事業資金を上手に借り換えすれば「返済総額を軽減」するなど、大きな効果が期待できます。
ただし、借り換えをするにはメリットだけでなく、デメリットについても知っておく必要があります。
そこで今回は「事業資金の借り換えの注意点!」と題して、銀行融資で借り換えるメリットとデメリットについて、徹底解説したいと思います。
INDEX
事業資金の借り換えとは?
「事業資金の借換え」とは、その名の通り事業資金を他のローンや融資制度に借り換えることを指します。
例えば住宅ローンを利用する場合は、より金利が低いローンへ借り換えを検討される方は多いでしょう。
また、キャッシングなど複数の借入を整理するために「おまとめローン」を利用される方は多いですが「事業資金」の場合も、ほぼ同じ仕組みで融資が行われます。
なお事業資金(じぎょうしきん)は、事業を立ち上げる場合や、事業運営を進めるために必要な資金を指します。
創業に掛かる費用(スタートアップ資金)のほか、運転資金、つなぎ資金、設備投資などに事業資金が利用されます。
(※ 本記事の「事業費」は、保険契約用語における「契約募集や維持管理の費用」とは異なります)。
事業に必要な資金の4つ
■ 創業、開業資金(スタートアップ資金)
■ 運転資金
■ つなぎ資金
■ 設備投資
このほかにも、事業を行うには以下のような費用が掛かります。
事業に必要な運転資金や経費
人件費(給与賃金も含む) | 企業の「人」に関わる費用全般のこと
例:従業員の給与/ボーナス/保険費用/臨時雇用費 |
地代家賃 | 企業の「場所」に関わる費用のこと
管理費/共益費/清掃費/賃貸費/レンタル・リース費/その他維持費 |
光熱費 | 企業の使用する電灯や燃料に関わる費用のこと
電気/ガス/水道費 |
設備費 | 建物/生産設備/調度家具/事務機器/IT機器 |
外注費 | 工賃・外部への委託作業費/ホームページ作成費など |
租税公課 | 事業税/固定資産税/自動車税/不動産取得税/自動車取得税/自動車重量税/酒税/印紙税/揮発油税/納付消費税 |
交通費 | 車両維持/交通費/通勤費 |
広告宣伝費 | 広告/メルマガ発行/展示会参加/カタログ作成 |
交際費 | 接待/慶弔/服飾 |
開発費 | 開発/ビジネスにおける投資 |
仕入れ | 商品や原材料の購入代金 |
福利厚生費 | 従業員の慰安会費/医療費/雇用保険/退職共済掛金など |
通信費 | ハガキ・切手代/電報料/電話・通信費用 |
消耗品費 | 使用可能期間が1年未満のものや取得価額が10万円以下の事務用品、消耗品など |
損害保険料 | 棚卸資産や事業用資産に対する火災保険料・損害保険料 |
旅費交通費 | 仕入れや出張に掛かった旅費・宿泊費 |
荷造運賃 | 商品発送に必要な包装材料、郵送に掛かった運賃・輸送費 |
研修費 | 事業に必要なセミナー・研修の受講にかかる費用 |
利子割引料 | 事業用の借入金の支払利子や受取手形の割引料 |
減価償却費 | 建物や車両などの償却資産についてかかる償却費(取得費用10万円以上) |
その他 | 上記以外の費用 |
もちろん業種によって必要な費用は異なります。
例えば、個人で事務所を構える場合は、商品を扱うのではなく「サービス」を扱うため仕入れなどのコストは掛からず、100万円以下の費用で開業することも可能です。
これに対し、実店舗や会社を構える、設備投資にコストを掛ける場合は、1,000万円から数億を超えるコストが掛かってもおかしくありません。
特に医療関係、病院などを経営される方は、専門のローンを組んで資金調達を行います。
専門性が高くなればなるほど、機械やメンテナンス費用等にお金が掛かるので、必要な資金は膨らみます。
どのジャンルの事業においても「資金が足りなくなった」場合、必要に応じて「現在利用している事業融資から、別の事業融資」に乗り換えるため、事業資金の乗り換えを行います。
重要なのが、高金利の融資 ⇒ 低金利の融資商品という事です。
実際に、事業資金が上手に借り換えできれば、抱えている負債を圧縮し「返済総額」を少なくすることができます。
また月々の返済金額が少なくなれば、資金繰りにも大きなゆとりが生まれます。
借り換えとリスケジュールの違い
借り換えとは、現在利用している融資商品から、より貸付条件が良い融資商品(金利が低い等)へと乗り換えをすることです。
また、複数ある負債を一本化する「おまとめローン」についても、他の金融機関からサービスを乗り換えるという意味で「借り換え」を行っていることになります。
おまとめローンとは(意味と目的)
複数の債務を1つにまとめるローンや融資商品を指します。ただし、利用枠の大きなローンを「おまとめローン」として利用する人も多いです。
借り換えローンとは(意味と目的)
高金利のローンから、低金利ローンへの「乗り換え」を目的としたローンです。
主に、利息が低い銀行ローンや銀行系消費者金融のカードローンが利用されています。このほか、事業者の間でも利息の低いビジネスローンを「借り換えやおまとめ目的」で利用することがあります。
借り換えのメリットについて
①利息が安くなる
借り換えの目的は、これにあります。借入先が都市銀行や信用金庫によっても異なりますが、金利が約2%~3%以上の会社様は、毎年見直してみるとよいでしょう。
なお、毎年の見直し時期ですが、会社の決算が終わったときが良いと思います。決算が終わったら、決算書を銀行に出しますよね。
そのときに郵送ではなく手渡しで決算書を渡すようにして銀行担当者会ってみましょう。
