ベンチャー企業がm&aを成功させるための4つの極意と5つの事例

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今までになかった新しいビジネスモデルや技術によってイノベーションを起こし社会に新しい価値をもたらすベンチャー企業。多くの起業家がベンチャー企業での成功を夢見ていますが、成功するのはほんの一握り、1割にも満たないと言われています。

しかし、そんな厳しい業界でベンチャー企業は短い期間に急激に成長することを求められます。当初に思い描いたような成長がなければ投資を打ち切られ事業継続も困難になるでしょう。そこで重要になるのが、一体どのようなイグジットを目指すのかということです。

M&A(合併・買収)、IPO(新規上場)、非上場(長期経営)、ベンチャー企業のイグジットは大きく分けてこの3つがあります。

どんなイグジットを選択するのかによって、事業の未来は大きく変わることになります。それだけにこのイグジットを考えるということはとても重要なことです。

この記事ではそんなイグジットの中でも近年増加傾向にあり注目度が高まっているM&Aについて、IPOや非上場とも比較しながらより詳しくご説明していきます。

ベンチャー企業の3つの経営戦略

ベンチャー企業には大きく分けて3つの経営戦略があります。

中でもIPOやM&Aはベンチャー企業におけるイグジットとしてよく知られています。イグジット(EXIT)という言葉は元々は軍事用語で、被害を最小限に抑えつつ困難な状況から脱出する戦略のこと。ビジネスシーンでは投資資金を回収することや育てたベンチャー企業で利益を手にするための戦略を意味しています。

ベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けたいベンチャー企業にとってこのイグジットは大変重要で「どんな方法で、いつまでに、どれくらいの利益率でイグジットを達成させるか」ということをしっかりと計画しておく必要があります。このようなプラン設計なしにベンチャーキャピタルから出資を受けることは難しいでしょう。

IPO(新規上場)

IPOとは(Initial Public Offering)の略で、未上場企業が新たに上場することで、株を証券取引所で自由に売買出来るようにすることを指します。

ベンチャー企業は自社株の購入という形でベンチャーキャピタルや投資家たちから出資を受けます。そして、その投資回収の典型がIPOなのです。日本の多くのベンチャー企業やスタートアップ企業ではIPOによるイグジットが一般的とされてきました。

IPOのメリット

IPOでは上場する際に持ち株をある程度売却して、利益を得るというパターンが多いです。しかし、全ての持ち株を売ってしまう訳ではないため、IPO後も引き続き経営者が経営権を握っている状態を保つことができ、企業のさらなる成長を目指すことが出来ます。

また、IPOの影響はとても大きいものです。IPO以前と後では一気に株価が高騰するため、持ち株の売却によって大きな利益を手にすることが出来ます。場合によってはM&Aの方が大きな利益を得られることもありますが、一般的にはIPOの方が多くの利益を得られるでしょう。

この他、会社の知名度やブランド力が上がったり、信用性が向上し市場から資金調達先を見つける事が出来るようになるなど様々なメリットがあります。

  • IPO後も経営権は失われないため経営者として企業の成長を目指せる
  • 持ち株の売却によって大きな利益を得られる
  • 会社の知名度・ブランド力が上がる
  • 市場から資金調達先を見つけることが出来る

IPOのデメリット

大きな利益を手にする事ができたりとメリットも多いIPOですが、イグジットまでの道のりは簡単なものではありません。利益額や純資産額など数多くの条件を満たさなければならないだけでなく、IPOの監査を受ける必要があります。監査には莫大な費用と時間がかかります。そして何より、IPOを行える事業に成長させる必要がありますが、もちろんこれにも多額の費用がかかります。

そして、上場してからも上場管理にコストがかります。準備をしっかり行われなければ上場によって生じる負担に耐えきれなくなってしまう可能性もあり、実際にベンチャー企業の中では上場したものの下方修正を連発したり株価がどんどん下がっていってしまうという企業も少なくありません。

また、経営権は経営者が握ったままですが、従業員や株主、取引先などステークホルダー増加によって全ての経営方針を自分で決定させるということは難しくなることも考えられます。そして、IPOを行う際には膨大な数の書類を提出しなければならず、その手続自体が込み入っていてかなり複雑です。面倒な手続きは避けられないでしょう。

