新型コロナウイルス感染症が広がっていく中で、要介護や要支援の高齢者に対して介護サービスの提供を行っている方々は日々不安を感じているのではないでしょうか?
これからは介護サービス事業者や介護施設などが、連携しながら感染機会を減らすと同時に、介護サービスを続けていくことが必要となります。
このような状況を踏まえて、厚生労働省では「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所等に対するサービス継続支援事業」を設け実施しています。
介護サービス事業所や介護施設等では多くのコロナ対策に費用が必要となると思いますが、これらの支援を活用してコロナ禍を乗り切ってください。
こちらの記事では、サービス事業所等に対するサービス継続支援事業、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)、ICT導入支援事業の3つの補助金について、詳しくご紹介していきます。
INDEX
新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所等に対するサービス継続支援事業
新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所等に対するサービス継続支援事業は、介護サービス事業所・介護施設等が関係者との連携の下、感染機会を減らしつつ、継続して介護サービスが行っていけるよう支援している補助金です。
通常の介護サービスの提供では想定されていない、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、かかり増しとなった経費等に対して補助金を交付しています。
助成対象事業
新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所等に対するサービス継続支援事業の補助対象となる事業は、下記の1~3の事業となります。
1.介護サービス事業所等におけるサービス継続支援事業
・令和2年1月15日以降に、
① 都道府県、保健所を設置する市又は特別区から休業要請を受けた通所系サービス事業所、短期入所系サービス事業所
② 利用者又は職員に感染者が発生した介護サービス事業所・介護施設等(職員に複数の濃厚接触者が発生し、職員が不足した場合を含む)
③ 濃厚接触者に対応した訪問系サービス事業所、短期入所系サービス事業所、介護施設等
④上記の ①~③以外の通所系サービス事業所(小規模多機能型居宅介護事業所及び看護小規模多機能型居宅介護事業所(通いサービスに限る)を除く)であって、当該事業所の職員により、居宅で生活している利用者に対して、利用者からの連絡を受ける体制を整えた上で、居宅を訪問し、個別サービス計画の内容を踏まえ、できる限りのサービスを提供した事業所が、関係者との緊急かつ密接な連携の下、感染機会を減らしつつ、必要な介護サービスを継続して提供するために必要な経費について支援を行います。
なお、福祉用具貸与事業所は補助対象となりません。
2. 介護サービス事業所等との連携支援事業
・令和2年1月15日以降に、
◆上記の「1.」の①又は②の介護サービス事業所・介護施設等
◆感染症の拡大防止の観点から必要があり、自主的に休業した介護サービス事業所の利用者の必要な介護サービスを確保する観点から、当該事業所・施設等の利用者の積極的な受け入れや職員が不足した場合に応援職員の派遣を行った連携先の介護サービス事業所・介護施設等に対して、緊急かつ密接な連携を実施することに伴い必要となる経費について支援を行う
補助対象経費
新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所等に対するサービス継続支援事業の事業ごとの経費は下記の表の通りとなります。
(1.介護サービス事業所等におけるサービス継続支援事業)
費用区分 | 内容 |
事業所・施設等のサービス継続に必要な費用 | ア:事業所・施設等の消毒・清掃費用 イ:マスク、手袋、体温計等の衛生用品の購入費用 ウ:事業継続に必要な人員確保のための職業紹介料、(割増)賃金・手当、旅費・宿泊費、損害賠償保険 の加入費用等 エ: 連携先事業所・施設等への利用者の引き継ぎ等の際に生じる、介護報酬上では評価されない費用 オ:送迎を少人数で実施する場合に追加で必要となる車の購入又はリース費用等 |
通所系サービス事業所が人数制限して行うサービス実施に係る費用 | カ:通所しない利用者宅を訪問して安否確認等を行うために必要な車や自転車の購入又はリース費用等 キ:ICTを活用し、通所しない利用者に対して安否確認等を行うための利用者用タブレットのリース費用等 (通信費用は除く) |
通所系サービス事業所及び短期入所系サービス事業所が事業所外の代替の場所にて行うサービス実施 に係る費用 | ク:サービス提供場所の賃料、物品の使用料等 ケ:職員の交通費、利用者の送迎に係る費用 |
通所系サービス事業所による訪問サービス実施に係る費用 | コ:訪問サービス実施に伴う人員確保のための職業紹介料、(割増)賃 金・手当 サ:訪問介護事業所に所属する訪問介護員による同行指導への謝金 シ:訪問サービス実施に必要な車や自転車の購入又はリース費用等 ス:訪問サービスの実施に伴う損害賠償保険の加入費用 セ:マスク、手袋、体温計等の衛生用品の購入費用 |
(2.介護サービス事業所等との連携支援事業の補助対象経費)
費用区分 | 内容 |
利用者受入に係る連絡調整費用、職員確保費用 | ア:追加で必要な人員確保のための職業紹介料、(割増)賃 金・手当、旅費・宿泊費、損害賠償保険の加入費用等 イ:利用者引き継ぎ等の際に生じる、介護報酬上では評価されない費用 |
【職員の応援派遣に係る費用 | ウ:職員を応援派遣するための諸経費(職業紹介料、(割 増)賃金・手当、旅費・宿泊費、損害賠償保険の加入費用 等) |
補助額
新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所等に対するサービス継続支援事業の補助額は下記の通りとなります。
