事業の資金調達を考えた時に、まず浮かぶのは「融資」という言葉です。
どなたでも「融資の意味は理解している」と、なんとなく理解している方は、多いと思いますが、融資の種類や決まり事を詳しくご存知でしょうか?
もしも、金融機関で融資を検討しているのであれば、「融資」について基本的な知識を持ち合わせていることは不可欠です。
こちらの記事では、融資の意味を始めとして、4つの事業用資金の融資、融資の種類、融資と出資の違いについて、融資に必要な書類などを詳しく解説しています。
融資を検討している方にとって、必要な基礎知識が得られる記事となっていますので、ぜひご覧になってみてください。
融資を考えるのなら、まずは融資に関する基礎知識を蓄えて、「融資とはこういうものか」と理解を深めておきましょう。
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融資とは借金のことを意味する
融資とは、資金を融通することという意味です。
金融機関がお金を貸し出すことを言い、融資を受ける側にとっては金融機関からお金を借り入れたことになります。
つまり、融資とはお金を借りる借金の意味と変わりないのです。
ただし、一般の方が思い浮かべる借金は生活費や住宅、車などの購入資金が必要となり、お金を借りることですが、融資はそうではありません。
融資は、事業のための資金を借りる行為のことを指しています。
お金を借りるという意味では同じですが、「事業で利益を上げるため」と「消費目的のお金」という、お金を使う目的が違っているのです。
また、お金を借りていることには間違いありませんので、返済義務と借りたお金に対しての利息を支払うことになります。
金融機関が考えるリスク
お金を貸し出す側の金融機関は、返済してくれる可能性が高い人に融資をしたいと思っています。
しかし、お金を借りる方は、資金や資金繰りが厳しい状況のときに、借りたいと考えます。
その結果、金融機関は資金繰りが厳しいときには返済してもらえないというリスクを回避しようと、貸し出しに躊躇してしまいます。
このように、金融機関の考えているリスクを避けるためには、事業用資金が無くなりそうな時に融資を受けるのではなく、ある程度資金に余裕がある時に融資を受けるのがベストなタイミングとなるでしょう。
4つに分けられる事業用資金の融資
金融機関の融資は、ひとつではありません。
融資は、形態の違いによって4つの種類に分けられます。
それぞれ、違った特徴を持ち合わせていますので、「どのような融資があるのか?」確認しておきましょう。
当座貸越
銀行の融資を利用する場合には、申し込みをする度に審査を受けることになりますが、「当座借越」では、限度内の範囲であれば自由に借り、自由に返すことができます。
「当座借越」を行っていると、設定されている限度内ならば自由に借りれるため、緊急な資金の調達などに役立ちます。
ただし、銀行側にとっての「当座借越」は、リスクの高い融資なので審査は難しくなっています。
証書貸付
借入契約書となる「金銭消費者貸借契約書」を交わして融資を受けることを「証書貸付」といいます。
「金銭消費者貸借契約書」には、契約日、借入金額、利率、遅延の損害金、返済方法、返済期間など、融資の際の情報が記されています。
融資を受ける方、連帯保証人の方の署名、捺印を押して銀行に提出します。
「証書貸付」で行う融資は、返済期間が1年以上の長期融資、金融機関が取り扱う融資制度、また金融商品ごとに「証書貸付」が設けられている場合もあります。
返済期間が長いという特徴を持っているため、金融機関からみるとリスクが高く、そのため「証書貸付」も比較的厳しい審査となります。
手形貸付
「金銭消費者貸借契約書」の代わりに約束手形を発行し、融資を受ける方法を「手形貸付」と言います。
「手形貸付」を行ってくれる金融機関で当座預金口座を開設する必要があり、「手形貸付」は、主に短期の借入を目的としています。
ただし、返済が遅れたり不渡りを出してしまうと、信用度が極端に低下しますので、返済期日に間に合うように、気をつけてください。
「手形貸付」は、融資の中では比較的審査が通りやすい融資です。
手形割引
取引先から受け取った手形を、金融機関で買い取ってもらう融資方法を「手形割引」といいます。
回収できるお金を担保にして、お金を借りる形となります。
「手形割引」も「手形貸付」と同じく、融資が受けやすいですが、手形を発行している取引先に信用がないと、融資を受けられないケースが出てきます。
融資には公的融資と民間融資が存在
融資には、上記で説明した4つの種類の他に、融資は「公的融資」と「民間融資」と2つの種類に分けることができます。
「公的融資」とは、国や地方自治体が設けている融資です。
「公的融資」は、日本政策金融公庫と地方自治体が窓口となっています。
「民間融資」には都市銀行および地方銀行、信用金庫などが行っている融資です。
公的融資よりも、民間融資の方が審査が厳しく、特に創業時の融資は難しいと言われています。
