
業務効率化や人材不足対策、ケアの質の向上が期待される介護ロボットです。
しかし、まだまだ高価なため、十分に普及が進んでいないのが現実です。
そんな介護ロボットの導入ハードルを下げてくれるのが、国や自治体が実施している介護ロボット導入支援事業です。
これまでに、さまざまな補助金・助成金が用意されてきました。
そこで問題になるのが、「どんな商品が、介護ロボットとして補助金の対象になるの?」という点です。
ここでは、過去に補助金の対象となった介護ロボットをまとめました。
補助金や助成金を使って介護ロボットを導入したいと考えている介護事業者の皆さんは、ぜひ参考にしてみてください。
INDEX
そもそも介護ロボットとは?
そもそも介護ロボットとは何かという疑問があがります。
まずは、介護ロボットの基礎知識と注目される理由を見てみましょう。
介護ロボットとは、生活面の介護が必要な人(要介護者)を補助し、介護者側の負担を軽減することを目的に開発されているロボット機器です。
「介護支援ロボット」や「介護福祉ロボット」とも呼ばれます。
介護ロボットが注目される理由
増え続ける高齢者の数に対して介護現場の人手不足が深刻化しており、介護ロボットがその問題を解決できるのではないかと考えられていることが理由です。
2013(平成25)年6月、政府がロボット介護機器の開発・導入促進に戦略的に取り組むことを発表すると、経済産業省と厚生労働省は「ロボット技術の介護利用における重点分野」を策定し、介護ロボットの開発支援に踏み出しました。
具体的には、ロボットの開発を進めるメーカーへの支援だけでなく、介護ロボットの導入を促すために補助金制度を設けたり、介護現場で実際に利用した人の声が開発者の耳に直接届くような仕組みをつくったりすることで、現場のニーズに合致するロボットの開発を進めています。
介護ロボットの現状
国の積極的な支援を受け、介護ロボットの開発は進んでいるものの、一般的にはまだ普及していません。
普及が遅れている理由はいくつか考えられます。
現段階で介護ロボットができるのは単一作業のみであり、要介護者1人の介護を全てまかなうためには、多種の介護ロボットを組み合わせて使う必要があります。
また、介護ロボットが完全にスタッフの代替を担える段階には至っておらず、人間の手による操作が必要となるため、あまり実用的とはいえない点が理由として挙げられます。
開発されている技術と、介護者や要介護者のニーズにギャップが生じていることも、介護ロボットの普及を妨げています。
メーカーは、自社の先端技術を組み込むことに躍起ですが、それがかえって利用者のニーズからかけ離れたものを作り上げているともいわれます。
介護ロボットの安全性を疑う声も上がっており、介護現場での実用化はまだ先になりそうです。
介護ロボットの重点開発分野
介護ロボットに必要とされ、重点的に開発が進められている機能は、主に次の5つです。
補助金の対象になっているのも下記の種類に分類されるので、確認しておきましょう。
移乗介助機器
■装着型
介護者のパワーアシスト機能を備えた装着型の介護ロボット機器です。
介護者が装着することで、要介護者をベッドから車いすやトイレに移乗させるときのアシストを行い、介護者の腰の負担を軽減させることができます。一人で着脱可能です。
■非装着型
介護者のパワーアシスト機能を備えた非装着型の介護ロボット機器です。
介護者が要介護者を抱き上げ、ベッドから車いすに移乗させるとき、介護者の一部または全てのパワーアシストを行い、介護者の腰の負担を軽減させます。
一人で使用できて、機器を据えつける際の住宅への設置工事などは不要です。
移動支援機器
■屋外型
要介護者が外出する際、自身の足で歩行することを支援し、荷物などの運搬を補助する介護ロボット機器です。
「車輪は4つ以上」「砂利道や段差がある場所でも安定して移動できる車輪径」「マニュアル・ブレーキ搭載」「普通自動車の車内・トランクに搭載可能(折りたたみ式も可)」「雨天時に対応できる防水対策」「重量は30kg以下など、条件が定められています。
■屋内型
要介護者が屋内にいる場合、トイレへの往復の歩行支援を行ったり、トイレやベッドに座ったり立ち上がったりする動作の支援を行う介護ロボット機器です。
使用者が自身の足で歩行移動することができ、自分一人、または介護者一人によるサポートがあれば使用できます。従来利用している歩行補助具などとの併用も可能です。
排泄支援機器
居室に設置して利用できる介護ロボット機器です。
設置場所の調整と移動が可能で、居室内にいながら、便座に座って排泄できます。
その際、排泄物を室外に流したり、容器や袋を用いて密封・隔離したりして、排泄物の臭いが室内に拡散することを防ぐ工夫もされています。
見守り支援機器
■介護施設型
センサーや外部通信機能搭載の介護ロボット機器で、介護施設での利用を目的としています。
24時間、昼夜を問わず使用でき、同時に複数の要介護者を見守ることができます。
施設内の複数の介護者に向け、同時に情報を提供することも可能です。
要介護者が自ら助けを求めるときだけではなく、例えば、要介護者がベッドから離れた際に、即座に検知して介護者へ通報されるので、事故などを未然に防ぎやすくなります。
■在宅介護型
転倒検知センサーや外部通信機能搭載の介護ロボット機器で、在宅介護での利用を目的としています。
浴室などを含めた複数の部屋を同時に見守ることができ、暗所においての使用も可能です。介護施設型と同様に、要介護者が自ら助けを求めるときだけではなく、例えば、要介護者が室内で転倒した場合、それを検知してすぐに介護者へ通報してくれます。
