
信託銀行とメガバンクは、どんなふうに使い分けたらいいのでしょうか?特に都市部に住む方にとっては、今後のライフプランを考えるうえで、知っておくとお得な情報が多くあります。一つずつ見ていきましょう。
①そもそも銀行とは
皆さんも、おそらく銀行に口座をお持ちですよね。自宅から近い、店舗数が多い、また会社から指定されたりと、様々な理由で銀行を選んでいると思いますが、そもそも銀行にはどのような種類があるのでしょうか。
メガバンク(都市銀行)
メガバンク(都市銀行)とは、大都市に本店を構えて広域展開をしている銀行のことです。実は法律などで定められているような、明確な定義はありません。ただ一般的に、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行は「三大メガバンク」と言われています。これに加え、りそな銀行もメガバンクと呼ばれ、現在では「都市銀行」と「メガバンク」はほぼ同義と言えます。
メガバンクは大手上場企業を中心とした法人に対しての融資などが業務の中心です。大都市以外にも支店がありますが、地方ほど店舗数が少なくなっています。メガバンクのサービスの展開は基本的に、人口の多い都市が中心です。
地方銀行
地方銀行は、都市中心で展開するメガバンクに対して、各都道府県で展開している一般の銀行です。都市銀行が網羅していない各地域の地元企業や個人に対してサービスを行っています。
ネット銀行
ネット銀行は近年利用者が増加しています。最低限の店舗しか持たず、基本的な取引はすべてネット上で行います。自宅に居ながらにして、振込や入出金などが行え、店舗がなくとも最寄りのコンビニのATMから、条件によっては手数料無料で引き出しができたりなど、個人にとって様々なメリットがあります。
信用金庫
信用金庫は、銀行とは違いますが、金融サービスを提供する金融機関です。非営利目的で運営されており、会員の出資によって作られた協同組織です。地域発展を一番の目的としているので、顧客は地元密着の中小企業や個人が多くなっています。大手の銀行に比べて、定期預金などの預金金利が比較的高く設定されていたり、知的財産権を担保にした融資や、NPOへの融資などは、銀行よりも幅広く融資を行っています。
信託銀行
信託銀行とは、メガバンクや地方銀行が行っている、預金や貸付など通常の銀行業務のほかに「信託業務」と「併営業務」(相続、証券代行、不動産売買の仲介等)を行っている銀行のことを言います。
②信託銀行とメガバンクの違いは
ここまで説明してきたように、銀行には様々な種類がありますが、本記事ではその中でも、メガバンクに対して信託銀行は何が違うのかについて解説していきたいと思います。
信託銀行は、普通の銀行業務である、預金・貸付・為替などの業務に加えて、信託業務のすべてを行うことができます。では、そもそも「信託」とはどういう意味なのでしょうか。
「信託」の意味
「信託」には、文字の通り「信用して委託すること。特に他人に一定の目的で財産の管理や処分をさせること」という意味があります。では、信託銀行は社会でどのような役割を担っているのでしょうか。
信託のしくみ
信託という制度は、委託者・受託者・受益者の関係に基づいています。まず委託者は、信頼のおける受託者(信託銀行)に対して、自身の財産を名義ごと移転します。そして、受託者が委託者の指定する受益者(委託者自身や、その大切な人)のために、その財産の管理・処分等を行うことを信託といいます。
委託者は、信託を利用することで、受託者の専門性を活かした資産運用ができたり、その財産を守ることができます。
③信託銀行のサービス
信託銀行では、それぞれ個人向け・法人向けに様々なサービスを提供しています。以下、そのサービスを抜粋して説明していきます。(信託は、サービスによっては元本割れのリスクもあるので注意が必要です。ただ、適切に運用することができれば、定期預金よりもずっとお得に資産を増やすことができます。詳しくは信託銀行のサイト等で確認してください。)
個人向け【ふやす・ためる・そなえる】
■投資信託:「投資信託運用会社」で作られるもので、「販売会社」を通じて、多くの投資家からお金を集めます。信託銀行では、集められたお金を保管し、運用会社の指示によって投資(株や債権の売買)を実行します。
それぞれの信託銀行が厳選した、国内外の株式や債権、NISAなどを選ぶことができます。月々少額から積み立てることもでき、初めて信託銀行を利用する人にとって、気軽に利用しやすいサービスが多く用意されています。
■退職金の管理:退職金を投資信託として運用したり、金利は低いけれど元本が保証される定期預金のように、毎月一定額を受け取れるコースがあったりします。既に退職金を受け取っている人はもちろん、受け取る前からコースの内容を広く調べておくのもおすすめです。
