昨今、様々なメディアでは、55歳から65歳以上のシニア活用やシニア起業という言葉を見かけます。
例えば、60歳といえば、日本の一般的な企業ではもう定年を迎えている年齢ですが、人口減少による働き手の不足、国の財政の問題などから、60歳引退という考え方は、昔のイメージとは大きく変わりつつあります。
そして国や自治体などでは、現在、年金支給が65歳に引き上げられたことに併せて、60歳を越えてずっと働き続けれる職場をつくりたくなるような助成金も多く用意されています。
今回は、そんな高齢者・シニア層を対象とした助成金・補助金・融資について解説します。
高齢者(シニア)の働き方の選択は?
では、定年後、働かないという選択肢もありますが、働く場合の選択肢としては、どういった選択があるのでしょうか?その選択肢は以下の3つです。
①再雇用
高齢者の意欲を高める方法として、まずあげられるのは定年延長や継続雇用年齢の引き上げを行い、生涯現役社会を視野に入れた長期的な取り組みを行う企業が増えています。
定年後の再雇用の場合には、給与が大幅に下がることが多く、待遇になかなか納得できないことも多くいます。
②再就職
再就職のポイントとなるのが、自分がこれまでやってきたこと経験をを生かすような・もしくは、前の業務と全く違う仕事がしたいと思いから新しく就職するケースです。
しかし、現状としては希望とする仕事になかなか就けないという点です。
また、上記のように希望給与に合わないこと、50歳前後の年齢で新しい職場に属してということで、会社文化に馴染めないというケースもあります。
③シニア起業
最近は、比較的早い時期に会社を退職し「第二の人生」を起業家としてスタートする、シニア世代が増えてきています。
国や各地方自治体でシニアの起業を応援するさまざまな補助金制度が充実してきています。
このように制度が拡大するにしたがって、シニアの間で起業をする人が増えています。
シニアの起業は融資がいくら必要?
日本政策金融公庫の調査(※5)によると、シニア起業家が起業資金として準備した金額で最も多かったのは「250万円未満」(41.9%)、次に「1000万円以上」(23.7%)、平均では605万円という結果に。
貯蓄や退職金などを起業資金に投じる人もいますが、シニア起業を応援する公的な融資・補助金制度をぜひ、利用しましょう。その一部をご紹介します。
シニア世代の起業は「追い風にのって」勢いを増しています。国や自治体だけでなく、IT企業なども積極的に「シニアの企業」をサポートしています。
例えば、大手クラウドファンディングサービスでは、シニア世代でも参加できるプロジェクトを作り、地方での起業を積極的に推進しています(※ 詳細は、記事の後半で解説します)。
ここからは、55歳〜65歳以上の方に「おすすめの資金調達先」を3つ紹介しましょう。
55歳〜65歳以上の方に「おすすめの資金調達先」は①〜③になります。
以下で詳しく説明します。
① 創業補助金
② 政策金融公庫のシニア向け創業資金
③ クラウドファンディングサービス
創業補助金
認定されている市町区村のサポートを受けながら、補助金申請ができる制度です。
事業計画書(創業計画書)を提出する必要はあるものの、「返済不要な資金」が受け取れ、起業時には「起業資金」として活用できます。
補助金の額は、経費の3分の2までと決まっていますが「100万円から、最高200万円」の補助金が受け取れるので大きいです。
申込の条件
認定されている市町区村において、所定の事業計画書を提出し、採択された事業者に対して補助金が与えられます。
補助金は一種類ではなく、創業を支援する補助金と、事業継承に必要な資金を補助する制度の二種類があります。
審査の難易度
本制度は募集期間が短く、応募開始から資料作成、提出までの期間が短いのがネックです。
例えば、平成28年度の場合は「4月1日」に募集要項が告知され、同月28日には申請募集が締め切られているため、起業家は「わずか2~3週間の間に、創業計画書」を書き上げ、提出する必要があります。
このように(同制度は)審査の難易度が高いのでは無く、応募書類を作成する「時間が短い」というのが最大の難関になります。
この問題さえクリアすれば、他の銀行融資や助成金よりも採択率は高く、創業時には「ぜひとも、申し込んでおきたい制度」と言えます。
実際に、創業補助金の採択率は「約50%」と高い数字です。
また、一度事業計画書を作成しておけば、他の補助金や融資制度にも活用できます。
慣れないうちは、書類作成に苦労するかもしれませんが「最初のチャレンジ」として、創業補助金に応募してみてはいかがでしょうか。
政策金融公庫のシニア向け創業資金
政策金融公庫では一般の「創業支援」のほか、シニア向けの創業支援融資を実施しています。
この融資は現代では非常に多くの方が利用している支援融資です。
そのシニア向けの創業支援融資について詳しく紹介します。
政策金融公庫のシニア向け創業資金
それでは、女性、若者/シニア起業家支援資金の概要を説明します。
「女性、若者/シニア起業家支援資金(新企業育成貸付)」などのご融資を通じて、事業開始後おおむね7年以内の女性の方、30歳未満か55歳以上の方が対象です。
