創業するときには、開業の資金源となるお金を調達する必要が出てきます。少ないお金で会社が設立できる話や無料ツールで起業するという話も聞かれますが、継続的に事業を維持していきたいのなら、ある程度の資金は必要となるでしょう。開業資金だけではなく、運転資金や生活資金も確保するためにも、ある程度まとまったお金を確保しておかなければならないのです。
そこで、こちらの記事では、創業するにあたって必要となる費用と資金調達法、さらには税金と節税についてご紹介していきます。創業を検討している方は、ぜひお役立てください。
INDEX
創業するときに欠かせない資金調達
2006年度から資本金1円でも株式会社が設立できる仕組みになりましたが、現実的に1円で会社を運営することは不可能です。会社設立実費だけでも20万円~25万円かかり、株式会社の場合なら登録免許税、定款証手数料などが必要となります。
合同会社であるなら、株式会社よりも安く抑えられますが、登録免許税が6万円、定款印紙代が4万円の費用がかかってしまうのです。
このように、創業するときには、資金調達が欠かせません。次に、創業にかかる費用について見ていきます。
創業にかかる費用
会社設立するときに、オフィスの家賃と光熱費、OA機器の購入またはリース代金、会社印、名刺などの事務用品などの費用がかかります。
また、人件費、インターネットの通信費、ホームページ作成、広告費、自動車購入費、維持費など、会社を運営していく費用は数え上げればキリがなく、さらには起業する業種が飲食業や介護事業所、建設業などとなれば、必要となる経費はより増えていきます。
ちなみに、日本政策金融公庫より発表されている2018年の開業費用の平均値は、2017年度の1,062万円よりも81万減少しましたが、それでも981万円です。
雇用する際にかかる費用を確認
創業をしたときに、人を雇うことになれば、給与以外に、社会保険料、労災保険料、雇用保険料などがかかります。従業員の数を増やせば増やすだけ、これらの費用の負担が大きくなります。
ただし、個人事業主として創業した場合には、5人以上の常勤スタッフを雇用しなければ、社会保険の加入は任意となります。社会保険料、労災保険料、雇用保険料の中で、社会保険料の負担が一番大きいので、この点から個人事業主にするか、法人として創業するのか検討してみるといいかもしれません。
創業時に利用できる5つの資金調達法
上記のような費用を自己資金で用意できるのならがよいのですが、現実的には難しいと言えます。何らかの方法で資金調達することになるのですが、資金調達法には次の5つがあげられます。
①民間の金融機関
②公的金融機関
③助成金・補助金
④クラウドファンディング
⑤親や知人、もしくは友人
上記のように5つの資金調達法がありますが、「⑤親や知人、もしくは友人」は、お金のトラブルによって、関係を損なう恐れがありますので避けたい調達先となるでしょう。
また、「④クラウドファンディング」は、注目されている資金調達法と言えますが、優れたアイディアや人を必要としますので、容易ではありません。
「①民間の金融機関」は、創業したばかりでは信用がないため、簡単には融資を受け付けてくれないことが考えられます。
上記のようなことをふまえると、創業時の資金調達法として利用しやすいのは、「②公的金融機関」「③助成金・補助金」となるでしょう。
ここからは、創業時におすすめな「②公的金融機関」「③助成金・補助金」について、解説していきたいと思います。
創業の味方となる助成金と補助金
助成金や補助金は、返す必要がないお金です。もしも金融機関から融資を受けた場合には、長期に渡って利子を付けて返済しなければなりませんが、助成金や補助金にはその必要がありません。
創業をする方にとって、助成金と補助金は力強い味方となる資金調達法です。
国が起業家を援助する理由
国が助成金や補助金を設けて、起業家を支援しているのはなぜでしょうか?