  • IPOによるイグジットを行うまでには費用・時間がかかる
  • 上場管理コストがかかる
  • ステークホルダー増加によって経営方針の全てを経営者が決定することが難しくなる
  • 手続きが煩雑

M&A(合併・買収)

M&Aとは企業同士の合併や買収のことです。M&Aではその企業をまるごと買収するということもあれば、事業部単位で買収することもあります。

M&Aのメリット

M&AではIPOよりも早くイグジットを実現することが出来るという特徴があります。IPOの場合、上でもご説明の通り様々な条件を満たす必要があったり、莫大な費用と時間が必要となります。

それに対してM&Aの場合は、相手企業が買収を申し出れば成立し、IPOのような複雑な手続きも必要ありません。赤字企業だったとしても将来性やシナジー効果が期待できればM&Aが実現する可能性もあるのです。

昨今は流行りはすぐに移り変わります。物凄いスピードで新しいものが生まれ、古いものが廃れていくという現代ではイグジットが出来ずに事業が失敗してしまうという可能性も高くなっています。そこでM&Aを活用すれば高確率でイグジットを実現出来るだけでなく、他社の経営ノウハウやシナジーによる事業拡大も期待出来るのです。

買い手が大企業ならば取引先だけでなく金融機関への信用力アップにも繋がるため今後の資金調達にもプラスに作用します。

  • IPOよりも早く高い確率でイグジットを達成出来る
  • IPOに比べてかかるコストが低い
  • 事業の将来性も評価対象
  • 他社のノウハウ、シナジーで事業拡大が期待できる
  • 買い手が大企業の場合、信用力がアップする

M&Aのデメリット

M&Aのデメリットとしては、経営権が買い手の企業に移るため経営者の権限が小さくなったり、無くなってしまう場合が考えられるということが一番大きいのではないでしょうか。M&A後も買い手企業の社員や子会社の経営陣として経営に引き続き関わっていくことが出来る場合もありますが、経営者権限はほとんど無くなる可能性が高いため注意が必要です。

また、M&Aの大半はIPOと比較するとイグジットの利益額が低くなっています。中にはIPO以上の利益を生むM&Aもありますが、利益が出ていない状況で売却を行えば企業価値は当然低くなります。

  • 経営者権限が少なくなる、無くなる
  • IPOよりもイグジット利益額が低い

非上場(長期経営)

ベンチャー企業の目指す経営戦略では少ないものの、IPOもM&Aもせずに安定した長期経営を目指すベンチャー企業も存在しています。

名前の知れた大企業は全て上場企業のように勘違いされてしまっていることも多いですが、海外ならばROLEX、LEGO、IKEAは非上場企業です。

日本では株式会社DMM.com、帝国データバンク、5大新聞社である産経、日経、読売、毎日、朝日など名の知れた非上場は数多く存在しています。

非上場のメリット

非上場のメリットとしては、株主の意見に左右されず思い通りに会社を経営することが出来るというのが最も大きいと言えるでしょう。長期的な利益を得るために赤字になってしまったという時にも誰かに文句を言われたり、経営方針に口出しをされることはなくなるわけです。

上に挙げた5大新聞社の場合、上場してしまえば「株主に不利な記事は掲載しない」など報道に偏りが出てしまうことも考えられます。新聞社が上場しないのはこのような理由からでしょう。

更に有価証券報告書の提出義務もないため事務的負担が上場した場合に比べて少なく、株を公開していないので買収されてしまう危険性もありません。

  • 株主の意見に左右されない自由な経営が可能
  • 買収される危険がない
  • 有価証券報告書の提出義務がない

非上場のデメリット

デメリットとしては、資金調達の方法が限られるというのがまず挙げられます。株式発行、融資などで資金調達を行いますが、非上場の場合が多くの資金を集めやすい株式発行による資金調達は行えず、資金不足に陥ってしまう可能性も考えられます。

また「上場企業」のステータスは企業の信用力にも影響するとても大きいのものです。財務状態の公表も義務付けられていないため外部からの評価や信用は上場企業と比較した場合では小さくなります。

経営に口出し出来る株主は、企業を監視する立場でもありました。しかし、非上場では外部の株主からの監視はないため、経営管理状態が健全でなくなってしまったり、経営トップが暴走するという可能性も考えられるのです。

