ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングとは?3つの特徴とメリットデメリット

クラウドファンディング

資金調達、または資産運用の新しい形として近年高い注目を集めているソーシャルレンディング。簡単に説明すると、ネット上でお金を借りたい人や企業(借り手)と、ネット上でお金を運用して増やしたい人や企業(貸し手)をマッチングする融資仲介サービスです。

ネットを活用してウェブサイト上で資産運用をしたいと考えている個人や企業からお金を集め、その資金を個人や企業に融資します。サービス形態にもよりますが、最小投資額1万円からスタートできる所が多く、元手が少なくても始めやすい新しい資産運用の形として注目されているのと同時に、資金を集めたいスタートアップや中小企業の新しい資金調達の方法としても注目されています。

中小企業や個人事業主の新しい資金調達方法
企業や個人の新しい投資先

一口にソーシャルレンディングと言っても、借り手と貸し手どちらの目線に立つかで特徴もメリットデメリットも全く異なるものになります。この記事ではソーシャルレンディングの基本的な知識と、それぞれの目線に立つ事で見えてくる特徴とメリットデメリットを分かりやすく解説していきたいと思います。

ソーシャルレンディングの基本知識

ソーシャルレンディング

冒頭でも説明したようにお金を借りたい事業主とお金を貸して運用したいと考えている投資家をインターネット上でマッチングするサービスがソーシャルレンディングです。クラウドファンディングと同じ投資手法の一つなので貸付型クラウドファンディングや融資型クラウドファンディングと呼ばれる事もあります。

資金調達したいと考えている借り手、投資運用したいと考えている投資家それぞれの目線から見るメリットデメリットを紹介する前に、まずはソーシャルレンディングの基本的な情報から紹介していきます。

成り立ち

2005年にイギリスのZOPAという会社が、個人間でネットを通して小口の融資を行なえるソーシャルレンディングの原型とも言えるマーケット型のサービスを開始したのが基盤となっています。その後、アメリカのProsper、2007年にはLending Clubが類似サービスの提供を開始して世界中に認知されるようになっていきます。

日本ではmaneoがオークション型ソーシャルレンディングを2008年にスタートさせたのを皮切りに、2009年にAQUSH、2011年にSBIソーシャルレンディングがサービス提供を開始。市場規模拡大を感じさせる勢いで広がっていきましたが、2011年にmaneoが詐欺や被害トラブルが多発した事をきっかけに10%以上の貸し倒れが発生した為、日本での広がりは一時停滞しています。

日本のソーシャルレンディングは現在が歴史の分岐点であるという事が言えるかと思います。投資家からするとローリスクミドルリターンの美味しい投資である事は変わりありませんが、事業者の管理体制をリスクに考える必要があるという考えが根付いてしまっているからです。

3種類の類型

一口にソーシャルレンディングと言っても色々な形態に分かれており、それぞれの類型でサービスの特徴は様々です。大きく分けて3種類の類型が存在していますので一つずつ紹介していきます。

【マーケット型】

ソーシャルレンディングサービスを行なっている運営会社が自ら審査をし、借り手個人の格付けを行い、貸し手個人がどの格付けに幾ら位の金利で貸し付けを行なうかを決定します。融資希望者は借りたい額と必要な個人情報を運営会社に送り、それを見た運営会社が格付けを決定し、貸し手は希望するリスクリターンに見合った格付けと金利、融資額を自分で決める事ができ、自らの裁量で貸し付けを行う事が出来ます。

出資された金額を束ねて貸し付け希望額にあった借り入れをマッチングさせることが出来るこの形式をマーケット型と呼びます。化してのリスク許容度や希望利回りに応じて、金利がタイムリーに変動していく様が株式市場のような動きである事から、このような名前で呼ばれています。貸金需要者として借り手が貸し手の金利設定に影響するので、金利がマーケットシステムによって公式に決定される仕組みになっています。

【オークション型】

融資を希望する側は借り入れの目的や信用度をコミュニティ内にアピールする事で、貸し手側はそれらを判断材料にして投資や融資先を決定します。利率はオークション形式で、貸し手側の入札で決まり、通常であれば一番安い利率でビッドした貸し手が貸し付けの権利を得る事が出来るようになるという訳です。

