皆さんは、Amazon.comが運営する「Amazon GO」というお店をご存じですか。
「Amazon GO」は2016年12月5日にAmazonの新本社内(アメリカ / シアトル)にオープンした食料品を販売するお店なのですが、近所のスーパーやコンビニとは決定的に違う箇所があります。
その決定的な違いとは「無人店舗運営システム」が導入されたお店であるということです。
Amazon GOは、「レジに店員がいないコンビニ」のようなイメージで、店内に設置されたカメラを利用して、ディープラーニング・アルゴリズムにより人の動きをトラッキングして、何の商品を手に取ったかや、一度手に取った商品を棚に戻す動作などを正確に捉え、そのシステムにより来店客の動きを把握することにより、来店客はレジに並ぶことなく商品を購入することができるなど、部分的に自動化された店舗運営を実施している画期的なお店なのです。
日本もこのような革新的なシステムや技術、商品、サービス等を積極的に導入していきたいため、こうした新商品や新技術を開発する事業者を支援する制度を実施しており、東京都では、東京都における産業の技術力強化や新分野の開拓を促進し、産業の活性化を図ることを目的とした助成金制度である「新商品・新技術開発助成事業」が実施されています。
本記事では、この「新商品・新技術開発助成事業」について詳しく解説いたします。
INDEX
新製品・新技術開発助成事業について
新製品・新技術開発助成事業とは、東京都内に事業所を置いている中小企業等が新製品の開発や新たなサービスを創出するために必要な研究開発にかかる経費の一部を助成金として経済支援を行ってくれる東京都の助成金制度です。
本助成事業の助成対象は新商品や新技術、新サービスの「試作開発・研究及び試験評価等」の段階にかかる費用の一部を支援してくれる制度であり、例えば申請する事業が「企画・事前検証」→「試作開発」→「試験評価」→「生産・量産」→「販売」といった流れであった場合、この事業にかかった経費の全てが助成対象となるのではなく、(「試作開発」→「試験評価」)の項目に当てはまる経費のみが助成対象となります。
新製品・新技術開発助成事業は、実用化の見込みがある「新製品・新技術開発」のための助成制度であるため、既存の製品・サービスを真似たものや、設備投資を目的とした経費は助成対象ではありませんが、研究・開発における従業員の人件費は助成対象になるといった大きな特徴があり、東京都内で創業したての中小企業だけでなく、創業予定の事業者も、この助成金制度の対象であるという大きな特徴があります。
助成金制度の一番のメリットは、助成金制度は融資ではないため、返済する必要がないお金である、ということが挙げられます。
この助成金制度をうまく活用すれば、新たな商品や技術・サービスの創出を行いたい事業者の経済的負担が減るため、東京都の産業や経済の活性化に繋げることができます。
本助成金制度は、令和2年度3月から公募が開始されており、助成上限額は最大で1,500万円で、補助率は助成対象経費の1/2以内であり、公募元は東京都中小企業振興公社です。
※東京都中小企業振興公社とは
昭和41年に中小企業の下請取引の紹介等を行うため、東京都により財団法人東京都下請企業振興協会として設立されたのが始まりであり、東京都における中小企業の総合的・中核的な支援機関として各種支援事業を提供し、東京の経済の活性化や都民生活の向上に寄与しています。
新商品・新技術開発助成事業の概要
・名称
新商品・新技術開発助成事業
・助成上限額
1,500万円
・助成率
1/2以内
・助成対象期間
最長1年9カ月
・公募期間
令和2年3月16日~令和2年4月6日
・公募元
東京都中小企業振興公社
東京都中小企業振興公社 ホームページ
そして、主な助成対象の事業内容には3つのテーマがあり、その3つのテーマとは「新製品・新技術の研究開発」「新たなソフトウェアの研究開発」「新たなサービスの創出のための研究開発」となります。
新製品・新技術開発助成事業の助成対象となる3つの事業テーマ
次の3つの事業テーマがが新製品・新技術開発助成事業の対象となります。
①新製品・新技術の研究開発
新しい機能を付加した製品や新しい製造技術に関する「ハード面の研究開発」で、試作品の設計、試験評価及び改良等
(具体的な事業内容の例)
・超小型モーターの試作
・遠隔介護ロボットの試作
・次世代照明機器の開発
・高性能計測器の開発
・高機能性塗料の開発
(要件)
・研究開発の主要な部分が自社開発であること。
・開発した最終成果物の製品化及び実用化を目的とすること。
②新たなソフトウェアの研究開発
システム設計等「ソフト面の新たな研究開発」で、データ処理装置・情報処理プログラム開発及び改良等
(具体的な事業内容の例)
・遠隔ロボットの操作をするソフトウェアの研究・開発
・無人店舗運営実施システムの研究・開発
・ブロックチェーン型配車アプリの開発
(要件)
・研究開発の主要な部分が自社開発であること。
・開発した最終成果物の製品化及び実用化を目的とすること。
(クラウドコンピューティング等の利用形態を含む。)
・特定の顧客向けの開発ではないこと。
③新たなサービス創出のための研究開発
「新たなサービス」の提供による生産性の向上、高付加価値化を目的として、サービス関連業等が外部の技術を活用して行う研究開発等
(要件)
・新たなサービス創出の主要な部分(構想・企画・要求の定義等)は、申請者が担うこと。
・新たなサービス創出の仕組みに技術開発要素を含むこと。
・開発した最終成果物は申請者が自社利用し、新たな顧客サービスの提供により新事業展開を図ることを目的とすること。
※新たなサービスとは
