中小企業者と農林漁業者が、それぞれの経営資源を活かして有機的な連携を行えば、経営の向上や改善につながり事業活動を促進してくれます。
もしもその反対に、収穫した農産物や鮮魚などが十分に生かされないのなら、事業の損失となってしまうでしょう。
農商工の連携は両者にとってメリットをもたらしますが、農商工の連携は容易ではなく、資金の調達や労力が必要となるのは確かなことです。
そこで、こちらの記事では、農商工連携の資金調達に活かすことができる補助金や支援策を解説していきます。
国の支援策となっている「農商工連携事業」を活用して、新たな商品やサービスの開発につなげてください。
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農商工等と中小企業が連携するメリット
地域経済の要とも言える農林水産業は、高齢化や耕作放棄などが進んでいますが、その一方で海外に進出し成功しているケースも見られています。
また、国内企業の99%ともなる中小企業は、都心の市場ニーズの把握や販路確保が難しい一方で、高い技術や高品質製品によって日本経済の原動力となっています。
農林漁業の可能性を最大限に引き出すためには、中小企業の持っている高い技術やノウハウの活用が効果的です。
それぞれの強みを発揮した農商工等連携を有効的に果たすことができれば、新たなビジネスチャンスの拡大、新商品開発、新事業展開につながっていくでしょう。
このような農商工の連携を促進するために、「中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律(農商工等連携促進法)」が制定されています。
農商工連携事業の紹介
農商工連携事業は、農林漁業者と商工業者が通常行っている商取引関係を超え協力し合い、お互いの強みを活かした新しい商品やサービスの開発、生産を支援している事業です。
◆中小企業の経営の向上及び農林漁業経営の改善を図るため、中小企業者と農林漁業者が「有機的に連携」し、お互いの「経営資源」を持ち寄り、新商品・新サービスの開発、生産及び需要の開拓を目指す計画を法律に基づき認定。認定企業に対し総合的に支援を実施する事業
・「有機的な連携」とは、両者いずれもが主体的に事業に参画し、当該連携事業に係る費用、利益及び損失を分担、分配する形で当事業を遂行していくための事業体制が担保されていることをさしています。
・「経営資源」とは、設備、技術、個人の有する知識及び技能その他ビジネスノウハウ、知的財産権等を含む事業活動に活用される資源一般をさしています。
◆申請対象者
・農商工等連携促進法第二条に該当する「中小企業者」と「農林業業者」の連携事業
◆計画期間
・5年以内
農商工連携事業の支援を受けるためには、中小企業者と農林漁業者が共同で事業計画作成し、経営産業局長の認定を受けなければなりません。
受けられる支援
農商工連携事業に認定となった後に、受けられる支援は下記の通りとなります。
◆国内・海外販路開拓強化支援事業費補助金
◆日本政策金融公庫による低金利融資(新事業活動促進資金)
◆農業改良資金融通法、林業・木材産業改善資金助成法、 沿岸漁業改善資金助成法の特例
◆債務保障の拡大(中小企業信用保険法の特例)
◆食品流通構造の改善促進法の特例
◆海外展開に伴う資金調達支援(スタンドバイ・クレジット制度)
◆海外展開に伴う資金調達支援(海外事業資金貸付保険)
次に、受けられる支援を詳しくみていきましょう。
国内・海外販路開拓強化支援事業補助金
国内・海外販路開拓強化支援事業補助金は、中小企業者・小規模事業者と農林漁業者が有機的に連携した場合に利用できる補助金です。
それぞれの経営資源を有効に活用しようとする事業に対して、必要となる経費の一部を補助 しています。
中小企業の経営の向上及び農林漁業経営の改善を図るとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としている事業です。