【公的融資】日本制作金融公庫
国が100%出資している日本政策金融公庫は、国が運営する金融機関となっています。
2008年に、「国民生活金融公庫」「農林漁業金融公庫」「中小企業金融金庫」が統合して設立されました。
中小企業や個人事業主への支援を目的として、金融機関で融資を行えない創業者の支援などをサポートしています。
【公的融資】制度融資
地方自治体が設けている制度融資は、公的融資に分けられていますが、実際にお金を融資しているのは民間の金融機関となります。
制度融資は、連帯保証人がいらず、低金利の融資を受けることができます。
信用保証協会による保証は必要となるので、気をつけてください。
【民間融資】プロパー融資
銀行などの金融機関から直接融資を行う方法をプロパー融資といいます。
プロパー融資を受けるためには、事業の実績が大きく影響してきます。
創業したばかりや起業前の方は、融資を受けることが難しいとされていますが、もしもプロパー融資を受けることができたのなら、会社の信用度が高まっていくでしょう。
【民間融資】信用保証付融資
融資を受ける際には、保証人が必要となる場合がありますが、「信用保証付融資」は、信用保証協会が保証人となる方法です。
「信用保証付融資」を受ける際には、信用保証協会との面談を行う必要があります。
もしも、返済することができない状況に陥ったとしても、信用保証協会がリスクを背負う形になります。
銀行などの金融機関がリスクを追わなくていいので、融資が受けやすい方法です。
融資を受けるための書類
融資を受けるためには、審査をクリアする必要がありますが、その前にかならず書類の提出が求められてきます。
提出が求められるのは、主に「決算書」や「事業計画書」です。
「貸借対照表」では、純資産がプラスであるか確認され、「損益計算書」では営業利益、経常利益がしっかりとチェックされます。
営業利益で事業の稼ぐ力をチェックされ、経常利益で会社の継続的に利益が出るのかを確認されます。
また、「資金繰り表」では、資金の流れを確認されます。
直近6ヶ月分ほどの「月別資金繰り表」、融資得た場合の改善を示した資金繰りも必要となる場合も出てきます。
もっとも重視されるのは「事業計画書」です。
これまでの事業の行いと実績、さらには今後どのような実績が見込まれるのかを「事業計画書」で確認されます。
「事業計画書」を基準にして、希望の融資金額を示すことでも「事業計画書」の役割となります。
その他にも、「登記簿謄本」「印鑑証明」「試算表」「納税証明書」「購入する設備等の見積書」などが融資を受ける際には、必要な書類となります。
融資と出資の違いを確認
資金調達に関した言葉で、融資の他に「出資」という言葉をよく聞くと思います。
融資と出資の意味はことなり、「出資」は会社に投資してもらうことをいい、借りることにはならないので返済する義務はありません。
お金を返さなくてもいいのですが、新株の発行、株式の配当を用いて、投資した方に返すことになります。
つまり、会社の株主になるということです。
多くの株式を保有されてしまうと経営権を取られてしまう可能性もでてくるので、注意しておきましょう。
事業に秀でたものがないと投資家の目に止まらない
投資家から出資してもらうためには、事業に秀でたものがないと投資してもらえません。
どんな事業でも投資を受けられるのではなく、事業の可能性や将来性を積極的に、投資家に向けてアピールする必要があります。
出資は、融資と違って返済しなくてよいので、資金調達法として優位に見えるかも知れません。
しかし、部分的な経営権を渡すことになるので、経営の自由度は下がってしまうことになるでしょう。
起業資金には日本政策金融公庫の融資を
これから事業をスタートさえる創業時には、起業のための資金調達は欠かせません。
しかし実績がない起業の場合、民間の金融機関での融資は受けにくくなっています。
起業した方、または事業を始めて間もない方は、日本政策金融公庫で設けられている融資制度がおすすめです。
制度の中でも「新創業融資制度」では、要件を満たしているのなら、無担保および保証人なしでの融資が可能です。
また、日本政策金融公庫の融資は、認定支援機関を介して行っているので、書類作成のためのサポートや相談も利用できるメリットの多い融資制度を数多く設けられています。
この機会に、資金調達や融資の悩みや疑問をプロの方に、相談してみてはいかがでしょうか?
まとめ
事業の資金調達に欠かせない融資の意味を説明するとともに、4つの事業用資金の融資、融資の種類、融資と出資の違い、融資に必要な書類などを詳しく解説してみました。
創業資金や運営資金として、融資を検討しているのであれば、融資の基本的な情報は知っておきたい知識です。
融資の言葉と仕組みを理解していれば、金融機関との交渉もスムーズに進み、また公的融資と民間融資を知ることで、自身が行う融資の幅も広げていくことができます。
会社にあった融資を探し出し、うまく活用することで会社の継続や発展につなげる可能性は高まっていくでしょう。