
中小企業や個人事業主の資金調達先として、日本政策金融公庫や商工中金からの融資を選択する方は少なくありません。
新型コロナウイルス感染症の拡大によって影響を受けた方への貸付が設けられていることをみても、心強い資金調達先と言えるでしょう。
融資を受けたのなら利息を支払うことは当然と思うかもしれませんが、利息を免除してくれる特別利子補給制度をご存じでしょうか?
特別利子補給制度は、日本政策金融公庫や商工中金、日本政策投資銀行での貸付した方の利子相当額を実質的に無利子化にしてくれる補助金です。
こちらの記事では、資金調達の利息をカバーできる新型コロナウイルス感染症特別利子補給事業、都道府県制度融資への無利子化支援、さらに開始された民間金融機関での実質無利子の3つの制度を解説していきますので、ぜひご覧ください。
新型コロナウイルス感染症特別利子補給事業
新型コロナウイルス感染症特別利子補給事業は、特別利子補給の対象となる金融機関より貸付により借入をした方の中で、一定の要件を満たす方が利用できる制度です。
貸付を受けた日から最長3年間にあたる利子相当額を一括して助成することにより、実質的な無利子化を実現しています。
なお、対象となる金融機関は、日本政策金融公庫(日本公庫)、沖縄振興開発金融公庫(沖縄公庫)、商工組合中央金庫(商工中金)及び日本政策投資銀行の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」・「危機対応業務(危機対応融資)」等となります。
◆申請期限 令和3年12月31日(当日消印有効)
対象者
新型コロナウイルス感染症特別利子補給事業の対象となる方は、下記の通りとなります。
◆日本公庫、沖縄公庫、商工中金、日本政策投資銀行の特別利子補給の対象となる貸付により借入を行った中小企業者・小規模企業者等のうち、下記のの売上高要件を満たす方を対象とします。
①小規模企業者(個人事業主)事業性のあるフリーランス含む。
・売上高要件はありません。
②小規模企業者(法人事業者)
・貸付の申込を行った際の最近1か月、その翌月又はその翌々月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して15%以上減少している方。
③中小企業者等(上記1、2を除く事業者)
・貸付の申込を行った際の最近1か月、その翌月又はその翌々月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して20%以上減少している方。
なお、中小企業者・小規模企業者等の要件は、日本標準産業分類(中分類)によって分類される業種ごとに、常時使用する従業員数に応じて判定します。
◆ 売上高減少率の考え方
・業歴が1年1か月以上か未満かによって、売上高減少率の算出方法は異なります。
・業歴1年1か月以上であっても、1年以内に店舗拡大した方など、前年や前々年の売上高との比較が馴染まない方は、業歴1年1か月未満として売上高減少率の判定をすることができます。
対象貸付
新型コロナウイルス感染症特別利子補給事業の対象となる金融機関ごとの貸付は、下記の表の通りとなります。
金融機関 | 特別利子補給制度の対象となる貸付 |
日本公庫・中小事業 | 新型コロナウイルス感染症特別貸付 |
日本公庫・国民事業 | 新型コロナウイルス感染症特別貸付
生活衛生関係営業新型コロナウイルス感染症特別貸付 小規模事業者経営改善資金(マル経)(新型コロナウイルス感染症関連) 生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付(衛経)(新型コロナウイルス感染症関連) |
沖縄公庫・中小企業資金 | 新型コロナウイルス感染症特別貸付 |
沖縄公庫・生業資金 | 新型コロナウイルス感染症特別貸付
小規模事業者経営改善資金貸付(マル経)(新型コロナウイルス感染症関連) 沖縄雇用・経営基盤強化資金貸付(沖経)(新型コロナウイルス感染症関連 |
沖縄公庫・生活衛生資金 | 新型コロナウイルス感染症特別貸付
生活衛生関係営業経営改善資金貸付(衛経)(新型コロナウイルス感染症関連) |
商工中金 | 新型コロナウイルス感染症特別貸付(危機対応融資)※中小企業向け制度に限る |
日本政策投資銀行 | 危機対応業務(危機対応融資) |
対象となる貸付の上限額(2020年7月2日時点)
新型コロナウイルス感染症特別利子補給事業の貸付の上限は下記の通りとなります。
◆日本公庫(中小事業)2億円
◆ 日本公庫(国民事業)4,000万円
◆沖縄公庫(中小企業資金)2億円
◆沖縄公庫(生業資金・生活衛生資金)4,000万円
◆商工中金 2億円(日本政策投資銀行と合算)
◆日本政策投資銀行:2億円(商工中金と合算)
なお、上限額は、新規融資と既往債務借換との合計金額となります。
申請から終了までの流れ
新型コロナウイルス感染症特別利子補給事業の申請から、助成対象期間(実質無利子期間)終了までの流れは、下記「ステップ1~ステップ7」までの通りとなります。
◆ステップ1:準備
借入を行った金融機関より申請に必要な次の書類等を受領します。
① 特別利子補給助成金交付申請書及び請求書
②【別紙1】誓約・同意書
③【別紙2】申告書
④ 事務局宛て専用封筒
◆ステップ2:申請
金融機関より受領した、①特別利子補給助成金交付申請書及び請求書、②【別紙1】誓約・同意書、③【別紙2】申告書(A~Dのうちいずれか1枚)に必要事項を記入し、④事務局宛て専用封筒にて郵送します。
