資金力が乏しい企業にとって「補助金」は重要な資金調達方法の1つですよね。
中でも製造系の企業に使いやすいのが「ものづくり補助金」です。
補助金を申請する際に、採択率を上げる情報を知らずに申請を行ったり、内容を理解せずに敬遠している中小企業も少なくありません。
そこで、本記事ではものづくり補助金の特徴や申請するポイントを紹介します。
INDEX
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金とは主に中小企業庁が対象となっている、国の補助金制度です。
中小企業・小規模事業者が、生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行う場合に、必要な設備投資等に補助金がでます。
補助対象経費(機械装置費等)の一部(補助率1/2ないしは2/3。上限は原則1,000万円)を国が支援してくれます。
補助対象経費とは、補助金の対象となる経費のことです。
経費は何でも補助金の対象となるわけではありません。
例えばこの「ものづくり補助金」の場合、人件費や広告宣伝費は対象にならないので注意が必要ですね。
また、補助対象経費であってもすべてが補助金としてもらえるのではなく、その1/2もしくは2/3だけが補助金としてもらえるといことも覚えておきましょう。
平成31年2月18日に公開された公募要領、および2月5日に公開された「企業間データ活用型」「地域経済牽引型」事前予告資料によると、今年(平成31年・新元号元年)に実施されるものづくり補助金では下記の4つの事業累計があります。
補助対象事業 | 予算区分 | 補助率 | 補助上限額 | 備考 |
一般型 | 補正 | 原則2/1 | 1000万円 | 先端設備導入計画・経済革新計画の新規認定・承認の場合は補助率2/3 |
小規模型 | 補正 | 小規模事業者2/3
その他事業者1/2 |
500万円
(下限100万円) |
先端設備導入計画・経済革新計画の新規認定・承認の場合は補助率2/3 |
企業間データ活用型 | 当初 | 原則2/1 | 2000万円/者
(下限100万円) |
上記要件で補助率⅔
10者まで連携可能 |
地域経済牽引型 | 当初 | 原則2/1 | 2000万円/者
(下限100万円) |
地域経済牽引事業計画の新規承認で補助率2/3 |
ものづくり補助金のメリット
ものづくり補助金を活用すると2つのメリットが発生する可能性があります。
・自己負担を減らせる
・取引先の金融機関に好意的に評価される
2つのメリットについて細かく見ていきましょう。
自己負担を減らして設備投資等が可能になる
そもそも、補助は、国から交付されるお金であり、原則として返済の必要はありません。
ただし補助金の交付を受けて取り組んだ事業が儲かれば、その分を国に返却するという収益納付という形に制度上はなってはいます
あくまでも「儲かれば」という条件付きであり、金融機関からの融資のように、必ず返済が求められるというものではありません。
なので、「ものづくり補助金」の最大のメリットとして考えられるのは、少ない自己負担で設備投資等が可能になるということではないでしょうか。
取引先の金融機関に好意的に評価される
もう一つ考えられるメリットは「ものづくり補助金」の採択を受けた企業は、取引先の金融機関などから好意的に評価されるようになるということが挙げられます。
実際に、「ものづくり補助金」の採択を受けた企業が金融機関からその様な評価を得たという話を聞くのも少なくありません。
そうなれば、金融機関から融資を受ける際にもスムーズに進んでいくことができるのではないでしょうか。
ものづくり補助金の採択率について
ものづくり補助金の採択率を見ていくと、平均して4割適度ではないでしょうか。
過去6年間の応募総数、採択数、採択率は下記の通りです。
平成24年度
募集区分 | 応募総数 | 採択数 | 採択率 |
一次一次締切 | 1,836 | 742 | 40.4% |
一次二次締切 | 10,209 | 4,162 | 40.8% |
二次 | 11,926 | 5,612 | 47.1% |
平成25年度
募集区分 | 応募総数 | 採択数 | 採択率 |
一次一次締切 | 7,396 | 2,916 | 39.4% |
一次二次締切 | 15,019 | 6,697 | 44.6% |
二次 | 14,502 | 4,818 | 33.2% |
平成26年度
募集区分 | 応募総数 | 採択数 | 採択率 |
一次 | 17,128 | 7,253 | 42.4% |
二次 | 13,350 | 5,881 | 44.1% |
平成27年度
募集区分 | 応募総数 | 採択数 | 採択率 |
一次 | 24,011 | 7,729 | 32.2% |
二次 | 2,618 | 219 | 8.4% |
平成28年度
募集区分 | 応募総数 | 採択数 | 採択率 |
一次 | 15,547 | 6,157 | 39.6% |
平成29年度
募集区分 | 応募総数 | 採択数 | 採択率 |
一次 | 17,275 | 9,518 | 55.1% |
二次 | 6,355 | 2,471 | 38.9% |
平成30年12月28日の事務局公募要領・事前予告資料によると、平成30年度補正予算でのものづくり補助金は、1万社採択を目指しているようです。
ちなみに昨年度も事務局の公募時点では1万社への補助予定を計画しており、結果、1万社の予定に対し、最終的には11,989件の採択がされました。
この数値から見ても、今後は採択率は昨年に近い50%程度て落ち着くのではないかと推測できます。
ものづくり補助金の対象企業
ものづくり補助金の対象となる企業の要件については、毎年ほぼ変わっていません。
おそらく平成31年(2019年)実施の「ものづくり補助金」でも、次のようになることでしょう。
詳しくは公募開始時に公表される公募要領をご確認ください。
・日本国内に本社及び実施場所を有する中小企業者および特定非営利活動法人
