個人事業主として開業し事業を始めたのなら、税金を納めることを忘れないようにしてください。事業運営で忘れがちですが、毎年確定申告を行わなけばならないのです。
確定申告をする際に、個人事業主として考えておきたいのが「節税」ですが、「節税」どのようなポイントで節税するべきかをご存知でしょうか?税理士へ相談することも一つの方法ですが、「節税」するには、まずは税金や節税のことを理解しておくことが大切です。
そこで、こちらでは個人事業主に課税される税金や節税のポイント、計算方法などを詳しく解説していきます。個人事業主として賢く「節税」したい方は、ぜひご覧になってみてください。
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【個人事業主】の確定申告
税金は、毎年1月1日~12月31日での1年間に生じた所得や会計結果を計算して、申告しなければなりません。2019年分のの確定申告は「所得税および復興特別税・贈与税は2020年2月16日~3月15日」「個人事業主の消費税および地方消費税2020年3月31日」までに、税務署へ確定申告書類に記入し提出することになっていました。
会社員は2,000万円を超える方以外は確定申告の必要がありませんが、個人事業主は自分で確定申告の際に計算する必要があります。また、個人事業主の場合には、事業所得が38万円以下になる場合は、確定申告しなくてもいいので覚えておきましょう。
【個人事業主】事業と所得金額の課税
個人事業主として課税される税金は、大きく分けて「所得金額にかかる税金」と「事業の取引自体にかかる税金」があります。それぞれの中には、どのような税金が含まれているのか確認しておきましょう。
所得金額にかかる4つの税金
①所得税
国税でとなり、税務署へ申告する税金。税率は5~45%までの7段階に区分され、所得金額に比例するのが特徴です。
②住民税
地方税のこと、税率は所得金額に関係なく一律10%。非課税対象者の以外は、所得金額の10%と別に均等割が一律5,000円課税されます。
③事業税
地方税のこと、課税される業種は不動産業などに限定され、税率は業種に応じて3%・4%・5%のいずれかになります。
④事業の取引に関しての税金
事業の取引自体にかかる税金
事業活動での取引自体にかかる税金は、主に消費税です。この場合、たとえ収入のない赤字でも課税されます。もしも消費税を払い過ぎたのであれば、原則として還付されることになります。
所得税を節税するポイント
個人事業主が節税する場合、所得税を節税する方法が基本となります。ただし、闇雲に課税所得を引き下げるだけでなく、きちんとポイントをおさえておかなければなりません。
そのためには所得税の計算構造を理解していくことが大切になります。
まずは、具体的な計算構造を把握しておいてください。ステップごとに順を追って計算していくと計算しやすくなります。
ステップ1:「合計所得金額」の計算
「合計所得金額」は、事業活動によって得た利益にほど近い金額となります。事業活動から収入金額から経費と青色申告特別控除(最高65万円)を差し引いた残額。
◆「収益金額」-「経費+青色申告特別控除(最高65万円)」=「合計所得金額」
ステップ2:「課税所得金額」を導き出す
ステップ1で計算した「合計所得金額」から「基礎控除、扶養控除、医療費控除など」の所得控除を差し引いた残額が「課税所得金額」となります。
◆「合計所得金額」-「基礎控除など」=「課税所得金額」
ステップ3:年間の所得税を計算
ステップ2で導き出した「課税所得金額」に税率を掛けて計算します。
◆「課税所得金額」✕「税率」=「年間の所得税」
課税所得金額に税率を掛けて計算します。具体的な税率は次のとおりです。
課税所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円超~330万円以下 | 10%-9万7,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20%-42万7,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23%-63万6,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33%-153万6,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40%-279万6,000円 |
4,000万円 | 45%-479万6,000円 |
ステップ4:納付する所得税の計算
年間の所得税より、住宅ローン控除、天引きされる源泉所得税などを控除した残高となります。予定納税額があるときには、その金額も差し引いてください。
これらのステップ1からステップ4によって、所得税の計算構造を確認できました。
経費に落とす節税方法
節税の方法として、経費に落とすことはよく知られていることですが、所得税控除と比較するとデメリットな部分も持ち合わせています。経費に落とす節税方法にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
メリット
青色申告を行う場合には、収入金額から経費を差し引けなくなった赤字額は、翌年以降の過去3年間所得金額と相殺できるようになり、「繰越控除」が可能となります。
【収入金額1,000万円・経費1,200万円の場合】
赤字額は1,000万円-1,200万円=▲200万円」
【翌年の所得金額が500万円となった場合】
合計所得金額は「500万円-200万円=300万円」
前年度の▲200万円が相殺した形の残額となります。
デメリット
経費として落とすためには、その経費が事業と絶対に事業と関連していなければなりません。
もしも、同業者との忘年会費を経費として落とすのであれば、業務上の提携先の紹介、事業活動に必要であることを税務署に説明できるようにしておく必要があります。
忘年会を事業活動と関連させることは難しくなり、経費として認められない可能性が高くなってしまうでしょう。
消費税を節税できる3つの方法
