資金調達を行う際には、様々な知識が必要となりますが、経済ニュースなどで見かけるロールオーバーという言葉ご存じでしょうか?
ロールオーバーとは切り替えや借り換えの意味ですが、経済において様々な分野で使われています。
そこで、こちらの記事では、ロールオーバーの意味を始めとして、短期借入金と長期借入金の特徴、4つの種類がある短期借入金、短期借入金の返済が厳しい場合などを詳しく解説していきます。
資金調達の知識として把握しておきたい記事となっていますので、ぜひご覧ください。
ロールオーバーの意味
ロールオーバーという言葉は、英語に訳すと「横転する」という意味となりますが、経済の中では、「切り替え」や「借り換え」という意味で幅広く使われています。
先物取引やオプション取引、短期借入金、CFD取引、外国為替取引などの経済分野でロールオーバーという言葉が、頻繁に用いられているのです。
ただし、ロールオーバーという言葉は同じでも、分野が異なると意味合いが違ってきますので、しっかりと把握しておくことが大切です。
次に、先物取引やオプション取引、外国為替取引、短期借入金では、どのように使われているのか見ていきましょう。
先物取引・オプション取引
先物取引やオプション取引で使われるロールオーバーは、保有しているポジションを取引最終日までにいったん決済をし、次の期限以降に新たなポジションを作り直すことをさしています。
最終決済日にポジションは消滅となってしまいますが、当限の取引最終日までに期先以降のポジションにの乗り換えることで、資産家のポジションとなる取引残高を維持することが可能となるのです。
取引所となるマーケットの中で、ロールオーバーは最終決済日の1~2週間から徐々に進行していき、「期近物と期先物の建玉の推移」で確認することができます。
外国為替取引
外国為替取引(FX)では、自動ロールオーバーという仕組みが用意されています。
自動ロールオーバーは、2営業日後に決済しなければならないところを、業者が代わりに決済して買い直していくという仕組みです。
これによって、期日の際限を気遣うことなくポジションが持ち続けることが可能となります。
短期借入金
短期借入金は借入日から1年以内に返済期限が設定されているのが一般的ですが、短期借入金においても、ロールオーバーという言葉が用いられています。
短期借入金の返済期日よりも先に同額の借り入れを行い、新しい借入金によって先にの借入金を返済することをロールオーバーといいます。
ロールオーバーにより、事実上、借入返済の繰り延べを行うことが可能となり、借入期間の延長という意味として使われます。
次に、短期借入金と長期借入金、ロールオーバーについて、詳しく解説していきます。
短期借入金と長期借入金の特徴
お金を借入れる時には、短期借入金と長期借入金を選ぶことになりますが、それぞれ異なった特徴を持っているために、利用する前にはきちんと把握しておくことが大切です。
短期借入金と長期借入金を選択する際には、融資期限、融資金利、使用目的、審査の4つ項目を抑えておきましょう。
続いて、短期借入金と長期借入金の特徴を解説します。
短期借入金の特徴
短期借入金とは、1年以内に返済期日が到来し、1年以内に返済を完了させる借り入れのことをさします。
銀行や信用金庫などの金融機関が借入先となり、長期借入金よりも金利が低めに設定されています。
また、短期借入は運転資金として想定されている借り入れなので、最終的には売掛金が回収できれば、すべて返済できるようになっています。
ですから、赤字であっても売掛金の範囲内であれば、短期借入金の融資が受けられると考えていいでしょう。
①1年以内に返済を完了させる借入金
②金利が低めに設定される
③運転資金として想定されている
④赤字であっても、売掛金の範囲内なら審査が通る可能性がある
長期借入金の特徴
長期借入金とは、返済期日が1年を超える借入金のことをさしています。
短期借入金の運転資金に対して、長期借入金は設備投資等に充てることが多く、事業の利益と減価償却費の計上によるキャッシュフローから返済していく形となります。
融資を受ける時には、担保や高度な事業計画も求める場合があり、審査のハードルは高いと言えるでしょう。
そのため、継続的に余裕のあるキャッシュフローが見込まれる会社でなければ融資を受けることが難しく、また長期借入金の借入先は様々で、金利は借入先によって大きく変わります。
また、金融機関から借り入れをする際には変動金利、担保を必要とすることが一般的となっているために、土地や建物、債権、株券などの担保を保有していないと、借入れる時には不利となります。
①返済期日が1年を超える借入金
②金利は借入先によって大きく異なる
③主に設備資金等の充てることが多い
④審査のハードルは高く、担保がないと借入れる際に不利
4つの種類がある短期借入金
短期借入金には、一般的に行われている証書貸付を始めとして、手形貸付、ファクタリング、当座貸越という4つの種類があります。
次に、証書貸付、手形貸付、ファクタリング、当座貸越をそれぞれ解説していきます。
証書貸付
証書貸付とは、金融機関が貸し付ける際に、企業が金融機関に「借用証書」を差し入れる方法で一般的な借り入れの手段として用いられています。
「借用証書」を使うことから証書貸付と言われています。
設備投資などの長期借入に利用され、金融機関との間で凍結される金銭消費貸借契約を基本にして、企業が金融機関から借り入れる最もオードドックな方法です。
手形貸付
貸付手形とは、企業が借用証書を差し出す代わりに、「企業が振出人」「受取が金融機関」となる約束手形を振り出す貸付方法です。
短期貸付の際に利用され、手形の金額は要返済額となり、金融機関は利息を差し引いた金額を企業に貸し付ける形となります。
手形貸付は形式には短期貸付となっていますが、つねに必要な運転資金として使用されることが多いために、返済期日に同額の手形貸付によって、返済を延期していることが珍しくありません。
ファクタリング
ファクタリングとは、手形割引に似ている資金調達方法です。
決済期日前の売掛債権を第三者に譲渡することによって、資金を調達することができます。
売掛債権を主な対象として譲り受け、支払人の信用リスクと回収管理業務を併せて引き受ける債権管理サービスによって行われます。
当座貸越
当座貸越とは、自身の当座預金に設定される貸付方法です。
当座預金の残額よりも多くの小切手を振り出してしまった場合には、不渡りとなって銀行取引停止処分となります。
当座貸越は、銀行と当座預金に特別な契約を結ぶことによって、限度額の範囲内で当座預金残高以上の小切手を振り出すことができます。
設定された枠の範囲内ならば、残高が不足していても取引が行うことができるのです。
短期借入金の返済が厳しくなった場合には?