・みなし大企業ではないこと
・補助対象外事業ではないこと
みなし大企業とは
みなし大企業とはいったい、どの様な企業を指すのか簡単に解説します。
1.発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者
2.発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者
3.大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者
補助対象外事業とは
ものづくり補助金の対象外となってしまう企業は下記の通りです。
1.本公募要領にそぐわない事業
2.テーマや事業内容から判断し、同一又は類似内容の事業であり、国(独立行政法人等を含みます)が助成する他の制度(補助金、委託費等)と重複する事業
3.事業の主たる課題の解決そのものを外注又は委託する事業
4.試作品等の製造・開発の全てを他社に委託し、企画だけを行う事業
5.公序良俗に反する事業
6.公的な資金の使途として社会通念上、不適切であると判断される事業(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第121号)第2条により定める営業内容等)
7.公募要領15~18ページの「補助対象経費」の各区分等に設定されている上限(下記のとおり)を超える補助金を計上する事業
8.その他
・ 事務局が本事業用として指定した応募申請書類様式と、異なる様式の申請書類で応募してきた案件
・ 補助金申請額が100万円に満たない案件、または補助上限額を超える案件
・ 事業類型に対象となっていない補助対象経費科目を使用している案件
・ 同一法人・事業者が今回の公募で複数申請を行っている案件
・ 必要な書類が添付されていない案件
・ その他書類不備等、補助対象要件を満たさない案件
・ 補助対象事業者に該当しなくなった場合(みなし大企業含む)
ものづくり補助金の申請書の書き方
ものづくり補助金の申請書は、各都道府県の中小企業団体中央会が、公募開始後にホームページで公開します。
団体中央会が本補助金申請用として指定した応募申請書類様式と、異なる様式の申請書類で応募してきた場合や、応募しようとする類型で指定された様式とは異なる様式の申請書類での提出した場合は、補助金不採択となることがあるので注意してください。
そして、申請書の記入方法ですが、公募要領に書かれている審査項目すべてについて、具体的な説明をすることが求められています。
なので、まずは公募要領に書かれている審査項目に必ず目を通すようにしましょう。
その上で、それぞれの審査項目についてどのように記述するかを考え、記入する必要があります。
ものづくり補助金の審査項目について
ものづくり補助金の審査項目はいくつかありますが、毎年ほぼ大きく変わる事はありません。
下記に平成30年度補正第1次公募「一般型」「小規模型」の審査項目を紹介するので、ご参考にしてください。
ちなみに、前回の公募の審査項目にあった「政策面②金融機関等からの十分な資金調達が見込めるか」という項目は今回の公募ではなくなっています。
ものづくり補助金の審査体制について
ものづくり補助金の審査体制として、一企業の申請にたいして5名で審査をするといわれています。
技術面を審査する人(技術士や企業OB等)、事業化面を審査する人(大学教授や中小企業診断士)、そして政策面を審査する人です。
その審査員が、上記の審査項目に対して、それぞれ採点をするという方式です。
したがって、採点はあくまでも審査項目に対して行われます。
なので、審査項目をしっかりと把握し、それぞれの項目に要求されている内容を完結2具体的に答えることが重要となってきます。
また、審査員はかならずしも申請企業の業界に精通した専門家ではありません。
なので、どの審査員にも分かるように「何を取り組むのか」「なぜ取り組むのか」「取り組みによってどんな革新性が得られるのか」を明確に伝えなくてはいけません。
内容を伝えることができなければ、ものづくり補助金の採択は厳しいかもしれません。
どの審査員にも伝わるように、専門用語の多様は避けて、図や写真などを使い分かりやすい申請書を作ることがポイントです。
ものづくり補助金の審査には「革新性」が重要
ものづくり補助金には様々な審査項目がありますが、その中でも「革新性」が一番重要となってくることを覚えておいてください。
補助事業の目的として公募要領の1ページ目の冒頭にも「生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うにあたって」と書かれているように、革新的なものを採択するのがこの補助金の本来の目的です。
逆に、「古くなった設備を新しくするだけ」といった革新的でないものは採択されないでしょう。
しかし、「革新性」と言われても悩んでしまうかもしれません。
革新性とは簡単に言うと、「自社になく、他社でも一般的ではない、新しい取り組み」のことです。
他社でも一般的ではないということなので、必ずしも取り組む内容が日本初や世界初のようなナンバーワン、オンリーワンでなくても構いません。
しかし、一般的ではないことを根拠を添えて記述する必要があります。
まとめ
以上、ものづくり補助金について紹介しました。
ものづくり補助金は、過去3年間の統計を見ても数多くの応募も集め、採択件数も多いの人気の高い補助金となっています。
そのため、申請事業者間の競争も厳しくなっていますが、採択率は4割程度と低いものではありません。
もちろん補助金の申請には手間がかかってしまいます。
申請書作成を負担に感じるかもしれませんが、申請書や事業計画書などの書類をまとめていく作業は、それ自体ものづくり企業としての自らを捉え直すことにつながります。
それは、現在ものづくり企業を経営する事業者にとって、決して無駄になることではありません。
是非、ものづくり補助金の対象事業者は申請を検討することをおすすめします。