貸し手は借り手の借り入れの目的や信頼度などを考慮して利率を入札しますが、名前や住所などの個人情報は一切公開されません。金融市場の相場や一般利率に左右されませんので、優良な借り手であれば低金利で資金調達が可能である一方、高利率のビッドが確定して貸し手が高い利息を受け取れる可能性もあります。

【貸付型・ファンド型】

サービスの運営会社が借り手の企業を審査して、金利・金額・期間を決定します。貸し手はその条件を見てその案件に幾ら出資をするかを決定する事が出来ます。融資希望者は場合によっては保証人を立てる事や担保の提出を行なわないといけない場合もあります。日本の文化や実態に合わせて誕生したソーシャルレンディングの新しい形として話題になっています。

中国やアメリカなどでは現在もオークション型のソーシャルレンディングが活発に取引されていますが、日本では現在オークション型で運営しているサイトは1件もありません。それは日本人が、安全思考の強い性格であるというのが1つの理由です。

日本人は気質的に大きな利益を得る事よりも小さいリスクを好む傾向にあります。2008年に設立したmaneoはオークション型を取り扱っていましたが、延滞債権や貸し倒れの発生が相次ぎ業績が悪化し、すぐにファンド型に切り替えました。すると貸し倒れの発生が1件もなくなったんだそうです。

このようにオークション型はリスクが大きく、その変わりに通常では考えられない低金利で資金調達できる可能性も秘めています。メリットがある一方で大きなリスクもある事から、日本人の気質に合わないとされ、現在では全く行なっている企業はありません。反対にサービスの運営会社がしっかりとした保証やケアをしてくれる貸付型は日本人の気質に合っているソーシャルレンディングなので、利用者が年々拡大しているという訳です。

免許が必要

近年ソーシャルレンディングを扱う業者が増えてきた事により懸念されているのが「犯罪利用」です。多額のお金が集まり、多額のお金が移動するソーシャルレンディングに目をつける悪徳業者は、優良企業の参入と共に増えていく事が容易に予想されます。

ソーシャルレンディング利用前に必ず覚えて起きたい事は、日本では出資ではない融資を行なう場合に貸金業としての登録が必須であるという点です。更にソーシャルレンディングは不特定多数からの出資を集めて融資や出資の仲介を行ないますので、匿名組合出資契約を募集するための第2種金融商品取引業の登録も必要になります。

悪徳業者はこれらの免許を取得していない可能性が多くありますので、利用する前に少しでも怪しいと思ったらその企業が本当に登録されているかどうかを調べてみるのが良いでしょう。更に国内のソーシャルレンディング事業者の中には、第2種金融商品取引業よりも資本要件等の厳しい、第1種金融商品取引業の登録を受けている事業者もあります。第1種を持っている企業は更に安心して利用できるでしょう。

借り手のメリットデメリット

ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングはお金を借りたい個人や企業(借り手)と、お金を運用して増やしたいと考える個人や企業(貸し手)を繋ぐサービスです。つまり借り手と貸し手でそれぞれ異なるメリットデメリットがあるという訳です。

という訳でまずは、ソーシャルレンディングでお金を融資してもらう借り手側のメリットデメリットを紹介していきたいと思います。

メリット1:審査と入金が早い

ソーシャルレンディングで資金調達しようと考えている個人や企業には時間があまりないケースが非常に多いです。大手メガバンク等から融資を受けようと思っても審査から融資までに1ヶ月~2ヶ月ほどかかるのが一般的です。

しかしソーシャルレンディングの場合は数日間で審査が終了し、融資が完了するまでのスピードも非常に早いです。銀行と比較すると多額の資金調達は見込めませんが、中小企業の方がとりあえずその場を凌ぎたいという少額の資金調達には向いていると言えるでしょう。

メリット2:実績がなくても借りられるケースが多い

中小企業の銀行融資は非常に審査が厳しいです。経営状況や財務管理をしっかりと行なっていなければまず審査に通ることはありませんし、もしも通ったとしても希望額とはかけ離れた金額を融資されるケースも少なくありません。

