
近年、医療機関にもITが注目されてきているのはご存知でしょうか?
中でも今まで紙で管理していた患者の情報をコンピューターで管理できる電子カルテが注目を浴びています。
しかし、利用するのにも多額の費用がかかるためなかなか導入できずにいる医療機関が多いのが現状です。
本記事では、そんな電子カルテを導入する際に使える補助金とはどんなものなのか、導入にあたっての注意点について3つご紹介します。
IT導入補助金とは
そもそも電子カルテを導入するにあたってどんなところに費用がかかるのか確認しておきましょう。
かかる費用は、その製品によって異なりますが、よく掛かる例として、ネットワーク環境の準備、システムを維持するための様々な部分のコスト(月額料金、保守料金、アフターフォローにかかる金額等)、カルテを扱うファイリングシステムの準備、閲覧のためのパソコン、その他ネットワーク機器の準備などがあります。
どの電子カルテも基本的に10万円では収まらないほど高価です。
基本的に10万円〜15万円以上かかるこうかな製品が多いのが現状です。
そんなコストを一部負担してくれる制度がIT導入補助金です。
用途はIT導入に関することに限られますが、比較的使いやすいという点から申請を検討されている方も多くいます。
補助金(IT導入補助金)とはどんなもの?
次に補助金(IT導入補助金)とはどんなものなのかについて詳しく紹介します。
IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)は、中小企業・小規模事業者などが自社の課題を克服するため等に活用できるITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。
補助対象者は、中小企業や小規模事業者等です。
医療だけでなく、飲食や宿泊、介護、保育等も対象となります。
医療法人の場合、申請対象は、“常時使用する従業員の数が300人以下のもの”とされています。
申請要件を一部抜粋してご紹介します。
・交付申請時点において、日本国において登録されている個人または法人であり、日本国内で事業を行っていること
・補助事業を通して取得したソフトウェア等を重要な資産として保護・管理するとともに、セキュリティ確保及び個人情報保護の観点を踏まえて、適切に情報を取り扱うこと
・交付申請に必要な情報を入力し、添付資料を必ず提出すること
・交付申請の際、1申請事業者につき、1つの携帯電話番号を登録すること(登録された携帯電話番号宛にSMSにて、申請に必要なパスワード等の通知を行う)また、登録された携帯電話番号に対し事務局からの連絡があった際には応じること。
・補助事業を実施することによる労働生産性の伸び率の向上について、1年後の伸び率が3%以上、3年後の伸び率が9%以上及びこれらと同等以上の、数値目標を作成すること
・交付申請の内容については、IT導入支援事業者を含む”第三者”による総括的な確認を受けること
・IT導入支援事業者と確認を行ったうえで、生産性向上に係る情報(売上、原価、従業員数及び就業時間)等を事務局に報告すること
・補助事業に係るすべての情報について、事務教区から国及び独立行政法人中小企業基盤整備機構に報告された後、統計的な処理等をされて匿名性を確保しつつ公表される場合があることについて同意すること
また、IT導入補助金の手続きにあたって、事業計画の作成、法人の履歴事項全部証明書の写し、開業届控えの写し(個人事業主の場合)、 申請書など、準備しなければいけないものもあります。
公募要領、詳細はサービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイトに詳しく書いてあるので確認してみてください。
こちらの補助金はA類型・B類型に分けられており、それぞれ補助額、事業実施効果報告の回数、要件等異なる部分があります。
【A類型】
・“業務パッケージソフト”、“効率化パッケージソフト”、“汎用パッケージソフト”の中から2つ以上の組み合わせとなり、①〜⑧のプロセスのうち最低1つ以上を含んでいるITツールを申請すること。
・上記を満たしていれば、“オプション”、“役務”にかかる各費用も補助対象。
・補助額は30万以上150万円未満。
・事業実施効果報告は、期間内の3回
・補助率上限 費用の50%以下
【B類型】
・“業務パッケージソフト”、“効率化パッケージソフト”、“汎用パッケージソフト”の中から5つ以上の組み合わせとなり、①〜⑧のプロセスのうち最低3つ以上を含んでいるITツールを申請すること。
・上記を満たしていれば、“オプション”、“役務”にかかる各費用も補助対象。
・補助額は150万以上450万円未満。
・事業実施効果報告は、期間内の5回
・補助率上限 費用の50%以下
となっています。
「電子カルテ」はA類型に分類され、
⑤業務固有プロセス(実行系)
