ファクタリングと融資9つの違い&売掛金担保融資(ABL)とは?

ファクタリング

資金調達を行ないたいと思った時に多くの人が思い浮かべるの銀行や日本政策金融公庫からの「融資」ではないでしょうか?しかし、融資は審査が厳しく、担保や保証人が必要だったりと資金を調達するまでが大変です。

また、日本政策金融公庫の場合には審査や手続きかなり時間がかかるという特徴があります。最短でも1ヶ月はかかるため、急ぎで資金調達を行ないたいという場合には向いていません。

そこで、今注目されているのが「ファクタリング」という売掛債権を早期に資金化することが出来るサービスです。

アメリカやヨーロッパでは昔から広く認知されている資金調達方法の一つであるファクタリングは日本ではあまり知られていませんでしたが、最近になってファクタリングを利用して資金調達を行う人も増えているようです。

ファクタリングと融資には一体どんな違いがあるのか?9つの違いについてご説明していきます。また、ファクタリングと混同されがちな売掛金担保融資(ABL)についてもご説明しますので今後の資金調達の参考にしてみてください。

ファクタリングとは

ファクタリングとは、企業が保有している売掛金(債権)をファクタリング会社に売却することで早期に資金化する方法のことです。

企業間取引では通常、取引の度に現金で支払いをするということはありません。それでは手間も事務コストもかかってしまうからです。

企業間では「掛取引」と言って、一定期間に発生した商品代金を後でまとめて支払うという取引方法を取っています。たとえば「月末締め翌月末払い」なら当月1日~末日までの代金を翌月の末日までに支払うということです。

この掛取引の際に発生するのが「売掛金」です。売掛金とは、掛取引によって販売した商品代金を支払い期日になったら受け取ることが出来る権利のことです。売掛金を保有しているということは後日現金が入るということですが、逆に言えばすぐに現金化することは出来ないということでもあります。

そこで、ファクタリングを利用して売掛金を売却し早期に資金化するというわけです。一般的にファクタリングと言えば買取ファクタリングになりますが、買取ファクタリングには以下の2種類があります。

  • 2社間ファクタリング
  • 3社間ファクタリング

2社間ファクタリングは「利用者」と「ファクタリング会社」の2社で契約し、3社間ファクタリングは「利用者」と「ファクタリング会社」と「売掛先」の3社で契約を行ないます。

手数料や償還請求権、債権譲渡通知についてなど同じファクタリングでも異なりますので利用する際にはしっかりと違いを見極めてから利用することが大切です。

融資とは

融資とは、事業拡大や運転資金のために金融機関から借り入れして資金を調達する方法のことです。簡単に言えば借金ですが、借金は消費を目的にしていることに対し、融資は事業で利益を生むことが目的だという違いがあります。

融資には4つの形態があります。

  1. 当座貸越…限度額範囲内なら自由にお金を借り入れしたり返済したり出来る融資方法
  2. 証書貸付…金銭消費貸借契約証書と呼ばれる借り入れ契約を交わして融資を受ける方法で、返済期間が1年以上になる場合の長期の融資で用いられる
  3. 手形貸付…金銭消費貸借契約証書の代わりに約束手形を発行して融資を受ける方法で、短期の借り入れを目的にしている事が多い。比較的受けやすい融資
  4. 手形割引…受取手形を金融機関に買取してもらうという融資方法(後でお金を受け取る事ができる権利を担保にしてお金を借りるというイメージ)

また、融資をしてくれる金融機関はいくつかありますが、大きく分けると以下の2つとなります。

  • 公的融資…国、地方自治体による融資(日本政策金融公庫、制度融資)
  • 民間融資…都市銀行、地方銀行、信用金庫などによる融資

ファクタリングと融資の9つの違い

このようにファクタリングと融資はそもそもその仕組みが異なっている訳ですが、他には一体どのような違いがあるのでしょうか?

資金調達を行う上で気になる違いについて、これからご紹介していきたいと思います。資金調達したい額はどのくらいなのか、資金調達する上でどんな点を重視するのかなど、細かい点について考えながら一つ一つチェックしていきましょう。

違い1「資金調達可能な金額」

気になるのが資金調達可能な金額ではないでしょうか?これにははっきりした違いがあります。ファクタリングの場合は売掛金の譲渡のため、売掛金の金額以上の資金調達をすることは出来ません。また、基本的に月商以上を資金化することは難しいでしょう。

融資の場合は会社の規模によっても借り入れ可能な金額が異なります。小さな会社の場合は300万円ほどから、大きな会社になれば3億円程度まで借り入れが可能です。

  • ファクタリング…売掛金の金額が上限額
  • 融資…300万円~3億円

違い2「追加の資金調達」

一度資金調達を行ったものの、もっと資金が必要になってしまった…そんな時は追加の資金調達が必要になりますよね。融資の場合、融資を受けた後にすぐに追加融資を受けるということは難しくなっています。そもそも融資は審査も厳しく、融資の度に審査が行われるのでどうしても時間がかかってしまうのです。

ファクタリングの場合は売却可能な売掛金があればまたすぐに利用して資金を調達することが可能です。

  • ファクタリング…すぐに追加の資金調達を行える
  • 融資…すぐに追加融資を受けることは難しい

違い3「利用料金」

ファクタリングも融資も資金調達することが出来る「サービス」です。サービスを利用するのには当然、利用料金が発生します。

ファクタリングの場合は「ファクタリング手数料」が発生しますが、手数料は2社間ファクタリングと3社間ファクタリングで大きく異なっています。ファクタリング会社が負うリスクの多くなる2社間ファクタリングは手数料が高くなる傾向にあります。

