映画を製作する際には、助成金が活用できます。
助成金の制度も年々変化しており、助成金を利用するならまずは要点を理解しておくことが重要になります。
本記事では助成金に関する5つの要点をまとめていきます。
要点① そもそも「映画制作の助成金」とは?
要点② 申請の条件は柔軟に変化している
要点③ 「2カ年度助成金」を知ろう
要点④ 日本映画の成長を支援する制度
要点⑤ 大ヒット映画でも助成金が利用されている
上記5つの要点をまとめながら、映画製作の助成金についての理解を深めていただければと思います。
INDEX
要点① そもそも「映画制作の助成金」とは?
まずは、「映画製作の助成金」ってどんなものなのかをお話しします。
自分自身が利用する助成金の概要については、必ず理解しておく必要があります。
映画製作の助成金は、文化庁が日本映画の成長、発展を目指して資金援助をする制度です。
簡単に言えば、「国が映画製作の支援をしてくれる」という感じですね。
助成金は、原則的に返済不要の支援金になります。
映画の製作には、かなりのコストが必要になってきますので、特にヒット作品などがまだ無い製作者にとっては必ず利用したい制度です。
映画制作を志しても、まず大きく立ちはだかるのは「資金の問題」です。
資金の問題が解決できず、映画制作そのものを断念してしまう人もいますので、そういった人たちが映画制作に打ち込めるように支援しようという目的があるわけです。
その資金の問題に手を差し伸べてくれる制度になりますので、助成金は賢く利用していきましょう。
過去に比べると、助成金制度そのものが利用しやすくなってきているので、概要や要件を正しく理解して活用していくことが重要になります。
要点② 申請の条件は柔軟に変化している
要件の2つ目は「助成金申請の条件は柔軟に変化している」ということです。
これは非常に大きなポイントになります。
例えば、「映画制作の予算」に関する条件を見てみると、
これまでの助成金は、「予算総額5000万円以上」でなければ申請することができませんでした。しかし、近年では「最低予算500万円〜」でも申請可能になっています。
予算の敷居が10分の1まで下がっているというところは、非常に便利です。
そもそも、小規模でも映画を制作したい人にとっては、5000万円なんて手に届く金額ではありません。
映画の制作スタイルも日進月歩で進化していて、低予算で製作することも少なくありませんから、ありがたい変化です。
昔に比べ、高画質な動画を誰でも手軽に撮影できるようになりましたし、カメラや周辺機材も安く手に入れることができるようになっています。
時代の流れに伴って、動画編集のスキルを有した人財も加速度的に増えてきているので、やり方次第で格安映画を作成することも可能です。
映画制作の助成金支援では、「若手にチャンスを与えたい」という意思があるということなので、予算総額の最低ラインが下げられていたり、製作段階でお金を集めにくい作品に対しても支援しやすくしているのです。
予算が足りずに断念せざるを得ない表現方法もありますし、予算が足りずに製作そのものを断念するケースもあるでしょう。
時代の変化に合わせて、助成金の支援条件も柔軟に変化していっているのですね。
予算の小さな映画でも、社会的に評価される素晴らしい作品は必ずあります。
「カメラを止めるな!」は驚くほど低コストでありながら、大ヒットを記録した素晴らしい作品となりました。
映画は予算で決まるわけではないと証明してくれた作品になったのです。
当然ですが、予算が豊富にあれば、選択肢は広がります。
しかしながら、「予算が豊富=面白い作品」というわけではないということですね。
低予算であっても、内容の良し悪しを決めるものではないのです。
その他にも、日本映画の数が減少している状況を鑑みて、支援総額(予算枠)を増やしていったり、より広く助成金のことを知ってもらう(認知活動)も推進しています。
要点③ 「2カ年度助成金」を知ろう
要点の3つ目は「2カ年度助成金制度」について知ろうというところです。
2カ年度助成金制度とは、その名の通り、2年間に渡って助成される制度のことです。
映画の完成年度に対して、「前年度と完成年度」の2年間が対象になるので、非常に便利が良い。
従来の助成金では、映画が完成しないと助成金を受け取ることができませんでした。
助成金を受け取る条件の一つに「映画の完成」が含まれているからですね。
この2カ年度助成制度を活用すれば、1年目を準備期間に当て、2年目に映画完成を目指すというやり方も可能になるのです。
つまり、小さな会社や個人で映画製作をする人などにとって、とてもありがたい制度なのです。
大きな映画製作会社であれば、人区や予算を投じることで「映画製作のリードタイムを短くする」ことは可能かもしれませんが、小さな会社や個人であればどうしても時間が必要になります。
少人数、低予算で映画を制作するとなると、時間をかけて映画制作にのぞむことも必要になるのです。
映画の完成まで助成金がでないとなると、それだけでも苦しい条件となりますよね。
しかし、映画製作を2年間に延長することができ、その期間でも助成金が受け取れるとなると、映画製作の幅が広がるのです。