訪問診療管理(計画書・スケジュール・報告書作成・記録)
診療管理(症状・処置・処方・経過・カルテ記録等)
入院情報管理(病棟・病床管理、食事・栄養管理)
⑥業務固有プロセス(支援系)
医療デジタル画像管理・閲覧
対象者状態管理(顔認証画像解説、入退室管理、センサーによる睡眠 等)
⑩汎用プロセス
業種、業務が限定されないソフトウェア
のプロセスが満たせるITツールを選んだら申請ができるでしょう。
B類型の3つ以上というのはかなり広範囲になるので、申請するのは少し難しいかもしれません。
IT導入補助金を導入する際に注意すべきこと3点
大きな病院ではすでに導入されている電子カルテですが、中小規模の病院ではまだ導入していないところが多数あります。
そして、導入を検討する中で補助金を使って少しでも安く導入してほしいと思っております。
しかし、補助金申請を行う際の注意点もいくつかあるので、次は上記に記載した補助金申請の際の注意点について3つご紹介します。
1. IT導入事業者を選ぶ
2. 補助金対象になるITツールを選ぶ
3. 契約や支払いは決定まで待つ。
次項で詳しく解説していきます。
1.IT導入支援事業者を選ぶ
電子カルテの導入でIT導入補助金を活用するにあたってはまず、IT導入支援事業者を選ぶことが重要となるでしょう。
例えば、病院がIT導入補助金を使って電子カルテを検討している場合、システムの構築などは、外部のITサービス事業者に発注することになります。
しかし、IT導入補助金はすべてのサービス事業者が対象になっているわけではないので注意が必要です。
IT導入補助金事務局はITベンダーやサービス事業者を“申請者とともに補助事業を実施する共同事業者”と考えており、一定の要件を満たした業者を「IT導入支援事業者」として登録しています。
IT導入支援事業者として登録していないITベンダーやサービス事業者を利用した場合、内容に関わらず、補助金対象にならないため、注意が必要です。
2.補助金対象になるITツールを選ぶ
IT導入支援事業者が提供するITツールならどのようなものも補助対象になるわけではありません。
IT導入支援事業者が扱う製品を申請し、事務局に採択され、登録されたもののみ、対象になります。
そのため、IT導入支援事業者であっても、導入するツールにより補助を受けられるものとそうではないものに分かれるので注意が必要です。
ITベンダーやサービス事業者のなかでIT導入支援事業者を選ぶだけでなく、しっかり、そのITツールが補助対象になるものなのかどうか、確認しておきましょう。
具体的に補助金の対象とならないITツールの例は、
・タブレットやPCなどのハードウェアの購入
・独自システムの開発やソフトウェアの大幅なカスタマイズ
等があります。
3.契約、支払いは決定までしない
IT導入補助金は、“これから導入するツール”が対象になっている制度です。
ですので、申請前や交付決定前に導入したツールは対象外となってしまいます。
また、導入前や支払い前であっても申請や交付決定前に契約を交わしてしまうと対象外となります。
せっかく導入したいと思っても先走って契約・支払いをしたことによって補助の対象外になってしまうのはもったいないですよね。
申請のときに事業者とITツールを決定していたとしても、契約や支払い、導入を行うのは申請・決定が確定するまで待ちましょう。
IT導入事業者やITツールの検索は、インターネットで調べると、地域ごとの登録事業者を確認できるので、しっかり調べましょう。
また、IT支援事業者は仕事上パートナーとなります。
ですので、簡単にコストだけで判断するのではなく、実際に話を聞いた上での総合的判断や、提案、サービス内容をよく考慮し、最後までしっかりサポートを行ってくれる事業者を選ぶようにしましょう。
まとめ
以上、電子カルテ導入に使える補助金についてと補助金申請の際の注意点について紹介しました。
最後に今回の記事をもう一度おさらいしておきます。
・電子カルテ導入には一定の条件を満たせば申請できる補助金制度がある。
・IT導入補助金にはA類型とB類型がある。
・この補助金を受ける際の注意点3つ
1. IT導入事業者を選ぶ
2. 補助金対象になるITツールを選ぶ
3. 契約や支払いは決定まで待つ。
電子カルテは、紙カルテに比べて情報共有を早く行うことができる、個人情報の管理がより正確になる、医療の質や安全性を高めるなどたくさんのメリットがあります。
ぜひ、導入を検討される方はIT導入補助金についてよく調べ、自分の医院にはどれが当てはまるのか、メリット・デメリットを理解して、正しい判断をしてください。
また、導入した後のこともしっかりと考え、電子カルテを使い続けるだけの余裕があるのかというのもしっかり考えることも大切です。
そして紙カルテから電子カルテに変更の際には従業員の方の理解も得た上で、みなさんがより仕事しやすい環境になることを願っております。