企業経営者の高齢化が進み、廃業数が増加が進んでくると、税収は下がってしまいます。国は税収がなければ成り立ちませんので、企業の数を維持していくためには、起業する人を増やしていかなければならないのです。
このような理由から、国は起業家を育てたいと考え、創業するにあたっての助成金や補助金制度を積極的に設けているのです。
厚生労働省と中小企業庁(経済産業省)が設けている助成金と補助金
助成金と補助金には、国が設けているものと民間が設けているものがあります。国が実施している助成金と補助金には、中小企業庁(経済産業省)と厚生労働省の所管の2つに分けられています。
それぞれが行っている助成金と補助金について、見ていきましょう。
中小企業庁が実施している創業支援事業
経済産業省は、中小企業庁を通じて創業支援事業を行っています。資金調達を始めとして、マッチングイベントなども行なわ、それらの情報は中小企業庁のホームページで確認することができますので、まめにチェックしてください。
また、地方自治体でも創業補助金事業を行っていますが、内容は各自治体によって異なります。管轄となる都道府県、市町村以外でも、商工会議所での情報も役立ちます。地域密着型の身近なサービスは、頼りになる存在となってくれる可能性があるでしょう。
厚生労働省が実施している助成事業
厚生労働省が実施している助成金は、人材雇用に対しての支援です。基本的に雇用促進を目的としていますので、人を雇う時や雇った後に支給される補助金です。
雇用保険に加入していないと、厚生労働省の助成金は利用することができませんが、正社員を雇ったのであれば、雇用保険の加入は義務付けられています。
助成金は、従業員の教育、正社員化、育児、介護休業制度の活用、有給休暇の増加、作業時間の軽減などを行うと支給されます。
【注意点】助成金と補助金は支給まで時間を要する
返済の必要のない助成金と補助金ですが、支給されるまでに時間がかかるので注意しておいてください。会社を設立したらすぐに助成金がもらえると思う方もいるかも知れませんが、事業を行うことで助成金や補助金は支給されます。
金融機関の融資は審査が通るとすぐに資金源としてお金を手にできますが、助成金や補助金がすぐに受給できると勘違いしないようにしておきましょう。
助成金と補助金の検索はミラサポ
創業の際の資金調達法として、利用できる助成金と補助金ですが、公募期間が短く申請するタイミングを逃してしまうと、エントリーすることができなくなります。また、予算枠が無くなると募集期間内でも終了してしまうため、早めに申請や手続きを取ることが大切です。
見逃さないためには、「ミラサポ」で検索することをおすすめします。その他にも、中小企業庁や厚生労働省のホームページで、助成金や補助金をこまめにチェックしておくようにしましょう。
日本政策金融公庫の融資
国が100%出資している日本政策金融公庫では、起業家へ向けて積極的に融資を行っています。創業時の企業への融資は、年間に22,800企業と数多く、資本金額1,821億円(平成25年度)にものぼります。融資枠は最大で7,200万円となっています。
ここでは、日本政策金融公庫が行っている女性起業家とシニア起業家におすすめな融資制度をご紹介します。
女性起業家におすすめな融資制度
日本政策金融公庫では、女性起業家に向けての融資制度をおこなっており、中小企業事業の「女性、若者/シニア起業家支援資金」がそのひとつです。
「女性、若者/シニア起業家支援資金」は、女性の方以外にも35歳未満の若年者、55歳以上も高齢者も対象です。新規開業してから約7年以内という条件があり、資金の使途は「設備資金」「長期運転資金」となっています。
シニア起業家におすすめな融資制度
日本政策金融公庫の国民生活事業では、シニア起業家を始めとして、女性や若者に向けた支援制度を行っています。
55歳以上の事業者が利用でき、新規開業してから約7年以内の方が利用することができます。融資限度額は、直接貸付が7億2,000万円、代理貸付1億2,000万円です。
融資期間によって異なりますが、基準利率は1.16%~1.45%、特別利率は0.76%~1.05%、または0.51%~0.80%です。
こちらの支援制度の対象となれば、日本政策金融公庫の資本ローンも利用することが可能となります。
創業時にかかる税金について
創業した時には、税金はどのくらいかかるのでしょうか?
もしも「個人事業主」として起業したのなら、ランニングとしての税金はかからなくてすみます。利益が出た場合は所得税を払うことになりますが、利益が出ず赤字の場合であれば所得税はかかりません。
「法人」には、赤字でも毎年最低7万円の税金が発生し、利益が発生すると法人税がプラスされます。
【起業したらかかる税金等一覧表(個人&法人)】
〈個人事業主〉
所得税・個人住民税・個人事業税・消費税・償却資産税・印紙税・国民健康保険料・国民年金保険料・雇用保険料・労災保険料など
〈法人〉
法人税・法人住民税・法人事業税・地方法人特別税・償却資産税・印紙税・社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)・雇用保険料・労災保険料など
法人化で得られる節税のメリット
法人化すると生命保険、車両、退職金など、費用として認められる経費が増え、家族への給与も認められるので、役員として役員報酬を与えることもできます。家族に給料を支払う形で所得を分散し、経営者の所得を少なくすれば経営者の所得税や住民税が節約できます。
開業費での節税
開業費とは、法人として設立を行い、事業をスタートさせるまでに使った、社印の制作費、名刺、会社案内などの印刷費、打ち合わせの飲食代、交通費、接待費などの経費のことをいいます。
もしも、開業費として20万以上使ったのなら、5年の均等償却か任意償却のどちらかで処理することが可能となります。均等償却なら5年分で均等に割った申告になりますが、任意償却の場合なら好きなときに計上できるために、黒字に転じた時に開業費として計上すれば、利益が少なくなり、その分が節税できることになるのです。
まとめ
創業する時にかかる費用や資金調達法、さらに税金や節税について解説してみました。創業するために資金源は欠かせませんが、ご紹介した助成金や補助金、日本政策金融公庫の制度融資を資金調達として活用することができます。
特に、助成金や補助金は、融資と違って返済する必要のない有力な資金源となります。また、開業費の節税対策を行えば、事業を運営していく上でのサポートとなりますので、上手に活用してみてください。
創業時には、多くの費用がかかりますが、これらを利用して事業の運営をスムーズに進めていきましょう。