
令和2年度から戦略的基盤技術高度化支援事業ことサポイン事業の募集が始まりました。
サポイン事業の補助金は、中小企業や小規模事業者が大学などと連携した際に利用できる補助金です。
ものづくり基盤技術の高度化につながる研究開発などに対して交付されています。
本年度からは、申請要件が変更されたことにより、利用しやすくなったと言われていますが、実際はどうなのでしょうか?
こちらの記事では、サポイン事業を解りやすく紹介するとともに、補助金の変更点について解説していきますので、ぜひご覧ください。
INDEX
令和2年度の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の概要
戦略的基盤技術高度化支援事業は、中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律となる「ものづくり高度化法」に基づいて制定さた中小企業庁が実施している助成事業です。
平成18年度から継続的に実施されており、ものづくり基盤産業のサポーティング・インダストリーから名前をとってサポイン事業と呼ばれています。
サポイン事業は一般の補助金などと違って、設備や備品の導入や営利活動に対しての補助ではありません。
主に研究開発を支援するための事業となっています。
サポイン事業の補助金
サポイン事業が行っている補助金は、中小企業や小規模事業者が大学や公設試などの研究機関と連携して行う時に利用できる補助金です。
それらと連携を行い、ものづくり基盤技術の高度化につながる研究、さらに事業化につながる取り組みにおいて、補助金が支給されます。
最大で3年間という長期に渡っての支給に加えて、9,750万円以下という大型の補助金制度です。
サポイン事業の補助金は、ものづくり基盤技術を志す中小企業や小規模事業者にとって、大きな支援となる補助金となるでしょう。
令和2年度からのサポイン補助金の変更点に注目
令和2年度の変更点として、申請要件であった認定や承認取得が不要になり、法認定等の段階を踏まえなくても申請できるようになりました。
前年度の要件の中には、研究等実施機関として計画に加わる中小企業などは、特定研究開発等の認定、地域経済牽引事業計画の承認を受けることが要件でした。
しかし、令和2年度からはこれらの認定や取得が不要となります。
令和2年度から、これらの要件の変更によって、今年度の申請数がどのように変化するのかが注目されるところです。
目標値の設定
もうひとつのサポイン事業の変更点は、研究開発プロジェクトの事業化だけではなく、研究実施機関である中小企業者の成長と目標の策定です。
研究開発等が成功した場合、付加価値額や給与支給額総額の向上を目標値として設定することになります。
・主たる研究等実施機関(中小企業者)
①付加価値額 15%以上(年率平均3%以上)の向上
②給与支給総額 7.5%以上(年率平均1.5%以上)の向上
事業終了後5年以内を目処に、これらの目標値を設定することとなります。
サポイン事業の対象事業
サポイン事業の対象事業は、中小ものづくり高度化法の「特定ものづくり基盤技術高度化指針」に基づいた研究開発などの事業が対象となります。
対象となるものづくり基盤の技術は、全部で12つの技術です。
次に、対象となる12の技術の開発技術と、具体的な技術例についてみていきましょう。
①デザイン開発に係る技術
デザイン開発技術となるのは、製品の審美性と同時に、ユーザーが求める価値や使用方法にによって得られる経験や質的な向上を追求する技術となります。
製品自体の優位性はもとより、製品と人、製品と社会などの相互作用的な関わりも含めた総合的な設計技術です。
・マーケットに触接影響を与える高い技術
・機能向上に加えて、製品とユーザーの心地良さ、生活スタイルの革新、新しいビジネスモデルの創出など
・高齢化等の社会的課題への役割を担う技術
②情報処理に係る技術
情報処理の開発技術となるのは、IT(情報技術)を活用することにより、製品や製造プロセスの機能や制御を実現につなげていける情報処理技術です。
製造プロセスの中で、生産性や品質、さらにコストなどでも競争力の向上に役立っていける技術となります。
・目的とする機能を実現するソフトウェア(組み込みソフトウェア)
