地域で農作物を生産している農業者にとって、天候不順や人手不足を補いながら国産品の需要を満たしていくことは、容易な事ではありません。
安定的な生産や供給を続けていくためには、拠点となる事業者が生産者と連携し、より多くの機能を発揮していく生産事業モデルの育成が大切となってくるでしょう。
農林水産省では、このような生産事業モデルの育成を実現するために「令和3年度強い農業・担い手づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)」を設けています。
供給調整機能を有する拠点事業者が、目標達成するための取組に対して支援を行っている事業となっていますので、ぜひご利用ください。
こちらの記事では、「令和3年度強い農業・担い手づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)」を分かりやすく解説していきます。
令和3年度強い農業・担い手づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)
令和3年度強い農業・担い手づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)は、農林水産省が行っている、拠点となる事業者が連携する生産者の作業支援など様々な機能を発揮しつつ、安定的な生産・供給を実現しようとする生産事業モデルの育成を支援している事業です。
地域農業者の減少や天候不順の多発等を克服しながら国産品への需要を満たす生産・供給主体の確保が急務であるため、拠点となる事業者が連携する生産者の作業支援など様々な機能が必要となってきます。
令和3年度強い農業・担い手づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)は、供給調整機能を有する拠点事業者を中心とした「協働事業計画」に参加する主体が実施する計画の目標達成に必要な取組に対して、交付金を支給しています。
◆「協働事業計画」とは?
農林水産省生産局長が別に定める「協働事業計画にかかる承認規程」(令和2年1月21日付け元生産1539号農林水産省生産局長通知)のことを言います。
応募の資格等
令和3年度強い農業・担い手づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)の応募資格は下記の通りとなります。
◆協働事業計画に位置付けられた拠点事業者とし、下記の①~③の機能を具備・強化する取組を行うものであって、都道府県、市町村、公社、農業者、農業者の組織する団体、特定農業団体、民間事業者等となります。
①生産安定・効率化機能
農業者が減少傾向にある中で、安定的な取扱量を確保するための生産拠点地域、面積の拡大、農業用機械・施設の合理的配置・利用、農作業の分業・受託体制の構築、生産安定化・単収向上等のための技術の導入・定着、労働力の融通・省力化、農業生産を支援するサービスの活用等を行うことにより、連携者の生産を安定化・効率化する機能。
②供給調整機能
気象的要因等による生産量や出荷時期の変動が大きくなる傾向にある中で、実需者に対する供給の安定性を向上させるための加工・貯蔵施設や生産量を予測・調整するためのシステムの運営等を行うことにより、その変動を吸収し、実需者への供給を調整する機能。
③実需者ニーズ対応機能
消費者のニーズが高度化する中で、実需者が求める農産物の安全・衛生、環境配慮、扱いやすい荷姿・配送頻度等のニーズを把握し、それらを踏まえて、連携者である生産者・産地全体での生産工程管理の実践の促進、加工適性、農産物の規格・容器・輸送システムの統一・簡素化等を行うことにより、実需者のニーズに的確に対応する機能。
推進事業と整備事業の2つの事業
令和3年度強い農業・担い手づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)の鋪対象となる事業は、推進事業と整備事業の2つの事業があります。
推進事業は、生産安定や効率化機能、救急調整機能、実需者ニーズ対応機能の具備や強化、農業機器等の導入やリース導入を支援している事業です。
整備事業は、育苗施設、乾燥調整施設、農産物処理加工施設、集出荷貯蔵施設などの整備を行っている事業となります。
次に、推進事業と整備事業の2つの事業について、詳しくご紹介していきます。