申請対象者
国内・海外販路開拓強化支援事業補助金の申請対象となる者は下記の通りとなります。
◆農商工等連携事業計画の認定を受けた事業者であること
補助対象経費
国内・海外販路開拓強化支援事業補助金の補助対象となる経費は、下記の通りとなります。
①事業費(謝金、旅費、借損料、産業財産権取得費、雑役務費、連携構築費、委託費)
②販路開拓費(展示会等出展費、マーケティング調査費、広報費、委託費)
③試作・開発費(原材料費、機械装置等費、試作実験費、委託費)
補助額
国内・海外販路開拓強化支援事業補助金の補助上限額と補助率は下記の通りとなります。
◆補助上限額 500万円
・ただし、機械化・IT化事業は1回限り1,000万円
◆補 助 率 1/2以内
・ただし、機械化・IT化事業は1回限り2/3以内
日本政策金融公庫による低金利融資(新事業活動促進資金)
日本政策金融公庫では、法律の認定を受けた中小企業等が、認定計画に従って農商工等連携事業を行うために必要となる資金に対して低利で融資を行っています。
中小企業事業と国民生活事業のそれぞれが下記の貸付を実施しています。
中小企業事業
中小企業事業が行っている融資は下記の通りとなります。
◆貸付限度額
・直接貸付 7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円)
・代理貸付 1億2,000万円
◆貸付利率
・2億7,000万円まで(土地に係る資金を除く):特別利率②
・2億7,000万円超:基準利率
◆貸付期間
・設備資金:20年以内(うち措置2年以内)
・運転資金:7年以内(うち措置2年以内)
国民生活事業
国民生活事業が行っている融資は下記の通りとなります。
◆貸付限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
◆貸付利率 特利B
◆貸付期間
・設備資金:20年以内(うち措置2年以内)
・運転資金:7年以内(うち措置2年以内)
農業改良資金融通法、林業・木材産業改善資金助成法、 沿岸漁業改善資金助成法の特例
農商工の認定を受けた中業企業者が、農林漁業者が行う農業改良措置等を支援する場合に利用できる特例です。
農業改良資金等の融資制度を対象とし、計画の認定を受けた中小企業又は農林漁業者が当該計画に基づいて行う事業に必要な農業改良資金等の償還期間及び備置期間が延長されます。
◆償還期間:10年→12年
◆措置期間:3年→5年
債務保障の拡大(中小企業信用保険法の特例)
債務保障の拡大(中小企業信用保険法の特例)は、法律の認定を受けた中小企業等が、認定計画に従って農商工等連携事業を行うために必要な資金について、 下記の特例が設けられています。
◆普通保険等の保険限度額の別枠化
・保険限度額:普通保険、無担保保険、特別小口保険、売掛金債権担保保険についてそれぞ
れ同限度額の別枠を設ける
・普通保険の塡補率:70%から80%に引き上げ
・保険料率:政令で定める保険料率を3%以内から2%以内に引き下げ
◆新事業開拓保険の限度額引き上げ
・付保険限度額
・新事業開拓保険(企業) 2億円 → 4億円
・新事業開拓保険(組合) 4億円 → 6億円
◆海外投資関係保険の限度額引き上げ
・付保険限度額
・海外投資関係保険(企業) 2億円 → 4億円
・海外投資関係保険(組合) 4億円 → 6億円
食品流通構造の改善促進法の特例
食品流通構造の改善促進法の特例は、法律の認定を受けた食品の製造等の事業を行う中小企業者が利用できる特例です。
食品流通構造改善促進 機構が認定事業に必要な資金の借入れに係る下記の債務の保証等を行っています。
①認定事業に必要な資金の借入れに係る債務の保証
②認定事業への参加
③委託による認定事業に関する施設の整備
④認定事業に必要な資金のあっせん
⑤前項目に付随する業務
海外展開に伴う資金調達支援(スタンドバイ・クレジット制度)