短期借入金は1年以内に完済することが必要な借入金ですが、期日までに返済が厳しくなった場合にはどうしたらよいのでしょうか?
売掛金の回収が滞る、得意先に不渡りが生じた、長期の工事が遅れている、多くの在庫を抱えているなどがあると、短期借入金が返済できなくなってしまうかもしれません。
借入には返済の責任が伴い、特に短期借入金の場合には期限が決められているために、対策を講じておく必要があります。
次に、短期借入金の返済が厳しくなった場合の対処法をご紹介したします。
金融機関に相談
短期借入金の返済が厳しくなった場合には、事前に金融機関に出向き相談することが大切です。
金融機関にとっても、倒産や手形の不渡りが生じ、不良債権化してしまうことはのぞんではいません。
返済のめどがある程度ついている、または付く見込みがあるのであれば、金融機関で調整や対策を講じてくれることもあります。
ロールオーバー
短期借入金の返済が厳しくなった場合には、ロールオーバーと言われる「約定の書き換えと約束手形の交換(ロールオーバー)」が考えられます。
売掛金の入金の遅れ、取引先の都合による返済不能である場合には、金融機関は入金の見込みまでの期日の手形を引き受け、返済期限を延長してもらえるロールオーバーが行える可能性があります。
本来であれば、1年以内の短期貸付金は、次年度の会計で消えることになりますが、会社の口座からは、お金そのものが残っている状態となります。
ただし、新しい手形にかかる利息、資金、手数料が必要となることを忘れないでおきましょう。
手形貸付|1年ごとに一括返済を繰り返すロールオーバー
上記の短期貸付金の中でも、手形貸付は1年以内の短期融資運転資金として用いられる方法です。
一般的には運転資金として資金調達を行い、1年後に一括して返済しなければなりません。
しかし、1年後だからと言って1回に全てを返済できるものではなく、運転資金は継続的な資金調達が必要となるために、1年後にストップしてしまったらキャッシュフローが破綻してしまう可能性が大きくなります。
そこで、手形貸付では1年後に同じ金額の「手形貸付」によって、借り換えるロールオーバーという方法が多く使われているのです。
運転資金の資金調達を考えるのなら、このようなロールオーバーという、手形貸付の借り換える形を覚えておくとよいでしょう。
手形貸付は証書貸付よりも審査に通りやすい
手形貸付の審査は、長期貸付となる証書貸付比較すると比較的通りやすいとされています。
返済の裏付けがある物に対しての融資であると同時に、1年以内の短期の融資であることから、銀行の貸倒れリスクは小さく抑えることができるからです。
また、審査で重視されるのは財務状況であり、1年以内に完済させることです。
「短期で返済できる能力」という部分が認められればよいので、長期にわたっての事業計画までは重視されません。
審査を通るためには、直近または業績が安定している時期を選び、従業員の賞与や運転資金などの具体的な資金使途を明確に伝えるようにしましょう。
手形貸付で必要な書類
一般的に手形貸付を申し込むときには、下記の書類が必要となりますので、事前に準備しておくとよいでしょう。
・2期分や3気分の決算書
・取引先通帳写し
・商業登記簿謄本
・代表者の本人確認書類
・当座照合
まとめ
資金調達の知識として知っておきたい、ロールオーバーを始めとして、短期借入金と長期借入金の特徴、4つの種類がある短期借入金、短期借入金の返済が厳しい場合、1年ごとに一括返済を繰り返すロールオーバーなどを詳しく解説してきました。
資金調達には長期借入金と短期借入金が存在しており、資金使途によって上手に使い分けていくことが大切となります。
また、ロールオーバーなどの言葉をしっかりと把握していれば、慌てることなく手形貸付の借り換えや延期がスムーズに行われるのではないでしょうか?
長期借入や短期借入をする際の豆知識として、こちらの記事をどうぞお役立てください。