャーキャピタルによる出資はここから。 1000~3000万円前後
シリーズB 経営が軌道に乗り安定する時期。経営層を熱くし将来を意識した投資を行う。 数億円~十数億円前後
シリーズC 黒字経営が安定し、IPOやM&Aによるエグジットを意識し始める時期。サービスや商品の質を高め企業の方向性を強める。 数億円~十数億円以上

シードラウンドの時にシリーズCの投資家と話しても意味はなく、お互いに時間の無駄になってしまいます。自分たちとベンチャーキャピタルが投資しているラウンドがマッチするのかどうかは必ず確認する必要があります。

ベンチャーキャピタルから資金調達をする際の3つの問題点

ベンチャーキャピタルによる出資はベンチャー企業にとってとても頼もしいものです。しかし、いくつかの問題点もあります。ベンチャーキャピタルからの出資を考えているならこの問題点についてもしっかりと知っておくようにしましょう。

問題点その1:経営権を握られてしまう可能性がある

ベンチャーキャピタルからの資金調達の多くは「第三者割当増資」という方法を取ります。

【第三者割当増資】株主であるかどうかを問わず、特定の第三者に対して新株を引き受ける権利を与え、新株を割り当てる(購入してもらう)ことで資金を集める資金調達方法。

第三者割当増資では株式を増やすことになるため、創業者の持っている株式の割合は低くなります。

創業者の株式の割合が株主総会による特別決議を拒否できる「33.3%」という割当を下回ってしまうと、創業者にもかかわらず経営の意思決定を自由に出来なくなってしまうのです。

シードラウンドで投資家に大きく株式の割合を取られてしまうと、最終的にこのような状態になりかねませんので注意しましょう。

問題点その2:投資資金を回収しなければならない

ベンチャーキャピタルから出資を受けるという事は同時に、投資資金を回収する義務の発生を意味しています。

最終的には上場するか(IPO)、自社を他企業に売却するか(M&A)で投資資金を回収する必要があります。そのため、事業が思うように進まないなど経営状況によっては不本意な形で投資資金の回収をしなければならなくなってしまう可能性も考えられます。

問題点その3:資金調達コストが高い

銀行からの融資の場合、借り入れのため金利はかかるものの利率は低くなっています。しかし、ベンチャーキャピタルによる出資ではベンチャーキャピタルも大きなリスクを背負っているため資金調達コストはどうしても高くなり、定期的な配当や上場した時の大きな売却益でベンチャーキャピタルに還元する必要があります。

まとめ

ベンチャーキャピタルはベンチャー企業にとってとても頼もしい存在ですが、中にはデメリットとも言えるいくつかの問題点も存在しています。

これらの問題点を知らずにベンチャーキャピタルから出資を受けすぎてしまうと、結果的に経営権を握られてしまい自分の思っていたような事業を行っていくことができなくなってしまう可能性もあるため、安易に出資を受けることのないよう、くれぐれも注意しましょう。

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