借り換えについて考えたことはありますか?借り換えとは、現在の借り入れ金を新たな借り入れによって、一括返済してしまうことです。
借り換えによってのメリットやデメリットが生じてきますが、「日本政策金融公庫」の場合は、このような借り換えができるのでしょうか?
こちらでは、「日本政策金融公庫」の借り換えるときに知っておきたい5つのポイントについてご紹介していきます。見落とすと信頼を損なう可能性もある大切なポイントもありますので、「日本政策金融公庫」での借り換えを検討している方は、ぜひご覧ください。
INDEX
二通りの借り換え方法
「日本政策金融公庫」の借り換えを考えたときに、二通りの方法が考えられます。
一つは「日本政策金融公庫」から借り入れている融資を銀行に借り換えるという方法。
二つ目は、銀行から借り入れている融資を「日本政策金融公庫」に借り換えるという方法です。この二つの借り換えについて、おさえておきたい5つのポイントを詳しく解説していきます。
ポイント1:条件が悪くなる?「日本政策金融公庫」から銀行への借り換え
「日本政策金融公庫」で借りていた融資を、銀行に借り換えるというケースはほとんど存在しません。
なぜなら、「日本政策金融公庫」と銀行を比べてみると、「日本政策金融公庫」の方がどれをとっても良い条件となるからです。
つまり、借り換えると損をするということと、銀行が「日本政策金融公庫」以上の条件を出せないということから、「日本政策金融公庫」から銀行への借り換えはおこなわれるケースは少ないのです。
ポイント2:銀行からの借り換えに応じない「日本政策金融公庫」
「日本政策金融公庫」は銀行よりも、借り入れ条件がよく担保や保証も必要としない商品が多く、さらに金利においては低金利を実現しています。
このように、銀行から「日本政策金融公庫」への借り換えは多くのメリットが受けられるので、借り換えを望む方は多いのではないでしょうか?
しかし、「日本政策金融公庫」では、銀行のような民間の金融機関からの借り換えには、一切対応していません。
なぜかと言うと、政府が運営している「日本政策金融公庫」が、銀行がおこなっている融資の借り換えしてしまうと、銀行の収入源である利息が奪われ、銀行の収益が減少してしまうからです。政府の「日本政策金融公庫」が、銀行の経営を圧迫してしまうことになってしまいます。
このように、銀行のような民間の金融機関の利益を損なうことのないように、「日本政策金融公庫」は銀行からの借り換えに応じてくれないのです。
ポイント3:公庫融資借換特例制度による借り換えができるケース
ポイント2で説明したとおり、「日本政策金融公庫」は銀行からの借り換えは応じていませんが、条件を満たせば借り換えができるという特例制度を設けています。
どのような場合に公庫融資借換特例制度が利用できるのか見ていきましょう。
公庫融資借換特例制度で借り換えできる方
公庫融資借換特例制度とは、経済的や社会的な変化、金融機関の取引状況などの原因によって資金繰りが悪くなった方を対象としています。
公庫融資借換特例制度は「日本政策金融公庫」の中小企業事業による制度です。
【公庫融資借換特例制度で借り換えができるケース】
・セーフティネット貸付制度の経営環境変化対応資金および金融環境変化対応資金
・東日本大震災復興特別貸付
・平成28年熊本地震特別貸付
・平成30年7月豪雨特別貸付
・企業再生貸付制度の企業再建資金(シンジケートローン特例を除く)
・企業活力強化貸付制度の事業承継・集約・活性化支援資金
以上の貸付を受けている方です。
これらのケースに当てはまれば公庫融資借換特例制度を利用することができます。
利用することにって、年間の返済額を減少することができ、資金繰りの安定化に繋がっていきます。
利用限度額と返済期間
項目 利用限度額 返済期間
①経営環境変化対応資金 7億2,000万円 8年以内(据置期間は原則として1ヶ月以内)
②金融環境変化対応資金 3億円 8年以内(据置期間は原則として1ヶ月以内)
③東日本大震災復興特別貸付 3億円 8年以内(うち据置期間原則1ヶ月以内)
一定の要件に該当する場合は、15年以内(うち据置期間原則1ヶ月以内)
④平成28年熊本地震特別貸付 3億円 8年以内(うち据置期間原則1ヶ月以内)
一定の要件に該当する場合は、15年以内(うち据置期間原則1ヶ月以内)
⑤平成30年7月豪雨特別貸付 各融資制度の融資限度額に6,000万円を加えた額
15年以内(うち据置期間原則1ヶ月以内)
⑥企業再建資金 7,200万円
15年以内(一定の要件を満たす場合は20年以内)(うち据置期間原則1ヶ月以内)
⑦事業承継・集約・活性化支援資金 7億2,000万円 7年以内(うち据置期間原則1ヶ月以内)
金利について
金利は、特別貸付制度によって定められている利率になります。
