資本性劣後ローン

コロナ禍の資金調達|2つの新型コロナ対策資本性劣後ローンを紹介

ローン

新型コロナウイルスの影響によって、資本力が弱い中小企業は大きな打撃を受けているのではないでしょうか?

キャッシュフローの不足、スタートアップ企業の一時的な財務状況の悪化などで経営状態が厳しくなっている企業は少なくないはずです。

日本政策金融公庫では、そのような状況を踏まえて、金融機関が資本とみなすことができる新型コロナウイルス対策に特化した「新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)」を新設しました。

従来から行われている挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)と類似した制度です。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、事業再生や事業拡大に向けて新たな取組行っているのなら、ぜひ新型コロナ対策資本性劣後ローンをご利用ください。

こちらの記事では、資本性劣後ローンの解説に加えて、2つの新型コロナ対策資本性劣後ローンをご紹介していきます。

資本性劣後ローンの3つの特徴

資本性劣後ローン

資本性劣後ローンとは、会社が破産した場合に政権回収できる順番が劣後するローンのことです。

金融機関が債権を回収する際に、該当企業が他の債務をすべて弁済したのちに、資産が残っていれば劣後ローンの返済に充てられます。

債務超過の場合には返済されない可能性が高いために、株式資本に近いとされており貸借対照表では負債と資本の中間として、資本性劣後ローンは捉えられています。

そして、資本性劣後ローンの大きな特徴としてあげられるのは、資本とみなされることです。

通常の融資では、貸借対照表では負債となりますが、劣後ローンは資本として位置づけられます。

特徴1:期日一括の返済

資本性劣後ローンは、毎月の返済をするのではなく期日一括による返済方法です。

返済期日までに元金返済をしなくてもすむために、一般的な融資と比較すると資金繰りを安定させることができます。

借入期間は、5年~15年と長期わたって資金繰りの資金として活用できます。

特徴2:企業の格付けが下がらない

通常の資金調達よりも、劣後ローンの方が資金増強となるために融資を受けた企業は、格付け機関の評価を高めることができます。

もしも、日本政策金融公庫から資本性劣後ローンを受けたのなら、民間銀行は企業の財務の信用度が高まり、融資を受けやすくなります。

特徴3:繰上げ返済ができない</3>
資本性劣後ローンは、借入期間中の繰上げ返済を原則的に行っていません。

貸付期間と業績によって金利が変動し、業績が向上したときには金利が上昇、業績が低迷したのなら金利が低くなります。

金利上昇時の金利負担を抑えようと繰上返済が増えてしまうことが想定されるために、繰上げ返済を行わないのです。

国民生活事業と中小企業事業の2つの資本性劣後ローン

資本性劣後ローン

日本政策金融公庫では、新型コロナウイルス感染症によって影響を受けた方への支援として新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)が設けられました。

新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)には、「国民生活事業」と「中小企業事業」の2つの種類が設けられています。

◆「国民生活事業」は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けているスタートアップや事業再生に取り組む方が対象

◆「中小企業事業」は新型コロナウイルス感染症により深刻な影響を受けている経済環境下にあって、関係機関の支援を受けて事業の発展・継続を図る中小企業者が対象

それぞれの対象は異なっていますので、ご自身の状況に合う資本性劣後ローンをご利用ください。

次に、「国民生活事業」と「中小企業事業」の2つの新型コロナ対策資本性劣後ローンについて、詳しく解説していきます。

国民生活事業|新型コロナ対策資本性劣後ローン

資本性劣後ローン

国民生活事業が実施している新型コロナ対策資本性劣後ローンは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けているスタートアップ企業や事業再生に取り組む方等が利用できます。

「新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)」は、財務体質強化を図るために資金を供給しています。

利用できる方

国民生活事業の新型コロナ対策資本性劣後ローンを利用できる方は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた法人または個人企業の方で、下記のいずれかに該当する方となります。

◆J-Startupプログラムに選定された企業又は中小企業基盤整備機構が出資する投資ファンドから出資を受けた方

◆中小企業再生支援協議会の支援を受けて事業の再生を図る方

◆原則として認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の指導を受けて事業計画を策定した方であって、かつ民間金融機関等との協調支援により事業の発展又は継続を図る方

資金の使いみち・限度額・返済期間・返済方法・担保及び保証人

国民生活事業の新型コロナ対策資本性劣後ローンの資金の使いみち・限度額・返済期間・返済方法・担保及び保証人は、下記の表の通りとなります。

資金の使いみち 事業を行うために必要な設備資金および運転資金
融資限度額 7,200万円以内(別枠)
返済期間 5年1ヵ月、10年、20年のいずれか
返済方法 期限一括返済(利息は毎月払)
担保・保証人 無担保・無保証人

利率(年)

国民生活事業の新型コロナ対策資本性劣後ローンの利率(年)は、融資後3年間は1.05%となり、融資後3年経過後は、毎年直近決算の業績に応じて下記の2区分の利率が適用されます。