一定の新規性があり相当程度市場で普及していないサービスのことを指します。
(既存のサービスを真似たサービスは対象ではありません。)
上記の要件以外にも満たすべき要件がありますので、以下で解説いたします。
新製品・新技術開発助成事業助成金申請時の満たすべき要件
(住所等の要件)
・東京都に主たる事業所を有し引き続き1年以上事業を営んでいる中小企業者等
・東京都内で創業し引き続く事業期間が1年に満たない中小企業者等
・東京都内での創業予定者
※業種等の要件はなく、製造設備を持たない企業も申請を行うことができます。
(助成対象経費の要件)
・事業実施のために「必要となる最小限の経費」のみ
・助成対象期間内に契約、取得、支払いが完了するもの
・助成対象の確認が可能で、本助成事業の係るものとして明確に区分できるもの
新製品・新技術開発助成事業助成金申請方法7つの流れ
新製品・新技術開発助成事業に申請するには下記7つの流れになるので覚えておきましょう。
①申請書の提出
申請書を記入、作成して「東京都中小企業振興公社 助成課」に提出します。
申請書はWeb上から提出可能です。
(申請・問い合わせ先)
東京都中小企業振興公社 助成課
〒101-0022
東京都千代田区神田練塀町3-3 大東ビル4階
03-3251-7894
②一次審査
主に事業計画等の書類審査となります。
③二次審査
面接での審査が行われます。
④助成対象者決定
助成対象者に交付決定通知が送付されます。
⑤事業の実施
申請を行い、助成金が交付されることが決まれば、申請した内容の事業を実施します。
本助成金制度には助成対象期間が定められており、その期間内に事業を完了させる必要があり、完了検査で確認されることになります。
※助成対象期間は最長1年9か月です。
⑥事業報告・検査
事業の進捗や結果を報告し、検査やチェックを受けましょう。
⑦助成金交付
申請した事業者の口座に助成金が振り込まれます。
助成対象にならない5つの事業例を紹介
下記の事業は新製品・新技術開発助成事業の助成対象とならない場合があるので注意してください。
①開発以外を目的とした事業
開業資金や運転資金等の新商品や技術の開発・研究以外にかかる経費は助成対象外です。
②既に収益化されている事業
量産化段階にある技術等が事業化して、販売を行う等、既に収益をあげているものは対象外です。
③模倣・改良した製品等
既存のサービスや技術を真似たものや、既存の商品を改良しただけであると判断された商品は助成対象ではありません。
④汎用性のない事業
特定の顧客がターゲットで、汎用性のない、今後事業として発展しないと判断される内容は対象ではありません。
⑤令和3年12月31日までに、研究開発の完了が見込めないもの。
新製品・新技術開発助成事業助成金申請時の3つの注意点
新製品・新技術開発助成事業を申請する際は下記3つ点に注意してください。
①新製品・新技術開発助成事業の申請には手間がかかる。
この助成金のテーマが研究開発のため、他の助成金制度と比べると申請時の提出書類の数が多く、ややこしく感じる手続きを行わなければなりませんので、検討している事業者の方はなるべく早めに準備を行い、余裕を持って申請に取り組む必要があります。
②不採択でも再申請を行うことができる。
まずは不採択となった原因を特定し、事業計画を立て直す必要があります。
再申請の支援を行ってくれる「申請書のブラッシュアップサービス」を実施しているコンサルタントの方々もおられますので、一度専門家に相談してみるのもいいでしょう。
③証拠書類が確認できない経費は助成対象とはならない。
帳票類に不備のある経費については助成金は支給されません。
見積書、契約書、仕様書、納品書、請求書、振込控、領収書などは必ず保管して提出する必要があります。
まとめ
東京都(東京都中小企業振興公社)では中小企業の事業者が「新製品・新技術の研究開発」や「新たなソフトウェアの研究開発」及び「新たなサービス創出のための研究開発」を実施するために必要な経費の一部を支援する助成金制度「新製品・新技術開発助成事業」を実施しており、既存のサービスや模倣商品とは違う、革新的なシステムや技術、商品の研究開発を積極的に支援することで、東京都の産業や経済を活性化させることを目的としています。
本助成事業の助成対象となる経費は、新商品や新サービスの研究開発にかかる経費の一部を支援するものであり、その事業の工程全てにかかった経費が助成対象となるわけではなく、主に「試作開発」「試験評価」を実施するためにかかった経費が対象であり、商品の生産工程や事前検証にかかった経費は対象外となります。
具体例としては「無人店舗運営システムの研究開発」や「超小型モーターの試作」「遠隔ロボットの操作システム」などが挙げられ、事業の最終目標としては、試作や研究段階で終わることではなく、新たな事業を創出することを目標としていなければならず、汎用性のないものや、特定の顧客のためだけのサービスなど、今後事業として発展しないと判断される内容の事業や、既存の商品を真似た模倣商品などは助成対象ではありません。
そして、申請時の流れは「申請」→「一次審査」→「二次審査」→「助成対象者決定」→「事業の実施」→「報告・検査」→「助成金交付」という流れになっています。
事業実施する際には助成対象期間という期間(最長1年9か月)が設けられているので、その期間内に完成させることが可能な事業計画を立てる必要があります。
本助成事業のテーマが研究開発のため、申請書の作成には時間がかかってしまうことが考えられますので、時間に余裕を持って申請に取り組むことが重要です。
また、実施した事業にかかった経費を証明する書類は必ず保管して提出する必要がありますので、大切に保管しておくようにしましょう。