
木材からは、生産される製材品や合板等を始めとして、おが粉、チップ、樹皮等の副産物、堆肥や燃料など、多岐にわたって数多く利用されています。
その一方で、福島第一原子力発電所の周辺地域の林業、木材産業においては、放射能物質の深刻な影響がぬぐい切れません。
安全な木材製品を提供していくためには、今後においても放射性物質の影響などのきめ細やかな調査や検証が必要となってくるでしょう。
林野庁では、このような状況を踏まえて、安全証明体制の構築を図るために「安全な木材製品等流通影響調査・検証事業」を設けて支援を行っています。
こちらの記事では、「安全な木材製品等流通影響調査・検証事業」を詳しく解説していきますので、木材製品等の安全証明体制の構築を図る取組を行っている事業者は、ぜひご覧ください。
安全な木材製品等流通影響調査・検証事業
林野庁が実施している安全な木材製品等流通影響調査・検証事業は、製材工場等での原木の受け入れから木材の出荷までの工程を対象としている事業です。
原木、木材製品や作業環境などに係る放射性物質の影響の調査・分析を行うとともに、多様な木材製品等の安全と安心を確保するため、木材製品等に係る安全証明体制の構築に係る取組に対して支援を行っています。
補助対象となる事業の必要とする経費に対して、補助金を交付しています。
支援対象となる事業内容
安全な木材製品等流通影響調査・検証事業の支援対象となる事業内容は、下記の通りとなります。
◆製材工場等での原木の受け入れから木材の出荷までの工程を対象とし、原木、木材製品や作業環境などに係る放射性物質の影響の調査・分析を行うとともに、多様な木材製品等の安全と安心を確保するため、木材製品等に係る安全証明体制の構築に係る取組に対し支援します。
・本事業の実施に当たっては、林野庁で実施する他の放射性物質に関連する事業等との連携や反映を適切に行うこととします。
①企画検討委員会の開催
・事業実施主体は、本事業の企画検討及び②~⑤の各事業の実施に係る技術的指導等を行うため、木材、木材加工・木工機械、放射性物質等に係る有識者及び関係する行政関係者等をもって構成される企画検討委員会を開催することとします。
②効率的な放射性物質の測定に向けた情報収集
・福島県産材の原木、木材製品等の 流通状況の調査・分析を行うものとします。
③安全証明体制の構築
・②の事業で得られた成果を基に、 効率的な検査が行えるよう、放射性 物質測定装置の設置やその運用マニ ュアルの作成、検査で得られたデ ータの収集・開示方法の検討など 、安全証明体制の構築を行うものとします。
④木材産業に係る放射性物質継続調査
・木材製品等の表面汚染密度、放射性物質濃度及び作業環境におけ る空間線量率等の調査・分析等を行うものとします。
⑤安全性の普及啓発
・風評被害の防止を図るため、イベントの出展・開催や研修会の開 催等により、福島県産材の安全性 の普及啓発を行うものとします。
応募団体の要件
安全な木材製品等流通影響調査・検証事業に応募できる団体は、民間団体とし、下記の①~⑤の全ての要件を満たさなければなりません。
①木材、木材加工、木工機械、放射性物質等に関する知見を有している団体であること。
②本事業を行う意思及び具体的計画を有し、かつ、2に定める事業内容を的確に実施できる能力を有する団体であること。
③本事業に係る経理及びその他の事務について、適切な管理体制及び処理能力を有する団体であること(定款、寄附行為、役員名簿、団体の事業計画書・報告書、収支計算書等を備えていること。)。
④本事業の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないものであること。
⑤本事業において知り得た情報の秘密の保持を徹底できること。
補助対象経費
安全な木材製品等流通影響調査・検証事業の補助対象となる経費と内容は、下記の表の通りとなります。
◆本事業を実施するために直接かつ追加的に必要な経費のうち、下記の表にあげる経費。
・通常の団体運営に伴って発生する事務所の賃借料等の経費は含まないものとします。
・提案に当たっては、令和2年度における本事業の実施に必要となる額を算出しますが、実際に交付される補助金の額は、課題提案書に記載された事業内容等の審査の結果等に基づき決定されることとなりますので、必ずしも提案額とは一致するわけではありません。
(補助対象経費の費目と内容)
費目 | 内容 |
技術者給 | 事業実施主体が本事業に係る技術を有する者(検査を行う者な ど)に対して支払う実働に応じた対価 |
賃金 | 事業実施主体が本事業の補助的業務(分析補助、事業資料の整理・ 収集等)に従事するために臨時的に雇用した者に対して、支払う実 働に応じた対価(日給又は時間給) ・単価について、当該事業実施主体内の賃金支給規則や国の規定等によるなど、妥当な根拠に基づき業務の内容に応じた単価を設定することとします。 |
