
ベンチャー企業やスタートアップ企業、中小企業への投資を行っているベンチャーキャピタル(VC)は日本にも数多く存在していますが、今回の記事でご紹介する「みずほキャピタル」はみずほフィナンシャルグループ傘下のベンチャーキャピタルです。
2016年から日銀のマイナス金利政策が開始。マイナス金利政策とは、民間の金融機関が中央銀行(日銀)に資金を預けたままにしておくと金利が発生するようにすることで、投資や他企業への貸し出しなど資金を回すように促し、デフレ脱却・経済活性化を目指すものです。
このマイナス金利政策によって、経営者や起業家は出資・融資を受けやすくなったとも言われています。
みずほキャピタルの投資実績、評判、特徴など、出資を受ける際に気になる7項目について詳しく解説していきます。これからベンチャーキャピタルから出資を受けたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
INDEX
みずほキャピタルの会社概要
みずほキャピタルは1974年に設立した第一勧業銀行系の東京ベンチャーキャピタル株式会社、1983年に設立した富士銀行系の富士銀キャピタル株式会社、1990年に設立した日本興業銀行系の興銀インベストメント株式会社の3社が2002年4月に富士銀キャピタルを存続会社として統合し、「みずほキャピタル株式会社」と名前を変えたベンチャーキャピタルです。主要株主はみずほ銀行やみずほグループ系企業となっています。
みずほキャピタルは日本中にネットワークを持っているため、強力な資金力のあるベンチャーキャピタルです。
みずほキャピタルから出資を受ければ、みずほ銀行が取引する大企業・中堅企業を紹介してもらうことも出来るなど、事業が飛躍的に成長する可能性も秘めています。
みずほキャピタルの事業内容
みずほキャピタルはグループ内のみずほ銀行などと連携し、プライベートエクイティ業務やコンサルティングを行っています。
7つの投資事業組合を傘下に置いており、ベンチャーキャピタルとしてはSBIホールディングス、ジャフコ、大和SMBCキャピタル、日本アジア投資に次ぐ国内第5位の投資残高を持っています。
2006年3月の時点までで海外を含む1149社に総額496億円の投資をおこなっており、うち681社(日本644社、海外37社)が株式上場を実現しており、累計株式公開社数ではジャフコに次ぐ国内2位というベンチャーキャピタルです。
みずほキャピタルの投資方針
みずほキャピタルのバイアウトファンドの投資方針、メザニンファンドの投資方針について解説していきます
バイアウトファンドの投資方針
バイアウトファンドとは、複数の投資家から集めた資金で投資を行ない、企業価値を高めた後で株式の売却・転売を行うことで資金回収を行ない、投資家に利益を分配することを目的としたファンドのことです。
原則普通株式により、過半数以上の株式を取得し、マネジメントバイアウトを中心にした投資を安定したキャッシュフローを有した企業に対して行ないます。
バイアウトファンドの過去の投資実績は以下のようになっています。
年 | 投資実績 |
---|---|
2010年 | ライツ・アドバンスト・テクノロジー メディカルトリビューン OATアグリオ |
2011年 | アイム(旧イマージュホールディングス) |
2012年 | – |
2013年 | のむら産業 |
2014年 | エンブロイ TDM |
2015年 | – |
2016年 | 山木工業 |
2017年 | イグアス 神田電子工業 |
2018年 | ニュー・クイック |
2019年 | 日精 |
メザニンファンドの投資方針
メザニン(mezzanine)とはラテン語で「中二階」を指す言葉で、銀行借入と普通株式発行の中間にあるファイナンスのことを「メザニンファイナンス」と呼びます。
金融機関の通常の貸出金より高リスクですが、株式よりは低リスクというミドルリスク・ミドルリターンを狙って運用を行ないます。主に劣後債、劣後ローン、無議決権種類株式という形態の投資となります。
メザニンファンドの投資も安定したキャッシュフローが見込める企業に対して行われます。
メザニンファンドの過去の投資実績は以下のようになっています。
年 | 投資実績 |
---|---|
2010年 | – |
2011年 | – |
2012年 | サービス 製造 サービス |
2013年 | ソフトウェア 小売 小売 製造 |
2014年 | サービス 製造 サービス 製造 製造 |
2015年 | サービス 外食 |
2016年 | 小売 |
2017年 | 製造 小売 サービス サービス 小売 |
2018年 | サービス 製造 サービス |
2019年 | サービス サービス |
みずほキャピタルの投資対象
みずほキャピタルでは特に投資対象をとなる業種を限定している訳ではありませんが、ITやインターネット関連の企業が全体の34%と、他の業種と比べると多くなっています。
- IT・インターネット関連…34%
- サービス関連…14%
- 医療・バイオ・ヘルス…8%
- 自動車・機械関連…8%
- 外食・小売関連…8%
累計株式公開社数が国内第1位のジャフコもIT・インターネット関連事業に対して力を入れており、投資先企業の45%はIT・インターネット関連となっていました。このことからも現代ではIT・インターネットが如何にビジネスと深く結びついているかということがわかります。
医療・バイオ・ヘルス関連企業への投資は全体の8%にはなるものの、一定して株式上場を果たしており、投資先企業の地域では全体の60%を東京の企業が占めています。
みずほキャピタルから出資を受けたいのであれば、東京で起業した方が出資してもらえる確率は高くなるかもしれません。
また、みずほキャピタルの平均投資額は5000万円~1億円ほどが中心です。
みずほキャピタルの5つの主要ファンド
みずほキャピタルにはいくつかのファンドがありますが、その中でも主要な5つのファンドについて解説していきます。