  • 資金調達の手段が限られる
  • 上場企業というステータスや信用力がない
  • 株主の監視がないことで経営トップが暴走する可能性がある

ベンチャー企業のM&Aは年々増加している

日本ではIPOが一般的ですが、アメリカでは従来からM&Aでのイグジットが一般的でした。なぜなら、M&Aの方がより実現する可能性が高いからです。

日本でM&Aによるイグジットが少ないのはM&Aに対する「大企業の力に屈した」「身売り」などとネガティブなイメージが理由として挙げられます。

しかし、ここ数年で日本でのM&Aによるイグジット件数は増加しており、若手を含めてM&Aに前向きな起業家や経営者が増えているのです。IPOに比べ高い可能性でイグジットすることが出来るM&Aは今後もその数を増やしていくことになるでしょう。

ここではM&Aが増加している理由について、買収側と売却側に分けて詳しい理由を見ていきましょう。

M&Aが増加している理由・買い手側

技術が目まぐるしく進歩して言っている現代では大企業があれこれと一から準備していては流れに追いつくことはできません。そこで、将来性のあるベンチャー企業に目をつけるのです。買収することで自分たちの会社にはなかった技術・人材をすぐに手に入れることが可能となります。

これは事業領域の拡大にも繋がります。流行り廃りが激しい現代で生き残っていくためには特定の分野のみで安定した経営を行うということは困難です。しかしだからと言って今まで全く経験のない異業種に挑戦するのは失敗の確率も高くなります。そこで、既にその分野の販売網や顧客、ノウハウを持っているベンチャー企業を買収することでスムーズに異業種に参入を果たす事ができるようになります。

大企業にはないスピード感のあるベンチャー企業を買収することによってオープンイノベーションを加速させるという面もあります。これまでは製品やサービスの開発を自社だけで行うクローズドイノベーションが主流でしたが、世界の企業が高性能でありながら安価な製品を生み出して行く現代でイノベーションを起こすには自社の力だけでは不十分なのです。

M&Aが増加している理由・売り手側

売り手側のメリットとしては、上でもご説明の通りIPOよりもM&Aの方がより早くイグジットを実現出来るということです。IPOを行えば莫大な利益を得ることができますが、そこに到達するまでの道のりは長く、費用も時間もかかるため大きなリスクを伴うのです。M&Aでならこのようなリスク無しに高確率でイグジットを達成することが出来るようになります。

相手企業とのシナジーが期待できるというのもM&Aが増えている理由の1つとなっています。今まではマイナス面ばかりが語られていたM&Aですが、ベンチャー企業としてはより大きな会社のリソースを活用出来るようになるというメリットもあるのです。技術、人材、資金などお互いに協力することでシナジーが期待できます。ベンチャー企業は資金難に苦しむことも少なくないですが、M&Aによってより大きな成長が見込めるでしょう。

シリアルアントレプレナー(連続して何度も新しい事業を立ち上げる起業家)の場合、会社を大きくすることにこだわらずある程度会社が成長したら売却し、そしてその利益を新たな事業の運転資金とします。最近はこのような若いベンチャー起業家が増えています。

ベンチャー企業のM&A成功のための4つの極意

それでは、M&Aをベンチャーのイグジットにしたいと考えている場合、どのようにすればM&Aを成功に導く事ができるのでしょうか?覚えておくべきことは4つです。これから1つ1つ詳しくご説明していきます。

1、業績が上昇している時に売却する

M&Aを行う際にはタイミングも重要です。M&Aを行うタイミングとしては業績が右肩上がりになっている時がベストとなっています。そうすることで、買い手に将来性のある会社だと思ってもらうことが出来るのです。

M&Aでは先行投資で赤字となっている場合、ほとんどがマイナス要因にはならず、それよりも売り上げの伸び方の方が重視される傾向にあります。

2、競合の居ない市場

他に競合がいない市場の方がM&Aしてもらえる確率は高くなります。ベンチャー企業が当初と事業を転換した上で経営を行うということも少なくなく、経営の途中からM&Aでのイグジットを考えるならば競合のいないこれからより売れやすいと思える事業に転換することも1つの手段と言えます。