その点ソーシャルレンディングでは、中小企業で起業して間もないというケースでも借りられる事が非常に多いです。銀行融資と比較して高い金額ではありませんので審査が緩いという特徴があります。銀行が好んで貸さない少額投資が基本的には専門ですから、多様性という意味でもソーシャルレンディングは重宝されつつあるという訳です。

デメリット:金利が高い

ソーシャルレンディングは起業間もない実績のない中小企業でも資金調達が気軽に行なえるというメリットがある一方で、金利が高いというデメリットがあります。高い金利なので頻繁に利用するとどんどんリスクが高くなりますので、短期借入目的で少額の金銭の利用のみにすると決めて使った方が良いでしょう

借入利率は資金用途や会社の実績、担保の有無などによって決まりますが、基本的には投資家が納得するリターン+数パーセントの業者手数料を上乗せした金利でなければそもそも資金が集まりません。短期借入目的で利用する人が多いサービスなので、金利も銀行融資などと比較するとかなり高く設定されます。

貸し手のメリットデメリット

ソーシャルレンディング

資金調達目的の借り手のメリットデメリットに関しては上記の通りですが、反対に貸し手のメリットデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。下記で一つずつ詳細に説明していきます。

メリット1:安定的な利回り

ソーシャルレンディング貸し手側の最大の魅力は何と言っても利回りの高さと安定的なパフォーマンスです。業界平均利回り率は8%なので、定期預金や国債など他の金融商品と比較しても魅力的な利回りと言えます。

融資先の企業が貸し倒れを起こさない限りは投資元本が減少する事はありませんし、投資初心者であっても投資パフォーマンスに差が生じないので、分け隔てなく全ての方がノーリスクミドルリターンの恩恵を受けられるという訳です。

メリット2:少額短期で行なえる気軽さ

投資運用と聞くと多額の資金が必要で長期的運用を自分で管理しなければいけないと考えて億劫な気持ちになりませんか?ソーシャルレンディングであれば株式投資やFXと比べて予備知識を必要としませんので、管理は楽ですし放っておくだけで勝手に分配金が振り込まれますのでとても簡単です。

更に最低1万円から投資が可能で、少額で手ごたえを掴んでから投資額を増やしていく事も可能です。運用期間も3ヶ月から1年程度に設定されている場合が多く短期間での運用が出来るので気が楽です。5年も10年も自分の資金を預けるのは少し勇気が必要ですが、3ヶ月から1年程度の短期間であれば、試しにやってみようと思いますよね。

デメリット1:期間中のキャンセルは不可

ソーシャルレンディングは一度ファンドに投資すると運用期間中は資金がロックされますので途中解約をする事が原則として出来ません。例えば急に手元に資金が必要になったから、預けているお金を戻したいと思っても元に戻す事は出来ないという訳です。ソーシャルレンディングに投資する場合は、投資期間ロックされても大丈夫なように余裕を持った資金の範囲で挑戦するようにしましょう。

デメリット2:貸し倒れや倒産のリスク

最も懸念されるリスクは貸し倒れや融資先企業の倒産です。お金を借りた企業がしっかりと返済をしてくれれば何も問題はありませんが、業績悪化などの理由で返済が出来ない可能性は0ではありません。それは全ての投資で言える事です。

そのような状況にならない為に多くは融資先との間で担保保証に関する契約を結んでいるケースが多いです。それでも倒産して返済する事が出来ない状況に陥るケースは0ではありませんので、一つの事業に集中投資するのではなく、ソーシャルレンディングの複数サービスを利用する事でリスクヘッジする事をオススメします。自分でリスクを避けるように考えるのが良いでしょう。

まとめ

借り手と貸し手をマッチングさせるソーシャルレンディングの特徴やサービス内容は理解してもらえたでしょうか。借り手は銀行融資よりも素早く少額の資金調達ができる一方、金利が高いので短期少額の調達に最適。貸し手は魅力的で安定的な利回りが実現できる一方で、投資による貸し倒れや倒産のリスクは必ずつきまといます。

借り手と貸し手両方のメリットデメリットをしっかりと把握した上でソーシャルレンディングは利用するようにしましょう。

この記事をシェアする