NTTドコモ ベンチャーズ vc

NTTドコモベンチャーズ(VC)の特徴や投資実績など5項目を解説

ベンチャーキャピタル

ベンチャー企業やスタートアップ企業に出資を行うベンチャーキャピタルは企業にとって重要な資金調達先であり、ベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けることが出来るかどうかということが事業の未来を大きく左右することになります。実際、ベンチャーキャピタルから出資を受けることが出来ず、資金ショートを起こしてしまい廃業してしまうベンチャー企業も少なくないのです。

そんなベンチャーキャピタルも会社によって目的が異なります。「キャピタルゲインを得ること」を目的として投資をしているベンチャーキャピタルとは違い、事業会社が「自社との事業シナジー効果を得ること」を目的として投資を行うのがコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)です。

この記事でご紹介するNTTドコモ・ベンチャーズもそんなコーポレートベンチャーキャピタルの一つです。NTTドコモ・ベンチャーズという会社について、特徴、投資先企業、投資実績、投資額などを解説していきますので、ベンチャーキャピタルから出資を受けたいと考えている方は是非参考にしてみてください。

NTTドコモ・ベンチャーズについて

NTTドコモ ベンチャーズ vc

NTTドコモ・ベンチャーズはその名の通り、NTTドコモの100%子会社であるベンチャーキャピタルで、2008年に設立されました。元々はNTTインベストメント・パートナーズとして、ベンチャー企業への投資を専門に行う会社でしたが、2013年に改称し今に至ります。

2017年1月にはアメリカ・シリコンバレーにも拠点を開設し、海外の企業に向けても積極的な投資を行っています。

会社名 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ
設立 2008年2月20日
資本金 5,000万円
株主 株式会社NTTドコモ 100%
所在地 〒107-6031
東京都港区赤坂一丁目12番32号 アーク森ビル31階
Webサイト https://www.nttdocomo-v.com/

NTTドコモ・ベンチャーズが行っている事業は主にこの2つの事業が中心です。

  • ファンド
  • ドコモ・イノベーションビレッジ

事業内容1:ファンド

NTTドコモ・ベンチャーズは総額100億円という巨大ファンドを立ち上げ、運用を開始。現在では3つのファンドを組成し、運用を行っています。

通常、ベンチャーキャピタルでは複数の投資家から出資を募り、集めた資金でベンチャー企業への出資を行います。しかしながらNTTドコモ・ベンチャーズではNTTグループのNTT、NTTドコモ、NTTファイナンスという3社から全ての資金を調達しているという特徴があります。巨大な企業であるNTTグループだからこそ出来る資金調達方法です。

事業内容2:ドコモ・イノベーションビレッジ

2013年には「ドコモ・イノベーションビレッジ」を開設。これはベンチャー企業を起業する起業家を育成する学校のようなもので、新たなベンチャー起業の発掘、ベンチャー企業同士の交流に力を入れています。

シードステージの企業向けに経営サポートなども行っているため、経験の無い起業家や経営者もNTTドコモが持つ経験やノウハウを勉強しながら自社の事業に活かすことが出来ます。

NTTドコモ・ベンチャーズでは特徴的な4つの事業を行っています。

  • Villageシード・アクセラレーション
  • Villageアライアンス
  • Villageコミュニティ
  • Villageソーシャル・アントレプレナー

Villageシード・アクセラレーション

ドコモ・イノベーションビレッジの代名詞的な事業で、専門家や起業経験者によるアドバイスやドコモからの開発サポートなどを受けることが出来ます。それによって事業の立ち上げ、拡大を加速していくというもので、最後には事業発表会が開催され、そこで投資家にプレゼンを行うことが出来ます。

募集は現在停止しており、1期から3期までの開催で16社が卒業。2年後も14社が会社を存続させており、廃業してしまうシードステージ企業が多い中で90%近くが事業を続けているというのは非常に高い割合です。

Villageアライアンス

NTTドコモグループ提供のサービスを対象範囲として、一緒に事業を推進していく、一緒に実現していくということをテーマにベンチャー企業を募集し、アライアンスを組むというものです。

募集テーマも多く、ベンチャー企業の得意な部分を発揮する事ができる場所と言えるでしょう。大企業と手を組むことが出来るというのは企業にとっても、経験的にも実りあるものになるはずです。

Villageコミュニティ

基本的に全ての人が参加することが出来る事業で、定期的に開催される経営関連のセミナーに無料で参加することが出来ます。ロボットと携帯電話の可能性について取り上げるセミナーやワインビジネスのセミナーなど、様々なセミナー・イベントが開催されています。興味があるという人、勉強したいなと感がている人、人脈を作るために様々な場所に足を運びたいという人は一度参加してみるといいのではないでしょうか。

ドコモ・イノベーションビレッジの公式サイトイベントページから申し込み可能ですが、イベントによっては人数制限がある場合もあるため、こまめにイベントページをチェックし、気になるイベントを見つけたらすぐに参加申込をするといいでしょう。

Villageソーシャル・アントレプレナー

2016年から開始された事業で、インターネット・モバイルを活用して、社会課題に取り組んでいく若手社会起業家をサポートするというものです。先輩起業家や専門家のアドバイス、事業創出に必要な基礎知識、事業モデルをブラッシュアップするための実践的支援など、様々なサポートで事業立ち上げや事業の早期拡大を支援してもらうことが可能です。