そのときに金利の見直しをお願いしてみるとよいと思います。
最近借り換えされた弊事務所の顧問先様は、金利が約2.9%から約1.5%に変更することができました。
これは極端な例ですが、例え0.3%でも下げることができれば、借入金の元本次第ではありますが、大きな金額になります。
もちろん、銀行からの金利は、「その会社の評価(格付け)」、「その銀行との取引が長いか」「不動産担保の評価」といった事項を総合的に見て判断されますので一概にこうなるとは言えません。
なお、私の個人的な感覚ですが、都市銀行よりは街の信用金庫の方が、金利が低く、また融通がきくと思います。
ですから、都市銀行から借り入れをされている方は、信用金庫への借り換えを検討されても良いかもしれませんね。
費用がかかるデメリットについて
借り換えには色々と費用がかかります。
一般的には、次の費用が考えられます。
■借り換え手数料
■不動産担保の名義変更(登記手数料)
■保証料
借り換え手数料
借り換え手数料は、「今の銀行に払う手数料」と「新規に借りる銀行」との二つです。
いずれも数万円ずつで済むことが一般的ですから、あまり心配されることはないでしょう。
問題は、借り換えをすると、現在の銀行に違約金が発生する場合がある、ということです。
例えば、「10年以内に繰り上げ返済した場合は、借入残高の*%を払う」といった具合にです。
場合によっては、数十万円から数百万の違約金が発生してしまうかもしれませんので、必ず事前に確認してから借り換えすべきです。
不動産担保の名義変更費用
不動産を担保につけている方は、今の銀行から新銀行へ、担保の付け替えをしなければなりません。
具体的には、銀行と提携している司法書士にお願いして、担保の付け替え手続きをしてもらいます。
これにも費用がかかります。内訳は「登録免許税」と「司法書士への報酬」です。
登録免許税は、「借入金の元本×0.4%」がかかります。借入金が1億円であれば40万円かかるということです。
司法書士への報酬は、借入金の金額によっても変わりますが、約10万円以下には収まるでしょう。
借入金が大きくなりますと、登録免許税も高くなってしまいます。
この費用も考えて借り換えをするか判断しましょう。
保証料
保証協会をつけて融資をされている方は、保証料も新たにお支払いする必要があります。
ですが、普通は以前払った保証料の一部が戻ってくるはずですから、大きな追加負担はないでしょう。
取引をやめた銀行からは融資が受けにくくなるかもしれない
銀行も普通の商店と変わりません。お取引が長ければ、色々と融通を利かしてくれるものです。
ですが、借り換えをすると、前の銀行とは取引がなくなってしまいます。
その結果、前の銀行から新たに融資を受けたい場合は、今までよりも時間がかかってしまったり、融資を受けにくくなってしまう場合もあるかもしれません。
前の銀行さんが信用金庫であれば、毎月の積み立て預金を続けたり、新たに定期預金をつくってあげたりして、とりあえずの顔つなぎをしてもよいかもしれませんね。
制度融資をチェックしましょう
各自治体(都や区といった役所)が、「制度融資」という制度をおこなっています。
(名前は、制度融資、融資制度、商工業融資、といった風に、自治体ごとに違う場合があります)
これは、役所を通して借り入れすることにより、役所から利息や保証料の補助がでる、という制度です。
実際の手続きは、次の通りです。
①「役所の審査を受ける」
②「銀行から借りる」
③「役所から補助金が振り込まれる」
まずは役所に書類を出して、お金を何に使いたいか、審査を受ける必要があります。
審査が通りましたら、その後に銀行から借りることになります。
そして、(役所ごとに違いますが)半年~1年くらいたって、役所から利息や保証料の補助金がでます。
「中央区のホームページ」では、色々な例がのっています。
役所ごとに色々な融資制度がありますし、毎年変更されます。
役所が補助をしてくれるわけですから、毎年役所のホームページをチェックして、当てはまるものがあれば、積極的に検討してみましょう。
借入金をうまく使いましょう
借り換えにしても、制度融資にしても、定期的な見直し・チェックが必要です。
特に、借り換えの検討は大切です。
銀行は、お付き合いが長い場所に関しては、優遇する傾向にありますので、乗り換えの際は引き止めてくる場合が多く存在します。
他行借り換えの注意点は3つ!
他行で借り換えをする際、気をつけたいポイントは以下3つです。
他行借り換えの注意点は3つ!
■ 複数の銀行で、金利を良く比較する
■ 借り換え後のシミュレーションを行う
■ 必要な手数料について調べておく
まず、他行で借り換えをする際には、すぐに契約をするのではなく、複数の銀行でそれぞれのローンを比較することです。
一見、同じような事業者融資でも、適用される利息や貸付条件は異なります。
まとめ
今回は「借換えのメリットとデメリット」について解説しました。
借換を成功させるには、徹底した返済シミュレーションが必要です。借りた後で後悔しないよう、計画的に返済を行ってください。
最も重視すべきは「今よりも低い利息で借りられるかどうか?」です。
今よりも負債が増えるようであれば、借り換えをするメリットはありません。
銀行借り換えで失敗しないためには、事前のシミュレーションが欠かせません。また、一部借り換えには手数料が必要です。
そして担保を設定する場合には、別途「登記費用」が掛かるので注意しましょう。