資金調達としてファクタリングを利用したい。そう思った時に気になるのが法律での規制ではないでしょうか?
「違法性はないのか」「ファクタリングには貸金業法や利息制限法は適用されるのか」など、実際にファクタリングで資金調達を行う前に知っておくべきことは沢山あります。
結論から述べますと、現時点ではファクタリングは貸金業法には該当しません。しかしながら中には例外も存在します。また、今後ファクタリングが日本でもメジャーな資金調達の方法として今以上に広く認知されることになれば法改正によって何らかの法律が適用されるという可能性もあります。
- ファクタリングはなぜ貸金業法が適用されない?
- ファクタリングを行う上での注意点
この記事は以上の点に注目して詳しく解説していきたいと思います。安心、安全に資金調達を行うためにも是非参考にしてみてください。
ファクタリングは貸金業法で規制されていない
資金調達には様々な方法があります。最もメジャーな資金調達の方法として「融資」がありますが、融資を行う貸金業者(銀行や信用金庫は貸金業者には該当しない)は貸金業法の対象となり、この法律の範囲内で貸付を行わないといけません。
しかし、ファクタリングは貸金業法には該当しないため、利息制限法も適用されないのです。
貸金業法に該当しない3つの理由
では、一体なぜファクタリングは貸金業法に適用されないのでしょうか?
ファクタリングとは企業が保有している売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売却し、早期に現金化するという資金調達方法です。ファクタリングの大まかな流れとしては下記のようになります。
【ファクタリングの流れ】
- 企業間の取引で売掛金が発生する
- 利用者が売掛金をファクタリング会社に売却する
- ファクタリング会社が買取代金を利用者に支払う
- 売掛先がファクタリング会社に直接売掛金を支払う
ファクタリングは一見、売掛金を担保にした融資のようにも見えますがそうではなく、あくまで「債権の譲渡」となっています。貸付ではなく債権の売買なので貸金業法は適用されないということなのです。
これからより詳しく1つ1つの理由について説明していきます。
理由その1「利息制限法に該当しない」
貸金業では「金利」が発生しますが、ファクタリングでは金利は発生せず「手数料」が発生します。実質この手数料が金利と同じような意味合いとなっているわけですが、貸金業法に該当しないファクタリングでは利息制限法は適用されず、設定可能な手数料の上限などは定められていません。
そのため、中には法外な手数料でファクタリングを行おうとする悪徳ファクタリング業者も存在しています。このような違法業者に引っかからないためにもファクタリングを利用する前に手数料相場や契約の際に大切となることについてしっかり知っておくことが大切です。
【融資額別の金利】
- 10万円未満…20.0%
- 100万円未満…18.0%
- 100万円以上…15.0%
【ファクタリング手数料の相場】
- 2社間ファクタリング…10%~20%
- 3社間ファクタリング…1%~5%
上記は融資額別の金利と、ファクタリングの手数料の相場です。ファクタリングの場合、手数料が相場以上に高すぎたからと言って法律違反になることはありませんが、悪徳業者の可能性が高いため注意が必要です。
では、ファクタリングと混同されがちな資金調達方法として「手形割引」がありますが、手形割引とは一体何が違うのでしょうか?
ファクタリングは売掛金を現金化するのに対し、手形割引では受取手形を現金化します。両者の違いは法律上の強制力があるか、ないかということです。売掛金は法律上の強制力はなく、受取手形には法律上の強制力があるのです。
貸金業法 第二条
この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつ てする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業と して行うものをいう。
このように手形割引の場合は融資とみなされ貸金業法が適用されます。そのため、売掛先が倒産してしまった場合には利用者が責任を取って担保(売掛金)分の返済を行う義務が生じてしまいます。
しかし、ファクタリングは債権を業者に売却するという行為のため、扱いとしては「売買契約」という形になりもしも売掛先が倒産してしまうなどしても、利用者が責任を取る必要がないのです。
このようにファクタリングはただ売掛金の現金化を早めるだけではなく、売掛金の未回収リスクを回避するという役割もあるのです。
ファクタリング(債権譲渡) | 手形割引(融資) | |
---|---|---|
貸金業登録 | 不要 | 必要 |
利息制限法 | 利息制限法が適用されない(手数料を自由に設定可能) | 利息制限法が適用される(定められた範囲内で金利を設定) |
償還請求権 | 原則として償還請求権なし(※) | 原則として償還請求権あり |
※ファクタリングは原則償還請求権のないノンリコースですが、中には償還請求権があるウィズリコースも存在しています。後述で詳しく説明しますが契約の際には注意しましょう。
理由その2「ファクタリングはBtoB」
ファクタリングは基本的にBtoB(Business to Business)、企業と企業の間でなされます。