推進事業
令和3年度強い農業・担い手づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)の推進事業は、生産安定や効率化機能、救急調整機能、実需者ニーズ対応機能の具備や強化、農業機器等の導入やリース導入、さらに効果増進や検証事業を行っています。
補助対象となる取組に対して、必要となる経費の一部を補助しています。
補助対象事業
推進事業の補助対象となる取組内容は、下記の通りとなります。
【1.生産安定・効率化機能の具備・強化】
①労働力不足等に対応した労働力や農業機械の調整体制の確立
農作業・出荷作業の代行、農業機械の合理的配置・利用、労働力の融通、労力集中時期の労働力確保体制の確立に資する調査、就労者の研修・指導等の取組。
②生育予測システム等の導入
実需者等への安定的な供給体制の構築を図るため、気象データやほ場での生育状況調査等を活用した生育予測システム、出荷予測システムの導入等の取組。
③種子・種苗等の供給体制の整備
実需者の求めに対応した品種の種子・種苗の導入を円滑に推進するための生産管理システムの導入、生産技術講習会等の取組。
④新たな栽培技術等の導入・普及
低コスト・高品質化生産技術や農地・農作物等のデータの分析等の新たな栽培技術等の導入・普及、収穫機等に適合した新たな栽培方式の導入、機械の改良等の取組。
⑤担い手不在地域への参入・農地利用集積拡大体制の強化
人・農地プランの実質化(人・農地プランの具体的な進め方について(令和元年6月26日付け元経営第494号経営局長通知)の2の(1)、同3、同4及び同5の(1)に規定する取組)に伴い、集落内の話し合いの結果明らかになった課題への対応のための集落外部からの新たな担い手又は集落内の既存の担い手による農地等の追加的な引き受けに必要な取組。
【2.供給調整機能の具備・強化】
①貯蔵技術等を活用した安定出荷体制の確立
品質を維持したままでの実需者等への安定供給や出荷量の平準化等を図るための予冷・貯蔵庫の導入及び冷凍等保存性の高い形態への加工等安定出荷体制の確立に必要な取組。
②集出荷調整機能の高度化
安定的かつ効率的な流通体制の構築を図るための広域単位でのストックポイント活用等による集出荷調整機能の高度化に必要な取組。
【3.実需者ニーズ対応機能の具備・強化】
①GAP・トレーサビリティ手法の導入
生産から流通までの安全・安心の確保のためのGAPやトレーサビリティの導入のための検討会、システム導入、マニュアルの作成等の取組。
②新品種等現地適応性試験の実施
実需者が求める加工等適性が高い新品種、新技術等の導入の取組。
③導入品種等の加工等適性試験
導入対象品種について、実需者等の要望する加工適性や消費段階での品質を評価するための検討会、加工適性試験等の取組。
④品質管理、物流の効率化
実需者の求める規格・荷姿や配送頻度等に応えるため、品質管理・検査体制や共同集荷・配送システム、物流効率化に必要な資材等の導入等の取組。
⑤高品質・低コスト流通システムの構築の取組
産地からの出荷形態、流通経路、現在の販売形態、収穫から消費に至る一貫した温湿度管理等の全体を網羅した流通システムの導入。
⑥輸出対応型産地の育成
輸出先国・地域のニーズに合わせた新品種、栽培技術や品質保持技術等の導入、残留農薬基準や検疫条件等の輸出先国・地域の規制に対応するために必要な技術の導入等の取組。
【4. 農業機械等の導入及びリース導入】
①から③までの取組を行うにあたり、安定的な生産・供給対応できる拠点事業者等の育成又は連携する産地の体制強化に必要な農業用機械、農業用ハウス、CAコンテナ、機器等のリース等による導入。
【5.効果増進・検証事業】
①から③までの取組を行うにあたり、取組効果の増進・検証に必要な以下の取組。
なお、事業実施後には効果増進・検証シートを提出するものとする。
①計画策定及び効果検証の取組
②技術等の実証の取組
【6.その他事業の目的を達成するために必要な取組であって、生産局長が認めるもの】
成果目標
推進事業では、下記のいずれかの成果目標を一つを設定する必要があります。
①販売額又は所得額の 10 %以上の増加
②契約栽培の割合を 10 %以上増加させ、かつ、契約栽培の割合全体を 50 %以上とすること
③需要減が見込まれる品目・品種からの需要が見込まれる品目・品種への転換率を80 %以上とすること
