補助金 農業

農業経営者が事業拡大の際に使える「農業補助金」についての3つの要点を解説

補助金

現在の日本は、少子高齢化によって農業界では深刻な人手不足となっています。
少子高齢化により若い世代の人材が集まらず、既存の農業従事者の方々の高齢化が深刻化しており、後継者を得ることができずに引退されていく方がとても多いようです。

仮に、若い人材を確保できたとしても、新人の育成には知識や技術を身に着けてもらうための研修が必ず必要になるため、どうしてもお金の問題に直面してしまいます。

その他にも、「土地の整備を進め、より質のいい作物を育てたい」「新しい機械を導入して農作業の効率化を図りたい」「若い次の世代の人に自身の農業を託したい」など、農業を営む方々には様々な悩みがあるはずです。

しかし、農業用機械を導入したくても、どれも高額で簡単に導入できる物ではありませんし、人材育成にも費用がかかってしまいます。

農業用機械を導入できないということは、農作業を行う際には非効率なやり方となってしまうため、やるべき仕事の量が増えてしまい、過酷な毎日となってしまいます。

このような厳しい労働環境があるという状態では、若い世代の人に農業界に関心を持ってもらうことは難しくなってしまうと思います。

ですが、こういった状況を改善し、日本の農業を途絶えさせないためにも、国が農業を営む方々を支援するために、数々の補助金や助成金といった支援制度を展開しています。
この補助金や助成金をうまく活用すれば、農業を営む方々の悩みも解決することができるかもしれません。

悩みを解決し、日本の農業界をより良くするためにも、まずは農業に関する補助金や助成金などの支援制度にはどういった制度があるのか、またその仕組み等を詳しく知る必要があります。

この記事では、農業を営む方々に向けて「農業補助金」に関する情報や申請方法、注意点などを詳しく解説していきたいと思います。

農業補助金について解説

補助金 農業

農業補助金とは、農業を営む個人や法人が事業拡大を目的として設備投資などを行う際の費用の一部を国が補助金として支援してくれる制度です。

補助金や助成金は、基本的に「返済不要のお金」になりますので、更なる事業展開を行いたいが、手持ちの資金だけでは難しいといった事業者の方にとっては、非常にありがたい資金調達法だといえるでしょう。

農業補助金には様々な種類があり、その種類によって補助の用途が定められており、農業機械を導入する設備投資や、新人育成などの人件費の助成、農地の造成など、様々な対象があります。
ですから、農業補助金を探す際にはまず、どの補助金制度が自分に最も適しているのか、ということを把握する必要があります。

そういった情報を探したい場合に便利なのが「農林水産省の逆引き辞典」です。

農林水産省 逆引き辞典

インターネットで探すよりも直接やりとりしたい方は、地域の自治体に補助金に関する担当窓口がありますので、そちらで相談されることをおすすめ致します。

農業補助金の主な2種類の例を紹介

補助金 農業

農業補助金は補助の用途により、様々な種類の補助金があります。
その中でも、より注目度の高い2種類の補助金制度を農林水産省の逆引き辞典からピックアップしましたので、是非参考にして頂けたらと思います。

①農の雇用事業
農業法人等が新規就農者である雇用者等に対して実施する研修を支援します。
対象者や研修の目的によって、3つのタイプがあります。

(ア)雇用就農者育成・独立支援タイプ
法人が新規就業者に対して実施する実践研修を支援(助成金120万円、支援期間2年間)

新規就農者の雇用就農及び研修後の独立就農を促進するため、農業法人等が就農希望者(独立希望者を含む。)を雇用して実施する農業技術や経営ノウハウの習得を図る実践的な研修等を支援します。

・助成金 年間120万円
・支援機関 最大2年間
・主な要件 (農業法人等)
正社員として期間の定めのない雇用契約をすること。(独立希望者を除く)
研修指導者は、当該農業法人等の役員又は従業員であり、5年以上の農業経験を有するもの等
雇用就農者を農畜産物の生産や加工販売等の業務に従事させ、就農に必要な技術、経営力等を習得させるための実践的な研修を行えること。
労働保険(雇用保険、労災保険)に加入すること。
過去5年間に本事業の対象となった雇用就農者が2名以上の場合、農業への定着率が2分の1以上であること。
農業の働き方改革実行計画を作成し、公表等の方法により従業員と共有すること。
各年度の新規採択者数について、従業員数に応じた上限数以下であること。(独立希望者を除く)

