農畜生産者にとって、競争力を強化していくためには、輸出拡大や農業人材の育成などは重要な課題となり、欠かすことができません。
そのためには、課題を洗い出し計画を練らなければなりませんが、計画に不十分な点があれば、課題を解決することが難しくなるために、不安を抱く方は多いのではないでしょうか?
そのような場合には、第三者機関の審査で客観的に証明してもらえるGAP認証を取ったうえで、実施すれ安心して取組んでいくことができます。
農林水産省では、このような取組の拡大を図るために、「令和3年度持続的生産強化対策事業のうちGAP拡大推進加速化(うち農産分)」を設け支援を行っています。
国際水準GAPの実施や認証取得の際に利用できる補助金となっていますので、積極的にご利用ください。
INDEX
令和3年度持続的生産強化対策事業のうちGAP拡大推進加速化(うち農産分)
令和3年度持続的生産強化対策事業のうちGAP拡大推進加速化(うち農産分)は、農林水産省が実施している、国際水準GAPの取組の拡大を図るために必要な施策を総合的に支援している事業です。
国際水準GAPの実施及び認証取得の推進は、輸出拡大や農業人材の育成などは、我が国の農畜産業競争力の強化を図ることは重要だと考えることから、設けられました。
これらの補助対象となる取組に対して、必要となる経費の一部を補助しています。
4つの事業
令和3年度持続的生産強化対策事業のうちGAP拡大推進加速化(うち農産分)の補助対象となる4つの事業は、下記の1~4の通りとなります。
1.産地リスク対策実証
2. 国際水準GAPガイドライン普及促進
3.日本発GAPの国際化推進
4.GAP認証審査オンライン化推進
事業ごとの内容は、後半にまとめてありますので、ご覧ください。
応募主体の要件
令和3年度持続的生産強化対策事業のうちGAP拡大推進加速化(うち農産分)の応募主体の要件は、下記の団体であり、①~④の要件を満たすことが必要です。
◆民間企業、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人、協同組合、企業組合、特定非営利活動法人、学校法人、特殊法人、認可法人、独立行政法人及び協議会とします。
①本事業に係る経理その他の事務について、適切な管理体制及び処理能力を有し、定款、役員名簿、団体の事業計画書・報告書、収支決算書等(これらの定めのない団体にあっては、これに準ずるもの)を備えていること。
②日本国内に所在し、補助事業全体及び交付された補助金の適正な執行に関し、責任を持つことができる者であること。
③法人等(個人、法人又は団体をいう。)の役員等(個人である場合はその者、法人である場合は役員又は支店若しくは営業所(常時契約を締結する事務所をいう。)の代表者、団体である場合は代表者、理事、その他経営に実質的に関与している者をいう。)が暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員をいう。)でないこと。
④協議会は、上記のほか、事業の事務手続を適正かつ効率的に行うため、協議会の代表者及び意思決定の方法、事務・会計の処理方法及びその責任者、財産管理の方法、公印の管理・使用及びその責任者、内部監査の方法等を明確にした協議会の運営等に係る規約が定められていることを要するものとします。
補助対象経費
令和3年度持続的生産強化対策事業のうちGAP拡大推進加速化(うち農産分)の補助対象となる経費は、下記の表の通りとなります。
費目 | 細目 |
備品費 | ― |
賃金等 | ― |
事業費 | 会場借料、通信・運搬費、借上費、印刷製本費、資料購入費、消耗品費、認証取得推進費、情報発信費、研修受講費、燃料費、光熱水費 |
旅費 | 委員旅費、調査等旅費 |
謝金 | ― |
委託費 | ― |
役務費 | ― |
雑役務費 | 手数料、租税公課 |
◆なお、上記の経費であっても下記の場合にあっては認められないので、お気をつけください。
・本事業で得られた試作品や成果物を有償で配布した場合
・ 補助事業の有無にかかわらず事業実施主体で具備すべき備品・物品等の購入及びリース・レンタルの場合
1.産地リスク対策実証
産地リスク対策実証は、国内産地におけるGAPの取組の浸透を図る観点から行われている事業です。
農作業事故等のリスクを低減する手法として、GAPの団体認証取得が有効であることを実証し、各産地に横展開し取組を広げていくことが必要として設けられました。
取組内容
取組内容は、GAPの団体認証取得を通じた産地リスクの低減効果に関する実証を目的とした、下記の①~⑤の取組が対象となります。
①検討会の開催