融資の場合、「利息や保証料」という形で利用料金が発生します。ファクタリングに比べてかかる費用は安くなりますがファクタリングに比べて審査が厳しく、通らない場合もあります。

  • ファクタリング…利用料金は高め(ファクタリング手数料)
  • 融資…利用料金は安め(利息や保証料)

違い4「資金化スピード」

資金調達の際に気になるポイントとして資金化スピードは大きなポイントになりますよね。融資のハードルが高くなるのは審査の厳しさの他に、資金調達までにかかる期間が1~3ヶ月とかなり時間がかかってしまいます。

対して、ファクタリングはファクタリング会社や契約内容によっても異なりますが最短で1日という早さで売掛金を資金化することが可能となっています。融資に比べて資金化までのスピードが圧倒的に早いため、すぐに運転資金がすぐに手元に欲しいという場合にはファクタリングが向いています。

  • ファクタリング…最短1日で資金化が可能
  • 融資…資金化までには1~3ヶ月が必要

違い5「返済期間」

返済までの期間についても比べてみましょう。融資の場合、形態によっても異なりますが1~15年程度と返済期間は長期間となります。

ファクタリングの場合は売掛先から売掛金が支払われるタイミングとなるため大体30~45日程度です。(2社間ファクタリングの場合は利用会社が売掛金を回収しファクタリング会社に支払う必要がありますが、3社間ファクタリングは売掛先が直接ファクタリング会社に売掛金を支払います)

  • ファクタリング…30~45日ほど
  • 融資…1~15年ほど

違い6「返済方法」

融資の場合、基本的に分割払いでは借り入れした金額を返済していきます。ファクタリングは売掛金が回収出来た時点でファクタリング会社に一括で支払いを行ないます。

  • ファクタリング…一括返済
  • 融資…分割返済

違い7「審査基準」

ファクタリングや融資での資金調達を考えている人の多くが気になっているのが審査基準ではないでしょうか?融資の場合、ファクタリングよりも条件は厳しくなります。過去の決算書、個人資産の有無、担保設定、今期の試算表のチェックなどが行われます。

融資の審査の場合に重視されるのは「この企業にお金を貸して確実に返ってくるのか」ということです。既に他の金融機関から借り入れしている場合や遅延や滞納があると返済が難しくなることが考えられるため、審査に通らない可能性も高くなります。

これに対し、ファクタリングでは利用者よりも「この売掛先はきちんと売掛金を支払ってくれるのかどうか」ということを重視しています。売掛金の売買を行うファクタリングでは売掛金の権利はファクタリング会社に移ることになるため、極端な話、利用者の会社が倒産してしまっても売掛先さえ無事なら売掛金を回収できるため何の問題もないのです。

  • ファクタリング…売掛先の信用力を重視
  • 融資…利用者の信用力を重視

違い8「審査に落ちてしまうパターン」

では、どのような場合、審査が通らずファクタリングや融資が出来なくなってしまうのでしょうか?

ファクタリングの場合、個人相手の債権の買取を行っていない場合があります。また、口座差し押さえの可能性がある場合や審査の際に必要な証拠書類が不十分という場合にも審査に落ちてしまうことがあります。

融資の場合、税金を滞納していたり、度々支払いの遅延を起こしていたり、他の金融機関から借り入れをしている場合などは審査が通らない可能性が高くなります。

【ファクタリング】

  • 個人相手の債権
  • 口座差し押さえの可能性がある
  • 証拠書類が不十分

【融資】

  • 税金の滞納がある
  • 支払い遅延がある
  • 他の金融機関から借り入れをしている

違い9「決算書・信用情報に与える影響」

銀行融資やビジネスローンを利用したいという時には審査が行われますが、そこで重視されているのが会社の経営状況がわかる「決算書」や借り入れ状況・滞納や遅延がないかが登録されている「信用情報」です。

融資の場合は借り入れとして貸借対照表に記載しなければならない上、信用情報にも登録されるため、今後融資を受けたいという際の審査に影響します。

しかしファクタリングの場合は貸借対照表に借り入れとして計上されることはなく、売掛金が手数料を引かれて現金に変わった状態になるだけなので影響が少なくなるのです

  • ファクタリング…決算書・信用情報に与える影響が少ない
  • 融資…決算書・信用情報に与える影響が大きい

売掛金担保融資(ABL)とは?

ファクタリングは売掛金を売却し資金調達する「債権譲渡」であるのに対し、融資は金銭の「借り入れ」だと上でもご説明しましたが、融資方法には売掛金を担保にして融資を受ける売掛金担保融資(ABL)という方法も存在しています。

売掛金を利用して資金調達を行うという点でファクタリングと売掛金担保融資(ABL)は似ていますが、この2つは全く別のものです。

  • 契約内容の違い…売掛金担保融資(ABL)は「貸付の契約」、ファクタリングは「売掛金の譲渡契約」
  • 会計上の違い…売掛金担保融資(ABL)は「負債」、ファクタリングは「売掛金が解消」されるのみ
  • 返済方法の違い…売掛金担保融資(ABL)は「利用者が支払う毎月の支払い額・支払い日」を決める、ファクタリングは「売掛先が売掛金を支払う」ため利用者が返済する必要はない(3社間ファクタリングの場合)
  • 利息や手数料の違い…売掛金担保融資(ABL)は「利息が発生する」、ファクタリングは「利息は発生せず手数料がかかる」

まとめ

ファクタリングと融資の違い、そして売掛金担保融資(ABL)についてご説明させて頂きました。

どれも資金調達方法ということでは同じですが、資金調達可能な金額や審査、決算書や信用情報への影響は異なっています。これらの方法で資金調達を行う際にはそれぞれの方法のメリット・デメリットをしっかりと踏まえた上で一番適したものを利用するようにしましょう。

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