しかし、貸金業法はBtoC (Business to Consumer)貸金業法と個人の取引を想定した法律です。利用者を貸金業者から守るための法律というわけですが、ファクタリングの場合は規制の対象外であるだけでなく企業間取引のため、利用会社側を保護する必要はないと考えられているのです。
理由その3「ファクタリングを規制する法律はない」
貸金業を行うためには貸金業者として「貸金業登録」を行う必要があります。しかし、ファクタリングは貸金業法には該当しないためファクタリング事業者は貸金登録を行う必要はありません。
貸金業に該当しないということは出資法にも該当しないということになり、現時点ではファクタリングを規制する法律は存在していないのです。
メディアではファクタリングを違法行為と報じているところもありますが、ファクタリングは違法行為ではなく、欧米圏では昔から行われ広く知られているメジャーな資金調達方法の1つとなっており、キャッシュフローを改善させるための有効な方法でもあります。
ファクタリングを利用する上では注意点もある
売掛金を早期に現金化出来るというのは資金調達をしたいと思っている人からすれば願ってもいない方法です。正しく使えば経営の強い味方となってくれることは間違いないでしょう。
しかし、ファクタリングを行う際には知っておくべき注意点がいくつか存在しています。注意点を知って契約を行うことで安心してファクタリングを利用することが出来るはずです。
法外な手数料
貸金業の場合は「金利」が発生しますが、貸金業ではないファクタリングでは「金利」は発生せず、その代わりに「手数料」が発生します。
前述の通り、貸金業法に該当しないファクタリングでは上限は設定されておらず自由に手数料を設定できます。そのため、ファクタリング会社によっては相場を遥かに上回る高い手数料を設定しているところもあるのです。
手数料は契約方法によっても異なり、2社間ファクタリングの場合は10%~20%、3社間ファクタリングの場合は1%~5%となります。法律で規制されているわけではないものの、相場を明らかに超えている法外な手数料を設定している業者は悪徳と言っても差し支えなく、利用するのは危険です。
ファクタリングの名を騙るヤミ金
ニュースでファクタリング業者が違法だとして逮捕されるケースが見られますが、正しくはファクタリングではなく「ファクタリング業者を装ったヤミ金」なのです。
「ファクタリング」と呼ばれる売掛債権の買い取り契約を装い、ヤミ金を営んだとして、大阪府警生活経済課は25日、貸金業法違反(無登録営業)の疑いで、東京都中野区の2業者を摘発し、元経営者の三浦和仁容疑者(36)=同区弥生町=ら男8人を逮捕した。
このように、ニュースでもはっきりと「ファクタリングを装ったヤミ金」との記載があります。しかし、報道ではあたかも「ファクタリングが違法」かのように報じている場合も多く、これがファクタリングが違法行為だと勘違いされてしまう原因となっているのです。
売掛債権担保の活用を拡大する観点から、契約における債権譲渡禁止特約の解除を産業界に働き掛け続けることが必要である。 もう一つは、売掛債権を担保に資金調達することが風評被害を招きかねないという点である。 つまり、「売掛債権にまで手を出さなければ資金の調達ができず、資金繰りが苦しい企業である」とみなされる懸念があるということある。 この問題については、売掛債権を活用した資金調達が正当な資金調達手段であることの周知徹底が必要である。
上記のように参議院の中小企業における資金調達の課題としても売掛金を活用した資金調達が取り上げられており、ファクタリングは経済産業省も推奨しているまっとうな資金調達方法なのです。
債権譲渡通知
債権譲渡とは、債権(売掛金)を譲渡することを売掛先に知らせることです。
ファクタリングはまだまだ日本ではメジャーな資金調達方法ではありません。そのため、ファクタリングを行うことを売掛先に知られた場合「ファクタリングをしなければいけないほど資金繰りに困っている会社なのか?」というマイナスイメージを与えてしまう可能性があります。
どうしても売掛先にファクタリングを利用することを知られたくないという場合、売掛先には知られずに行うことが出来る2社間ファクタリングを利用することとなりますが、2社間ファクタリングは3社間ファクタリングに比べると手数料が高くなります。
償還請求権
ファクタリングは基本的には償還請求権のないノンリコースとなっています。しかし、中には償還請求権のあるウィズリコースのファクタリングを行っている業者もあるため、契約の際には特に注意が必要です。
償還請求権のあるファクタリングの場合、ファクタリング会社は債権回収のリスクをほぼ負わなくてもいいことになってしまうのです。過去の判例で、償還請求権のあるファクタリングは金銭消費貸借契約にあたると判断されたケースもあります。
まとめ
以上、ファクタリングの規制と注意点について詳しくご説明いたしました。
経済産業省も推奨しているまっとうな資金調達方法であるファクタリングは正しく安全に利用することでキャッシュインを早めキャッシュフローを改善する効果が期待出来るなど、起業まもない企業や資金繰りに困っている企業の強い味方となることでしょう。
貸金業法・出資法に該当しないファクタリングは違法性はないものの、悪徳業者が紛れ込んでいる可能性も少なくなく、利用する際には信用出来るファクタリング会社を選ぶことが大切です。