◆補助率:国 2/3、都道府県等1/3
① 本実施要綱により実施する事業については、別に定めるところにより、予算の範囲内で補助を行う。
② 介護報酬及び他の国庫補助金等で措置されているものは本事業の対象としない
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)は、新型コロナウイルス感染症対策に必要な物資の確保に加えて、感染症対策を徹底しながら介護サービスを再開と継続的に提供できるように支援しています。
また、新型コロナウイルスの感染防止対策を徹底しながら、介護サービスの継続に努めていただいた職員に対して慰労金を支給しています。
感染による重症化リスクが高くなる高齢者に対する接触を欠くことができない必要となる介護サービスの特徴を踏まえ、最大限の感染症対策を継続的に行っていくために設けられた交付金です。
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)では下記の「感染症対策の支援」「介護サービス再開に向けた支援」「職員の皆様への慰労金の支給」の3つの支援を行っています。
感染症対策の支援
感染症対策の支援では、令和2年4月1日以降、感染症対策を徹底した上で、サービスを提供するために必要なかかり増し経費が発生したすべての介護サービス事業所・施設などの施設を対象に支援を行っています。
◆対象事業所:かかり増し経費が発生したすべての介護サービス事業所・施設などの施設
◆ 支援対象経費:かかりまし経費
例)感染症対策に要する物品購入、外部専門家等による研修実施、感染発生時対応・衛生用品保管などに使える多機能型簡易居室の設置、感染防止のため発生する追加的人件費、自転車・自動車の購入費用、ICT機器の購入費用 など
◆ 助成上限額: サービス類型毎に設定
◆支給例
・通所介護(通常規模型)89.2万円、訪問介護53.4万円、特養3.8万円×定員数
介護サービス再開に向けた支援
介護サービス再開に向けた支援では、①在宅サービス事業者による利用者への再開支援、②在宅事業所における環境整備に対して、下記の助成を行っています。
①在宅サービス事業所による利用者への再開支援への助成
◆対象事業所:令和2年4月1日以降、サービス利用休止中の利用者への利用再開のための
支援を行った在宅サービス事業所
◆ 助成額:1利用者あたり1,500円~6,000円
②在宅サービス事業所における環境整備への助成
◆ 対象事業所:令和2年4月1日以降、感染症防止のための環境整備を行った在宅サービス
事業所
◆ 支援対象経費:「3つの密」を避けてサービス提供を行うために必要な環境整備に要する
以下のようなものの購入費用など
例)長机、飛沫防止パネル、換気設備、自転車、ICT機器、内装改修費 など
◆助成上限額:20万円
職員の皆様への慰労金の支給
職員の皆様への慰労金の支給では、下記の補助対象者に対して、支援金を交付しています。
◆補助対象者:対象期間に介護サービス事業所・施設に通算10日以上勤務し、利用者と接する職員
◆支援額:感染者が発生または濃厚接触者に対応した事業所に勤務し利用者と接する職員 20万円
・その他の事業所で勤務し利用者と接する職員5万円
ICT導入支援事業【地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)】
ICT導入支援事業では、介護現場のICT化に向けては、各都道府県に設置されている地域医療介護総合確保基金を活用した導入支援を行っています。
現在においては、新型コロナウイルス感染症の拡大により感染症予防の取組等が求められ職員の負担が増えていることから、令和2年度に補助上限額の拡充が行われています。
補助対象要件
ICT導入支援事業の補助対象となる要件は、下記の通りとなります。
◆記録、情報共有、請求の各業務が一気通貫になる
◆ケアマネ事業所とのデータ連携に標準仕様の活用
◆CHASEによる情報収集に対応
◆導入事業所による他事業者からの照会対応
◆ 事業所による導入効果報告 等
補助対象
ICT導入支援事業の補助対象は、下記の通りとなります。
・介護ソフト
・タブレット端末
・スマートフォン
・インカム
・クラウドサービス
・他事業者からの照会経費 等
◆上記に加えて、令和2年度より下記も補助対象となります。
・Wi-Fi機器の購入設置
・業務効率化に資するバックオフィスソフト(勤怠管理、シフト管理等)
補助額
ICT導入支援事業の補助率と補助上限額は、下記の表の通りと
補助上限額 | 補助率 | |
令和元年度 | 30万円(事業費60万円) | 1/2
・国1/6 ・都道府県1/6 ・事業者3/6 |
令和2年度 | 事業所規模(職員数)に 応じて設定
・1~10人 50万円 ・11~20人 80万円 ・21~30人 100万円 ・31人~ 130万円 |
都道府県 が設定
・事業者負担を入れることが条件
|
令和2年度補正 | 事業所規模(職員数)に 応じて設定
・1~10人 100万円 ・11~20人 160万円 ・21~30人 200万円 ・31人~ 260万円 |
まとめ
介護サービス事業者や介護施設などが利用できる、新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所等に対するサービス継続支援事業、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)、ICT導入支援事業の3つの補助金について、詳しく解説してきました。
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、高齢者を抱えている介護サービス事業や介護施設などはとくに感染予防策に注意を払わなくてはなりません。
このような状況下の中では、感染防止対策にかかる費用や介護者の負担は、避けては通れないのではないでしょうか?
そのような時には、これらの補助金や支援を資金調達の一つとして積極的に利用ながら、コロナ禍を乗り切ってみてください。