ファクタリングを資金調達の手段とする場合、サービスを提供する事業者に対して利用の申し込みをした上で実施される審査に通る必要があります。
当然のことながら、審査に落ちればファクタリングを利用することはできません。
そこで、審査を受ける上で留意しておくべき3つのポイントを解説します。
・信用力が高い売掛債権を供する
・誠実に対応する
・融資との違いを理解する
次項から、それぞれのポイントをくわしく解説します。
信用力が高い売掛債権を供する
ファクタリングによってできるだけ高額の資金調達が実現すれば、それに越したことはありません。そのためには、金額の大きい売掛債権を供したいところです。
ただ額が大きいということはそれだけリスクもふくらむわけですから、審査は厳しいものになります。
理想的な売掛債権
発生と回収のサイクルがしっかりしている売掛債権は、信用力が高いものとなります。一例として毎月の決まった締め日でまとまった金額が発生し、翌月の早い段階で入金されるといった具合です。
入金が遅れるようなこともなく、年単位でこのサイクルが続いているとなればこの取引相手は「優良顧客」であると言って間違いありません。
長い取引があって毎月の回収にも遅れはないのですから、ファクタリング事業者としても回収にまつわるリスクはほぼ考えなくて良いことになります。
仮に上場している企業との間で売掛債権が発生しているとすると、むしろファクタリング事業者にとってはぜひとも取り扱いたいものとなるのです。これは、審査を受ける上でも大きなプラスになります。
新しい取引先への売掛債権
それほど長い取引歴があるわけではない取引先への売掛債権をファクタリングに供する場合、審査は慎重なものとなります。
取引歴自体からは、取引先の回収リスクについて十分に判断することができないのです。こういったケースでは、利用者との間での契約書類などが精査されることになります。
そこで売掛に関して毎月の締め日と入金日が明確に示されていて、たとえば数ヶ月であってもその通りに回収されている実績があれば問題があるとは見なされません。
避けたい売掛債権
普段から取引があるわけでなく、「一見さん」のようなかたちで発生した単発の売掛債権をファクタリングへ供することは好ましくありません。
取引歴がないということは、債務者との関係が熟成したものになっていないわけです。しっかり売掛債権を回収することができるかどうか、不透明なところもあります。
ファクタリング事業者にとってもリスキーなところが大きく、審査を通すべきではないとする見方があっても不思議ではありません。
またある程度の期間にわたる取引がある取引先への売掛債権であっても、往々にして回収の遅れが起こっているなどの事実があると信用力は低くなります。
同様に入金までの期間があまりに長く設定されている売掛債権についても、貸し倒れの心配が大きなものになるためファクタリング事業者としては望ましくないものです。
対象外とされる売掛債権
信頼することのできる取引先であったとしても、個人の取引先に対する売掛債権はファクタリングへ供するものとしては認められません。と言うのも、ファクタリング事業者は審査の過程で取引先の信用状況を調査します。
ですが個人に関しては、法人のデータが集められている「帝国データバンク」などのように情報を確認することができないのです。
また、対法人の売掛債権であっても契約時の定めで譲渡禁止の特約を付しているものがあります。
ファクタリングでは事業者へ売掛債権を譲渡するかたちになりますから、それが禁止されていては取り扱うことができません。
そのほか取引先に対して売掛債権とともに買掛債務もあり、債務額が債権額を上回っている場合の売掛債権も対象外とされます。
売掛債権の信用力を証明するために
売掛債権の信用力を証明するためにはやはり、売掛取引にかかわる各種の書類を整えておくことが重要です。契約書のほか発注書や納品書、請求書などもあると説得力が違ってきます。
実際に金額が入金された預金口座の通帳も、確認作業を助ける書類として求められることが多くあるものです。またファクタリング事業者が債務者へ債権譲渡通知を行い、直接入金を受けるかたちであればリスクの軽減へつながるため審査においてもプラスになります。
誠実に対応する
ファクタリングは、金融機関からの融資を受けることなどが難しい局面で資金調達する手立てとなるものです。
「頼みの綱」となるファクタリング事業者に対し、審査に際してサービスを利用する側としてはとにかく誠実に対応しなければなりません。
不正な手段を用いない
