
企業で働く従業員のスキル向上や生活の改善を図ることは、企業全体の業績向上へとつながってきます。しかしその一方で、企業への負担となってしまうために躊躇している経営者も多いのではないでしょうか?
厚生労働省が実施し、労働局が審査しているキャリアアップ助成金は、そのような場合の企業負担を軽減し、従業員のキャリアアップを促す企業と従業員の双方を支援してくれる助成金です。
こちらの記事では、キャリアアップ助成金の特徴や受給方法などに加えて、7つのコースの中から、「正社員化コース」「賃金規定等共通化コース」「健康診断制度コース」3つのコースを取り上げて解説していきますので、ぜひご覧ください。
INDEX
キャリアアップ助成金の目的
キャリアアップ助成金は、正社員よりも地位や待遇の低い非正規雇用労働者のキャリアアップを積極的に取り組んだ企業に対して支給される助成金です。主に非正社員の人材育成、賃金の改定、健康診断制度の導入を行う必要があります。
地位や処遇の低さが問題視されている非正規社員のキャリアアップを目的としている助成金なのです。
キャリアアップ助成金の特徴
返済の必要がないキャリアップ助成金は、企業と従業員にとってメリットが多いのですが、その特徴は厚生労働省が実施しており、労働局が審査を行っていることがあげられます。
また、助成金と補助金の仕組みをみても、キャリアアップの特徴わかってきます。
こちらではキャリアアップの特徴となる「厚生労働省が実施しているキャリアップ助成金」「キャリアアップ計画書を労働局に提出」と「助成金と補助金の仕組み」見ていきます。
厚生労働省が実施しているキャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は厚生労働省が実施している信頼できる助成金です。正社員転換等に加速させていき、非正規雇用労働者の転換や待遇改善などの雇用対策を総合的に推進するために、平成27年9月24日に厚生労働大臣を本部長とする「正社員転換・待遇改善実現本部」た設置されました。
キャリアアップ計画書を労働局に提出
キャリアアップ助成金は、キャリアアップに係る取り組み実施日までに、「キャリアアップ計画書」を都道府県労働局に提出しなければなりません。提出が遅れると助成金を受け取れない場合も出てきます。労働局で審査が実施され認定を受けることになります。
助成金と補助金の仕組み
補助金や助成金にはいくつかの種類が存在し、国や都道府県さらには市町村が支給するもののなど多種多様な制度が設けられています。企業規模や事業内容、補助や助成目的によって、交付額と使徒条件を考慮しなくてはなりません。
また、助成金や補助金には申請書類が多く、プレゼンが義務となっていたり、手続きが面倒などの側面もありますが、申請が通ることで、公的機関が認定されたという信用が得られます。
キャリアアップ助成金の受給するためには
キャリアアップ助成金のコースには、大きく分けて3つのコースがあり、いくつかの要件を満たさなければなりません。
こちらでは要件となる「対象事業主になるための要件」「実施にあたっての要件」「生産性要件」を見ていきましょう。
対象事業主となるための要件
事業主は、雇用保険適用事業所の事業主であることが、助成金の適用となる大前提の要件です。この要件を満たした上で、キャリアアップ管理者をおき「キャリアアップ計画書」を作成して、労働局長の受給資格の認定を受けることになります。
実施にあたっての要件
事業主の要件を満たした次には、キャリアアップガイドラインに沿った「キャリアアップ計画書」を作成し、労働局に提出します。管轄の労働局長の認定を受けることが必要です。
認定を受けることができましたら、「対象労働者の名簿」「賃金台帳」「出勤簿」などの法定帳簿の整理と保管をしておき、求められた時に提出できるようにしておきます。
生産性要件
生産性要件となるためには、積極的に取り組みをおこなって生産性伸び率が要件を満たさなければなりません。成果をあげている企業に一定の助成金が上乗せとなります。
東京労働局のホームページのチェックリストを活用
キャリアアップ助成金は、申請書類の作成や提出、数多くの書類が必要となります。手間がかかり、しっかりとチェックしなければ見落としてしまうことがでてしまうことで、申請に躊躇してしまう方もでてきてしまうのではないでしょうか?