入浴支援機器
要介護者が浴槽への出入りを行う際に、一連の動作を補助する介護ロボット機器です。
要介護者一人、または介護者一人の補助によって利用できます。
設置には特別な工事は不要で、家族の他のメンバーが入浴する際には、一人でこの機器を取り外して片づけることもできます。
介護ロボット等導入支援特別事業で対象となった介護ロボット
平成27年度の補正予算にて52億円の予算があてられた「介護ロボット等導入支援特別事業」ですが、現在平成31年度も各都道府県で行っています。
過去には、1事業所につき、最大92万7000円の助成金が出たことで話題になりました。
介護ロボット等導入支援特別事業の補助対象となるには、3つの要件を満たしている必要がありましたので下記に詳細を説明していきます。
補助対象となるための3つの要件
補助対象となるための3つの要件が必要になります。
下記にその要件を紹介します。
①目的要件 日常生活支援における、ア)移乗介護、イ)移動支援、ウ)排泄支援、エ)見守り、オ)入浴支援のいずれかの場面において使用され、介護従事者の負担軽減効果のある介護ロボットであること 。
②技術的要件 次のいずれかの要件を満たす介護ロボットであること。
③市場的要件
販売価格が公表されており、一般に購入できる状態にあること。
この上記3点が要件になります。
自治体の介護ロボット支援事業(補助金・助成金)で対象となる介護ロボット
一部の自治体では、介護ロボットの導入にかかる費用の一部を補助(助成)してくれる「介護ロボット等支援事業」が実施されています。
補助内容は自治体によって異なりますが、平成31年度は、1機器につき導入経費の2分の1(上限30万円)が助成されるケースが多いようです。
ここでは、平成27年度から平成31年度にかけて、介護ロボット等支援事業にて導入された介護ロボットを紹介します。
見守り・離床検知ロボット
ここでは、参考に離床検知ロボットの商品名と制作会社を紹介します。
■コールマット・コードレス (株式会社テクノスジャパン)
■A. I. Viewlife エイアイビューライフ (エイアイビューライフ株式会社)
■モビネスeye ワイヤレス (電導株式会社)
■ケアロボ (株式会社テクノスジャパン)
■Care愛 (ハカルプラス株式会社)
■離床センサー おきナールTW (トクソー技研)
■バイオネクスト (株式会社バイオシルバー)
■あんしんの絆 (株式会社ユニティーネットワーク)
■みと~ねⅡ (株式会社メリハット)
■ガードアイ・センサー (株式会社ガードアイ)
また、自治体によっては、似たような機器でも、補助要件を満たす内容であれば対象となります。
一部の自治体では、その自治体独自の条件を追加しているところもあります。
介護ロボット導入補助金の交付条件
介護ロボット導入補助金の交付条件はどのように出来るの?という疑問がうまれると思います。
今回は参考に神奈川県を紹介しています。
現在は、補助⾦を公平に分配するため、申請できる事業所の優先順位を設けております。
申請条件を満たした募集期間が開始してから提出してください。
県内の介護サービス事業者が介護ロボットを導入する際の経費の一部を補助します。
各都道府県で異なる可能性がありますで、調べてみてください。
申請をする目的を理解する
新たな技術を活用した介護ロボットは、介護従事者の身体的負担の軽減や業務の効率化など、介護従事者が継続して就労するための環境整備策及びサービスの質の向上に向けた取組として有効性が期待されます。
しかし、市場化されて間もない状況にあるものが多く、価格が高額であるなどの課題があります。
そこで、広く一般の介護事業所による取組の参考となるよう先駆的な取組について支援を行うことで、介護環境の改善に即効性を持たせるとともに、介護ロボットの普及を促進することを目的とします。
交付対象者
以下の2つの条件を満たしている事業所
1 神奈川県内の介護サービス事業所・施設
2 介護保険法(平成9年法律第123号)による指定又は許可を受けている
(1)居宅サービス事業者(居宅療養管理指導、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売を除く。)
(2)地域密着型サービス事業者及び介護保険施設の開設者(居宅介護支援事業者、介護予防サービス事業者、地域密着型介護予防サービス事業者及び介護予防支援事業者は対象外。)
※当補助金を活用し、導入を計画している介護ロボットについて、別途、国及び県から補助金を受けている介護サービス事業所・施設は交付対象者から除外する。
補助対象ロボット
日常生活支援における、移乗介護、移動支援、排泄支援、見守り・コミュニケーション、入浴支援、介護業務支援のいずれかの場面において使用され、介護従事者の負担軽減効果のある介護ロボットです。
補助額は、1機器につき導入経費の2分の1(補助限度額30万円)※リース・レンタルも含む
まとめ
今回は、介護ロボットの補助金にまつわる説明をさせて頂きました。
介護現場の救世主になり得る介護ロボットです。
急ピッチで開発が進んではいるものの、普及まではまだ時間がかかりそうです。
ますます高齢化する社会で介護の需要が高まることを考えると、国や自治体による補助金制度の充実をより一層強化し、一刻も早く実用化させる必要があるでしょう。
介護ロボットが介護問題を解決する日の到来が待たれます。