ファクタリングに関連して深刻な問題となっている不正行為が、ふたつあります。ひとつは、売掛債権の多重譲渡というものです。
いくつものファクタリング事業者に対して、同一の売掛債権が供されることを言います。当然のことながらひとつしかない売掛債権によって複数回の資金調達を行うことは違法行為であり、許されません。
もうひとつ、売掛債権が架空に計上されていたというケースもあります。ファクタリングを申し込む上でこのように不正な手段が用いられることは、言語道断です。
審査に通るはずもなく、またこういった案件の存在が審査を厳しくしているところもあります。
真摯な応対をする
ファクタリングの利用を申し込むにあたっては、面談が行われます。ファクタリング事業者の側では最初に相談を受けた上で、改めてサービスの利用申し込みに関する面談を別の日時に設定することが一般的です。
そしてこの日時をしっかり守ること、用意するよう説明された書類をしっかり用意してきていることなども最低限の審査項目となります。
その書類について質問されることも多々ありますから、内容を問題なく説明することができるだけの準備はしなければなりません。言い方を変えて類似したことについて二度聞かれ、答えが違うものになっているようでは審査の観点からするとマイナスになります。
積極的に情報を開示する
ファクタリング事業者に対して積極的な情報開示を行うことは、審査における印象を高めることにもつながります。
謄本のほか決算書、納税証明書といった書類は一式用意しておきたいところです。
またすでに別のファクタリング事業者と契約した履歴があれば、その契約書も提出することをおすすめします。
融資との違いを理解する
ファクタリングも融資も資金調達の手段となるものですが、それぞれ明確に異なっているものです。審査において主眼が置かれる点についても、両者の間には違いがあります。
信用が問われる先
融資は申し込みをした相手に貸し付けをするものであり、その相手から返済を受けるものです。ですから返済をする上で十分な資金があるかどうか、「体力」があるかどうかといったことを審査する必要があります。
ファクタリングに関しては売掛債権が「信用の対象」となるものであり、その金額は利用者の取引先が支払うものです。
つまり売掛債権の債務者に十分な資金がありかどうか、「体力」があるかどうかが審査の上で重要なポイントになります。サービスの利用者に関しては、赤字になっているなど融資を受ける上でマイナスとなる状況であっても審査に通ることは可能です。
ただもちろん、最低限の信用に値するだけのものはなければなりません。
調達する上限額
各種ローンなどの金融商品に関しては、最高でいくらまでといった融資の上限額が決まっています。
ファクタリングにそういった明確な上限額は設定されていないのですが、月商と売掛債権のバランスは審査の目に留まるファクターです。
たとえば5,000万円の月商があって、1,000万円の売掛債権をファクタリングへ供するということであれば無難であると言うことができます。しかしながらこれが500万円の月商に対して1,000万円のファクタリングとなると、何があったのかということになるわけです。
普段から安定的に計上されていない売掛債権の存在は、貸し倒れのリスクを孕んでいると見られても仕方がありません。
そういった判断から、審査に通ることも難しくなる可能性があります。
まとめ
以上、ファクタリングの審査を受ける上で留意しておくべき3つのポイントを解説しました。
・信用力が高い売掛債権を供する
・誠実に対応する
・融資との違いを理解する
確実に審査をクリアし資金調達が叶うためには、どれも重要なポイントです。ファクタリングへ供する売掛債権としては、信用力が高いものを用意しなければなりません。
理想的なものはまとまった金額の取引が毎月長く続いていて、早いスパンで回収も確実になされているものです。
取引実績が豊富であり、ファクタリング事業者の受け取ることになる債権が貸し倒れるリスクもきわめて低くなります。
逆に取引の実績に乏しい取引先へ対する売掛債権、信用調査をすることが困難な個人への売掛債権は審査に通らないと考えて間違いありません。
具体的に債権の信用力を証明するためには取引契約書や発注書、請求書など関連する書類を豊富に示すことが有効です。
また、ファクタリング事業者に対して誠実に対応することも必須となります。積極的に情報を開示するなど、真摯に対応しなければなりません。
架空の売掛債権を計上すること、同じ債権を複数の事業者へ多重譲渡することなどはあるまじき行為です。そして、ファクタリングと融資の違いは正しく理解しておく必要があります。