消費税を節税する方法は、3つの方法があります。「消費税の納税を免除」「簡易税制度を選択」「消費税の還付」のです。次に、3つの節税方法について詳しくみていきます。
①消費税の納税を免除
取引先より預かっている消費税の全額プールするには、前々年の課税売上高を1,000万円以下にすることです。しかし、年商2,000円の個人事業主が1,000万円の課税売上高に下げるのであれば、非常に難しいと言えます。
この場合、法人にすることで消費税の納税を免除する方法が考えられます。設立時に資本金1,000万円未満の会社を設立すると、前々年度の課税売上高(0円)がないこととなり、最長で2年間の消費税の免除が受けられるのです。
②簡易課税制度を選択
取引先から預かった消費税は、次のように計算されます。この計算の仕方を原則課税制度と言います。
【消費税納税額の計算方法】
◆消費税の納税額=得意先や顧客から預かった消費税-仕入先など取引先へ支払った消費税(=仕入税額控除)
「簡易課税制度」は、前々年の課税売上高が5,000万円以下の個人事業主に適用できる特例です。
「得意先や顧客から預かった消費税課税」に「みなし仕入率」を掛けることで、「消費税の納税額」を小さくしてくれます。もしも売上高が5,000万円以下ならば、簡易課税制度を検討してみてもいいかもしれません。
【簡易課税制度での「仕入税控除額」計算方法】
◆仕入税額控除(概算額)=得意先や顧客から預かった消費税×みなし
業種 | みなし仕入率 |
卸売業 | 90% |
小売業 | 80% |
製造業や建設業など | 70% |
飲食店業 | 60% |
サービス業など | 50% |
不動産業 | 40% |
「概算額で計算した仕入額控除」が「実額で計算した仕入税控除」が大きくなる場合に、結果的に取引先から預かった消費税の一部をプールできる可能性が出てきます。
実額で計算した仕入税額控除<概算額で計算した仕入税額控除
③消費税の還付
「課税事業者」を選択すると、消費税の還付を受けることができます。
「課税事業者」になるためには、「仕入税額控除が顧客から預かった消費税よりも多額になった場合」と「消費税を免除されていない個人事業主および法人」という条件を満たす必要があります。
仕入税額控除が多額になるケースとしては、「輸出業の場合」「多額の設備投資をした場合」があげられます。
【課税事業者となる条件】
◆得意先や顧客から預かった消費税<仕入税額控除
◆消費税の納税を免除されていない個人事業主・法人
【輸出業の場合】
輸出業とは、商品などを国内で購入し海外へと販売する事業です。国内での購入は消費税も支払わなければなりませんが、海外への販売を行う際には顧客などから消費税を預かっていないとして計算します。
このことを輸出免税といい「得意先や顧客から預かった消費税(0円)<仕入税額控除」となります。
【多額の設備投資をした場合】
1,000万円単位となる大きな額の設備投資を行った場合、支払う消費税は多額となってしまいます。もしも、2,000万円の機械を購入したのなら160万円もの消費税です。
この場合の仕入税額控除額は160万円と大きく増えていきます。
課税事業者を選択する方法
課税事業者を選択したいのであれば、還付を受け付けようとしている年の前年の末日までに、税務署に届出書を提出します。もしも平成30年に課税事業者を選択したいのであれば、平成29年12月31日が提出期限となります。
課税事業者の注意点
消費税の納税が免除となれば、取引先から預かったお金をプールする形になりますが、その反対に支払いすぎた場合でも還付が受けられなくなりますので、気をつけておきましょう。
課税事業者となった場合、次の注意点がでていきます。
◆課税事業者を原則は2年間継続となる(2年間は消費税の納税を免除できない)
◆100万円以上の設備投資やソフトウエアなどを購入した場合は3年間課税事業者を継続し、簡易課税制度を選択できない
助成金での節税に意識することも重要
事業運営にとって、厚生労働省が実施している助成金制度は、労働環境の整備、生産性向上などに取り組むことで助成金が支給されます。
返済する必要がない助成金は、事業資金となり役立つ事ができますが、助成金は会計上では収入としてカウントされるために課税対象となってしまいます。
少額の助成金ならば気にする必要はありませんが、助成金には数百万円から1千万円以上の金額のものがあります。このような大きな金額になる場合については、事前に節税について検討しておくことが大切となります。
節税を税理士に相談する
節税する方法は、いろいろな方法がありますが、法人への検討、課税事業者の選択などは慎重に行う必要があります。もしも、選択が誤りであれば軌道修正することは難しくなるからです。
個人事業主が、取り入れられる節税方法に気づくこと、誤った選択をしないようにするためには、専門家の税理士に相談することが近道となるでしょう。
税理士にできる業務範囲
税理士方では、税理士の業務範囲が記されています。節税の相談を行い、脱税相談は厳しく禁止されていることをみても、信頼できる相談先と言えます。
【税理士法に定められている業務範囲】
税務代理:税務に関することをあなたに代わって代行すること。この中には申告だけでなく、税務調査があった時の立会いも含まれる
税務書類の作成:税務に関する申告書の作成、提出
記帳業務:会計帳簿の作成をあなたにかわって代行すること
税務相談:節税や税務的な解釈の相談ごと。なお、脱税相談は厳しく禁止されています。
まとめ
個人事業主の課税対象となる税金を紹介しながら、3つの節税方法にいて詳しく解説してきました。個人事業主にとって、節税対策は欠かせない項目ですが、事業運営をしている中で、節税対策はつい見落としがちとなります。
節税対策を忘れることのないように、経費や消費税の節税方法を理解して、納税前にしっかりと準備をしておいてください。
また、節税方法は難しく間違いがあると修正が効かなくなってしまうケースもあります。そうならないために、専門家の税理士に相談することも視野にいれておくと安心です。
確定申告の間近になってから慌てることのないように、節税対策を早めに進めていきましょう。