借り換え部分に関しては、融資の際の基準金利よりも加重平均金利が高くなる場合には、加重平均金利が適用されます。
公庫融資借換特例制度は、金利が低く利息負担が少ないことや返済期間が長期であることからメリットが多い制度となっています。
制度を利用する際の注意点
①公庫融資借換特例制度で借り換えをするためには公庫融資の借り換えのほか、原則として新規融資を利用することが求められます。
②既往の融資については一部借り換えの対象にできないものもあります。
③借り換え部分に対する融資金額は、借り換え対象口ごとに10万円未満の端数を切り捨てた金額となります。
④上記以外の貸付条件は、各特別貸付で定められています。
⑤当然ですが審査があります。
条件を満たしていればすぐに利用できるというわけではなく、事業の見通しや財務内容などについて審査がおこなわれることも忘れてはいけません。
「審査が通らなかったために融資が受けられない」と、言うことがないように事業計画書などでしっかりと説明できるように準備しておいてください。
申し込み方法
公庫融資借換特例制度を利用するためには、申し込みが必要です。
まずは「日本政策金融公庫」各支店に設けられている小企業事業の窓口で確認します。
「日本政策金融公庫」の中小企業事業の窓口は、全国の北海道から九州までの各支店にあり、海外においてもバンコクと上海においては駐在員事務所が設置されています。
ポイント4:公庫への借り換えはNG!追加融資か新規融資はOK
ポイント1やポイント2で説明したとおり、「日本政策金融公庫」から銀行への借り換えは条件が悪くなり、銀行から「日本政策金融公庫」への借り換えは禁止されています。
このことからも、「日本政策金融公庫」についての借り換えはNGであるということになります。
もしも、民間の銀行で借り入れた事業融資があり、「日本政策金融公庫」を利用したいと考えているのならば、借り換えではなく、「新規融資・追加融資」を検討してみてはいかがでしょうか?「新規融資・追加融資」なら「日本政策金融公庫」での融資を受けられる可能性がでてきます。
ポイント5:注意!資金使途違反にならないために
「新規融資・追加融資」という選択なら、「日本政策金融公庫」の借り入れができるかもしれませんが、ここで注意したいのはその融資を使って銀行の借り入れを一括返済してしまうことです。
この場合、事実上の借り換えをしたこととなりますが、「日本政策金融公庫」側からみると、悪質な違反となります。
最悪の場合には、「日本政策金融公庫」から借り入れたお金を一括で返金するようにと言われる場合さえでてきます。
「新規融資・追加融資」をおこなったとしても、銀行ですでに借り入れていたお金は絶対に返さないようにしてください。「新規融資・追加融資」は、「日本政策金融公庫」で提出した使途に基づいた使い方をしなければならないのです。
はじめから銀行よりも「日本政策金融公庫」を利用
このような間違いを侵さないようにするためには、始めから銀行を使わず「日本政策金融公庫」の利用を考えるようにしてみてはいかがでしょうか?
「日本政策金融公庫」は最初の1回で終わりというわけではありません。
その後の追加融資も行うことができます。
最初に借り入れた融資をきちんと返済をし、しっかりとした経営を行い事業計画通りに利益をあげているのならば「日本政策金融公庫」に認められて、追加融資も受けられるようになるのです。
信用保証協会の借換保証制度
「日本政策金融公庫」での借り換えは難しいということがわかってきましたが、他の借り換えをご希望でしたら、信用保証協会が借換保証制度というものを提供しています。
借換保証制度には、事業計画書が必要ととなり、保証期間が原則として10年となっています。
経営の安定に支障を生じている中小企業などの条件がありますが、緊急保証の借り換え手段として、考えておくといいかもしれません。
また、「日本政策金融公庫」での返済が難しくなってきた場合にも、借換保証制度の利用を検討してみるとよいでしょう。
まとめ
「日本政策金融公庫」の借り換えについて、詳しくご紹介いたしました。
結論として、銀行から「日本政策金融公庫」への借り換えは禁止されており、「日本政策金融公庫」から銀行への借り換えは条件が悪くなってしまうので、双方の借り換えは無理だということになります。
唯一、「日本政策金融公庫」で借り入れをしていて特定の理由により資金繰りが悪化している場合にのみ、公庫融資借換特例制度での借り換えが可能となっています。
つまり、「日本政策金融公庫」での借り換えはかなり限定されると考えて間違いないでしょう。
上記で説明したとおり公庫融資借換特例制度の条件があてはまれば、借り換えることができますので、条件を満たしているかを調べてみてください。