大規模製材工場の新設等で需要が急激に高まった地域では、誤伐や盗伐等の無断伐採が増え始めています。
無断伐採の未然防止を図るために、市町村や関係機関等の連携して現地パトロール等の対策を講じていますが、常に監視をし続けることは難しいと言えるでしょう。
そこで、林野庁では「森林情報活用促進事業のうち無断伐採の把握体制の整備」を設けて、無断伐採を早期に把握できるリモートセンシング技術(衛星画像)を活用した取組を行っている事業に対して支援を行っています。
こちらの記事では「森林情報活用促進事業のうち無断伐採の把握体制の整備」を詳しく解説していきますので、ぜひご覧ください。
森林情報活用促進事業のうち無断伐採の把握体制の整備
林野庁が実施している森林情報活用促進事業のうち無断伐採の把握体制の整備は、市町村が伐採状況を効率的に確認し、無断伐採を早期に把握できるよう、リモートセンシング技術(衛星画像)を活用した監視体制の整備を支援している事業です。
市町村においては関係機関等と連携して現地パトロール等の対策を講じていますが、無届での伐採に備えて区域内を常時監視するは困難であるために設けられました。
対象事業の取組に必要となる経費の一部に対して、補助金が交付されます。
応募団体の要件
森林情報活用促進事業のうち無断伐採の把握体制の整備の応募団体は、民間団体とし、下記の①~⑥の全てを満たすものとなります。
①リモートセンシング技術や森林計画制度に関する知見を有し、かつ、②に定める事業内容を的確に実施できる能力を有する団体であること。
②本事業を行う意思及び具体的計画並びに本事業を的確に実施できる能力を有する団体であること。
③本事業に係る経理その他の事務について、的確な管理体制及び処理能力を有する団体であって、定款、役員名簿、団体の事業計画書・報告書、収支決算書等(これらの定めのない団体にあっては、これに準ずるもの)を備えていること。
④本事業により得られた成果について、その利用を制限せず、公益の利用に供すること。
⑤日本国内に所在し、補助事業全体及び交付された補助金の適正な執行に関し、責任を負うことができる団体であること。
⑥法人等の役員等(個人である場合はその者、法人である場合は役員又は支店若しくは営業所(常時契約を締結する事務所をいいます。)の代表者、団体である場合は代表者、理事その他の経営に実質的に関与している者をいいます。)が暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員をいいます。)でないこと。
事業内容
森林情報活用促進事業のうち無断伐採の把握体制の整備の事業実施主体が取組める事業の内容は、下記の1~5の通りとなります。
◆1.衛星画像を活用した無断伐採把握技術の実装に向けたプログラム改良
ア:農林水産省においては、効率的かつ低コストに伐採状況を確認するため、無償利用可能な衛星画像を用いた伐採状況等確認プログラムを開発しているところです。
本プログラムを市町村の現場で活用し、無断伐採を含む伐採状況の効率的な把握が可能となるよう、3の検討結果や抽出手法の精査を踏まえ、プログラムの抽出精度の向上を図るとともに、プログラムの課題(自治体からの改善要望等について林野庁が事業実施主体に別途提供)に対し、作業効率の向上に資する改良等(操作環境等の改良、アラート通知等の機能拡充等)を行います。
イ:上記により改良したプログラムについて、伐採届(主伐によるもの)の提出件数が多い地域等を中心に実証調査を行い、精度の検証及び必要なシステム補正を行います(調査は3箇所程度で行い、特定の地域に偏らないよう設定)。
◆2.市町村への技術面でのバックアップ体制の構築
ア:市町村における無断伐採の把握方法をはじめとした伐採届出手続の実態を把握するため、伐採届(主伐によるもの)の提出件数の多い市町村や無断伐採の発生が見られる市町村を中心に、実態調査を行います(調査は3市町村程度で行い、特定の地域に偏らないよう設定)。
イ:市町村において、プログラムの活用も含めて各地域の実情等に合った方法により効率的な伐採状況の確認等ができるよう、市町村等への情報提供を目的として、リモートセンシング技術を活用した伐採状況の確認に係る先行事例の収集・分析・整理等を行います。
ウ:3の検討結果を踏まえ、令和4年度から市町村への技術面でのバックアップが可能となるよう、支援体制の準備や支援内容の取りまとめ、市町村向け普及資料の作成など、バックアップ体制の構築を行います。
なお、受託者は、構築したバックアップ体制による市町村支援の実証を自主財源により令和4年度に行うことを条件とします。
◆3.検討委員会の設置・運営
プログラムによる無断伐採の把握をより効果的に行うことを目的として、リモートセンシング技術やシステム開発、森林計画制度等に関する知見を有する有識者等からなる検討委員会を設置・運営します。
同委員会では、プログラムの仕様や2のア及びイの結果を踏まえ、精度や作業効率の向上に資するプログラムの改良事項、プログラムを活用した効率的・効果的な伐採状況の把握等を可能とする技術面でのバックアップ体制の検討を行います。
なお、このバックアップ体制については、民間の企業、団体等が市町村から支払われる料金
収入により継続的に運営できるものとなるよう検討することとします。
4.報告書の作成
事業実施主体は、1~3において実施した取組について、その結果を取りまとめ、報告書を作成するものとします。
5.その他留意事項
ア:事業実施に当たっては、林野庁計画課と密に連携を取ること。
イ:事業実施のスケジュール、実証調査箇所等については、林野庁計画課と打合せの上進めること。