そのようなことのないように、東京労働局のホームベージのチェックリストを活用することをおすすめします。申請書類や提出物の多さを把握して、キャリアアップ助成金の手続きをスムーズに進めてください。
申請書のダウンロードは厚生労働省のホームページ
キャリアアップ助成金の書類は、厚生労働省のホームページよりダウンロードが可能です。申請したいコースの申請書を印刷して管理しておいてください。
東京労働局のホームページのチェックリスト
キャリアアップ助成金では、申請書や必要書類が多いために落ち度がないように、注意しなくてはなりません。
そのような時には、東京労働局のホームページに無料でダウンロードできる書類チェックリストを利用すれば、提出書類を見落とすこと無くスムーズに申請することができます。東京労働局のホームページのチェックリストを上手に活用しましょう。
参照:キャリアップ助成金 必要書類チェックリスト|東京労働局
キャリアアップ助成金の3つコース
キャリアアップ助成金には7つのコースがありますが、ここからは使い勝手のいい「正社員化コース」「賃金規定等共通化コース」「健康診断制度コース」3つのコースを取り上げて解説していきます。
正社員にキャリアップするなら「正社員化コース」
派遣社員やアルバイトなどを正規雇用、または多様な正社員等に転換する「正社員化コース」です。期間限定の仕事から、安定度の高い雇用形態へのキャリアアップを目的としています。
次に「正社員化コース」の支給額、支給の要件、申請の流れと必要書類を見ていきます。
支給額
転換のしかたによって支給額は異なる場合がありますが、最大で1人当たり60万円の支給額となっています。
最大支給額:1人当たり60万円
対象となる従業員
対象となる従業員は、以下の項目のいずれかに該当している従業員の場合です。
また、これらの条件に加えて「過去3年以内に正規雇用者として雇われた経験がない」「基本給が転換前、または「直接雇用前以前よりも5%以上の昇給」などの条件のクリアも必要となります。
◆雇用期間が通算して6カ月以上の有期契約労働者
◆雇用期間が6カ月以上の無期雇用労働者
◆同一業務に6カ月以上継続して労働者派遣に従事している派遣労働者
◆事業主が実施した有期実習型訓練を受講し、修了した有期契約労働者等
必要書類
「正社員化コース」では、他のコースと比べて書類が多いのでしっかり確認して置くことが大切です。
①キャリアアップ助成金支給申請書
②正社員化コース内訳
③正社員化コース対象者労働者詳細
④支給要件確認申立書
⑤支払方法・受取人住所届(未登録の場合に限る)
⑤キャリアアップ計画書(写)
⑥賃金規定等が規定されている労働協約又は就業規則(写)
⑦労働協約(写) または 就業規則(写) または 準ずるもの(写)
⑧就業規則(写)または労働協約等(写)
⑨対象労働者の転換前後の雇用契約書または直接 雇用後の労働条件通知書または雇用契約書(写)
⑩対象労働者の賃金台帳等(写)
⑪ 賃金5%以上増額に係る計算書
⑫対象労働者の出勤簿またはタイムカード(写)
⑬中小企業事業主であることの確認書類
同一賃金ルールに改正するなら「賃金規定等共通化コース」
派遣労働者や非正規社員などが、正社員と同程度の業務をしたときに、同一の賃金を支払うことをルール化した事業主に対して支払われる助成金です。
コースの受給金を得るためには、正社員と有期社員の評価等級を三つ以上作成し、雇用形態が重なる同一の等級を二つ以上作らなければなりません。
支給額
支給金額は、対象1人あたり2万円、20人までが上限となります。
中小企業以外場合なら、1万5,000円の支給となります。
支給の要件
「賃金規定等共通化コース」の要件は、有期契約労働者の賃金規定を作成し、賃金規定と同時に導入されていることが要件となります。また、賃金規定を6ヶ月以上運用している事業主であることもあげられます。