④労働生産性の 10 %以上の向上
⑤生産から流通・消費段階に至るまでの廃棄ロス率の5%以上の削減
補助対象経費
推進事業の補助対象となる経費は、本事業の対象として明確に区分でき、かつ、証拠書類によってその金額が確認できる、下記の経費となります。
◆備品費、賃金等、給与、報酬、職員手当等、事業費(会場借料、通信・運搬費、借上費、印刷製本費、資料購入費、原材料費、消耗品費)、旅費(委員旅費、調査等旅費、費用弁償)、謝金、委託費、役務費、雑役務費(手数料、租税公課)
なお、上記の【5.効果増進・検証事業】の取組に対しての補助対象経費は、下記の通りとなります。
①計画の策定及び効果検証に要する経費
下記の表のうち、次のアからオまでの経費を補助対象とする。
ア 旅費:事業実施主体に属する職員、外部専門家に対する旅費
イ 謝金:講師に対する謝金等
ウ 事業費:消耗品費、印刷製本費、会場借料等
エ 役務費:分析・農作業の外部委託等を専ら行う経費
オ 雑役務費:事業を実施するために必要な手数料
②技術実証に要する経費
ア:農業機械等のレンタル及びリースに要する経費
生産安定・効率化機能の具備・強化等の技術実証の取組に必要な農業機械等のレンタル及びリースに要する経費
イ:事業を実施するために必要なほ場の借り上げ経費
なお、下記のの経費は、助成対象となりませんので、お気をつけください。
・経費の根拠が不明確で履行確認ができない取組に係る経費
・農業以外に使用可能な汎用性の高い機械等(例:運搬用トラック、フォークリフト、シ
ョベルローダー、バックホー、パソコン等)の導入に要する経費
・他の国庫補助金を受けた(又は受ける予定の)経費
補助額
推進事業の補助率と補助限度額は、下記の通りとなります。
◆補助率 2分の1の事業は、下記の1~4の事業となります
1.生産安定・効率化機能の具備・強化
2.供給調整機能の具備・強化
3.実需者ニーズ対応機能の具備・強化
4. 農業機械等の導入及びリース導入
◆5.効果増進・検証事業においては、定額となります。
◆補助限度額
・1協働事業計画当たりの単年度の補助限度額は、5千万円
整備事業
令和3年度強い農業・担い手づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)の整備事業は、拠点となる事業者が連携する生産者の作業支援など様々な機能を発揮しつつ、安定
的な生産・供給を実現しようとする生産事業モデルの育成のなかで、施設整備を行う事業となります。
補助対象となる取組内容
整備事業の取組内容は、協働事業計画の目標達成に必要となる下記の施設等の整備となります。
①育苗施設
②乾燥調製施設
③穀類乾燥調製貯蔵施設
④農産物処理加工施設
⑤集出荷貯蔵施設
⑥産地管理施設
⑦用土等供給施設
⑧農作物被害防止施設
⑨生産技術高度化施設
⑩種子種苗生産関連施設
成果目標
整備事業の達成すべき成果目標は、強い農業・担い手づくり総合支援交付金のうち産地基幹施設等支援タイプの配分基準において定めるものとし、達成すべき成果目標基準を満たすことが見込まれる類別を2つまで設定します。
なお、成果目標基準の設定に当たっては、下記のメニューとなります。
・土地利用型作物
・ 畑作物・地域特産物
・ 果樹
・ 野菜
・ 花き
・ 国産原材料サプライチェーン構築
・ 農畜産物輸出に向けた体
補助額
整備事業の補助率は下記の通りとなり、補助上限額は施設によって上限事業費が決まっており、限度額を超える部分については交付の対象外となります。
◆補助率 2分の1
まとめ
令和3年度強い農業・担い手づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)の応募資格、推進事業と整備事業の2つの事業内容、成果目標、補助額等について、まとめて解説してきました。
拠点となる事業者が生産者と連携し、より多くの機能を発揮していく生産事業モデルの育成を目指している方にとって、資金調達の一つとして役立つ補助金です。
推進事業と整備事業が設けられていますので、ご自身の状況に沿った事業を選択してご活用ください。
安定的な生産や供給を続けていくために、農林水産省が実施している令和3年度強い農業・担い手づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)を、役立てていきましょう。