補助対象経費
森林情報活用促進事業のうち無断伐採の把握体制の整備の補助対象となる経費は、事業を実施するために直接かつ追加的に必要となる、下記の表の経費となります。
・通常の団体運営に伴って発生する事務所の賃借料等の経費は含まれません。
・提案に当たっては、令和3年度における本事業の実施に必要となる額を算出しますが、実際に交付される補助金の額は、課題提案書等に記載された事業内容等の審査の結果等に基づき決定されることとなりますので、必ずしも提案額と一致するわけではありません。
費目 | 内容 |
技術者給 | 事業実施主体が専門的知識等を要する業務に係る技術を有する者 (プログラム作成や実態調査等を行う者等をいいます。)に対して支払う実働に応じた対価 |
賃金 | 事業実施主体が本事業の補助的業務(資料整理、事業資料の収集等) に従事するために臨時的に雇用した者に対して支払う実働に応じた対価 単価については、当該事業実施主体内の賃金支給規則や国の規定等 によるなど、妥当な根拠に基づき業務の内容に応じた単価を設定する こととします。 |
使用料及び賃借料 | 車両、器具機械、会場等の借上げに必要な経費 |
謝金 | 企画、講習会、専門的知識の提供、資料の整理・収集等について協 力を得た事業実施主体以外の者に対する謝礼に必要な経費 単価については、妥当な根拠に基づき業務の内容に応じた単価を設 定することとします。 |
旅費 | 事業実施主体が行う資料収集、各種調査、検討会、指導、講師派遣、 打合せ、普及啓発活動、委員会等の実施に必要な交通費 |
需用費 | 消耗品費、印刷製本費、光熱水費等の経費
ア:消耗品費 文献、書籍、原材料、消耗品、消耗器材、各種事務用品等の調達に 必要な経費 イ:印刷製本費 資料、文書、図面、パンフレット等の印刷や製本に必要な経費 ウ:光熱水費 電気、水道等の使用料を支払うために必要な経費 |
資材機材費 | 本事業を実施するために必要となる資材機材器具の購入経費(ただ し、机、椅子、書庫等汎用性のあるものは除きます。)です。 |
役務費 | 原稿料、通信運搬費、通訳翻訳料、普及宣伝費、試験・検査費等の 人的サービスに対して支払う経費
ア:原稿料 報告書等の執筆者に対して、実働に応じて支払う対価。 イ:通信運搬費 郵便料、電話料、データ通信料、諸物品の運賃等の支払に必要な経費 ウ:通訳翻訳料 外国人との交渉・会話の際の通訳や外国語の文献の翻訳について、 事業実施主体が委託した者に対して、実働に応じ支払う対価 |
委託費 | 補助の目的である本事業の一部分を他の民間団体・企業等の第三者 に委託するための経費 ・委託費の内訳については、他の補助対象 経費の内容に準ずるものとします。 ・ 委託を行うに当たっては、第三者に委託することが必要かつ合理的、効果的であると認められる業務に限り実施できるものとします。 なお、本事業そのもの又は本事業の根幹を成す業務を委託すると、 本事業の対象要件に該当しなくなりますので、委託内容については十分検討する必要があります。 |
◆提案できない経費
下記の経費は、提案することができませんので、お気をつけください。
・建物等施設の建設、不動産取得に関する経費
・本事業の実施に関連しない経費
補助額
森林情報活用促進事業のうち無断伐採の把握体制の整備の補助率と補助額は、下記の通りとなります。
◆補助率 定額
◆補助額 10,000千万円以内
・1課題選定予定
補助金を交付された際の注意事項
補助金の交付を受けた事業実施主体は、本事業の実施及び交付される補助金の執行に当たって、下記の①~④の条件を守らなければなりませんので、よくご確認ください。
①事業の推進
事業実施主体は、事業全体の進行管理、事業成果の公表等、事業の推進全般についての責任を持たなければなりません。
特に、交付申請書(採択決定後、補助金の交付を受けるために提出することとなっている申請書をいいます。)の作成、計画変更に伴う各種承認申請書の提出、定期的な報告書の提出等については、適時適切に行う必要があります。
②補助金の経理管理
事業実施主体は、交付を受けた補助金の経理管理に当たっては、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律に基づき、適正に執行する必要があります。
事業実施主体は、本事業と他の事業との経理を区分し、補助金の経理を明確にする必要があります。
③知的財産権の帰属等
本事業により得られた知的財産権(特許権、実用新案権、意匠権、プログラム及びデータベースに係る著作権その他の無体財産権、ノウハウ等)は、事業実施主体に帰属します。
④事業成果等の報告
本事業により得られた事業成果及び交付を受けた補助金の使用結果については、本事業終了後に必要な報告を行わなければなりません。
なお、林野庁は、報告のあった成果を無償で活用できるほか、事業実施主体の承諾を得て公表できるものとします。
まとめ
林野庁が実施している森林情報活用促進事業のうち無断伐採の把握体制の整備について、応募団体の要件、事業内容、補助対象経費、補助額、加えて補助金を交付された際の注意事項などを詳しくご紹介してきました。
無断伐採把握技術の実装に向けたプログラム、技術面でのバックアップ体制の構築、またそれらの検討委員会の設置や運営に取組んでいるのであれば、「森林情報活用促進事業のうち無断伐採の把握体制の整備」の補助金を、資金調達の一つとしてお役立てください。
全国各地での無断伐採の未然防止を図るために、監視体制の整備を推し進めていきましょう。