・動作の制御、製品の品質や検査などに用いられるソフトウェア(製造プロセス関連ソフトウェア)
・製品の動作、機能又はデザイン等をコンピュータ内の仮想空間に実現できるソフトウェア(デザインソフトウェア)
・その他の多様なソフトウェア(その他のソフトウェア)
③精密加工に係る技術
精密加工の開発技術となるのは、金属等の材料に対して機械加工・塑性加工等を施すことで精密な形状を生成する精密加工技術となります。
製品や製品を構成する部品を直接加工、部品を所定の形状に加工するための精密な工具や金型を製造などにも利用される技術です。
・機械・工具又は金型等で圧力を加えて所要の形状・寸法に塑性変形・塑性流動させて成形する技術
・金属プレス機等の加圧装置を用いての金型形状を転写する加工技術
・切削工具、電気、光エネルギー等を用いて素材の一部を除去し、必要な寸法や形状を得る加工技術等、様々な技術
・製造業の根幹をなす基幹技術
④製造環境に係る技術
製造環境の開発技術となるのは、製造・流通等の現場の環境(温度、湿度、圧力、清浄度等)を制御・調整するものづくり環境調整技術です。
・歩留まりの改善、故障率の低減等に寄与する清浄化やコンタミネーションの監視や制御
・医療機器、医薬品、食品等の分野における冷蔵・冷凍・空調機器・真空機器等を用いた温度、湿度、圧力、清浄度等の維持管理
・製造における生産性・信頼性の向上、製品の汚染防止・鮮度維持に加えた製品や原材料・素材の流通過程における品質管理等の付加価値の創出
・製造現場における作業環境の安全性確保、廃棄処理、リサイクル
⑤接合・実装に係る技術
接合・実装の開発技術となるのは、相変化、化学変化、塑性・弾性変形等により多様な素材・部品を接合・実装する力学特性、電気特性、光学特性、熱伝達特性、耐環境特性等の機能を顕現する接合・実装技術です。
・接合部の高強度化、信頼性の向上や軽量化、接合・実装の位置精度の向上
・接合部の機能の高付加価値化、信頼性の付与等に応える研究開発
・劣悪な極限環境でも強靭かつ安定な機能を維持
・接合・実装作業における生産性の向上
・製品の製造、修理、再利用、廃棄までを考えたライフサイクルコストやこれらの過程でのエネルギー使用の最小化
⑥立体造形に係る技術
立体造形の開発技術となるのは、自由度が高い任意の立体形状を造形する立体造形技術となります。
ただし精密加工に係る技術に含まれるものは除かれます。
・金属、セラミックス、プラスチック、ガラス、ゴム等様々などから、高いエネルギー効率を実現するための複雑な翼形状や歯車形状等を高精度や医療機器等の形状を高精度に作り出したりする技術全般です。
・射出成形、押出成形、圧縮成形、プレス成形等の造形方法
・鋳型空間に溶融金属を流し込み凝固させることで形状を得る融体加工技術
・金属粉末やセラミックス粉末の集合体を融点よりも低い温度で加熱し固化させることで目的物を得る粉体加工技術
・次元データを用いて任意の形状を金型等の専用工具を使わずに直接製造できる積層造形技術
⑦表面処理に係る技術
表面処理の開発技術となるのは、バルク(単独組織の部素材)では持ち得ない機能性を基材に付加するための機能性界面・被覆膜形成技術です。
・溶融した金属、セラミックス等の材料を基材表面に吹き付けること又は堆積させること
・塗料等を基材表面に塗布し硬化させること
・金属を溶かした水溶液中に浸せきさせること
・金属を電解液中にて電気分解すること
・酸化還元反応により表面に金属を析出又は酸化被覆膜を生成することなど
⑧機械制御に係る技術
機械制御の開発技術となるのは、力学的な動きを司る機構により動的特性を制御する動的機構技術です。
・動力利用の効率化や位置決め精度・速度の向上、振動・騒音の抑制、生産工程の自動化等を達成するために利用される技術
⑨複合・新機能材料に係る技術
複合・新機能材料の開発技術となるのは、部素材の生成等に際し、新たな原材料の開発、特特性の異なる複数の原材料の組合せ等により行われる開発です。
強度、剛性、耐摩耗性、耐食性、軽量等の物理特性や耐熱性、電気特性、化学特性等の特性を向上し、従来にない新しい機能を顕現する複合・新機能材料技術です。
・金属材料やファインセラミックス、ガラス等の無機材料、プラスチック等の有機高分子材料、繊維材料及びそれらの複合素材等の生成