学識経験者、GAP専門家等の構成員からなる検討会を設け、産地リスク低減効果の実証方針等について、調査・検討を行います。
②実証地区の選定・採択
実証地区の選定に係る公募の実施及び採択を行います。
③実証地区の進捗状況管理及び指導・助言
事業実施主体が採択した産地リスク分析実証プログラムに基づき実証地区が行うGAP認証の取得やデータ収集等の取組の進捗状況について把握し管理を行うとともに、必要に応じて実証地区に対し実証地区が行う取組の実施に必要な指導・助言を行います。
④実証データの集約・分析及び事例集等の作成
実証地区から提供のあったデータを集約した上で、①で検討した実証方針に基づき産地リスクの低減効果を分析評価し、事業実施主体が運営するウェブサイトにおいて公表します。
ア:事例集
実証地区ごとに、取組の過程やGAP認証の取得前後における産地リスクに係る評価指標の推移、産地リスク低減のために実施した取組内容等を事例として整理したもの
イ:報告書
集約した実証データを総括し、実証地区ごとの取組・効果に関する共通点や要点、GAPの団体認証取得の有効性等を取りまとめたもの
⑤実証地区が行う取組に対する支援
実証地区に対し、実証地区が行う取組に要する経費の補助を行います。
補助額
産地リスク対策実証の補助率と補助限度額は下記の通りとなります。
◆補助率 定額
◆補助限度額 33,205 千円以内
・ただし、申請のあった金額は、予算及び補助対象経費等の精査により減額することがあります。
2. 国際水準GAPガイドライン普及促進
国際水準GAPガイドライン普及促進 は、都道府県GAP指導体制に位置付けた者を対象に、行われている事業です。
国際水準GAPの指導を推進することを目的とした下記の取組が対象となります。
取組内容
国際水準GAPガイドライン普及促進は、『国際水準GAPガイドライン(試行版)』の内容を修得させ、国際水準GAPの指導を推進することを目的とした、下記の①~③の取組となります。
『国際水準GAPガイドライン(試行版)』
・令和2年12月15日付付け2生産第1601号生産局農業環境対策課長通知
・令和3年度中において策定予定の国際水準GAPガイドラインを含む。
・「国際水準GAPガイドライン」という。
①検討会の開催
国際水準GAPの取組に関する専門家、有識者、普及指導員等の構成員から構成される検討会を設け、GAP指導員等による国際水準GAPガイドラインを活用した国際水準GAPの推進に効果的な研修内容、研修方法、研修資料等について検討を行うものとします。
なお、研修方法の検討に当たっては、都道府県から参加、研修内容等のニーズを把握するものとします。
②研修会の開催
・GAP指導員等を対象とする研修会を全国6ブロック(北海道、東北・関東、北陸・東海、近畿、中国・四国及び九州・沖縄)で各1回以上開催するものとします。
・開催1回当たりの規模は、30 名程度の参加を想定するものとします。
・①の検討結果において、上記6ブロックでの開催よりも効率的な開催方法が明らかである場合は、ブロックを分割又は統合して実施等することも可能とします。
・研修を受講したGAP指導員等に対して、研修受講証明書を発行するものとします。
③ 効果検証の実施
②の研修会の参加者に対して、都道府県と連携し、研修内容、研修方法、研修資料の適切性、改善点等について調査し、研修受講による効果を検証するものとします
補助額
国際水準GAPガイドライン普及促進 の補助率と補助限度額は、下記の通りとなります。
◆補助額 定額
◆補助上限額 4,800 千円以内
・ただし、申請のあった金額は、予算及び補助対象経費等の精査により減額することがありますので、お気をつけください。
3.日本発GAPの国際化推進
日本発GAPの国際化推進は、 ASIAGAP の利用拡大と輸出促進を目的として設けられた事業です。
我が国農業競争力の強化及び輸出促進の観点から、GFSIに承認された我が国発のGAP認証プログラムである ASIAGAP について、アジアで主流の仕組みとなるよう、戦略的に推進することが必要として設けられました。
取組内容
日本発GAPの国際化推進の取組内容は、下記の①~④の取組となります。
①検討会の開催
・学識経験者、輸出専門家、輸出業者等の構成員からなる検討会を設け、ASIAGAP のアジアにおける利用拡大に向けた推進方策等につき調査・検討を行うものとします。
②海外実需専門家の招聘
・東アジア地域又はアセアン諸国のうち1ヵ国・地域以上から、輸入業者や「バイヤ ー」等の海外実需 専門家を日本に招聘するとともに、ASIAGAP への理解を深めるため、海外実需専門 家に対して ASIAGAP 認証制度等の研修や ASIAGAP 認証取得農場の現地視察等を行うものとします。
「バイヤー」とは?