融資限度額は、7,200万円ですが、運転資金に関しては「4,800万円まで」に限定されています。
申込の条件
55歳以上の方で、 新たに事業を始める方が対象ですが、既に事業を始めている方も「7年以内」であれば申込可能です。
審査の難易度
審査の難易度は、公表されていませんが、民間の金融機関(銀行など)に比べると、融資が受けやすくなっています(=可決率が高い)。
このため、銀行やその他の融資を受ける前に、政策金融公庫の融資にチャレンジされることをおすすめします。
クラウドファンディング
ここ数年で、クラウドファンディングを利用し、起業資金を調達する人が増えています。
クラウドファンディングとは、「こんなモノやサービスを作りたい」「世の中の問題を、こんなふうに解決したい」といったアイデアやプロジェクトを持つ起案者が、専用のインターネットサイトを通じて、世の中に呼びかけ共感した人から広く資金を集める方法です。
クラウドファンディングは、若者向けのサービスではありません。実際に50歳以上、中には80代の起業家が、資金調達のチャンスとして、同サービスを利用しています。
クラウドファンディングの良さは、ネット上で支援してくれる相手を募り、資金とファンを同時に集められる点です。
ネット上で支援してくれる相手を募る
また(目標額の達成後)集まった資金は原則「返済不要」なのも、大きな魅力です。
その代わりに資金を受けた側は、支援者に「モノやサービス」でお礼をする必要があります。
支援者のお礼には、開業時のパーティーに支援者を招待したり、生産した商品、店で販売するアイテムや、サービスを送っても良いでしょう。
利用するサイトによって条件は異なりますが、プロジェクトが達成した場合でも「手数料が低い」サイトがいくつかあります。
シニア層、起業後の状況は?「事業計画書」の作成が大事
どの世代であっても「起業」を成功させることは容易ではありません。
日本政策金融公庫の調査では、シニア起業の厳しい実情も報告されています。
55歳以上の起業家に「売り上げ」について聞いたところ、4割弱の37.6%は「100万円未満」と回答しています。
業種にもよりますが、経費を差し引くと「100万円未満」は決して十分ではありません。
さらに、予想月商達成率については、同じく約4割にあたる34.7%が「75%未満」と答え、採算状況にいたっては43.9%が「赤字基調」と報告されています。
シニア層の実情は甘くはなさそうです。
ほかにも注目したいデータがあります。同調査によれば、55歳以上の開業費用の平均額は「1,357万円」で、30~54歳の1,092万円と比較すると265万円も多いことがわかっています。
それに関連し、起業時に費用削減の工夫をしたかという問いには、「中古の設備や備品を購入した」「自宅の一部を店舗、事務所などにした」といった回答が多かった一方、16.4%が「特にない」とも答えています。
逆にいえば、開業費用をおさえる工夫がまだまだできるということ。他世代の行動も参考にしながら、できる限り費用削減の対策を打ちましょう。
起業を成功させるためには融資や補助金制度を活用する、開業費用を抑えることはマストだといえますが、こうした行動は起業を成功させるための部分的な要素でしかありません。
起業には、後にも先にも「事業計画書」の作成が重要です。
前述した融資や補助金制度のなかには、事業計画書の提出を求めるものもありますが、起業や創業の相談に乗ってくれる無料サービスもあるので、積極的に活用するといいでしょう。
事業計画書は起業家の事業の成功確度を高めてくれる
事業計画書は、起業家自身が自分の事業をどのように展開していくのか?という意味で、羅針盤や見取り図になるものです。
会社の事業が本当に成り立つのか?ということを客観視したり、現実化させるため、つまり自分達のために、実際の経営のために事業計画書をつくるというものです。
結論として、事業計画書は絶対にいります。
事業計画書を作成したことで、スケジュールやお金という、要素を考えることで、事業自体に現実性が出てきます。
曖昧に考えている創業者が実はたくさんいます。
事業計画書をつくってみると、いかに考えないといけない項目が多いかと唖然とします。
売上予測と損益予測も重要
財政面での経営戦略を記載します。
原価、利益、顧客層にあった価格帯か、などを考慮しながら価格を決め、売り上げ数量、売上高、粗利益などの予測を立て、損益分岐点を明確にします。
開業に際しての資金計画や、融資に関する返済予定なども盛り込みます。
まとめ
今回は、55歳~65歳以上の方を対象に「シニア起業家支援資金」を活用する方法や、起業に役立つ「補助金と融資制度」について説明しました。
みなさんも第二の人生をエンジョイすべく、利用できる制度を使い「叶えたかった夢」を実現させてみてください!
また、事業計画書を書くときは難しく、時間もかかると思います。
何度も何度もアイデアを練り、修正していくうちに、あなた自身が、自分のビジネスプランをよく理解し、相手に自信と説得力をもって説明できるようになっていきます。
そうして、あなたの起業への熱い思いは形になっていくのです。
投げ出さず、あきらめず、着実に起業を目指しましょう。