近年、製造現場などでは、様々なロボットが導入され自動化が進んでいます。
実際に、製造現場へ「ロボット」を導入したいとお考えの企業も多くあるでしょう。
しかし、ロボットの導入を考えると、ロボット本体にかかる費用だけでなく、ロボットの周辺設備の改修や維持費など、多くのイニシャルコストが掛かってしまい、「初期投資等にお金が掛かり過ぎて、うちではロボット化は進められないなぁ…」と二の足を踏んでしまうという企業も少なく無いと思います。
「自動化のメリットは理解できるけどコスト面が・・・」と導入を踏み切れない企業が多いのではないでしょうか。
そこで、考えなければいけないのが自動化のためにロボット導入を考えたときに補助金が利用できるのかという点です。
実は、一定の条件を満たしている企業の場合、ロボット導入のために必要になる費用の一部を公的な補助金で賄える制度が用意されています。
本記事では、ロボット導入に使える補助金の紹介や、申請にあたっての重要な3つのポイントを紹介していきます。
INDEX
ロボット導入に活用できる補助金を選定しよう
企業などでロボットの導入を行うと「生産性の向上」や「ヒューマンエラーによるミスの低減」、さらには人件費削減などの様々なメリットがあるため、大手企業の工場では積極的に導入が進んでいるのが現状です。
ロボット導入の補助金を考えていくとしても、『ロボット導入に活用できる補助金』には様々な種類の補助金が存在しています。
それらの補助金は、それぞれ対象となる事業が違います。
自社の事業が対象となる補助金を使えるかどうかを、しっかりと確認する必要があるでしょう。
「ロボット導入」に活用できる補助金の代表的なものは2つあります。
・農水省「食品産業イノベーション推進事業」補助金
・ものづくり補助金
この2つの補助金について下記で細かく紹介していきます。
農水省「食品産業イノベーション推進事業」補助金
農林水産省が出す「食品産業イノベーション推進事業」という補助金は、「食品製造業」、「外食・中食産業」において、生産性の向上を目的として『設備のロボット化』を進める事業者が対象となっています。
「食品産業イノベーション推進事業」の補助金に定義されているものをご説明します。
対策のポイント
ICT・ロボット・AI技術の活用実証や、経営者等の生産性向上に対する意識向上を目的とした研修会等により、食品産業におけるイノベーションを創出し、食品製造業から外食・中食産業に至る食品産業全体の生産性向上を推進します。
<政策目標>
○平成33年度に食品製造業の労働生産性の伸び率を年3.0%とする
○平成32年度に飲食サービス業の労働生産性の伸び率を年3.0%とする
引用:平成30年度予算概算要求 食品産業イノベーション推進事業資料より
補助金の概要
平成30年度予算では、食品製造事業者、外食・中食産業事業者の生産性向上を目的に以下の二つの事業が実施されました。
〇業種別業務最適化実証事業
設備導入は行わず、製造ラインの改善により生産性向上を進めていく場合のコンサルティング費用が補助されます。補助金総額上限は1社500万円までです。
平成31年度農林水産予算概算要求には、平成31年度食品産業イノベーション推進事業の概要が発表されています。
〇革新的技術活用実証事業
食品製造業界の先進的な取り組み事例となる『ロボット化、ICT・AI活用』などの設備導入にかかるコストに関して最大で1/2が補助されます。ただし補助金総額上限は1社1200万円までです。
「ものづくり補助金」補助金
「ものづくり補助金」は、革新的なサービスや製品の開発を行う中小企業・小規模事業者を支援するための補助金です。
この補助金は、内容や要件がかなり細かく定められているので、企業規模によって受け取れる金額が違うなど、申請時には慎重な検討が必要になります。
「ものづくり補助金」の事業概要は以下の通りとなっています。
「ものづくり補助金」の概要
〇一般形
革新的なサービスや試作品の開発、生産プロセスの改善のために設備投資をする場合、機械装置費、技術導入費、運搬費、専門家経費などを支援するものです。
補助率は総事業費の1/2で、補助下限額100万円、補助上限額1,000万円となっています。
〇小規模型
中小企業や小規模事業者が行う革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善のうち小規模な額で行われる事業を支援するものです。(設備投資を伴わない試作開発等も支援)
補助率は、小規模事業者は2/3、その他は1/2となっており、補助下限額100万円、補助上限額500万円です。
補助金受給の為の3つのポイント
上記で紹介した「食品産業イノベーション推進事業」や「ものづくり補助金」などを受給するためには、申請書を作成し、一つ一つ丁寧に準備する必要があります。
準備を怠ってしまうと、受給の要件に当てはまっているのにも関わらず、チャンスを逃してしまう事にもなりかねません。
そこで、補助金申請にあたって注意しなければならない点をご説明します。
これらのポイントをしっかりと把握し、補助金受給の準備に取り組んでみてください。
補助金の「目的」や「条件」を知る事が大事