申告書は、事業形態(法人・個人事業主)や業歴によりA~Dの4種類がありますので、当てはまるものをご使用ください。
◆ステップ3:審査
事務局により、申請内容が交付の要件を満たしているかどうかの審査が行われます。
申請に不備があった場合は、電話・メール等で確認の知らせが入りますので、お気をつけください。
◆ステップ4:交付決定
事務局の審査の結果、交付の要件を満たしている場合には、事務局から「特別利子補給助成金交付決定通知書」により、交付決定及び事務局が計算した助成金額が通知されます。
なお、交付の要件を満たしていない申請者にはその旨が通知されます。
・審査の過程において、事務局は金融機関に申請者の貸付情報等を照会し、金融機関から助成金額の計算に必要な情報の提供を受けます。
◆ステップ5:助成金交付
事務局より申請書に記入した振込先の口座に助成対象期間(貸付を受けた日から最長3年)の利子相当額が一括で振り込まれます。
・入金された助成金は、利子の支払いに充ててください。
◆ステップ6:助成対象期間中
助成対象期間中に対象貸付の条件変更や約定外返済(借換・繰上償還等)により利子の 支払い額に変更が生じ、交付された助成金と金融機関に支払った利子額に差が生じた場合、助成金の追加交付や返納手続きについて通知されます。
◆ステップ7:助成期間終了
助成対象期間終了後には、金融機関からの情報に基づき、事務局より「特別利子補給助成金確定通知書」が送付されます。
・交付された助成金と金融機関に支払った利子額に差が生じている場合には、追加交付または助成金の返納により精算となります。
都道府県制度融資への無利子化支援
都道府県制度融資への無利子化支援は、中小企業者や小規模事業者を対象として設けられた都道府県等の融資制度に対して行われている制度です。
利子相当分を助成することによって実質的に無利子化とし、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業等の資金繰りを支援しています。
補助対象者
都道府県制度融資への無利子化支援の補助対象となる方は下記の通りとなります。
①個人事業主
・事業性のあるフリーランスを含み、小規模事業者に限る
・売上高▲5%以上
②小規模事業者(①を除く)中小企業者
・売上高▲15%以上
融資上限額・担保・融資期間・無利子期間
都道府県制度融資への無利子化支援の融資上限額・担保・融資期間・無利子期間は、下記の表の通りとなります。
なお、保証料を負担する場合もあり、保証料についても補助されています。
融資上限額 | 4,000万円(拡充前3,000万円) |
担保 | 無担保 |
融資期間 | 10年以内(据置期間515年以内を含む) |
無利子期間 | 当初3年間、4年目以降は制度融資所定金利 |
・実質的な無利子融資の方法は、融資実行段階から無利子となる「リアルタイム方式」と、事業者が利子額を一旦支払った後に都道府県等から支払った利子額の支給を受ける「キャッシュバック方式」があります。
・各制度融資によって、この方式の取り扱いは異なりますので、詳細は各都道府県等の制度融資を確認しておきましょう。
民間金融機関での実質無利子等の融資が開始
新型コロナウイルス感染症拡大によって、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付への申請が大幅に増えています。
そのため、融資の実行までの時間を要することになってしまうために、政府ではこのような状況を改善するために、都道府県等の制度融資を活用することにしました。
5月1日から民間金融機関での実質無利子、無担保、据置最大5年、保証料免税の融資が開始され、民間金融機関でも実質無利子、無担保等の融資を利用することができるようになっています。
対象要件
民間金融機関での実質無利子等の融資が対象となる要件は、下記の売上減少の要件を満たし、セーフティネット保証4号・5号、危機関連保証いずれかの認定を受けていることが要件となっています。
売上高▲5% | 売上高▲15% | |
個人事業主 (事業性のあるフリーランス含む小規模のみ) |
保証料・金利ゼロ | |
小・中規模事業者(上記除く) | 保証料1/2 | 保証料・金利ゼロ |
その他の要件
民間金融機関での実質無利子等のその他の要件は、下記の通りとなります。
日本政策金融公庫新型コロナウイルス感染症特別貸付とほぼ同様の要件です。
融資上限額 | 3000万円 |
補助期間 | 保証料は全融資期間、利子補助は当初3年間 ※条件変更に伴い生じる追加保証料は事業者の負担となります。 |
融資期間 | 10年以内(うち据置期間5年以内) |
担保 | 無担保 |
保証人 | 代表者は一定要件(①法人・個人分離、②資産超過)を満たせば不要(代表者以外の連帯保証人は原則不要) |
申込み等は取引のある民間金融機関窓口
民間金融機関での実質無利子等の申込実などは、取引のある民間金融機関窓口で行ってください。
市区町村へのセーフティネット保証・危機関連保証の認定申請、信用保証協会への審査の依頼等も、原則として民間金融機関経由で行われています。
まとめ
資金調達の利息をカバーできる新型コロナウイルス感染症特別利子補給事業、都道府県制度融資への無利子化支援、さらには開始された民間金融機関での実質無利子等の融資を詳しく解説してきました。
金融機関などで貸付を行う際には、利子を支払わなければなりませんが、これらの特別利子補給制度を活用することで実質無利子で受けられます。
無担保や措置期間も最大5年と多めに設けられている特別利子補給制度の補助金を、資金調達の一つとしてご活用ください。