税引後当期純利益額 期間5年1カ月 期間10年 期間20年
0円以上 3.40% 3.40% 4.80%
0円未満 1.05% 1.05% 1.05%

その他の融資条件

国民生活事業の新型コロナ対策資本性劣後ローンのその他の融資条件等は、下記の通りとなります。
◆本制度による債務については、金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができます。
◆本制度による債務については、法的倒産手続きの開始決定が裁判所によってなされた場合、全ての債務(償還順位が同等以下とされているものを除く)に劣後します。
◆原則として、ご融資後5年間は期限前返済をいただけません。
◆審査時に原則として新型コロナ対策資本性劣後ローン専用の事業計画書をご提出いただく必要があります。
◆毎期の経営状況の報告等を含む特約を締結していただきます。

新型コロナ対策資本性劣後ローンの6つのポイント

国民生活事業の新型コロナ対策資本性劣後ローンをご検討の方は、下記の6つのポイントを確認してください。

◆ポイント1
・新型コロナウイルス感染症の影響を受けているスタートアップ企業の方、事業再生に取り組む方、新型コロナウイルス感染症の影響収束後の事業の発展または維持に向けて民間金融機関等の協調支援を受けることが可能な方等が対象です。

◆ポイント2
・融資額の上限は7,200万円です。既に新型コロナウイルス感染症特別貸付をご利用いただいている方も相談できます。

◆ポイント3
・業績に連動した利率や、期限一括返済を採用しています。

◆ポイント4
・申込みには、原則として新型コロナ対策資本性劣後ローン専用の事業計画書のご提出が必要となります。

◆ポイント5
・法的倒産時には、全ての債務(償還順位が同等以下のものを除く)に劣後します。

◆ポイント6
・金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができます。

中小企業事業|新型コロナ対策資本性劣後ローン

資本性劣後ローン

中小企業事業が実施している新型コロナ対策資本性劣後ローンは、新型コロナウイルス感染症により深刻な影響を受けている経済環境下にある方が利用できる融資です。

関係機関の支援を受けて事業の発展・継続を図る中小企業者に対し、財務体質強化を図るための資本性資金を供給するために設けられている制度です。

利用できる方

中小企業事業の新型コロナ対策資本性劣後ローンが利用できる方は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた方で、下記のいずれかに当てはまる方に限ります。

①J-Startupプログラムに選定された方または独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けて事業の成長を図る方

②中小企業再生支援協議会の関与のもとで事業の再生を行う方

③上記1および2に該当しない方であって、事業計画書を策定し、民間金融機関等による支援を受けられる等の支援体制が構築されている方

資金の使いみち・限度額・返済期間・担保及び保証人・融資の申込

中小企業事業の新型コロナ対策資本性劣後ローンの資金の使いみち・限度額・返済期間・担保及び保証人・融資の申込は、下記の表の通りとなります。

資金の使いみち 事業を行うために必要な設備資金および長期運転資金
融資限度額 直接貸付 7億2千万円(別枠)
返済期間 5年1ヵ月、10年、20年のいずれか(期限一括償還)
担保・保証人 無担保・無保証人
融資の申込 直接貸付
・日本公庫各支店の中小企業事業の窓口での申込み

利率(年)

資本性劣後ローン

中小企業事業の新型コロナ対策資本性劣後ローンの利率(年)は、融資後3年間は0.50%、融資後3年経過後は、毎年直近決算の業績に応じて、下記の2区分の利率が適用されます。

税引後当期純利益額 期間5年1カ月 期間10年 期間20年
0円以上 2.60% 2.60% 2.95%
0円未満 0.05% 0.05% 0.05%

その他の融資条件

中小企業事業の新型コロナ対策資本性劣後ローンのその他の融資条件は、下記の通りとなります。
◆本制度による債務については、金融検査上、自己資本とみなすことができます。
◆本制度による債務については、法的倒産手続きの開始決定が裁判所によってなされた場合、全ての債務(償還順位が同等以下とされているものを除く)に劣後します。
◆公庫が適切と認める事業計画書を提出していただきます。
◆融資後5年間は、原則として期限前返済はできません。

まとめ

資本性劣後ローンの3つの特徴を紹介すると同時に、国民生活事業と中小企業事業が新型コロナウイルス感染症の影響を受けている方に向けて実施している「新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)」について、詳しくご紹介してきました。

中小企業にとって、新型コロナウイルスの影響はキャッシュフローが不足したり、起業したばかりの企業にとって一時的な財務状況が悪化しているのであれば、「新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)」を検討してみてはいかがでしょうか?

資本とみなされる資本性劣後ローンなら、資金繰りにも響くことなく資金調達をすることができます。

国民生活事業と中小企業事業が実施していますが、その違いを把握してから自身により合う資本性劣後ローンを見つけてください。

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