補助金の受給をする為には、「目的」や「条件」が公募内容と合致していなければなりません。
補助金によって、対象となる事業が変わったりと要件が異なります。
また、公募内容は年度ごとに変わってくるため、申請を考えている年に、「目的」や「条件」が公募内容と合致しているか確認しましょう。
そのためには、最近の新しい情報を集める事が重要となってきます。
補助金事業を運営する「日本ロボット工業会」や「中小企業庁」などのホームページで最新情報をチェックしましょう。
補助金受給までのスケジュールを組もう
「目的」や「条件」が当てはまり、申請したい補助金制度が決まったら、募集時期に合わせて計画を立てていきます。
「事業計画書」や「申請書類」の審査が通ったとしても受給が確定したわけではありません。
実際に補助金の支給が確定するのは、事業の実績報告の審査後となります。
そのため、それを念頭に置いた上でのスケジュールを考えるのが要となってくるでしょう。
申請書類は審査員が「読む」という事を考える
補助金制度の事前審査では、申請書の内容が最も重要です。
初めて申請する方は、「目的」や「条件」、「検査項目」をしっかりと把握し、漏れのないように性格に記入してください。
例えば、チェック項目の「レ」を忘れてしまっただけでも、審査の対象外になる可能性があるので、最新の注意が必要です。
せっかく要件に合致しているのに、簡単なミスで補助金受給のチャンスを逃がすのはとても勿体ない事です。
また、「事業計画書」の記入のポイントは事業全体を一つの「ストーリー」として組み立てる事です。自社や業界が抱えている課題を具体的に書き、その課題をロボット導入でどのように解決していく事ができるのかを、具体的な「数字」や「方法」を挙げながら記入すると効果的です。
さらには、自社の強みや、他社との差別化、事業の継続性などの説明を補って、より説得力のある「事業計画書」を書いていきましょう。
内容についても重要ですが、「読みやすさ」も意識して書類作成をすると良いでしょう。
補助金の審査員は「書類」については見慣れているかもしれませんが、「業界」や「申請企業」について詳しくない可能性があります。なので、誰でも読みやすく、分かりやすい書類であれば、審査員に対しても良い印象を与える事ができるでしょう。
審査員も人間なので、「読みづらい」より「読みやすい」方が好印象であることに間違いありません。
地方自治体でもロボット導入の補助金制度がある
実は、国が主体となって活動を行っている補助金だけでなく、地方自治体がロボット導入へのサポートを行う補助金制度もあります。
基本的に事業所の所在地である地域で受けられう制度となっていますので、自分の企業の所在地を確認してみましょう。
各都道府県でロボット導入に関する補助金がありますが、「兵庫県」「神奈川県」で募集されている2つの補助金制度をご紹介します。
兵庫県「ロボット実用化・普及促進補助金」
兵庫県では、「ロボット実用化・普及促進補助金」というものがあります。
ロボットをはじめ、IoTや先端医療、航空・宇宙といった次世代産業分野の支援を行う「ひょうご次世代産業高度化プロジェクト」に取り組んでいる兵庫県は、県内のものづくり企業を対象にロボットの導入の支援を実施しています。
ロボットの導入に必要な費用を50万円〜500万円で補助することだけでなく、ロボット導入における資金の獲得支援、ITベンダーやロボットシステムインテグレータの紹介など、導入時の疑問を解決してくれるサポートも充実しています。
公募はすでに終了しているかもしれませんので一度、確認してみる事をお勧め致します。
神奈川県「ロボット導入支援補助金」
神奈川県では、さまざまなロボットが社会に溶け込む「ロボットと共生する社会」を実現し
ていくため、「さがみロボット産業特区」で商品化したロボットを導入する方への補助を実施するという目的で「ロボット導入支援補助金」の公募を行っています。
ロボットの導入に必要な費用を、ロボット1台ごとに、購入価格(本体価格+対象付属品等の価格)に3分の1を乗じた額か、200万円のいずれか低い方の額を補助してくれます。
細かい募集要項をご覧になりたい方は、神奈川県ホームページのロボット導入支援補助金のご案内をご覧ください。
まとめ
以上、ロボットに関する補助金制度についてご紹介させて頂きました。
ロボットの購入を行うと、購入資金以外にも「運用」「メンテナンス」「システム開発」「人材教育」などのハードルがあります。
しかし、補助金を受給してロボットの導入が可能となれば、より良い職場環境の実現や、さらなる事業発展に繋げていく事ができるのではないでしょうか。
日本では、ものづくりやサービスの生産性向上、労働人口減少の解決を目的に、ロボットの活用や生産の自動化を推進しています。
「食品産業イノベーション推進事業」などはすでに募集が終了していますが、「ものづくり補助金」のように再開したり、新たな産業用ロボット導入支援制度が実施されたりする可能性は十分にあります。
国がロボット活用や自動化に力を入れている今こそ、補助金を活用して産業用ロボット導入をできるチャンスなので、今後の情報にも注目し、積極的に補助金制度を活用していってください。