(雇用就農者)
50歳未満のものであること。
農業就業経験が原則5年以内であり、研修終了後も就農を継続する強い意欲を有する者であること。(研修終了後に独立を希望する者も可とする)
正社員として研修開始時点で4ヶ月以上継続して雇用されていること。
農業法人等の代表者の3親等以内でないこと。

(イ)新法人設立支援タイプ
新規就業者に対する新たな法人設立に向けた研修を支援(助成金120万円、支援期間4年間(3年目以降60万円))

地域の担い手となる法人経営体を増やしていくため、農業法人又は経営の移譲を希望する個人経営者が就農希望者を一定期間雇用し、新たな農業法人を設立するために実施する、農業技術・経営ノウハウを習得させるための研修に対して支援します。

・助成金 年間最大120万円(3年目以降は年間最大60万円)
・支援期間 最大4年間
・主な要件 (農業法人等)
従業員として雇用契約をすること。
研修生を農畜産物の生産や加工販売等の業務に従事させ、就農・法人設立に必要な技術、経営力等を習得させるための実践的な研修を行えること。
労働保険、社会保険に加入すること。
過去5年間に本事業の対象となった雇用就農者が2名以上の場合、農業への定着率が2分の1以上であること。

(特に経営継承に取り組む場合)
今後5年以内に経営を中止する意向があること。
農業経営を経営継承を受けることを希望とする第三者に移譲する意志があること。
研修開始時点で法人でないこと。

(研修生)
農業就業経験が原則5年以内であり、研修終了後も就農を継続する強い意欲を有する者であること。
正社員として研修開始時点で4ヶ月以上継続して雇用されていること。ただし、経営継承の場合はこの限りではない。

(ウ)次世代経営者育成タイプ
法人による従業員等の国内・海外派遣研修を支援(助成金120万円、支援期間2年間)

新たな農業の担い手として果たす役割がより重要となってくる農業法人等において、その職員等を次世代の経営者として育成していくため、先進的な農業法人や異業種の法人での現場実践研修(OJT研修)の取組を支援します。平成29年度より海外の農業法人・異業種の法人における現場実践研修(OJT研修)も支援対象となりました。

・助成金 月最大10万円
・支援期間 最短3ケ月~最長2年間
・主な要件 (派遣元法人)
本事業での研修終了後1年以内に、研修生を役員又は研修成果を活かした部門責任者等経営の中核を担う役職に登用することを確約していること。

(受入法人)
次世代の経営者になるたに必要な経営力等を習得させるために実践的な研修を行えること。

(派遣職員)
派遣元農業法人等の代表者以外の者又は家族経営の後継者で既に就農し経営に参画していること。
原則55歳未満であること。
研修終了後、派遣元法人等において、経営の中核を担う強い意欲を有していること。

②担い手確保・経営強化支援事業
先進的な農業経営の確立に意欲的な地域の担い手に対し、必要な農業用機械・施設の導入を支援。
・公募時期 令和2年1月上旬~2月上旬
・補助率 融資残額(事業費の2分の1以内) 
・対象者 人・農地プランに位置付けられた中心経営体であり、かつ、認定事業者、認定就業者若しくは集落営農組織であること、又は、農地中間管理機構から貸借権等の設定等を受けている者。

補助金申請時の5つのステップを解説

補助金 農業

①補助金を知る
まずはインターネット等で自分の事業に適した情報を収集するところから始めましょう。
農業補助金の情報は「農林水産省の逆引き辞典」に詳しく記されていますので、そちらをチェックしてみましょう。

各地域の自治体に担当の窓口がありますので、担当の方に直接詳しい話を聞くというのもいい方法かと思います。

②申請する
補助金を受給するためには、定められた満たすべき要件をきちんと満たしている必要がありますので、事業や対象補助を確認の上、募集要項・申請書をダウンロードし、必要な内容を記入して事務局に提出しましょう。