さらに、正規労働者について3区分以上設け、その上で有期契約労働者と正規雇用労働者の同一の区分を2区分以上設けること、適用前と比較して手当等を減額していないことも条件となります。
必要書類
「賃金規定等共通化コース」も、他のコースと比べて書類が多いのでしっかり確認して置くようにしてください。
①キャリアアップ助成金支給申請書
②賃金規定等共通化コース内訳
③支給要件確認申立書
④支払い方法・受取人住所届け
⑤キャリアアップ計画書(写)
⑥賃金規定等が規定されている労働協約又は就業規則(写)
⑦賃金規定等が規定される前後の賃金規定等(写)
⑧対象労働者の増額改定前及び改定後の労働 条件通知書等(写)
⑨対象労働者の賃金台帳等(写)
⑩対象労働者の出勤簿またはタイムカード(写)
⑪中小企業事業主であることの確認書類
従業員の健康を考える「健康診断制度コース」
有期契約労働者と対象として、健康診断を行った場合に助成金を受け取ることができます。
その際には、健康診断制度を規定とし、有期契約雇用者4人以上に対して実施しなければなりません。
また、4人目の健康診断を実施した月の給与支給日より、2ヶ月以内に申請を行なわなければ受給できませんので、気をつけてください。
支給額
1回のみ、1事業所について、38万円を受け取ることができます。
支給の要件
以下のようなものが支給要件となっており、キャリアップの計画書の作成と提出は、他のコースと同じになります。
◆有期雇用労働者に対して実施する健康診断を就業規則等の規定化
◆有期雇用労働者4人以上に健康診断等の実施
◆実施した定期健康診断や健康診断等の費用の全額負担
◆人間ドック制度の費用の半額以上負担
必要書類
①キャリアアップ助成金支給申請書
②健康診断制度コース内訳
③支給要件確認申立書
④支払方法・受取人住所届
⑤キャリアアップ計画書(写)
⑥健康診断制度の規定前、規定後の労働協約又は就業規則(写)
⑦健康診断を実施したことを証明する書類(写)
⑧対象労働者の労働条件通知書または雇用契約書(写)
⑨対象労働者の賃金台帳(写)
⑩中小企業事業主であることの確認書類
受給するためのポイントをチェック
キャリアアップ助成金はいくつかのコースに分かれていますが、ポイントを抑えておくと受給がスムーズに行えます。
受給するための3つのポイントとなる「計画と訓練の見合ったものを作成」「必要書類の準備」「実施できるようにスケジュールを管理する」をみてみましょう。
計画と訓練の見合ったものを作成
受給するための一番重要なポイントとなるのは、計画と訓練との整合性です。目標にした計画に、そぐわない訓練内容が提出された場合には、支給申請は却下されることになってしまいます。
必要書類の準備
申請時には、数多くの申請書類が必要となります、コースを重複しての申請ではさらに多くの書類が必要となります。
きちんと書類を準備するためにも、上記で紹介した「東京労働局のホームページのチェックリスト」で不足している書類がないように、準備しておきましょう。
実施できるようにスケジュールを管理する
キャリアアップ助成金は、実施する時間を費やしてしまうために、実施と申請をスムーズに行えるようにスケジュール管理をしなければなりません。
準備から申請まで1年かけての手続きとなり、定められた手順と期限を守っていきましょう。
そのためには、可視化したスケジュールリストの作成でのスケジュール管理が、ミスの軽減につながっていきます。
まとめ
キャリアアップ助成金の特徴や受給要件、労働局のチェックリストなどについて、さらに「正社員化コース」「賃金規定等共通化コース」「健康診断制度コース」の3つのコースを詳しく解説してみました。
企業と従業員の支援となってくれるキャリアアップ助成金ですが、申請時には必要書類が数多く必要となってきます。必要書類を見落とさないために「東京労働局のホームページのチェックリスト」でひとつずつ書類をチェックして、スムーズな申請と受給につなげていきましょう。