■外貨預金:日本円ではなく、外国の通貨で預金をすることです。ご存じのように、日本と外国では金利が異なります。一般的に外国通貨のほうが円より金利が高い傾向にあり、すなわち利息も多くなります。一定額を外貨で預金し、最適なタイミングで円に戻すことで利益が生まれます。ただ、為替レートにより、外貨の価値は日々変動するので、レートのこまめなチェックが必要になります。また、出金の際に為替手数料がかかることにも注意が必要です。手数料は銀行により異なるので、こちらも確認しておきましょう。
取り扱い通貨の種類は銀行によりますが、米ドル・ユーロ・オーストラリアドル等があります。
■保険商品:生命保険・定額年金保険・終身保険などがあります。国内外の株式や債権などの投資信託で運用され、その実績に応じて利益を一括または年金で受け取ることができます。(内容は各銀行により異なります。)
■財形貯蓄:正式には「勤労者財産型貯蓄」(一般的には「財形」)といって、勤労者が金融機関と契約に基づいて、勤務先を通じて行う「給与天引貯蓄」のことです。財形住宅資金の融資が受けられたり、種類によっては550万円まで非課税になったり、などのメリットがあります。
個人向け【のこす・そなえる】
■遺言信託:顧客の遺言に関する相談や、公正証書遺言の保管と遺言の執行までを、信託銀行に遺言の執行者として行ってもらうことができます。以下のような考えの人におすすめです。
・相続人ごとに特定の財産を自分の意志で指定して相続させたい
・子供がいないので妻に全財産を相続させたい
・代々引き継がれてきた財産を、後継者に承継させたい
・社会において教育や福祉などに役立てたい 等
WEBで相談ができる信託銀行もあります。
■結婚,子育て支援信託:贈与を受ける20歳以上50歳未満の方が、金融機関などを経由して、結婚,子育て資金非課税申告書を提出すると、1人あたり1,000万円までの結婚,子育て資金の一括贈与が非課税になります。※契約は贈与を受ける方1人につき1金融機関1営業所に限定されます。
■特定贈与信託:特定障害者の方のために、その家族が特定障害者の方を受益者として財産を信託し、特定障害者の方の生活の安定をはかる制度です。受益者1人につき、特別障害者の場合は6,000万円、特別害碍者以外の特定障害者の場合は3,000万円を限度として、贈与税が非課税となります。万一、扶養者が亡くなった時も、特定障害者の方の生活費や養育費が信託財産から定期的に交付されます。
個人向け【不動産仲介業】
不動産購入のアドバイスが受けられたり、自分が所有する不動産の有効活用を提案してもらえたり、その適正な価格や賃料を鑑定してもらうこともできます。
法人向け【コンサルティング業務】
■退職給付コンサルティング:年金や退職金制度の設計や運営面について、専門家のアドバイスを受けることができます。
■福利厚生コンサルティング:役員向け・従業員向け株式交付信託や、従業員の資産形成サポートであり、企業の負担軽減にもなる「積立貯蓄」「財形貯蓄」「住宅ローン」などの計画を提供してもらえます。
法人向け【不動産業務】
不動産の売却・購入・オフィス賃貸借等に関する業務をサポートしてもらえます。例えば、遊休地を有効活用したい・分散しているオフィスを集約化したい・老朽化しているビルの立替と移転どちらが有益か知りたい・賃借しているビルは購入したほうが有益なのか知りたいなどの疑問に対して、最適な手法を提案・実行してもらえます。
法人向け【株式公開サポート】
株式公開を目指す会社に対して、株式上場の2~3年前から必要なスケジュール作成や、様々な事務手続きをサポートしてもらえます。
各信託銀行によってサービスの種類や詳細は異なりますので、詳細はホームページでご確認ください。
まとめ
以上、信託銀行とメガバンクの違いについて解説しました。
信託銀行とメガバンクを比べると、圧倒的に信託銀行のサービスが幅広いことが分かりますね。若い方でも今一定の貯蓄があれば、メガバンクなどの銀行にただ預けておくよりも、信託銀行のさまざまなサービスを利用して、将来に備えておくのがおすすめです。
また定年退職が間近であったり、お子様やお孫さんに資産を遺したい方、所有する不動産について、最適な利用法が知りたい方などにとっても、信託銀行には最適のサービスが用意されています。
法人に対しても、コンサルティングや年金などの福利厚生、不動産や株式上場など、業務の様々な面におけるサポートが用意されています。また、もちろん信託銀行でも、普通の銀行と同様に、普通預金や定期預金などのサービスも利用できます。
ただ、店舗数やATMの数などに関して言えば、メガバンクの方が圧倒的に多いので、ご自身の用途によって、両方とも賢く利用できるといいですね。