
中小事業者が設備投資をすると、補助金や助成金がもらえるのを知っていますか?
設備投資とは、企業が事業のために用いる設備に対して行う投資のことで生産設備の新設、生産能力の拡大、省エネ・省力化、合理化、情報化などのために行います。
対象となるものには建築物や機械などの有形固定資産、ソフトウエアや、特許などの無形固定資産の2種類があります。
こちらの記事では、中小企業が設備投資した際に受けられる補助金・助成金以下3つのまとめを紹介していきます。
①ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
②中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)
③人材確保等支援助成金(設備改善等支援コース)
①ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は中小企業・小規模事業者等が取り組む、生産性向上に資する革新的なサービス開発・試作品開発・生産性プロセスの改善に必要な設備投資等を支援するものです。
補助対象者
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の補助対象者は以下の通りです。
・日本国内に本社及び実施場所を有する中小企業者および特定非営利活動法人に限ります。
・ただし、次の⑴~⑶のいずれかに該当する者は、大企業注とみなして補助対象者から除きます。
⑴発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者
⑵発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者
⑶大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者
補助対象事業の概要
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の補助対象事業の概要は以下の通りです。
⑴一般型
・概要:中小企業者等が行う革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援します。
⑵小規模型
〇設備投資のみ
・概要:小規模な額で中小企業者等が行う革新的サービス開発・生産プロセスの改善を支援します。
〇試作開発等
・概要:小規模な額で中小企業者等が行う試作品開発(設備等を伴わない試作開発等を含む)を支援します。
補助対象経費
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の補助対象経費は以下の表を参照にしてください。
(1)対象経費の区分
〇全事業類型共通
機械装置費 | ⑴ 専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に要する経費
⑵ 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェアの購入、借用に要する経費 ⑶ ⑴もしくは⑵と一体で行う、改良・修繕又は据付けに要する経費 |
技術導入費 | 知的財産権等の導入に要する経費 |
専門家経費 | 謝金や旅費として、依頼した専門家に支払われる経費 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 |
クラウド利用費 | クラウドコンピューティングの利用に関する経費 |
〇以下は小規模型「試作開発等」の事業類型のみに追加される対象経費
原材料費 | 試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費 |
外注加工費 | 試作品の開発に必要な原材料等の再加工・設計及び分析・検査等を外注・依頼等を行う場合に外注加工先への支払に要する経費 |
委託費 | 外部の機関に試作品等の開発の一部を委託する場合の経費 |
知的財産権等関連経費 | 試作品等の開発、役務の開発・提供方法等と密接に関連し、試作品等の開発成果の事業化にあたり、必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費 |
(2)補助対象経費全般にわたる留意事項
⒈類型上の留意事項
○「一般型」・「小規模型(設備投資のみ)」については、設備投資が必要です。設備投資は、必ず単価50万円(税抜き)以上の機械装置等を取得して納品・検収等を行い、補助事業者として適切に管理を行ってください。
⒉以下の経費は、補助対象になりません。
○補助金交付決定日よりも前に発注、購入、契約、または事業期間終了後に納品、検収等を実施したもの
○事務所等にかかる家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
○電話代、インターネット利用料金等の通信費
○不動産の購入費、自動車等車両の購入費・修理費・車検費用
○中古市場において広く流通していない中古機械設備など、その価格設定の適正性が明確でない中古品の購入費
○事業にかかる自社の人件費(ソフトウェア開発等)
補助額
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の補助額は以下の表の通りです。
事業類型 | 補助額 | 補助率 | ||
上限 | 下限 | 補助対象経費の2/3以内 | 補助対象経費の1/2以内 | |
一般型 | 1,000万円(※1) | 100万円 | (※2)の一定要件を満たす者 | その他の者 |
小規模型 | 500万円(※1) | 100万円 | (※2)の一定要件を満たす者 | その他の者 |
(※1)生産性向上に資する専門家の活用をする場合は補助上限額に30万円の増額が可能です。
(※2)補助率2/3以内の要件は、市区町村が生産性向上特別措置法に基づき、固定資産税ゼロの特例を措置すること、市区町村において当該特例の対象であり、補助事業を実施する事業者が「先端設備等導入計画」の認定を受けることです。
②中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)
中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金の引上げを図るための制度です。