ドコモ・ベンチャーズと社会事業塾イニシアティブが組んで行われるプログラムで、利益を求めるのではなく社会課題の解決のために事業を行うという部分が通常のベンチャー投資とは異なる部分です。「お客様へサービス提供の経験がある」「中心メンバーが35歳以下」が参加条件となり、選考に通過すればプレゼンの機会だけでなく合宿研修を行うことも出来ます。経営力をアップさせたいという起業家や、社会に貢献出来る事業について考えているという起業家はこのプログラムに参加してみるといいかもしれません。

NTTドコモ・ベンチャーズの特徴

NTTドコモ ベンチャーズ vc

NTTドコモ・ベンチャーズの特徴というと、複数投資家から資金を募っているのではなくNTTグループ3社からの資金でファンドを運用していることが一つ。

そして上記でもご紹介したドコモ・イノベーションビレッジも大きな特徴だと言えるでしょう。NTTドコモという巨大な企業が親会社であれば、ミドルステージ以降のベンチャー企業から協業できそうな企業を選ぶことも出来ずはずです。しかしながらそれをせず、ドコモ・イノベーションビレッジという学校を作り将来有望なベンチャー企業の発掘、起業家の育成に努めています。このように成長ステージ段階の中でも一番最初の段階であるシードステージの企業の育成に力を入れているというのもNTTドコモ・ベンチャーズの特徴です。

NTTドコモ・ベンチャーズの投資方針

NTTドコモ ベンチャーズ vc

NTTドコモ・ベンチャーズは非常に明確な投資方針を持っています。それが、「NTTグループとの事業シナジー効果を生み出すことが出来るのか」ということです。これを主眼を置いて選考されているということもNTTドコモ・ベンチャーズの特徴と言えるかもしれません。

NTTドコモ・ベンチャーズは数々のベンチャー企業へ投資を行ったり、ドコモ・イノベーションビレッジでシードステージの企業や起業家の育成に力を入れています。しかしそれはIPOやM&Aというイグジットによってキャピタルゲインを得ることが大きな目的ではなく、シナジーを生み出すことが出来るのかということが最大の目標です。また、ドコモ・イノベーションビレッジの運営にはNTTグループの社員が参加しているため、新しいインスピレーションを与えることにもつながります。

つまり、NTTドコモ・ベンチャーズはNTTグループにとってただの投資事業ではなく、事業シナジー効果を生み出すことを目的として設立されたベンチャーキャピタルだということがわかります。

NTTドコモ・ベンチャーズ投資対象となる業種は以下のようになっています。

  • Fintech
  • コミュニケーション
  • セキュリティ
  • メディアコンテンツ
  • BigData
  • クラウド
  • IoT・ドローン
  • マーケティング・広告
  • メディカル・ヘルスケア
  • ロボティクス
  • 電力・電池
  • AI
  • Enterprise
  • 教育

シードステージの企業育成に力を入れているNTTドコモ・ベンチャーズですが、基本的に投資対象となる成長ステージは全てのステージを対象としています。

また、日本の他にアメリカ、ヨーロッパ、イスラエル、東南アジアでもグローバルでの投資活動を行っており、いずれは海外進出したいと考えている経営者、起業家ならばNTTドコモ・ベンチャーズからの出資を検討したいところでしょう。

NTTドコモ・ベンチャーズの投資実績・投資先

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NTTドコモ・ベンチャーズは2008年から現在に至るまで日本や海外の数々の企業に出資を行っており、gumi(スマホゲーム開発)、Fringe81(広告技術開発)、SHIFT(ソフトウェアテストサービス)、サイジニア(レコメンドエンジン)などの9社がIPOを果たしています。

2019年は以下のような企業へ出資を行っています。

  • そらいろ(WEB接客ソリューション)
  • Matchmove(モバイルウォレットのプラットフォーム)
  • ラブグラフ(出張フォト撮影サービス)
  • Hatch Entertainment(モバイル向けゲームストリーミングサービス)
  • W.S.C. Sports(AIハイライト動画プラットフォーム)
  • Trifacta(データプレパレーションの省力化)
  • Wasabi Technologies(オブジェクトストレージサービス)
  • RAFAY SYSTEMS(ダイナミックアプリケーションの最適展開技術)
  • METRON(産業施設向けエネルギー最適化ソリューション)
  • VDOO(IoTデバイス向けセキュリティソリューションの提供)
  • RADAR(RFIDセンサーとコンピュータビジョン)
  • Shoof Technologies(産業用IoT向けの位置情報管理ソリューション)
  • Realeyes(視聴者の表情から感情を測定)
  • 株式会社aiQ(ビッグデータ解析による次世代の投資情報の提供)
  • KPISOFT(企業向けパフォーマンス管理ソリューション)

NTTドコモ・ベンチャーズの投資額

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数千万円から2億円ほどがNTTドコモ・ベンチャーズの平均的な投資額となっているようです。投資額はベンチャー企業の成長ステージや戦略的な意味合いによって決定されます。

今までNTTドコモ・ベンチャーズが出資したことがある企業の中で例を挙げてみると、株式会社ミドクラに4000万円の出資、株式会社グッドサイクルシステムに1億2000万円ほどの出資を行っています。

まとめ

NTTグループという日本の大企業の100%子会社でありながらミドルステージやレイターステージだけではなく、シードステージのベンチャー企業への投資や育成に力を入れているのがNTTドコモ・ベンチャーズの特徴です。

NTTドコモ・ベンチャーズから出資を受けることは資金面以上にNTTグループによるサポートを受けられるという大きなメリットがあります。NTTドコモ・ベンチャーズはNTTグループとのシナジー効果に重きをおいているため、自社がいかにNTTグループに付加価値を与えることが出来るかということをアピールするとより効果的でしょう。

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