1:成長支援ファンド
成長支援ファンドはみずほキャピタルのメインファンドで、あらゆるステージの企業、あらゆる業種の企業に対し幅広い投資を行っているということが特徴です。事業内容に強みのある、将来的に成長する可能性のある企業を対象に、ベンチャーキャピタル投資の他にもあらゆる資金供給機会を提供し、様々な資金調達ニーズに対応。
また、みずほグループの大きなネットワークを活用することで企業の飛躍的な成長と発展をサポートしていきます。
2:グロースファンド
事業基盤を一定まで構築したスタートアップ企業が更に成長することを目指すフェーズをグロースステージと言いますが、グロースファンドはこのグロースステージの段階にある企業に対し、ハンズオン投資を行うファンドです。
ハンズオン支援とはベンチャーキャピタルが投資先企業の経営にまで深く関わって企業の成長支援を行うもので、場合によっては経営権を握られてしまうリスクもありますが、信頼出来るベンチャーキャピタルにハンズオン支援をしてもらうことで事業を成長・発展させることが出来るというメリットもあります。
3:FinTechファンド
FinTech(フィンテック)とは金融とITの融合を意味する言葉で、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせて作られた造語です。ファイナンス・テクノロジーの略でもあります。
身近なFinTechとしてはスマートフォンなどを使って現金を使わずに支払いが出来るLINE Payや楽天ペイや、仮想通貨サービス、クラウド会計サービスなどがあります。
FinTechファンドは、優れた金融関連テクノロジーを持ったベンチャー企業に投資を行うファンドで、みずほグループの経験や知識、ノウハウ、顧客基盤を活かしたサービスや金融商品の開発支援を行っています。
4:事業継承ファンド
日本では企業経営者の平均年齢は60歳前後になるとも言われています。そのような中で事業継承を円滑に行うということは大変重要な課題でもあります。
そこで組成されたのがこの事業継承ファンドで、資本性資金を供給し、幅広い事業継承ニーズに対応します。
5:6次産業化ファンド
6次産業化とは、農林漁業者(1次産業)が元々の農産物などの生産物の価値を高めることにより、農林漁業者の収入を向上していくことです。6次産業の「6」は農林漁業者(1次産業)、食品加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)で1×2×3=6から来ています。
6次産業化ファンドでは地域金融機関、株式会社農林漁業成長産業化支援機構とともに農林漁業の6次産業化に取り組む生産者や、事業者のサポートを行い、政府が推し進める「地方創生」における雇用創出や地域経済活性化に積極的に取り組んでいます。
みずほキャピタルの投資実績
みずほキャピタルは上でもご紹介の通り数多くの企業に投資を行ってきていますが、2014年度には焼き鳥居酒屋チェーンで知られる「鳥貴族」などを含む5社を株式上場に導いており、安定した実績を積み上げていっています。
みずほキャピタルのサポート体制
みずほ銀行という大きな金融機関のグループの一員であるみずほキャピタルでは、投資だけでなく、幅広いサポートを行っていることでも知られています。投資先によっては融資やIPOの主幹幹事なども行っているのです。
みずほフィナンシャルグループがサポートしている企業としては東京都多摩地区を中心に戸建にまつわる業務を提供している不動産会社である「アグレ都市デザイン」があります。アグレ都市デザインの有価証券報告書を見ればみずほフィナンシャルグループが投資だけではなく融資やIPOの主幹事(上場の申請を行った会社を支援する証券会社のこと)などのサポートを行っているということがわかります。
具体的には、以下のような内容です。
- 投資…2回に渡る第三者割当増資
- 融資…合計およそ10億円の融資
- IPO主幹幹事…上場の主幹事は「みずほ証券」
このように、みずほキャピタルから出資を受けることは、ただ出資による資金調達が行えるだけでなく、みずほフィナンシャルグループという大きな会社全体から支援を受けることが出来るというのが大きな特徴です。
みずほキャピタルから投資を受けるために
銀行系のベンチャーキャピタルであるみずほキャピタルから出資を受けるためには厳しい審査をクリアする必要があります。
ベンチャー企業の成長が利益に直接影響するため、どのベンチャーキャピタルでも企業の成長性や将来性に重点を置いていますが、みずほキャピタルの場合はそれがより顕著です。
現在既に成熟を迎えている分野より、今はまだ小さく無名でもこれから飛躍的に成長する可能性が見込める分野を優先します。
2011年には「アイリッジ」という会社に投資を実行。200万円ほどの赤字を抱えていたものの、これから高い成長が見込めると判断して投資を行った結果、2015年にはマザーズに株式上場を果たしました。
投資対象を選ぶ基準はシビアではあるものの、これから大きく成長することが見込めるベンチャー企業に対しては事業の初期段階だったとしても積極的な投資を行っているベンチャーキャピタルです。
まとめ
みずほ銀行やみずほ証券などみずほフィナンシャルグループの一員であるみずほキャピタルから出資を受けるということは、ただ資金を得ることが出来るというだけでなく、幅広いサポートでの企業成長支援を受けることが出来るということでもあります。
また、みずほキャピタルから出資を受けているということはそれだけで社会的な信用度も上がるため、次なる資金調達先を見つけることにも繋がります。
更に、みずほキャピタルに在籍している25名のキャピタリストのうち14日は投資業務経験10年以上というベテランキャピタリストです。今まで数多くの企業をIPOに導いていた経験、知識、ノウハウに基づいたサポートを受け、人脈なども活かすことが出来るというのは非常に心強い環境と言えるでしょう。