③採択通知
必要書類を事務局に提出すると、その書類を元に審査が行われます。
審査の選定結果を受け取り、採択されることが決まれば、交付申請書を記入して事務局に提出します。

④事業の実施
交付決定された事業内容で実際に事業を行い、事務局のチェック(事業の進捗状況等を確認)
を受けます。

事前に提出した事業計画を申請者が途中で勝手な変更を加えることはできません。
また、補助金の対象となる経費については、領収書や証拠書類をすべて保管しておく必要がありますので、忘れないようにしましょう。

⑤補助金の交付
実施した事業内容やかかった経費を報告します。
交付決定した事業内容に沿ってきちんと事業が実施されたと確認されると補助金額が確定し、補助金を受け取ることができます。

農業補助金の3つの注意点を解説

補助金 農業

①農業機械を新規導入する際、必ずしもメーカー小売り価格を信用してはならない。

過去に農業機械を購入する際、支払総額の半分を補助金で支援するという補助金制度を利用した方が、実質100万円の製品をメーカーに200万円として提示されたことに気づかず、本来であれば、補助金受給者の方の負担額は50万円で補助金50万円となるところを、負担額100万円の補助金額が100万円となってしまうといったケースがありました。

このため、補助金を受給することができても、農業機械の料金が割高に感じてしまい、補助金を受けるメリットがあるのかわからない状況になられた方もいます。

ですので、農業機械を新規導入する際は、メーカーの小売り価格で購入を検討する前に、まず、インターネットを利用して新古品等を調べ、購入するという方法も検討してみるようにしましょう。

最終的に補助金受給者が必要以上に負担額を支払わなくてもいいように、農業機械を購入検討する際は十分に注意するようにしましょう。

②スケジュールや資金繰り計画は入念に行う。
補助金は交付決定の手続き以後でなければ、対象となる経費の発注を行うことが出来ません。
交付決定以前に発注を行った経費に関しては補助対象として認められないので注意が必要です。

補助金はかかった費用を補助・支援する、ということが目的のため、後払いになりますので、資金がショートしないようにするためにも、十分に注意が必要です。

③必ず対象経費を確認する。
各補助金ごとに、補助の対象となる経費は細かく規定されています。
単純に費用項目だけで判断せずに、本当に自分が負担する経費が補助対象になるのか曖昧な状態にしておくのではなく、事務局に問い合わせを行うなどをして、必ず確認するようにしましょう。

まとめ

補助金 農業

農業補助金の種類は多岐に渡り、受給者自身がどのような補助対象になるのかによって、申請をする補助金の種類が変わります。
「農林水産省 逆引き辞典」を活用して、自分に合った補助金制度はどのような制度なのかを、まず始めに確認するようにしましょう。

農業補助金を申請しようと考えた時に、最初に起こすべき行動は「情報収集」です。
インターネットで農業補助金に関連するキーワードを入力して検索し、自分に合った必要な情報をできる限り集めましょう。

各地域の自治体には補助金等の担当窓口がありますので、そちらで相談するのもいい方法です。
その際に申請手順や申請時に必要な書類なども聞いておくといいでしょう。

補助金申請時に提出した事業計画などの書類を用いて審査が行われ、その審査に通れば補助金が交付されることが決定します。
ですが、この段階ですぐに補助金が支払われるわけではないという点には十分に注意が必要です。

補助金はかかった経費の補助・支援を目的とした制度であるため、後払いになります。
事業計画を立てる際には、この点に十分に注意を払い、実際に補助金が支払われるまでの間に、事業資金がショートしてしまわないように入念に資金計画を立てるようにしましょう。

そして、実際にかかった費用の金額を証明するためにも、領収書などの証拠書類は必ず保管しておくようにしましょう。

また、補助金交付が決定してから後に、導入する製品の発注等を行わなければ補助金の受給対象にはなりませんので、十分に注意が必要です。
事業計画を実施するタイミングなどもしっかりと勉強しておくことが必要です。

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