・日本国外に所在する農畜産物等の実需者が農畜産物の売買契約を締結する際 に、当該実需者の媒介、取次又は代理を行う者をいう。
③ ASIAGAP 認証農産物に関する商談会等の開催
・ASIAGAP 専門家や ASIAGAP 認証取得農業者を日本から②で海外実需専門家を招聘 した国・地域に派遣し、②で招聘した海外実需 専門家の協力の下、派遣国のバイヤーを主な対象とした説明会の開催等を通じた ASIAGAP に関する普及活動の実施及び ASIAGAP 認証農産物の輸出のための商談会等 の開催を行うものとします。
補助額
日本発GAPの国際化推進の補助率と補助限度額は、下記の通りとなります。
◆補助率 定額
◆補助限度額 4,720 千円以内
・ただし、申請のあった金額は、予算及び補助対象経費等の精査により減額することがあります。
4.GAP認証審査オンライン化推進
GAP認証審査オンライン化推進は、新型コロナウイルス感染症の存在下での新しい生活様式に対応したGAP認証審査体制を推進している事業です。
認証取得に取り組む農業者の受審時の費用負担等を軽減する仕組みとなるよう、オンラインでの認証審査手法を確立・普及することを目的として設けられています。
取組内容
GAP認証審査オンライン化推進の対象となる取組内容は、下記の①~③の取組となります。
①検討会の開催
GAP のオンライン認証審査の取組に関する有識者、農業者、GAP認証審査機関、運営主体等の構成員からなる検討会を設け、オンライン認証審査手法の確立・普及に向けた具体的な取組について検討を行うものとします。
②オンラインでの認証審査手法確立及び普及の実施
①で検討した取組等に基づき、GAPのオンライン認証審査手法の確立及び普及のため、以下の取組を行うものとします。
なお、イ及びウの取組は必須とします。
ア:オンライン認証審査の先行事例調査
イ:オンライン認証審査と現地認証審査の比較実証
ウ:オンライン認証審査マニュアルの作成
エ:GFSI へのオンライン認証審査手法の提案
オ:その他オンライン認証審査の確立・普及に必要な取組
③報告会の開催
①から②までの取組を踏まえたオンライン認証審査の普及推進を図るため、審査機関、指導者等の関係者を参集した公開形式の報告会を開催するものとします。
補助額
GAP認証審査オンライン化推進の補助率と補助額は、下記の通りとなります。
◆補助率 定額
◆補助限度額 10,000 千円以内
・ただし、申請のあった金額は、予算及び補助対象経費等の精査により減額することがあります。
まとめ
農林水産省が実施している「令和3年度持続的生産強化対策事業のうちGAP拡大推進加速化(うち農産分)」の応募主体の要件、補助対象経費の紹介。
さらに、4つの事業の「産地リスク対策実証 」「国際水準GAPガイドライン普及促進 」「日本発GAPの国際化推進 」「GAP認証審査オンライン化推進 」のそれぞれの取組内容と補助額について、解説してきました。
農畜生産者の輸出拡大や人材育成は、生産管理や効率性、さらには経営意識の向上につながっていきます。
GAP認証を取得することで、客観的に検証することはもちろんのこと、取引上において選択されやすくなり、安心できる取引を行えるようになるでしょう。
資金調達の一つとしても活用できる補助金を、これからの農畜生産の継続や発展にお役立てください。