競合がいない市場を狙うことで買い手側にも事業を発展させやすいというメリットがあるのです。

3、その時の業界トレンド

ITバブルだった頃には、IT企業関連のIPOならば何でも高騰していました。しかし、現在では有名なIT関連企業でもそこまで高騰することはありません。

現在では、トレンドに乗った将来性のあるベンチャー企業がM&Aにより高い買収額で買われることが多くなっています。自動運転やloTという事業に関わっているベンチャー企業はM&Aでもかなり高額で買われており、成長産業のベンチャー企業は多くの企業から注目されています。

4、買収後PMI

PMI(Post Merger Integration)とは当初計画していたM&A後の効果を最大化させるためのもので、簡単に言えば買収した企業のマネジメントを行うということです。このPMIはとても重要で、怠ってしまえば買収した企業の社員の流出や顧客離れなど数多くの問題が発生します。

買い手側だけなく売り手側も何らかのシナジーを期待してM&Aを行うわけですが、PMIを怠れば業績が低下してしまうことも考えられるため注意が必要です。

ベンチャー企業のM&A・5つの成功事例

気になるのが具体的なベンチャー企業のM&Aの成功事例ではないでしょうか?実は、ベンチャー企業は大企業に買収されるだけでなく、他企業を買収している企業も存在しています。

それらの企業も合わせて、これからM&Aの5つの成功事例をご紹介していきます。

成功事例その1「Facebook」

学生ベンチャーから物凄いスピードで世界の大企業となったFacebookがここまで大きくなったのにもベンチャー企業のM&A戦略が関わっています。

Facebookは会社ではなく、優秀な人材を自分のところに取り込むことを目的としてM&Aを繰り返し行いました。シナジーが期待出来るなら国は関係なく、様々な国の企業にM&Aを仕掛けています。

そしてFacebookと言えば有名なのがInstagramの買収ですよね。この時は人材ではなく、Instagramのサービスに魅力を感じ、810億円という莫大な買収額でM&Aを行いました。これによって大きなシナジーが生まれ、両者は大きく成長していきました。

成功事例その2「富士フイルム」

積極的なM&Aを行っている富士フイルムではカメラのフィルム技術を医療に応用するという試みに挑戦しており、アメリカの再生医療ベンチャー「セルラー・ダイナミックス・インターナショナル」を2015年に368億円で買収。iPS細胞を使った再生医療を先陣切って進めています。

成功事例その3「資生堂」

化粧品で有名な資生堂は「資生堂ベンチャーパートナーズ」という、将来有望なベンチャー企業に投資する会社を運営しており、積極的にベンチャー企業への支援を行っている企業です。

AIを使ったヘルスケア事業「Finc」を買収したり、積極的に国内外のテック系ベンチャー企業にM&Aを行ってオープンイノベーションを起こしたりと、3年計画で「世界で勝てる資生堂」を作り上げようとしています。

成功事例その4「XTech」

スタートアップを複数生み出し支援するスタートアップスタジオという分野の事業を行うXTechは2018年1月に創設されました。

そんな立ち上がったばかりのXTechがポータルサイトを運営しているエキサイトや地球の歩き方T&Eを買収。これはかなり話題になり、この先どのように展開していくのか、成功を収めることになるのかなどが注目されています。

成功事例その5「クックパッド」

クックパッドはここ数年で急激に成長しました。そのきっかけとなったのが2014年のM&Aです。クックパッドは海外のレシピサイトに対して集中的なM&Aを行いました。

このようにクックパッドは海外展開に力を注いでおり、言語も数多くの国に対応しています。しかしそれだけでなく、買収後のPMIについてもしっかり検討しています。

その国の文化や習慣により馴染むことができるように細かな修正を繰り返すことを徹底した結果、クックパッドは海外でも成功を収めました。

まとめ

ベンチャー企業のイグジットについて、M&Aを成功させる極意、そして具体的な事例についてが以上になります。

かつて日本ではマイナスイメージの大きかったM&Aは現在では有効なイグジットの手段として捉えられており、数多くのベンチャー起業家がM&Aでのイグジットを果たしています。

M&Aの他にもIPOや非上場という選択肢もありますが、いつ、どんんな方法でのイグジットを行うのかということはとても大切です。創業時点である程度目標を定めたとしても、事業のスケールやその後の成長によって、どのようなイグジットを目指すかということはその時で変化することもあるでしょう。

必要ならば戦略を変えたり、事業を転換させたりと、訪れる転機にもその都度柔軟に検討することが重要です。

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