謝金 | 企画、研修会、専門的知識の提供、分析補助、資料の整理・収集 等について協力を得た事業実施主体以外の者に対する謝礼に必要 な経費 単価については、妥当な根拠に基づき業務の内容に応じた単価を 設定することとします。 |
旅費 | 事業実施主体が行う資料収集、各種調査、検討会、指導、講師派 遣及び招聘、打合せ、普及啓発活動、委員会等の実施に必要な経費 |
需用費 | 消耗品費、印刷製本費等の経費
ア:消耗品費 イ:印刷製本費 |
役務費 | 原稿料、通信運搬費、普及宣伝費、試験・検査費等の人的サービ スに対して支払う経費
ア:原稿料 イ:通信運搬費 |
委託費 | 補助の目的である本事業の一部分(調査、試験、取りまとめ等) を他の民間団体等に委託するために必要な経費 ・委託費の内訳 については、他の補助対象経費の内容に準ずるものとします。 ・委託を行うに当たっては、第三者に委託することが必要かつ合理 的・効果的であると認められる業務に限り実施できるものとしま す。 ・なお、本事業そのもの又は本事業の根幹を成す業務を委託すると、補助事業の対象要件に該当しなくなりますので、委託内容については十分検討する必要があります。 |
使用料及び賃借 料 | 車両、器具機械、会場の借上げや物品等の使用に必要な経費 |
工作費 | 機材の導入や改良等のための資機材の調達や取付・改良に必要な 経費 |
機械器具費 | 放射性物質測定装置購入費、付属機械器具購入費、本機及び付属 機械器具の運送料並びに定置式機械の据付料です。 |
◆提案できない経費
・建物等施設の建設、不動産取得に関する経費
・本事業の実施に関連のない経費
補助額
安全な木材製品等流通影響調査・検証事業の補助率と補助額は下記の通りとなります。
◆補助率 定額
◆補助額 102,429千円以内
・補助金の額は、102,429 千円以内とし、補助率は、補助金の額の範囲内で本事業の実施に必要となる経費の定額を助成、採択件数は1課題を予定されています。
なお、提案のあった金額については、補助対象経費等の精査により減額することもあり、本事業で収益を得る場合には、当該収益分に相当する金額の返還が必要となる場合がありますので、お気をつけください。
安全な木材製品等流通影響調査・検証事業の注意事項
安全な木材製品等流通影響調査・検証事業の交付を受けた事業実施主体は、本事業の実施及び交付される補助金の執行するにあたって、下記の①~④の条件を守らなければなりませんので、ご注意ください。
①事業の推進
・ 事業実施主体は、事業全体の進行管理、事業成果の公表等、本事業の推進全般についての責任をもたなければなりません。
特に、交付申請書(採択決定後、補助金の交付を受けるために提出することとなっている申請書)の作成、計画変更に伴う各種承認申請書の提出、定期的な報告書の提出等については、適時適切に行う必要があります。
②補助金の経理管理
事業実施主体は、交付を受けた補助金の経理管理に当たっては、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」に基づき、適正に執行する必要があります。事業実施主体は、本事業と他の事業の経理を区分し、補助金の経理を明確にする必要があります。
③知的財産権の帰属等
本事業により得られた知的財産権(特許権、実用新案権、意匠権、プログラム及びデータベースに係る著作権等権利化された無体財産権及びノウハウ等)は、事業実施主体に帰属します。
④事業成果等の報告
本事業により得られた事業成果及び交付を受けた補助金の使用結果については、本事業終了後に必要な報告を行わなければなりません。
なお、林野庁は、報告のあった成果を無償で活用できるほか、事業実施主体の承諾を得て公表できるものとします。
課題提案書提出表明書に関する事項
安全な木材製品等流通影響調査・検証事業に参加を希望する方は、課題提案書提出表明書を下記のように提出する必要があります。
◆課題提案書提出表明書(別紙様式第1号)を作成し、申請期限内に下記の問合せ先に持参又は郵送にて提出します。
・郵送により提出する場合は、期限内必着とします。
・郵送の場合は、封筒に「安全な木材製品等流通影響調査・検証事業課題提案書提出表明書在中」と記載します。
◆課題提案書等の提出場所及び事業の内容・作成等に関する問合せ先
〒100-8952 東京都千代田区霞が関1-2-1
農林水産省 (本館7階ドア No 本 728)
林野庁林政部木材産業課木材放射性物質影響調査班
まとめ
林野庁が実施している安全な木材製品等流通影響調査・検証事業について、支援対象となる事業内容、応募団体の要件、補助対象経費、補助額、注意事項などを詳しく解説してきました。
多岐に渡り利用している木材製品を、安全に供給していくためには、木材製品等の安全証明体制を構築することが必要です。
紹介した安全な木材製品等流通影響調査・検証事業は、そのような取組を行っている事業に対して補助金を交付していますので、資金調達の一つとして利用し、安全かつ安心して利用できる木材製品等の調査や検証に役立ててください。