・材料の耐久性、耐摩耗性、耐疲労性、耐熱性、電気特性、耐食性等の機能性だけではなく、抗菌・消臭や人の感性に訴えかける機能やリサイクルに配慮した設計
⑩材料製造プロセスに係る技術
材料製造プロセスの開発技術となるのは、化学素材、金属・セラミックス素材、繊維素材及びそれらの複合素材の収量効率化や品質劣化回避による素材の品質向上、環境負荷・エネ
ルギー消費の低減等のために、反応条件の制御、不要物の分解・除去、断熱等による熱効率の向上等を達成する材料製造プロセス技術です。
・原材料が持つ特性の劣化を極力抑制することで目的物である生成物の性能を向上するとともに、そのプロセスを通じて素材の強度・剛性等の特性を改善
・部素材自体の機能の高度化に加えて、生成プロセス技術の高度化により、生産性等の向上を図り、川下製造業者等に対して、低コスト化、迅速化、省資源化に配慮した部素材を供給
⑪バイオに係る技術
バイオの開発技術となるのは、ヒトや微生物を含む多様な生物の持つ機能を解明・高度化することにより、医薬品や医療機器、エネルギー、食品、化学品等の製造、それらの評価・解析等の効率化及び高性能化を実現するバイオ技術です。
・生物が有する高い特異性を生かすことによって有用物質の生産を可能とし、医薬品や医療機器、再生可能エネルギー、機能性食品、化成品等の多岐にわたる利用分野
⑫測定計測に係る技術
測定計測の開発技術となるのは、適切な測定計測や信頼性の高い検査・評価等を実現するため、ニーズに応じたデータを取得する測定計測技術です。
・研究開発、製品等の製造行程や品質管理等、幅広い分野で用いられ、品質を向上させ付加価値の高い製品等を市場に提供する、ものづくり技術を支える重要な基盤として必要不可欠な技術
・X線、超音波、赤外線、核磁気共鳴等を用いて物体や人体の表面や内部構造を侵襲することなく検査する技術(非破壊検査)
・固体、液体、気体、真空中等の物質を測定する技術、真空中で発生した荷電粒子等を利用して物質の表面分析する技術
・測定結果を評価、分析、解析する技術
サポイン事業の対象者
サポイン事業の対象となるものは、下記の通りとなります。
◆事業管理機関(補助事業者)
◆研究等実施機関(間接補助事業者)
①主たる研究等実施機関
②従たる研究等実施機関
◆ アドバイザー
補助対象経費
サポイン事業の補助金の対象経費となるのは、下記の通りとなります。
・ 物品費 設備備品費、消耗品費
・人件費および謝金 研究員費、管理員費、補助員雇上費、謝金
・旅費 研究員、管理員及び委員等の旅費、滞在費及び交通費
・その他 外注費、印刷製本費(報告書作成費)、会議費、運搬費、諸経費
・委託費 事業の遂行に必要な調査等を共同体の構成員以外への委託経費
・間接経費
事業の実施に伴い管理等に必要な経費として、直接経費(「物品費」「人件費・謝金」「旅費」「その他」)の合計30%を上限に計上できる経費
サポイン事業の期間・補助金額・補助率
サポイン事業の期間、補助金額、補助率は下記の通りとなります。
◆補助事業期間 2年度または3年度
◆補助金額(上限額)
・単年度あたり4,500万円以下
・年間の合計で9,750万円以下
なお、定額補助率となる者については、補助金総額の3分の1以下です。
◆補助率
・中小企業小規模事業者等 3分の2以内
・大学・公設試等 定額(3分の1以下)
なお、大学・公設試等が定額補助となる場合は、大学・公設試等が「事業管理機関」として共同体に参加している場合に限られますのでご注意ください。
まとめ
令和2年度の戦略的基盤技術高度化支援事業ことサポイン事業の補助金について、本年度からの変更点を始めとして、サポイン事業の概要、対象事業、12の開発技術、対象者、対象経費、補助期間や補助金額を詳しくまとめてきました。
令和2年度からのサポイン事業の補助金は、前年度の申請要件であった認定や承認取得が不要となり、法認定等の段階を踏まえなくても申請できるようになりました。
ただし、研究開発プロジェクトの事業化だけではなく、研究実施機関である中小企業者の成長と目標の策定が必要となりますので、お気をつけください。
サポイン事業の対象となる12の開発技術を手掛けている中小企業者の方は、規模の大きなサポイン事業の補助金を活用して、新たな事業に挑戦していきましょう。