生産性向上のための設備投資などを行って、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します。
支給の要件
中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)の対象事業者は以下の通りです。
⑴賃金引上計画を策定すること
⑵事業場内最低賃金を一定額以上引き上げること
⑶引上げ後の賃金額を支払うこと
⑷生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと
・単なる経費削減のための経費
・職場環境を改善するための経費
・通常の事業活動に伴う経費は除く
・解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと
⑸日本国内に事業場を設置している中小企業事業者であること。
など
助成対象経費
中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)の助成対象経費は以下の通りです。
・謝金
・旅費
・借損料
・会議費
・雑役務費
・印刷製本費
・原材料費
・機械装置等購入費
・造作費
・人材育成費
・教育訓練費
・経営コンサルティング経費
・委託費
申請コース区分と助成額
中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)の申請コース区分と助成額は以下の表を参照にしてください。
(※1)ここでいう「生産性」とは、企業の決算書類から算出した、労働者1人当たりの付加価値をいいます。助成金の支給申請時の直近の決算書類に基づく生産性を比較し、伸び率が一定水準を超えている場合等に、加算して支給されます。
(※2)850円未満コースの対象は、地域別最低賃金850円未満の、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の32県のうち、事業場内最低賃金850円未満の事業場に限ります。
③人材確保等支援助成金(設備改善等支援コース)
この助成金は、生産性向上に役立つ設備等を導入することにより、雇用管理改善と生産性向上を実現した企業に対して助成するものです。
計画期間
計画期間は雇用管理改善計画期間1年タイプ又は雇用管理改善計画期間3年タイプのいずれかを選択し、計画開始日の前とその1~3年後を比較し、目標その他各種要件を満たす場合に助成されます。
⑴雇用管理改善計画期間1年タイプ
・賃金アップ等の目標達成→計画達成助成[50万円]
・生産性向上、賃金アップ等の目標達成→上乗せ助成[80万円]
⑵雇用管理改善計画期間3年タイプ
生産性向上、賃金アップ等の目標達成→計画達成助成(1回目)
生産性向上、賃金アップ等の目標達成→計画達成助成(2回目)
生産性向上、賃金アップ等の目標達成→目標達成時助成
対象労働者
雇用管理改善計画の対象となる労働者は、計画を申請する雇用保険適用事業所に雇用される次の(1)から(3)までのいずれにも該当する全ての労働者のことです。
(1)次の⒈又は⒉のいずれかに該当する者。
⒈期間の定めなく雇用されている者
⒉一定の期間を定めて雇用され、その雇用期間が反復継続され、事実上期間の定めなく雇用されている場合と同等と認められる者
(2) 事業主に直接雇用される者であること。
(3) 雇用保険被保険者(雇用保険法第38条第1項に規定する「短期雇用特例被保険者」及び同法第43条第1項に規定する「日雇労働被保険者」を除く。)であること。
助成金の対象事業主
雇用管理改善計画の対象となる助成金の対象事業主は以下の通りです。
(1)計画達成助成の支給を受けた事業主であること。
(2)雇用管理改善計画認定申請日から雇用管理改善計画終了2年目の末日を経過する日まで、対象労働者を最低1名、継続して雇用していること。
(3)対象労働者以外の労働者の賃金を引き下げていないこと。
(4)「毎月決まって支払われる賃金」を雇用管理改善計画期間と比較して引き下げていないこと。
(5)計画開始日の前日から起算して6か月前から雇用管理改善計画期間終了2年目の末日までの期間について、事業主都合による離職者がいないこと。
(6)上乗せ助成時離職率が30%以下であること。
(7)基準期間(雇用管理改善計画期間1年タイプ/上乗せ助成)に、特定受給資格者となる理由により離職した者の数が一定以上ないこと。
支給額
雇用管理改善計画の支給額は以下の通りです。
支給額(計画達成助成(1回目))
設備導入費用 | 240万円以上5,000万円未満 | 助成額 | 50万円 |
5,000万円以上1億円未満 | 50万円 | ||
1億円以上 | 100万円 |
支給額(計画達成助成(2回目))
設備導入費用 | 240万円以上5,000万円未満 | 助成額 | 50万円 |
5,000万円以上1億円未満 | 75万円 | ||
1億円以上 | 150万円 |
支給額(目標達成時助成)
設備導入費用 | 240万円以上5,000万円未満 | 助成額 | 80万円 |
5,000万円以上1億円未満 | 100万円 | ||
1億円以上 | 200万円 |
(例)計画認定の実績がある設備
雇用管理改善計画の計画認定の実績がある設備の例は下記のものがあります。
業種 | 設備 |
医療業 | ・X線CT診断装置
・電子カルテシステム など |
建設業 | ・鉄筋自動曲げ装置
・油圧ショベル ・積載型トラッククレーン など |
製造業 | ・サーボプレス
・ケーブルの全自動測長・切断・端末ストリップ装置 ・天井クレーン ・電気窯 など |
食品製造業 | ・小袋自動投入機 など |
その他卸売業 | ・受発注業務システム など |
まとめ
中小企業が設備投資に使える3つの補助金・助成金となる「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)」「人材確保等支援助成金(設備改善等支援コース)」を紹介してきました。
新たな設備を導入する際には、適切な設備投資額を考えなくてはいけません。
その場合、投資対効果が見込めるか、資金繰りに悪影響を及ぼさないか、という二つの観点から考えます。
特に資金繰りの悪化は、そのまま倒産に直結します。過剰な投資は、よくある倒産の典型的な例でしょう。
そういう意味で、資金繰りに悪影響を及ぼさないかどうかは、設備投資の適正額の判断としてより重要と言えるでしょう。