海外展開に伴う資金調達支援(スタンドバイ・クレジット制度)は、外国関係法人等が現地の金融機関から資金調達を行う際に利用できる支援です。
認定事業者(国内親会社)からの依頼により、公庫と認定事業者の間で「信用状取引約定書」を締結し、契約に基づき、公庫から現地金融機関へ信用状が発行され、債務保証を行うことにより資金調達の円滑化を図っています。
上記の「信用状取引約定書」とは、発行依頼人(国内親会社)、連帯保証人、担保提供者及び公庫の間で締結する約定書で、発行依頼人の保証料支払いや公庫への弁済義務等を規定したものとなります。
◆対象者
・農商工等連携事業認定を受けた事業計画に従って 海外において事業を行う中小企業者等
◆信用状の補償限度額
・一保証先につき4億5千万円以下
◆信用状の有効期間
・1年以上6年以内
◆補償料率
・日本政策金融公庫にて定める料率
◆海外での借入れ条件
・融資金額及び通貨:信用状の補償金額の範囲内。現地流通通貨建て。
・資金使途:認定事業を行うための設備資金又は長期運転資金
・償還期限:1年以上5年以内
海外展開に伴う資金調達支援(海外事業資金貸付保険)
海外展開に伴う資金調達支援(海外事業資金貸付保険)は、日本貿易保険が、認定事業者からの保険引受相談に基づき、外国の銀行等が行う外国関係法人等(海外現地法人)に対する融資に利用できる支援です。
地銀等の保証に加え、海外資金貸付保険を付保することで信用補完を図り、資金調達の円滑化を目的としています。
外国関係法人等の債務不履行時には、外国の銀行等、地銀等及び日本貿易保険の間で損失を応分負担します。
◆対象者
・農商工等連携事業認定を受けた事業計画に従って 海外において事業を行う中小企業者等
◆補償料率
・ 日本貿易保険において定める料率
◆補償の対象となる貸付債権の要件
・資金使途:短期の設備資金又は運転資金
◆償還期限
・1年未満
中小機構による支援策
中小機構では、農商工等連携にチャレンジする際、事業の構想段階から事業化まで一貫した支援を行っています。
中小機構の全国10か所の地域本部・事務所にて、無料で相談を受け付けています。
また、相談内容に応じて、専門家が、企業の新商品・新サービスの開発に関する事業計画策定のノウハウ提供を行い、国の認定取得を目指します。
なお、計画認定後は、商品開発等のアドバイスを行うほか、展示会や商談会の開催など、販路開拓の支援も行っています。
支援対象者
中小機構による支援策の対象者は、下記に取り組む中小企業者と農林漁業者(共同)となります。
◆新商品の開発、生産又は需要の開拓
◆新サービスの開発、提供又は需要の開拓
なお、事業計画について国の認定を受けるための要件は下記のようになっています。
・農林漁業者と中小企業者が有機的に連携して実施する事業であること
・農林漁業者及び中小企業者のそれぞれの経営資源を有効に活用したものであること
・新商品・新サービスの開発、生産等若しくは需要の開拓を行うものであること
・農林漁業者の経営の改善かつ中小企業者の経営の向上が実現すること
支援にかかる費用
中小機構での相談、事業計画のブラッシュアップ、計画認定後のフォローアップは無料で利用することができます。
なお、展示会や商談会などの販路開拓支援については、企画に応じた費用が発生しますので、お気をつけください。
まとめ
農林漁業者と商工業者のそれぞれの強みを活かせる、農商工連携事業の補助金や支援について解説してきました。
農商工連携事業では国内・海外販路開拓強化支援事業補助金を始めとして、日本政策金融公庫の低金利融資、債務保証の拡大、海外展開に伴う資金調達支援、さらには有利な特例措置が設けられています。
農林漁業者と商工業者が通常行っている商取引関係を超え協力し合い、お互いの強みを活かした新しい商品やサービスの開発を行えば、新たなビジネスチャンス生まれる可能性が高まります。
農林漁業者と商工業者の連携を検討している方は、ぜひ農商工連携事業の補助金や支援を資金調達のひとつとして役立ててください。