さらに、2カ年度助成制度は申請そのものが手軽で簡素であるという利点もあります。
映画として素晴らしいかどうかが、助成を決める基準となっているので、細かい手続きや申請に手間を取らせないようにしているようです。
審査のポイントは、「予算」「映画のコンセプト」「なぜ今、撮影する必要があるのか」といった、映画のパーソナル情報だけで良いのです。
映画制作を志す上で、これらの情報はしっかり煮詰めて検討しているはずですので、問題無く審査にチャレンジすることができます。
予算申請の敷居が下がったり、この2カ年度助成制度ができたりと、これまで「映画を作りたくても作れなかった」人たちをサポートする体制が整いつつあることがわかります。
要点④ 日本映画の成長を支援する制度
日本映画の成長を支援するという目的から、助成金の応募に関してはあまり厳しい条件はありません。
数多くの映画製作者に対して支援できる制度にしているので、応募条件でふるいをかけてしまわないようにしているのでしょう。
さらに年々、時代の変化とともに応募の敷居も下がっている印象です。
以前は「応募すること」そのものの敷居が高く、助成金を利用したい人たちが応募を断念せざるを得ませんでしたが、そんなニーズに答える形で制度が変化しているのです。
少しずつ制度の内容や応募要件なども変化しているので、今後もより目的に見合った形に変化していくものと予想できます。
応募した後、実際に助成金を受給できるかどうかについては、高い競争率を勝ち抜く必要がありますが、現状では応募要項は「誰でも参加可能」なレベルです。
映画製作の助成金を応募する要件は次の2つです。
◯ 日本映画であること
◯ 広く公開されること
たったこれだけで条件をクリアできます。
日本で公開される「日本映画」であり、多くの人に向けて発信・公開する予定があれば良いのです。
つまり、日本映画として制作し、完成した暁には映画館や試写会などで多くの人に後悔する意志があれば良いということになるのです。
映画製作を心がけている人であれば、この条件は確実にクリアできますので、応募者同士の中で競い合うことが一つの難題になりますね。
要点⑤ 大ヒット映画でも助成金が利用されている
助成金と聞くと、まだ無名の映画製作者に向けた支援制度の様に感じますよね。
そもそも映画制作が初めての人であったり、映画制作に対して潤沢な予算が無い人たちが対象の制度だと認知されがちです。
「日本映画の発展を目指す制度」という点では、多くの才能の種を発芽させる手助けをしようとしていることは間違いありません。
しかし、実際の助成金支援実績をみると、「大ヒット作品」でも助成金支援の実績があることがわかります。
実写では「万引き家族」や「寝ても覚めても」といった、カンヌ国際映画祭に登場した作品であっても助成金が活用されています。
アニメ映画では「君の名は。」や「この世界の片隅に」で助成金が活用されています。
どの映画も、日本では知らない人がいないくらい大ヒットした映画でありながら、助成金の支援を受けて映画を制作していると知ると、驚きますよね。
大ヒット作品への助成金支援については、かなり賛否が分かれていることが現状です。。
本来は、資金の問題で映画制作ができない団体や、映画の幅に制限ができてしまうことを無くす目的もあるので、大ヒット映画は支援対象から外すべきだという声ですね。
大ヒット映画が支援対象になるということは、助成金を利用した人たちにとって強力なライバルがたくさんいるかもしれないことを示唆していることになるのです。
しかしながら、助成金の申請〜支援決定までのステップでは、その映画がヒットするかどうかわかりません。
現在の支援制度では、「日本映画」かつ「広く公開されること」が満足されれば、支援対象となりますから、その後大ヒットする作品であっても支援の可能性があるわけです。
また、これまでに映画制作の実績があったり、過去の作品の興行収入等は審査の対象に入っていませんので、こちらもどんな人でも助成金支援の対象に入ることになります。
この辺りは、今後の助成金制度の変化が期待されるところになります。
まとめ
映画製作の助成金に関する「5つの要点」についてまとめていきました。
助成金の制度や近年の状況について理解していただくと共に、実際にどんな映画に対して支援されているのかについても知っていただけたと思います。
こうした助成金の実態を知ることで、実際に申請して利用いただく際にも「どんな目的で助成金支援をしているのか」を理解して審査にのぞむことができます。
助成金の応募内容や申請方法ばかりに目を向けてしまいがちですが、それでは審査に通過する確率をあげることは難しいものです。
当然、国や地方公共団体の目指す目的に見合った映画に支援が実行されます。
だとしたら、より良い映画を作るためにも「支援の目的を理解して準備する」ことが重要だと分かります。
効果的に助成金を活用するためにも、まずは本記事でまとめた要件をしっかり理解し、助成金支援の目的や背景からご理解いただけると良いのではないでしょうか。
助成金を支援してもらう確率を高めるために、「助成金の概要」「助成金支援の目的」「どんなところが支援されやすいか」といった要件に目を向けるところからスタートなのです。